賃貸物件で災害(台風・火災・地震)の被害に!補償や修繕費について弁護士が解説

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賃貸物件で災害(台風・火災・地震)の被害に!補償や修繕費について弁護士が解説

台風、火災、地震、落雷、豪雨——。日本に住んでいる以上、こうした自然災害のリスクは避けられない。もし自分が暮らしている賃貸物件で災害に遭い、部屋の窓ガラスが割れたり、雨漏りが発生したりした場合、その修繕費用は誰が負担するのだろうか。

本記事では、弁護士監修のもと、賃貸物件で災害の被害に遭った場合の「修繕費用のルール」「家財の補償」「被災後に取るべき具体的な対応ステップ」をわかりやすく解説する。万が一の事態に備え、正しい知識を身につけておこう。

※記事の内容は、2026年8月の法令・情報に基づいています

芝大門法律事務所 高橋真司先生

慶應義塾大学卒業後、99年に弁護士登録・芝大門法律事務所へ入所。不動産紛争、居住者間のトラブルなど多くの大家さんが悩むテーマを中心に取り扱う「不動産問題のプロ」。著書に「賃貸住宅の法律Q&A」(大成出版社・共著)ほか。

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建物の修繕費用は原則「大家さん負担」

台風の強風で窓ガラスが割れた、地震で壁にヒビが入った、豪雨で雨漏りしたなど、自然災害による不可抗力(人の力では防ぎようがないこと)が原因で建物の修繕が必要になった場合、その修繕費用は大家さんが負担するのが原則だ。

これには法律上の明確な理由がある。民法上、大家さん(賃貸人)は「賃貸物件を利用可能な状態で入居者に提供すべき義務(修繕義務)」を負っているからだ。

こうした予測不能な災害に備え、大家さんのほとんどは「建物に対する火災保険や地震保険」に加入している。そのため、入居者が修繕費用を求められることは基本的にないので安心してほしい。

ただし、災害から時間が経過してしまうと「本当に災害が原因で壊れたのか」という因果関係の証明が難しくなる場合があります。破損している箇所を見つけたら、速やかに大家さんや管理会社へ修理を依頼することが重要です。

注意点1:借主に責任(過失)がある場合は「借主負担」に

損壊の直接的な原因が災害であったとしても、その被害を招いた責任(過失や契約違反)が入居者にあると認められた場合は、例外として修繕費用が借主負担になる可能性がある。

具体的には、以下のようなケースが該当する。

  • 契約で禁止されている場所に可燃物を置き、そこから引火して火災が発生した
  • 台風が来るとわかっていながら窓を開けっ放しにし、雨風が吹き込んで壁紙や床が損傷した
  • ベランダに倒れやすい大きな観葉植物を置いており、強風で倒れて窓ガラスが破損した

自然災害であっても、「一般的な注意を払っていれば防げた被害」に関しては入居者の責任が問われる場合があるため、日頃からの防災意識や物件の適切な使い方が求められる。

注意点2:家財やケガは大家さんに補償してもらえない

災害によって、入居者が所有する家具や家電(家財)が壊れたり、入居者自身がケガをしたりするケースもあるだろう。しかしこの場合、大家さんに対して損害賠償を請求することはできない。

災害は大家さんにとっても避けられない不可抗力であり、家財道具など入居者自身の持ち物については、損害は持ち主である「入居者自身」が被ることになるからだ。

ただし、「大家さんの管理不足」が被害の原因である場合は例外です。たとえば、以前から『窓ガラスのヒビ』の修理を依頼していたのに放置され、その結果として台風で割れて家具が壊れてしまったようなケースでは、大家さんの管理責任を問い、損害賠償を請求できる可能性があります。

自分の家財は「自分でかけた保険」で守る

前述の通り、災害によって被害が発生したら、「建物や設備の損害(大家さん負担)」と「入居者の財産・家財に対する被害(入居者負担)」は明確に分けて考える必要がある。自分の財産は基本的に自分で守らなければならない。

そこで重要になるのが、入居時(賃貸借契約時)に加入した火災保険や地震保険だ。加入している保険の補償対象であれば、家財の損害は保険金でカバーできる。

火災保険の詳しい補償範囲や、加入しておくべき保険の内容については、以下の記事を参考にしてほしい。

地震・津波による被害は「地震保険」が必要

気をつけなければならないのが、通常の火災保険では「地震・津波・火山の噴火」を原因とする火災や損壊は補償されないという点だ。

地震による強い揺れで食器棚が倒れて食器が割れたり、地震が原因で発生した火災で家財が燃えたりした場合の損害をカバーするには、「地震保険」に加入しておく必要がある。地震保険は単独では加入できず、火災保険とセットで加入する仕組みになっている。

地震保険の補償範囲などについては、以下の記事を参考にしてほしい。

災害に遭ったらどうする? 入居者の正しい対応

もし実際に災害に遭ってしまった場合、何よりも最優先すべきは自分や家族の「命」と「身の安全」を守ること。

建物の倒壊や二次災害の危険が去り、周囲の安全が十分に確認できた前提で、以下のステップに沿って行動しよう。

STEP1:室内外の被害状況を「写真や動画」で記録する

被害に遭ったら、片付けを始める前にケガや事故に注意したうえで、室内外の被害状況をスマートフォンなどで写真や動画に収めておこう。これにより、管理会社や保険会社に対して「どのような被害があったか」を正確に報告・証明できるようになる。

