鉄筋コンクリート(RC)造とは|メリットは防音性?物件の選び方を建築・不動産のプロが解説

鉄筋コンクリート造(RC造)は、賃貸マンションで広く採用されている代表的な建築構造だ。コンクリートと鉄筋とが一体となった強固なつくりで、防音・遮音性や耐震性に優れているとされる。その一方で、湿気や結露への注意が必要な場合もある。
この記事では、RC造の特徴や木造や鉄骨造の物件との違いを整理し、メリット・デメリット、内見時のチェックポイントを建築・不動産のプロの視点から解説する。
この記事でわかること
RC造の物件メリットやデメリット、注意点
RC造の物件をおすすめできる方
建築・不動産のプロが伝える「RC造の物件選びのポイント」
このページの目次
鉄筋コンクリート造(RC造)とは?
鉄筋コンクリート造(RC造)とは、引っ張る力に強い「鉄筋」と、圧縮に強い「コンクリート」を組み合わせて、床や壁、柱や梁などの主要構造部を一体化させた建築構造のこと。「RC」は「Reinforced Concrete(鉄筋コンクリート)」の略で、物件広告でもよく使われる。
鉄筋とコンクリートが互いの弱点を補うことで高い強度を発揮し、地震や火災に強いのが特徴。また防音・遮音性にも優れており、木造や鉄骨造に比べて生活音が伝わりにくいため、中高層の集合住宅や分譲マンションに多く採用されている。
RC造の物件には、いわゆる“コンクリート打ち放し”の物件もあります。コンクリートそのものが建物の意匠を決定づけ、個性的でスタイリッシュなデザイン性や素材そのものの風合い、建物の表情に魅力を感じる人も多いですね。
鉄骨鉄筋コンクリート造と鉄筋コンクリート造の違いはこちら
鉄筋コンクリート造(RC造)の物件のメリット
構造強度や防音・遮音性の高さなど、鉄筋コンクリート造ならではの利点は多い。代表的なものを整理すると次のとおりだ。
1.木造や鉄骨造に比べて防音・遮音性が高い
RC造はコンクリートを隙間なく流し込んで造られるため密度が高く、生活音が伝わりにくい。
そのため、一部では条件付きで楽器の演奏が許可される物件もある。ただし、「楽器可」「楽器相談」「防音室あり」などと明記されていない限り演奏は難しい。楽器を使いたい場合は、必ず不動産会社に楽器を演奏できる物件か、演奏できる楽器の種類や時間帯などの条件を確認しておきたい。
2.木造や鉄骨造に比べて耐火性が高い
鉄は高熱で変形するが、RC造は不燃材料であるコンクリートが鉄筋を覆って変形を防ぐため耐火性に優れている。また、「建築基準法第2条第7号」で定められた耐火性能基準を満たした壁や床、柱や梁などの主要構造部を持つRC造の物件は、火災が発生しても一定時間倒壊や周囲への延焼を防ぐ性能を持っている。
3.木造や鉄骨造に比べて耐震性が高い
鉄筋は引っ張る力に、コンクリートは圧縮に強いため、双方の特性を組み合わせることで地震の揺れに強い構造となる。大きな地震にも耐えうる強度が魅力だ。
4.木造や鉄骨造に比べて気密性が高い
RC造の物件は、壁や床、柱や梁など主要構造部の鉄筋を組み上げ、連続した型枠で囲った中にコンクリートを流し込んで造られる。コンクリートと鉄筋が一体化することで隙間ができにくく、高い気密性を確保できる。また、室内の空気が外に逃げにくく、外気が中に入りにくいため、空調効率がよく省エネにもつながる。
5.木造や鉄骨造に比べて設備が充実した物件が豊富
木造や軽量鉄骨造の物件に比べて建築コストが高いため、家賃が高い分、設備の充実度も高い。利便性の高い設備を求める人にとっても大きな魅力となる。
鉄筋コンクリート造(RC造)の物件のデメリットや注意点
メリットの多いRC造も物件によっては、暮らしやすさの面で注意したい点もある。代表的なものを整理すると次のとおりだ。
1.気密性が高いため湿気がこもりやすい
コンクリートは水を含んだ材料であるため、新築時は特に湿気がこもりやすい。放置するとカビや結露の原因になるため、十分な換気や除湿対策を意識したい。
ただし、2003年7月以降に着工した物件には、シックハウス症候群対策として24時間換気システムの設置が義務付けられているため、湿気対策として安心材料になるだろう。
2.蓄熱性が高く外気の影響を受けやすい
コンクリートは蓄熱性が高いため、夏は壁や床が熱をため込みやすく、冬は室内が冷えやすくなることもある。建築地の条件に合う高性能の断熱材や断熱・気密性の高い窓などで対策が十分に施されている物件を選ぶことが、快適に暮らすためのポイントとなる。
3.建築コストが高いため、家賃は高めの傾向
防音・遮音性や耐震性、耐火性に優れる分、建築コストが高くなるため、家賃も比較的高額になりやすい。立地や設備と合わせて、コストパフォーマンスをどう評価するかが重要になる。
RC造は構造面での安心感がありますが、物件や立地条件などによっては湿気や結露、冷暖房効率に差が出ることもあります。断熱や換気の工夫がされているかを不動産会社に確認したり、内見時にチェックしたりすると安心ですね。
鉄筋コンクリート造(RC造)がおすすめなのはこんな人
