賃貸物件における「火災保険」の補償内容は?加入しないリスクとは
賃貸物件における火災保険の補償内容とは?加入は必須?

いつ自分の身に起こるかわからない災害。万が一に備えて加入しておきたいのが保険だ。賃貸物件の場合、火災保険への加入が入居の必須条件になっているケースが多い。
今回は賃貸住宅の火災保険の補償範囲と、加入義務に関して詳しく解説していく。火災保険の仕組みがよくわからない、どんな火災保険に加入すればいいのか悩んでいるという方はぜひ参考にしてほしい。
このページの目次
賃貸物件の火災保険とは?
大切な家電を火災や落雷などから守ってくれる火災保険。しかし、賃貸物件に長く住んでいても、加入している火災保険の具体的な補償内容まできちんと把握できている人は、意外と少ないのではないだろうか。
火災保険とは、一戸建てやマンション、アパートなどの建物と、その建物内にある「動産」を補償してくれるサービスだ。「動産」とはなかなか聞きなれない言葉だが、「不動産以外のもの」を指す言葉だ。
また火災保険は、「火災」以外のトラブルが発生した場合でも家財を補償してくれるケースがあるため、どこまで補償してくれるのか事前に確認しておこう。
賃貸物件における火災保険の種類と補償内容
火災保険は主に火災保険(家財保険)と借家人賠償責任保険、個人賠償責任保険の3種類に分けられる。それぞれの補償内容は次のとおりだ。
火災保険(家財保険)
火災保険(家財保険)とは、冷蔵庫や洗濯機、家具家電などの損害を補償する保険になる。ただし、保険によっては火災保険と家財保険を区分けして定めている場合もあるため注意が必要だ。
借家人賠償責任保険
借家人賠償責任保険とは家財保険の特約のひとつで、単体では加入できない。主に火災や漏水などで借家に損害が出てしまった際に発生する修理代金などを補償する。
個人賠償責任保険
日常生活において、故意・過失によって他人に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合にその分の補償が得られる保険のこと。たとえば相手に怪我をさせてしまった場合、この保険で治療費や慰謝料を支払うことになる。
その他の細かい保険に関しては、保険会社によって異なるので注意が必要だ。
【保険会社に聞いてみた】賃貸物件における火災保険の具体的な補償内容・範囲

では、動産に火災保険が適用されるのはどんなケースなのか。ここでは実際に、筆者が賃貸物件への入居時に交わした火災保険の契約書を見直してみる。
保険金が支払われる場合
- 火災、落雷、破裂または爆発
- 物体の落下事故
- 漏水事故
- 騒じょう
保険金が支払われない場合
- 保険契約者、被保険契約者またはこれらの者の法定代理人の故意もしくは重大な過失または法令違反があったとき。
- 被保険者でない者が保険金の全部または一部を受け取る場合においては、その者またはその者の法定代理人の故意もしくは重大な過失または法令違反があれば支払われない。ただし、他の者が受け取るべき金額は除く。
※上記はあくまで一例で、火災保険によって細かい内容はそれぞれ異なる。
故意による事故や保険金そのものを目的にしたケースには、当然ながら保険金は支払われない。では、どのようなケースまでなら、火災保険は補償してくれるのだろうか?筆者が加入している保険会社のカスタマーセンターに電話で詳細を聞いてみた。
まず前提として、物品の破損にはさまざまなケースがあるので、一概に「このケースは補償できる・できない」とは言い切れないようだ。ポイントは、「過失がどこにあるか」である。
「たとえば、落雷でテレビやパソコンが壊れてしまった場合、あるいは上の部屋からの漏水で家電が壊れてしまった場合は保険金が支払われます。しかし、この漏水がもし雨漏りの影響だとしたら、それは建物所有者の責任であり、火災保険の対象外となります。」(保険会社の担当者)
補てんされる金額については、購入時の値段ではなく、新たに購入する際の値段が原則とされている。また筆者が加入している火災保険では、30万円を超える貴金属や宝飾品、また20万円を超える時計や財布、バッグは補償の対象外。加入する火災保険によって、その上限が定められている。
では、普段通りに過ごしていて、偶発的に破損した場合でも補償されるのだろうか?
「故意ではなくても、加入者が破損した場合は補償が難しくなります。お子さんが誤って壊した場合も同様です。あくまでも、自然災害や第三者の影響で被害が出た場合に適用されると考えていただければ幸いです。しかし、これもケースによって異なってきますので、事故が起こったらまずはご相談ください。」(保険会社の担当者)
家電や家具などが破損してしまった際には、すぐあきらめるのではなく「火災保険」の対象になるかどうかを思い出してみよう。自分自身がどういう火災保険に加入しているのか、入居時の契約書をもう一度確認してみてはいかがだろうか?
賃貸物件における火災保険料の相場

