【反抗期】母親vs娘の戦いを描く映画『今日も嫌がらせ弁当』は感動の傑作!キャラ弁戦争の発端は?

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大人気ブログの映画化が、地上波初放送!

©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会

2020年7月21日(火)に、『今日も嫌がらせ弁当』が地上波で初放送される(放送情報は記事の最後で)。
本作が原作としているのは“kaori(ttkk)の嫌がらせのためだけのお弁当ブログ(https://ameblo.jp/kaerit/)”。
月間350万のアクセス数を記録し、書籍化されたエッセイシリーズは20万部を突破するなど大人気を呼んでいたブログの、実写映画化作品だ。

この記事では映画『今日も嫌がらせ弁当』の魅力について、大きなネタバレのない範囲で解説していこう。

『今日も嫌がらせ弁当』とは?

©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会

映画(原作のブログも)は「シングルマザーの母親が娘への嫌がらせのために“キャラ弁”を作り続ける」という、かなり変わった設定の物語。母親と娘とのやりとりがコメディとしてクスクスと笑えるため、大人から子供まで観る人を選ばない。
映画の風景からは舞台となる八丈島の観光気分も味わえるし、篠原涼子・芳根京子・佐藤隆太といった実力派キャストが、それぞれにハマりにハマりまくったキャラを生き生きと演じているのを見ているだけでも楽しい。

物語のひとつの柱になっているのは、反抗期の“あるある”を寓話(教訓を含む物語)に仕立てていること。
嫌がらせのためにキャラ弁を作り続ける母親と、ウザいと思いつつもそのお弁当を食べ続ける娘の関係が、物語が進むにつれて両者の成長、まさかまさかの感動へとつながっていくのだ。

『今日も嫌がらせ弁当』の魅力1:「子育ては大変だ!」を教えてくれる“親子あるある”

©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会

ある日反抗期を迎えた娘・双葉。
コミュニケーションが難しくなった娘への“嫌がらせ”のために、母親のかおりが毎日作り続けるキャラ弁。
かわいい赤ずきんちゃんのおにぎりを入れたり、誰もが知っている芸能人を再現したり、一文字ずつ文字を書いてメッセージを伝えたりと……もちろん見ているぶんには楽しいのだが、作っている側にとってはものすごくめんどくさいのは間違いない。
何しろ毎日作り続けるので、当然のように“ネタ切れ”にも悩んでしまう。

「毎日めんどくさいことをやり続ける」というのは、世の中の普遍的な子育ての姿を、デフォルメして見せている、ともいえる。凝ったキャラ弁じゃなかったとしても「毎日誰かの食事やお弁当を作る」そのこと自体が大変なのだから。

©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会

毎日のように作ってもらった食事やお弁当が“当たり前”になりすぎていて、それを特に意識していなかったという方もいるだろう。
反抗期ともなれば、それをありがたいと思うどころか、“ウザい”とも感じてしまうこともあるのかもしれない(たとえキャラ弁でなかったとしても)。

『今日は嫌がらせ弁当』で描かれている「毎日キャラ弁(お弁当)を作る」母親と、「それをウザいと思う(いじっぱりな)」娘の姿は、世の中にありふれた関係性をコミカルに表現している。
この作品が大きな共感を呼ぶのは、一風変わった設定でありながら、そんな“親子あるある”を綴った映画でもあるからだろう。

『今日も嫌がらせ弁当』の魅力2:母親が子離れできていない心情も綴られていた?

©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会

そもそも「なぜかおりは手間をかけてキャラ弁を作るという嫌がらせをするのか?」と疑問に思う方もいるだろう。

「あなたがそういう嫌な態度を取るなら、わたしもあなたが嫌がることをします」。

この作品におけるキャラ弁は「まともな会話さえもしなくなった娘」への(仕返しとしての)コミュニケーションの手段であり、そこには「子離れができない母親自身の気持ち」も表れていたのではないだろうか。

