家賃を滞納すると裁判になる? 法的措置の流れと滞納を防ぐ方法
家賃を滞納する前に知ってほしいこと

毎月支払いを滞りなくするのが借主の義務だが「別の支払いが重なって」「今月収入がなくて」などさまざまな理由で滞納してしまう場合がある。
「今月の家賃滞納しちゃったよ」と笑い話で耳にすることもあるが、軽く考えてはいけない。長期にわたって家賃を滞納してしまうと、裁判などの法的手段に発展する場合もある。
今回は家賃を滞納するとどうなるのか、家賃を払えそうにない場合の対応策を紹介しよう。
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家賃を滞納するリスク

家賃の滞納は自分と家主だけの問題ではなく、時には周りの人を巻き込んだ問題へと発展する可能性がある。家賃を滞納しないことが一番望ましいが、何らかの理由で家賃を滞納してしまった時に、どのようなリスクがあるのか知っておくことも大切だ。
ここでは、家賃を滞納することで考えられるさまざまなリスクを紹介する。
連帯保証人が支払いを催促される
家賃を滞納した時は、まずは居住者に支払いを催促する通知が送られる。それでも居住者が支払いに応じない場合は、連帯保証人にむけて支払いの催促通知が送られる。
連帯保証人に連絡するタイミングは状況によって異なり、家主によっては家賃の滞納が発覚してすぐに連絡する場合もある。連帯保証人に連絡が行けば、もちろん保証人側も何らかの対処を要求されることになる。
連帯保証人に催促がいかないためには、滞納してしまった時点で早めに家主に連絡することが肝心だ。
強制退去させられる
家賃を滞納し続けると、裁判所から強制退去を命じられる可能性がある。家賃支払いの滞納において、強制退去は法的な最終手段とされている。
支払いの催促や書面による通知を賃借者が無視し続ければ、家主は裁判所を通じて強制退去を命じることができる。強制退去は拒否することができず、立会人のもとで部屋の荷物の運び出しなどが実行されるのだ。
どのような手続きを経て強制退去を命じられるのかは、後ほど詳しく解説する。
信用情報に傷が付く
家賃を滞納したという事実は、不動産業界の信用情報として共有される。信用情報に家賃滞納が記録されれば、新規でクレジットカードを申し込んだ際に審査に落ちてしまう可能性が高い。
さらに、家賃の支払いを踏み倒したとなると、5年間は金融機関でブラックリスト入りすることになるだろう。
このように、家賃の滞納は社会的な信用に傷を付けてしまうので、支払いがどうしてもできない場合は早めの対応が求められる。
家賃を滞納したらすぐに大家さんに相談を
賃貸物件を借りる時に、「家賃は手取り収入の3分の1以内に抑えた方がいい」とよく聞く。しかし、都市部では家賃相場も高く、物件を探すうちに「あと1万円出せば、もっと広くて快適な部屋を借りられる」などと思ってしまうことも多いのではないだろうか?
もちろん、きちんと家賃が払えれば問題ない。だが、家賃の支払いは毎月のこと。下記のようなさまざまな理由で家賃を滞納してしまうケースもあるだろう。
- 予定外の出費がかさみ、家賃が払えない
- 転職をすることになり、収入が下がった
- 病気や怪我で通常通り働けなかった
- 単純に払い忘れてしまった
いずれにしても、滞納してしまった場合や、しばらく家賃の支払いが難しくなった場合には、その時点で大家さんに連絡・相談すべきだ。
家賃滞納に対して大家さんは法的措置を取ることができる