火災保険の具体的な金額はいくらなのか、相場を事前に調べておくと納得して加入できるだろう。賃貸物件の場合は「家財補償」「借家人賠償責任保険」「個人賠償責任保険」の3つの内容が含まれるのが一般的だ。それらに対する補償の金額や、支払い方法などによって保険料が決まる。
保険料の目安になるのは家財補償額だ。家具や家電、家財などが壊れてしまったときの補償額の平均値は200万円ほどで、その場合の保険料は1年あたり1万円弱程度。賃貸の保険料は2年払いにする人が多いため、2年間の保険料が2万円以内に収まるのが妥当な金額だといえるだろう。
賃貸物件の火災保険には、必ず加入しなければならないの?
火災保険への加入は法律上で義務付けられているわけではなく、任意となっている。したがって、加入していないからと言って罰金などのペナルティーを受けることはない。
しかし、火災保険への加入を入居条件としている物件が多くを占めるため、加入しなければ物件を借りることが難しいのが現実だ。
仮に火災保険への加入が入居条件になっていなかったとしても、主に下記で述べる理由から、火災保険には加入しておくのがベターだといわれている。
入居者には「原状回復義務」がある
賃貸物件の入居者には、原状回復義務がある。
原状回復とは、賃貸借契約が終了する際に部屋を本来の状態に戻すことを指し、入居者はその義務を負うことになる。
ただし、日焼けによる壁紙の変色や、設備の老朽化による不具合といった、普通に生活していて起こる汚れや損傷については入居者の責任とはならない。
反対に、入居者による故意・過失で火災や水漏れなどの被害が起きた場合は、修繕にかかる費用を入居者が負担する。大家さんから損害賠償請求をされる立場になるため、火災保険に加入しておく必要があるといえるのだ。
もらい火により家財が損害を受けても、自己負担になるケースがある
たとえば、隣の部屋からもらい火を受けて家財が損害を受けた場合、自己負担となるケースがある。日本には「失火責任法」という法律があり、「火災を起こして他人に損害を与えたとしても、火災を起こした本人に重大な過失がない限りは、損害賠償責任を負わない」との旨が規定されているためだ。
重大な過失とは「寝たばこをして火事を起こした」「石油ストーブの火を消し忘れて火事が起きた」「鍋を火にかけたままキッチンから離れていた」といったケースを指す。もし火元となった隣人に重大な過失がなければ、修繕費用を自己負担をしなければいけない。
自分が注意をしていても、他人からもらい火を受ける可能性もあるため、火災保険に加入しておくことをおすすめする。
賃貸物件における火災保険の更新方法と、更新しない場合の解約方法

