賃貸に設備を設置・増設したい!無断工事のリスクと注意点を弁護士が解説

最終更新日::
賃貸に設備を設置・増設したい!無断工事のリスクと注意点を弁護士が解説

「今の部屋には付いていないけれど、温水洗浄便座を使いたい」「防犯のためにスマートロックや補助錠を付けたい」など、賃貸物件に住み始めてから設備の導入や増設を検討する人は多い。

最近では、地震対策として家具の転倒防止ストッパーを壁に設置したり、窓ガラスに防犯・飛散防止フィルムを貼ったりする需要も高まっている。

本記事では、弁護士監修のもと、賃貸物件に自費で設備を設置・増設する際のルールや、退去時の「原状回復」、トラブルを防ぐための注意点をわかりやすく解説する。

※記事の内容は、2026年8月の法令・情報に基づいています

芝大門法律事務所 高橋真司先生

慶應義塾大学卒業後、99年に弁護士登録・芝大門法律事務所へ入所。不動産紛争、居住者間のトラブルなど多くの大家さんが悩むテーマを中心に取り扱う「不動産問題のプロ」。著書に「賃貸住宅の法律Q&A」(大成出版社・共著)ほか。

ホームページ

エアコンの設置・増設については、こちら

大家さんに「無断」で設備を設置してはいけない

結論から言うと、賃貸物件では、大家さんや管理会社に無断で設備を設置することは基本的にNGだ。「同じアパートの別の部屋には付いているから」「自費で買うのだから問題ないだろう」と自己判断してはいけない。

設備を設置する際、壁に穴を開けたり、ネジで固定したり、ガラスに強力なフィルムを貼ったりすると、本来の部屋の状態を変えてしまう(物理的な加工を施す)ことになる。賃貸物件はあくまで「大家さんから借りているもの」であるため、無断で加工することは契約違反に問われる恐れがあるのだ。

賃貸借契約には、借主(入居者)が部屋を大切に扱う「善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)」があります。無断で壁に穴を開けたり設備を増設したりする行為はこの義務に違反する可能性があり、退去時に修繕費用を請求されるリスクがあります。設備を導入したい場合は、必ず事前に大家さんや管理会社へ連絡し、「設置してもよいか」の承諾を得ることが重要です。 

許可取りが必要な設備と、不要な設備の違い

そもそも、どのような場合に大家さんの許可が必要になるのだろうか。判断の基準は以下の通りだ。

許可が不要なケース

  • 家具や家電を床に「置くだけ」の場合
  • 接着剤などを使わず、退去時にすぐ元に戻せる状態

許可が必要なケース

  • 穴を開ける必要があるとき
  • 接着剤や両面テープ、フィルムなどで貼り付けが必要なとき

たとえば、部屋の模様替えで「おしゃれなクッションフロア」を取り入れたい場合。接着剤やテープを使わず、元の床の上にただ「敷く(置く)だけ」であれば、すぐに元に戻せるため許可は不要だ。しかし、ズレ防止のために接着剤や両面テープなどで元の床材に直接貼り付ける場合は、退去時に剥がせなくなったり、元の床の表面を剥がしてしまったりするリスクがあるため、事前の許可が必要となる。

分譲マンションの一室を借りている場合は、大家さん個人の許可に加えて、建物の管理組合へ「工事の届出」が別途必要になるケースがあります。大家さんや管理会社に相談する際、「管理組合への申請手続きはどうすればいいか」もあわせて確認しておくと安心です。

無断設置は「原状回復費用」のトラブルになる

無断で設備を設置した際、最も揉めやすいのが退去時の「原状回復」だ。国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、入居者に原状回復(費用負担)が求められるケースについて以下のように定めている。

賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損

出典:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン|国土交通省

つまり、日常生活で自然にできた汚れや傷であれば大家さんの負担で直すが、「入居者が自分の都合で勝手に開けた穴」や「無断設置による傷」は、入居者の全額自己負担で修繕(穴を塞ぐ工事など)をしなければならないのだ。

退去時の原状回復について詳しくは、下記の記事を参考にしてほしい。

賃貸物件で設備を設置・増設する際の3つの注意点

無断設置のリスクを理解したうえで、どうしても付けたい設備がある場合、以下の3つのポイントに注意して準備・確認を進めよう。

注意点①:退去時に「どう戻すか(原状回復)」を確認する

大家さんから設置の許可をもらう際、最も重要なのが「退去時にその設備をどうするか」をあわせて確認・合意しておくことだ。

原則としては、退去時に入居者の自費で設備を取り外し、元の状態に戻す(原状回復する)必要がある。しかし、ウォシュレットやモニター付きインターホンなど、物件の価値を高めるような設備の場合、大家さんが「後の入居者のために、そのまま残していっていい」と判断するケースもある。