RC造は、防音・遮音性に優れた構造であるため、静かで落ち着いた環境や安心できる住まいを求める人に向いている。特に以下のタイプの方におすすめだ。
生活スタイルの面では、上下階や隣戸の生活音をできるだけ避けたい人に向いている。防音・遮音性の高さから、リモートワークでオンライン会議が多い人や、自宅での作業や勉強に集中したい人にも適している。
また、デザイン性を重視する人にもRC造は人気だ。コンクリート打ちっぱなしなどのデザイナーズ物件は独特の雰囲気があり、室内のデザインやインテリアにこだわりたい人にも魅力的な選択肢となる。
さらに、家族で暮らすファミリー層にもおすすめできる。防音・遮音性や耐震・耐火性が高いため、子育て世帯でも安心して暮らしやすい。
建築・不動産のプロが教える!鉄筋コンクリート造(RC造)の物件選びのポイント
RC造は耐震性・耐火性・防音性・遮音性に優れた構造だが、実際の暮らしやすさを左右するのは物件ごとの仕様や管理状態だ。内見や物件選びの際には、以下の点を確認するとよい。
1.湿気や結露への対策を確認
RC造は気密性が高いため湿気がこもりやすい傾向がある。新築物件では特に換気が重要となる。窓の配置や換気設備、結露防止の工夫がされているかを不動産会社に確認しておきたい。
2.断熱性能を確認しておく
コンクリートは蓄熱性が高く、夏の暑さや冬の寒さが室内に影響する場合がある。断熱材の施工状況や断熱性の高い窓が使われているかなどを不動産会社に確認すると安心だ。
3.築年数や劣化の有無をチェック
築年数が古い物件では、コンクリートのひび割れや剥離、最上階などでの雨漏りなどが起こる場合がある。外壁やバルコニーの状態も併せてチェックしておくとよい。
4.打ちっぱなしデザイン物件の特徴を知る
コンクリート打ちっぱなしの物件はデザイン性が高い一方、暑さ・寒さや結露が気になる場合もある。デザイン性と快適性のバランスを考えて選ぶことが大切だ。
5.集合住宅の場合、界壁の向こうに何があるか
RC造の物件でも音が気になる可能性はある。そのため「界壁の向こうに何があるか」も重要。例えば、浴室やキッチンなどの水回り同士が隣り合う配置だったり、隣の居室との間に収納スペースや廊下などがあったりすれば、音や振動の影響を受けにくい。逆に、自分の部屋のリビングと隣室のベッドルームが隣り合っていると騒音トラブルが起きる可能性もある。配置を確認しておくと安心だ。
6. 防音性を左右する建具が使われているか
窓の性能や内外装の仕上げ材によっても防音性は変わる。断熱・気密性の高い窓などが使われていたり、壁・床・天井に吸音性能の高い建材を採用している物件なら防音・遮音性に期待できる。
7. 内見時に実際の生活音をチェックする
週末や夕方など入居者の生活音が出やすい時間帯に内見することで、防音性の程度を体感できる。可能であれば複数の時間帯で確認したい。
8.部屋の位置や立地など
共同住宅の場合、角部屋や最上階、1階など隣や上下と接する部屋が少ないほど音や振動の影響を抑えられる。また、幹線道路や駅、学校などの近くは外部からの音に悩まされる可能性がある。不動産会社に、「過去に騒音トラブルがなかったか」も確認するといいだろう。
RC造は木造や軽量鉄骨造の物件と比べて強固な造りですが、住み心地よく快適に暮らせるかどうかは物件次第です。断熱や換気の仕様、築年数による劣化の有無などを必ずチェックして、イメージやデザイン性だけで判断しないことも重要なポイントです。
RC造は安心感と快適性のバランスを見極めて選ぼう
鉄筋コンクリート造(RC造)は、耐震性・耐火性・防音性の面で木造や鉄骨造を上回り、重厚感や高級感を求める人からも人気が高い構造だ。遮音性や冷暖房効率の高さも魅力で、中低層から中高層マンションにも多く採用されている。
一方で、湿気や結露の発生、夏の暑さや冬の寒さといった住み心地の面では注意が必要だ。築年数や断熱仕様、換気設備などを確認することで、RC造ならではの強みを存分に活かした快適な暮らしを実現できるだろう。
長く安心して暮らせる拠点を探す単身者やカップルには特におすすめの建築構造と言える。メリットだけでなくデメリットがあることも理解したうえで、自分のライフスタイルや予算に合った物件を選びたい。
賃貸住宅の魅力は、住み替えができることです。進学や就職、結婚、単身赴任など、人生の節目ごとにライフスタイルに合う住まい選びができます。引越しを通して、新しい街の良さに気づいたり、いろいろな間取りを楽しんだり、快適に暮らすための工夫をしたり、きっと良い経験が得られるでしょう。
なかには、将来的に持ち家やマンションの購入を考える方もいるかもしれません。大切なご家族の安全や、建物や土地の資産価値を考えるとき、賃貸住宅での経験や気づき、建築構造の知識がきっとお役に立ちます。
この記事が、みなさまの人生をより良くする一助となれば幸いです。
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監修、取材協力:藤浦 誠一 (株式会社エイブル)
文:佐々木正孝(キッズファクトリー)