一般的に、賃貸物件における火災保険の更新は2年ごとに行われる。ただし、商品によっては1年契約のものもあるため、自身が加入している火災保険の内容を一度チェックしよう。
また、火災保険は基本的に更新するものではあるものの、更新時に別の商品に切り替えることもできる。しかし、大家さんや不動産会社が加入できる火災保険会社を指定している場合もあるので、更新をしない場合には事前に相談することが大切だ。
以下で、更新方法と解約方法を見ていこう。
火災保険の更新方法
満期が来ると保険会社や代理店からメールやはがきなどの通知が届く。契約更新の場合、更新日の前日までに契約を更新しておくことが必要だ。
火災保険の更新を行う日の前日までに契約を更新しておかないと、契約打ち切りと見なされる場合があり、保険未加入期間が発生してしまう。余裕を持って手続きを行い、余計なトラブルを回避しよう。
火災保険を更新しない場合の解約方法
契約している保険会社、代理店に解約の旨を伝える。不動産会社から指示された火災保険の場合、不動産会社に連絡を取って指示を仰ごう。
賃貸の火災保険に関するよくある疑問を解決
火災保険の契約を検討する際、または加入中にありがちな以下の3つの疑問点と、その解決法について解説していく。
火災保険は自分で選んで加入することも可能?

火災保険は賃貸の契約を結ぶ際、不動産会社が「この保険に加入してください」と提示する場合が多い。しかし、不動産会社が提示する保険ではなく自分で選んだ保険に加入することも可能だ。
個人で加入するメリットは、火災保険の費用を抑えられることだ。2万円程度かかる火災保険料を1万円弱に抑えることもできるため、自分で加入を検討している方は早めに不動産会社に相談しよう。
ただし補償内容などは保険会社によって異なる。安易に保険料だけで判断せず、補償内容をしっかり比較検討しよう。
引越しをするときの火災保険はどうすればいい?

旧居にて自分で調べて火災保険に加入した場合は、既存の保険会社へ住所変更の手続きを行えば、そのまま契約を継続することができる。
また、旧居の契約と同時に火災保険に加入した場合でも、必ずしも賃貸契約と火災保険の契約がセットになっているわけではない。そのため、保険商品によっては引越し後も契約を継続できる場合がある。
ただし注意したいのは、火災保険料は建物の構造・所在地(都道府県別)・用途によって異なることだ。そのため遠方へ引越す場合、火災保険料の額が変わってしまうことも少なくはない。引越しをする前に、代理店や保険会社へ連絡し、保険料に変更があるかどうかを確認しておくと良いだろう。
また、管理会社によっては「この火災保険に加入してほしい」と保険会社や保険の種類を指定してくることもある。これが賃貸借契約の条件になっているケースでは、以前の保険契約や自分で加入した契約を途中で解約して、指定のものに新規で加入する必要が出てくるだろう。
火災保険は地震もカバーしてくれる? 地震保険との違いとは?

賃貸借契約の際に加入する火災保険で、地震保険特約をつけた場合、地震によって発生した損害についても補償される。もし火災保険に地震保険特約をセットしなかった場合には、地震による損害はカバーされないことを知っておこう。
また、地震保険は特約扱いになり、単体での契約はできない。そのため、地震保険へ加入する手順として、まずは火災保険へ加入することが条件となる。既存の火災保険があれば、特約として地震保険を途中付加することも可能だ。
地震保険では、地震による建物と家財への損害が基本的な補償範囲となる。
火災保険では「地震・噴火・津波が原因で、火災・損壊・流失などが起こり発生した損害」は補償の範囲外となっているが、地震保険ではこれらをカバーしてくれるのだ。また、保険金額は主契約(火災保険)で設定された保険金額の30~50%の範囲内に収まっているものが多いため、火災保険と地震保険の補償内容を一度確認しておこう。
賃貸物件の火災保険は加入すべき!「万が一」はすぐそこにあるかもしれない
賃貸暮らしではなるべく支出を減らしたいところだが、火災や地震などで損害を被ったときに備えておかないと、大きな出費となってしまう。「万が一」の出来事は、明日にでもやってくる可能性もあるのだ。
そうならないためにも、あらかじめ火災保険に加入しておくのがベストである。管理会社からの指定保険がなければ、自分で選んで加入することも可能だ。
火災保険の保険料については会社によってさまざまなので、自分に合った会社を選ぶ必要がある。比較的少ない金額で入れる火災保険もたくさんあるので、プランの内容などを比較検討しながら選んでいこう。
文=播磨谷拓巳(ノオト)
2022年3月加筆=CHINTAI情報局編集部