この場合、取り外し費用や原状回復費用は不要になるが、口約束だと退去時に「やっぱり外して元に戻して」と揉める原因になりかねない。許可をもらう際は「退去時はそのまま置いていってよいか、元に戻すか」を明確にし、必ずメールなどの文面で記録を残しておこう。

また、設置前の状態(元の壁や床など)を必ず写真に撮って残しておこう。 退去時の立ち会いで「これは最初からあった傷か、設備を付けたときの傷か」で意見が食い違った際、自分を守る証拠になる。 

法律上、入居者が大家さんの同意を得て設置した設備を、退去時に大家さんに買い取ってもらう「造作買取請求権(ぞうさくかいとりせいきゅうけん)」という権利があります。しかし、一般的な賃貸借契約では、特約によってこの権利が排除されている(買い取りはしないと定めている)ことが多いです。費用をかけて設備を設置しても、退去時に買い取ってもらえるとは限らない点に注意しましょう。

注意点②:そもそも設置できない物件(構造)がある

許可をもらえたとしても、建物の構造やスペースの問題で、ほしい設備が物理的に設置できない可能性がある。

物理的に設置できないケースの例

  • ウォシュレットを付けたいが、トイレ内に電源コンセントがない
  • 食洗機を置きたいが、水栓の形が分岐水栓に対応していない
  • スマートロックを買ったが、サムターン(鍵のつまみ)の形状が特殊で取り付けられない

購入してから「付けられなかった」と後悔しないよう、以下の順序で確認と交渉を進めるのがおすすめだ。

1. 自分の部屋の構造に適合するか確認する

まずは事前に取扱説明書やメーカーの公式サイトを確認し、現状のまま設置できるか、採寸仕様の確認をしておこう。

2. 工事が必要な場合は「どこまでOKか」対応範囲を確認する

コンセントの増設や水栓の分岐工事、壁への穴開けなどが必要だとわかった場合でも、諦めるのはまだ早い。大家さんの許可さえ得られれば、自費での追加工事が認められるケースもあるからだ。大家さんに相談する際は、「壁への穴開けはOKか」「コンセント増設工事は可能か」など、どこまでの工事なら許可してもらえるかの対応範囲を明確にすり合わせよう。

3. 工事がNGなら「賃貸対応の製品」を選ぶ

構造上の問題や大家さんの意向で工事の許可が下りなかった場合は、壁に穴を開けずに両面テープやクランプで固定できる「賃貸対応の設備(DIYグッズ)」を選ぶという選択肢もある。ただし、穴を開けない貼り付けタイプの製品でも、退去時にテープの跡が残ったり壁紙が剥がれたりするリスクはあるため、自己判断せず事前に許可を取ってから設置しよう。

設置した設備の故障対応は自己負担!手入れを怠ると「部屋の修繕費」も 

最後に、無事に設備を設置できた後の「メンテナンス」 についても触れておく。

前提として、最初から部屋に備え付けられている設備であれば故障時に大家さんが直してくれるが、自費で追加設置した設備のメンテナンスや、故障時の修理・交換費用はすべて「自己負担」となる。 

そのうえでさらに注意したいのが、設置した設備の手入れを怠った結果、物件そのもの(壁や床など)に被害を与えてしまった場合だ。 

前述の国交省のガイドラインにもある通り、日頃の手入れ(メンテナンス)を怠っていたり、通常の使用では考えられない使い方をしたり手入れ不足によって部屋を傷つけたりした場合、その修繕費用は入居者の負担となってしまう。

たとえば、自費で付けたウォシュレットの接続部から水漏れしているのを放置し、トイレの床(クッションフロア)を腐らせてしまった場合、ウォシュレット自体の修理代はもちろんのこと、床の張り替え費用まで入居者が賠償しなければならなくなる。

自分の持ち物であっても、その土台である「部屋」は大家さんのものだ。余計な出費を防ぐためにも、定期的にメンテナンスや清掃を行い、大切に使用することを心がけよう。また、設備に異常があれば使用を取りやめ、対応について大家さんや管理会社に相談しよう。

まとめ

賃貸物件での設備の設置・増設について、重要なポイントは以下の通りだ。

  • 大家さんや管理会社への「事前の設置許可」は必須
  • 設置工事が必要な場合は「許可される範囲」をすり合わせる 
  • 退去時の「原状回復」の有無についても、明確に取り決めておく
  • 自費で付けた設備の修理は自己負担 

生活をより快適にしてくれる設備だが、無断で設置すると後々トラブルに発展しかねない。購入する前に必ず管理会社へ一本連絡を入れ、条件をすり合わせたうえで住環境を整えよう。

リンクをコピー
関連記事関連記事