被害箇所をアップで撮るだけでなく、部屋全体の様子がわかる引きの写真も撮影するよう心がけよう。また、自治体から公的な支援を受ける際に必要な「罹災(りさい)証明書」を申請する際にも、この詳細な記録が必ず役立つ。

STEP2:建物の被害は「大家さん・管理会社」へ連絡する

「天井や壁にヒビが入った」「エアコンや給湯器などの備え付け設備が壊れた」「共用部の廊下や手すりが破損している」といった建物の被害を見つけたら、まずは契約時の不動産仲介会社や管理会社、大家さんへ連絡しよう。

賃貸住宅はあくまで大家さんが所有する財産ですので、入居者が勝手に専門家を呼んで補修を行うことはできません。また、民法615条では「物件に修繕が必要な損傷が起きている場合には、入居者は大家さんに遅滞なく連絡する義務がある」と定められています。被害を知りながらすぐに連絡を行わなかった場合、「通知義務違反」として本来大家さんが払うべき修繕費の一部が入居者の負担となってしまう場合もあります。

STEP3:家財の被害やケガは「保険会社」へ連絡する

災害によって自分の家具や家電が壊れたり、自身の身にケガが起きたりした場合は、賃貸契約時に加入した火災保険や地震保険の出番だ。

まずは補償内容を確認・請求するために、まずは保険会社に連絡しよう。契約書類(保険証券など)を手元に用意し、記載されている証券番号を伝えるとスムーズだ。最近では、電話だけでなくインターネットの専用フォームから24時間被害報告を受け付けている保険会社も多い。

また、不動産会社が火災保険の代理店になっているケースも多いため、連絡先がわからないなど迷った場合は、契約した不動産会社に相談するのも一つの手だ。いずれにしても、なるべく早く報告することをおすすめする。

【状況別】被災して住めなくなった・設備が壊れた場合はどうなる?

災害の規模によっては、部屋にそのまま住み続けることが難しくなる場合がある。ここでは、被害の程度に応じた3つのケースについて解説する。

ケース1:全壊などで「立ち退き」が必要になる場合

被害の程度が非常に大きく、賃貸住宅が全壊してしまったり、改修できないほど損壊して住宅としての機能が完全に失われたりした場合、その賃貸借契約は法律上、終了する(立ち退きを余儀なくされる)。借主に原状回復の義務はなく、そのまま退去することになる。

この場合、大家さんに「新しい部屋への転居費用(引越し代や初期費用)」や「損害賠償」を請求することはできない。災害という不可抗力が原因である以上、自己負担で新たな住まいを探す必要があるのだ。

ただし、加入している火災保険・地震保険に「臨時費用保険金」などの特約が付帯されていれば、引越し費用や当面の生活費が保険金でカバーされる場合がある。万が一の際は必ず保険会社に確認してみよう。 

ケース2:修繕のために「仮住まい」が必要になる場合

建物の改修自体は可能であり、貸主(大家さん)が修繕を行う場合、借主はそれに協力する義務がある。

たとえば、大規模な改修工事のためにいったんマンスリーマンションやホテルなどの「仮住まい」への移転が必要となったとしよう。この場合、自分の部屋に住めない工事期間中の家賃は支払う必要はない。工事期間中(住めない日数分)の家賃は日割りで免除される。

しかし、ここでも不可抗力の原則が働き、仮住まい先への引越し費用や仮住まい中の宿泊費・家賃については、大家さんに請求できず借主負担となるのが原則だ。こちらもケース1と同様に、自身の加入する保険で仮住まいの費用が補償される特約が付いている可能性があるため、契約内容を確認してみることをおすすめする。 

ケース3:設備が使えず「家賃が減額」される場合

仮住まいへの移転が必要なほどではないものの、建物自体や設備の一部が破損して使えなくなり、借主の生活に不利益が生じた場合は、その不便さの程度や修理されるまでの期間に応じて「家賃が減額される」ケースがある。

ただし、家賃をいくら減額するかについては、貸主と借主の双方で十分に話し合って合意することが必要だ。話し合いの目安として、公益財団法人日本賃貸管理協会が公表している「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」が参考になる。設備ごとの減額割合や免責日数などの基準が示されているため、目を通しておくと良いだろう。

まとめ

災害が発生した直後は、誰しもパニックに陥りやすい。避難や安全確保で手一杯になり、保険の内容や損害の補償のことにまで頭が回らなくなるのが普通だ。だからこそ、災害に遭ってから情報を整理するのではなく、事前に契約内容やルールをよく理解しておくとよい。

保険には細かい規定があり、加入している会社やプランによって補償内容に違いがある。また近年、想定外の台風や局地的な豪雨、地震などの自然災害が頻発している。

防災対策の重要なステップとして、「自分の家財はどこまで補償されるのか」「水害や地震はカバーされているか」など、自分の火災保険・地震保険の契約プランを確認してみよう。もし不足を感じる場合は、契約の更新時などに災害リスクに応じた見直しを行うことをおすすめする。

防災士が監修した、賃貸住宅でできる具体的な災害対策については以下の記事を参考にしてほしい。

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