物語の序盤、母親のかおりは朝早く起きて(この時は普通の)お弁当を作るものの、娘の双葉は何度目覚ましが鳴っても、かおりから何度起きろと言われても、ベッドでぐずったまま。
やっと起きて、お弁当を渡されても双葉は「ありがとう」の一言も言わない。あまつさえ、双葉は目の前にかおりがいるのにも関わらず、スマホのLINE経由で「雨が降りそうだから車で送ってほしい」と伝えてくる。
決定的だったのはその放課後。あるやりとりの中で双葉に「ウザっ」と言われたことで、かおりは堪忍袋の尾が切れ、文字通りに鬼と化すのだった……。

双葉が「キャラものはもう卒業かな〜」と友達に言っていたことから、かおりはキャラ弁を毎日作り続けるという“逆襲”を思いつく。

前述した双葉の朝からの手のかかりっぷり、自分勝手ぶりは、小さな子どもよりもある意味でひどい。そもそも、高校1年生という年齢は反抗期にはやや遅く、キャラ弁には「あなたは(年齢の割に)まだまだ子どもなのよ!」というかおりの気持ちも含まれていたのではないだろうか。

©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会

また、かおりは幼い双葉に言われた「大きくなったらお母さんと結婚する!」「お母さんと一緒にレストランやる! だってお母さんとずっと一緒にいたいんだもん!」といったことばを思い出し、「私も本気にしていたわけじゃないんだけどさ……」と口にすることもあった。

普通であればもっと小さな子どものために作るキャラ弁。それを高校生にもなった双葉に作り続けたのは、“キャラ弁が似合う頃”の双葉を懐かしむと共に「かわいくて素直な双葉に戻ってほしい」「反抗期の双葉も小さな子どもみたいで愛おしい」「双葉とずっと一緒にいられるように、二人でレストランができたらいいのに」といった……複雑なかおりの心情があったからではないか?とも思えるのだ。

働いている居酒屋で、かおりが常連客から「あんたもさあ、そろそろ子離れして、自分の幸せ探したら?」と問われるシーンがある。かおりは本心から「双葉に自立をしてほしい」と願っているのだろうが、一方で「双葉と離れたくない」という相反する想いもあるのだろう。
「大人になってほしい」、だけど「子どものままでもいてほしい」という、アンビバレントな心情もまた“子育てあるある”だと思えるのだ。

『今日も嫌がらせ弁当』の魅力3:「人生に無駄なことはない」というメッセージ

©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会

双葉は反抗期を迎えたが、もちろんそのままではいられない。やがては高校を卒業し、人生の選択をすることも迫られている。彼女がモノローグで「(進路を)考え中というのは、正しくもあり、正しくもなく、まるで考えがまとまらないのだ。何をしたいのか、島から出たいかどうかも……」と語っている通り、はっきりと“モラトリアム”の中にいる。

“モラトリアム”とは、社会に出て一人前の大人になるまでの「猶予期間」。青春時代に通ったことのある人も多いだろう。双葉が反抗期になったのは、高校生になり環境が変わったことに加え、モラトリアム真っ只中にいることを自覚しつつも、いつまでも考えをまとめられない自分を嫌悪しているのもあったのではないか。

物語の中で双葉は「思い通りにはならない」壁にもぶつかる。せっかく少し前に進めたこと、勇気を振り絞ってやったことが、無に帰してしまうのだ。
かおりはそんな双葉を見て、「人生に無駄なことはない」と言うメッセージをキャラ弁に文字で綴ることになるのだが、失意の底にいる双葉はそのことばを素直に受け止められないでいた。

©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会

モラトリアムから少しでも前に進むために、進むべき将来の夢や、何かを成し遂げるための行動を起こしたとしても、現実でそれが簡単に達成できるということは少ない。
そんな時にキレイゴトを並べられても、心に響かないどころか、さらに自己嫌悪が募ってしまうこともある。

しかし、挫折も大人になるためには必要なプロセスであり、それこそ「人生に無駄なことはない」のだと、物語の中で優しく肯定してくれる。
双葉の反抗期も、子どもが精神的に自立するための第一歩を踏み出した証である、というポジティブなメッセージが伝わるのも素敵だ。

物語の終盤、双葉が話すある「理想論」をかおりが否定するシーンがある。
双葉のことばは親にとっては間違いなく嬉しい「理想論」だったはずなのだが、かおりは双葉の“甘え”を許さなかった。
子離れできない部分を持っていたかおりが「双葉に大人になってほしい」という気持ちを優先した、「親として伝えたいことば」を告げているシーンには感動する。

この映画では「反抗期とモラトリアムに突入した娘」と「大人になってほしいけど子離れもしたくない母」、両者の成長を描いているのだ。
「嫌がらせのためのキャラ弁を作り続ける」という一風変わった物語が、まさかここまで普遍的なテーマへと転換していくとは!