家賃滞納者に対して、家主はすぐに強制退去を命じられるわけではない。いくつかの手続きを経て、家主は滞納者に対して法的措置を実行できる。では、家主はどのような手続きを経て、滞納者に対して法定措置を行えるのだろうか。
ここでは、家賃滞納の際に大家さんが実行する手続きや法的措置について紹介する。
①家賃支払いの督促
家賃を滞納した場合、まずは賃借者に対して支払いを督促する。電話や書面、訪問による督促が一般的で、いつ督促するのかは家主に委ねられる。一度の督促で賃借者から応答がない場合は2回、3回と督促が繰り返されることになる。家賃を滞納した場合、この段階でしっかりと対応していれば、裁判といった大事にならずに済むケースが多い。
②内容証明郵便
複数回の督促に応じない場合は、支払い期限が明記された内容証明郵便が送られる。内容証明郵便とは郵便物を確実に届けたことを証明する郵便だ。そして、郵便の内容は「期限内に支払いが確認できない場合は契約を解除する」という旨が記載されている。
したがって、いつ・誰が・どこで・どのようにして郵便物を受け取ったのかを示す証拠として内容証明郵便を使用するので、記載内容に従わない場合、家主は次の法的措置へと移ることができる。
③連帯保証人への催促
これまでの督促で賃借者が支払いに応じない場合、賃借者に代わって連帯保証人に支払いが催促される。一般的には複数回の督促で賃借者が応答しない場合に連絡することが多い。連帯保証人を保証会社で契約している場合は、家賃を滞納している旨が伝えられて信用機関の情報に延滞の事実が記録される。
④明け渡し請求訴訟
内容証明便に記載した期日内に賃借から何も応答がなければ、家主は裁判所に対して明け渡し請求訴訟を申し立てる。明け渡し請求訴訟の申し立てが認められると、家主は賃借者に対して部屋の明け渡しと滞納分の家賃を同時に請求できる。さらに、賃借者に家賃滞納の支払い能力がないと判断できれば、部屋にある賃借者の所有物を差し押さえることも可能だ。
⑤強制退去
賃借者が裁判所の判決に従わない場合は、その旨を裁判所へ申し立てることで家主は強制退去を執行できる。
強制退去では、執行官が立ち会って部屋の中にある家財などを強制的に運び出し、滞納者を物理的に追い出す処置を施す。この時、滞納している家賃支払いの義務は引き続き発生している。強制退去されてなお家賃の支払いが困難な場合、賃借者は自己破産を申告することで終息するケースが多い。
家賃の滞納をしないためには

家賃を滞納しそうになったら、まずはもう一度賃貸契約の際に結んだ契約書を見てみよう。家賃を滞納した場合の措置について書かれている。
そもそも、毎月きちんと家賃を支払っていれば裁判などを起こされることもない。滞納しないためには以下のようなことに気をつけよう。
家賃を自動引き落としにする
家賃を毎月振り込み、または直接支払い等で払っている場合は、可能であれば家賃の支払い方法を自動引き落としに変更しよう。自動で振り込まれるようにしておけば、支払いをうっかり忘れることもない。
家賃の支払い方法について、変更できるかどうかは管理会社や大家さんに問い合わせて確認するようにしよう。
計画的に貯蓄をする
特に一人暮らしを始める際や、引越しの時にはお金がかかるもの。新生活に貯金を全てつぎ込んでしまうと、転職や不測の事態で収入が減った場合に対応できなくなってしまう。
万が一収入がゼロになっても、2~3ヵ月は家賃を支払える程度の蓄えを残しておくようにしよう。
安い家賃の場所に引越しする
さまざまな理由で、現在暮らしている賃貸物件の家賃を支払うのが厳しくなってきたら、より安い家賃の部屋に早めに引越ししよう。どんどん負担が大きくなる前に、決断する方が賢明だ。
親族や連帯保証人に相談する
お金を借りられるような身近な人がいれば、事情を説明して借りるのも手である。両親や兄弟など頼れそうな人がいれば相談してみよう。
また賃貸物件の契約をするときに、連帯保証人もしくは保証会社を立てているはず。家賃を滞納し続けると大家さんから連帯保証人に家賃の請求が行き、保証人はこれを支払う義務がある。そうなる前に、家賃の支払いが難しくなったら保証人には相談しておくようにしよう。
滞納しないような無理のない家賃の物件を選ぼう

部屋に住んでいる以上、家賃の支払いは義務である。滞納が続くと、法的措置によって最終的には強制的に退去をすることとなる。また、滞納している家賃は引き続き借金として支払い義務を背負うこととなる。
万が一、どうしても支払いができなくなった場合は、可能な限り早く大家さんに連絡をし、手を打つべきである。
文=池田
一人暮らし歴20年、引越し回数4回、田舎暮らしも経験済みのライター。物件選びは縁が大切と考え、希望条件をいくつかクリアしていればあとはフィーリングで決めるようにしている。
※2021年2月加筆=CHINTAI情報局編集部