散策家・志歌寿ケイトさんに聞く!地元商店街の魅力と歩き方のコツ
散策好きは要チェック!地元の商店街にもとんでもない魅力が……!

地元の商店街の魅力とは?
普段は何の変哲もない近所の商店街と思っていても、散策家である志歌寿ケイトさんのフィルターを通すと違ってみえるようだ。
東京23区ほぼすべての商店街を見てきた彼にとって、商店街とはどういったところなのだろうか。知られざる商店街の魅力と、より深く楽しむための歩き方のコツを志歌寿さんに教わった。
「私はかれこれ15年ほど、東京23区のほぼすべての商店街をはじめ日本各地の商店街を歩いたり、ネットで調べたりしています。商店街は身近に存在するものであるにもかかわらず出回る情報や研究は少なく、私のように商店街のないところで育った人間にとってはわかるようでわからない独特の存在感があるんです。各地を歩くときにはなるべく商店街の様子を見て回っています。そんなふうに歩き回って感じたのは、商店街といっても地域によって雰囲気がかなり違うということです」(志歌寿ケイトさん)
このページの目次
散策家・志歌寿ケイトさんに聞いた商店街の楽しみ方
商店街の楽しみ方1:建物の造りとその背景にある歴史に注目してみる

東京のとある街の商店の風景。「看板建築」の存在感が大きい
「東京では、和風家屋の間口側のみを洋風の見た目にする『看板建築』と称される外観の流れを汲む店舗兼住宅がいまだに多く存在します。大きさは東京によくある狭小家屋と同じくらいです。これらの多くは昭和期に建てられたもので、東京の生活向けの商店街もまた昭和初期や高度成長期など人口が急激に増加したタイミングで多く誕生したといえます」(志歌寿ケイトさん)

宿場町の歴史を感じる商店街
「一方で地方の古くからある小都市に行くと、江戸や明治の頃からの歴史の深い商業地に昔ながらのゆったりとした間口の商家・町家風の商店を見かけますし、街道沿いには間口が狭く奥行きが長い店舗が並んでいて、これも宿場町の土地区画の歴史が刻まれています」(志歌寿ケイトさん)

長屋風の商店街

凝縮した商店街のような施設が”小売市場”
「また名古屋や大阪では、一棟の建物を壁で仕切った長屋のような店舗や、売り場を小さなスペースで区切った(現在で言うならデパ地下のような)小売市場と呼ばれる商業施設も健在です。もともと長屋や壁を接したような建物が多い地域ならではと言えるでしょう」(志歌寿ケイトさん)
地域によって、お店の造りに大きな違いがあるようだ。「商店街」とひとくくりにせず、ひとつひとつのお店に注目して歩くとより楽しめるだろう。
商店街の楽しみ方2:アーケードに着目してみよう

アーケード付きの商店街
次はアーケード。ここにも地域ごとの差が出ているという。
「商店街といえば、雨や雪の時に便利なアーケード(屋根)が設置されているというイメージがあるかもしれません。関西ではアーケードつきの商店街がいまだ多く、一方で関東は少なめで、屋根の撤去も進んでいるように見受けられます。アーケードの維持や更新にはお金がかかりますし、晴天でも全体が暗くなってしまうという欠点もあります。こうした屋根付きの商店街を見ておくなら今のうちかもしれません」(志歌寿ケイトさん)

これは東京にかつてあった小売市場
「日本では、人口の増加に比べて買い物をする場所が少なかった時代に次々と商店街が生まれました。つまり商機だったのです。人口が伸び悩み大小さまざまな店舗がしのぎを削る昨今では、商店街が寂れていくのもしかたのないことです。しかし、寂れてしまった商店街を歩く楽しみがないのかというと、そうではありません。地域の生活史を語る歴史館のような存在として楽しむこともできるのです」(志歌寿ケイトさん)
商店街の楽しみ方3:建物の特徴から、昔何のお店だったのか推測してみる
「営業していなくても建物が残っていれば、その造りから業種をある程度推測できます。たとえば店舗前面に張り出したテント屋根を見てみると、青果店は緑、鮮魚店なら青、精肉店は暖色系の赤・オレンジ・黄色が主体であることが多いようです」(志歌寿ケイトさん)
テントの色で業種がある程度推測できるとは驚きだ。「自分の地元の商店街はもう廃れてるから……」という方も、ぜひ目を留めてみて欲しい。

何のお店なのか当てっこしながら歩くのも楽しそう
テントの色以外にこんな見分け方も。
「使われていた什器や小看板が店先に出ていることもあります。ひざの高さくらいの低い台があれば青果店。発泡スチロール箱がプランター替わりにたくさん使われていたら鮮魚店。書店跡では児童書売り場でよく見かけるような金属棚。電池の自販機があるのは電器店。プラッシーの看板や米の自販機なら精米店。飲食店跡ではサンプルを置くガラス棚が人形や手作り品のディスプレーに流用されていたりします」(志歌寿ケイトさん)

廃業した店舗に思いを馳せながら歩く……というのもまた醍醐味だ
「店舗として使われていた建物がどの範囲にどのくらいの数あるのか気にしながら歩いていけば、その商店街がかつてどんな規模を誇っていたのかがわかります。こうして商店街の成り立ちや全盛期の様子を想像しながら散策してみると、より深く地域のことを味わうことができて面白いですよ」(志歌寿ケイトさん)
商店街には魅力がたくさん!歴史を感じながら歩いてみよう
テントの色や看板、アーケードの形などなど、商店街にはそれぞれの個性が光るポイントがたくさんあることがわかった。レトロな看板を写真に収めながら歩くのも楽しいだろう。
晴れた秋の日には、商店街巡りに出掛けてみてはいかが?
教えてくれたのは?
志歌寿 ケイト(しかすけいと)
散策家、地図制作者。東京23区の商店街をすべて踏破。独自の散策会「東京散歩革命」を主催。散策ガイド・ルート作成のほか架空地図の制作、メディア出演、講師、GIS業務などの分野で活動中。
オフィシャルサイト:http://shikasukeito.blogspot.com/
Twitter:https://twitter.com/shikasukeito