『今日も嫌がらせ弁当』の魅力4:物語におけるもうひとつの家族

©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会

この映画でもうひとつ秀逸なのは、シングルファーザーの視点も取り入れていること。
佐藤隆太演じる彼は、幼稚園児の息子のために毎日お弁当を作るのだが、おかずのレパートリーがミートボールかシューマイしかないことを気に病んでいた。
ある日かおりのブログを見つけた彼は、バラエティ豊かなキャラ弁を作ろうと奮闘していく。

ここで気づくのが(当たり前のことだが)、小さな子どもにとってはキャラ弁は嬉しいものだということ。高校生の女の子である双葉にとってはどんなにウザいものであっても、だ。
思春期における反抗期は第二反抗期、幼児園児の反抗期は第一反抗期または“イヤイヤ期”とも呼ぶ。キャラ弁を嫌がる高校生と、キャラ弁を喜べる年齢の幼稚園児、それぞれの姿を通じて、2種類の反抗期を描いているという構造にもなっている。

この対比構造によって、キャラ弁を“嫌がられるだけのものではない”と再定義すること、かおりが毎日完成させていたキャラ弁は素人には簡単には作れないこと、父親がキャラ弁作りに挑むことで男性も感情移入がしやすくなることなど、物語に何重もの深みを与えているのだ。

グルメ映画とあなどるなかれ。たくさんの学びが得られる物語

©2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会

映画『今日も嫌がらせ弁当』は現在・未来・過去、子育てにたずさわる人々にとって、たくさんの学びが得られる物語だ。
キャラ弁を毎日作ったりする必要はもちろんないが、「子どもへの愛情をどのように伝れば良いのか」「子どものことをどう理解すればよいのか」といった現実で役立つヒント、そして「誰かのために毎日がんばる人のすごさ」も、劇中の個々のエピソードから感じられることだろう。

その現実に役立つヒントのひとつとして、かおりが双葉の高校卒業までの3年間、毎日キャラ弁を作り続けると決意したことそのものがあげられる。
嫌がらせという目的意識は褒められたものではないが、「子どものために一度決めたことをやり抜こうとする」親の姿は称賛されるべきものだろう。
たとえウザがられたとしても、そこには間違いなく子どもへの愛情もあったのだから。

「愛の反対は憎しみではなく無関心」はマザー・テレサのことばだが、これは劇中の親子の関係にも当てはまる。
「嫌がらせのために毎日めんどくさいキャラ弁を作り続ける」「なんだかんだでそのキャラ弁を捨てることなく毎日食べる」という(愛憎入り交じるというか)お互いに「負けたくない」という感情を持っていることもまた、愛情表現なのだと思える。
「お互いに無関心でないのであれば、それは十分に良い関係なのでは?」というポジティブな捉え方もできるだろう。

映画を観た後は、家族や大切な人との関係について、相手の気持ちを考えるきっかけになるかもしれない。
ぜひ大切な人と楽しんでいただきたい。

『今日も嫌がらせ弁当』の放送情報

映画『今日も嫌がらせ弁当』は、2020年7月21日(火)夜9時~カンテレ・フジテレビ系にて地上波初放送! ※一部地域を除く
映画公式サイトはこちら

文=ヒナタカ
インディーズ映画や4DX上映やマンガの実写映画化作品などを応援している雑食系映画ライター。過去には“シネマズPLUS”で、現在は“ねとらぼ”や“ハーバー・ビジネス・オンライン”などで映画記事を執筆。“カゲヒナタの映画レビューブログ”も運営中。『君の名は。』や『ハウルの動く城』などの解説記事が検索上位にあることが数少ない自慢。
Twitter:@HinatakaJeF

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