家賃滞納中だと引越しできない?次の審査への影響と退去の注意点を弁護士が解説

「今月はどうしても家賃が工面できない」「忙しくて家賃の振り込みをすっかり忘れていた」——。さまざまな事情から家賃を滞納してしまうケースは少なくない。
そんな中、「仕事の都合で引越しが必要になった」「家賃の安い部屋へ引越して家計を立て直したい」と思っても、「滞納したままだと引越し(退去)できないのでは?」と不安を抱える人もいるだろう。
結論から言うと、家賃を滞納していても、現在の部屋を退去して引越すこと自体は可能だ。しかし、滞納の事実が次の部屋探しの「入居審査」に悪影響を及ぼし、引越し先が見つかりにくくなるリスクは存在する。
本記事では弁護士監修のもと、滞納中に引越す際の注意点や未払い家賃と敷金の関係、そして滞納中にお部屋を探すためのコツまでを詳しく解説する。
※記事の内容は、2026年8月の法令・情報に基づいています
このページの目次
家賃滞納中でも「引越し(退去)」は可能
家賃を払えていない負い目から、「滞納を全額精算するまでは退去できないのでは?」と考える人もいるかもしれない。しかし結論から言うと、滞納を理由に退去を拒否されたり、新居の契約を法的に制限されることはない。
また大家さん側にとっても、滞納している入居者が自ら退去を申し出て、新しい入居者を迎え入れられることは悪い話ではない。
退去しても、滞納した家賃の支払い義務は残る
退去後も、滞納している家賃や遅延損害金の支払い義務は残る。
理想は、指定された日時までに未払い分を一括で支払うことだが、経済的に難しい場合は「いつまでに全額を支払えるのか」「毎月いくらなら分割で支払えるのか」を正直に伝え、誠意をもって相談してみよう。
滞納している家賃を「敷金」で相殺できる?
入居時に預けてある「敷金」は、退去時の原状回復費用(修繕費など)だけでなく、滞納している家賃の支払いに充てられる。そう聞くと「敷金で未払い分を相殺できるのでは?」と期待してしまうかもしれないが、ここで知っておくべきルールがある。
滞納金と敷金の相殺は、大家さんの意思で行うことは可能です。一方、入居者側から「弁済に充ててください」と請求することはできないと法律(民法622条の2第2項)で明確に定められています。敷金は、退去時の修繕費や未払いリスクに備えて大家さんが預かっている「担保(もしもの備え)」です。「家賃の前払い金」ではないため、入居者の都合で「敷金を家賃の代わりに使ってほしい」と主張することはできません。
最終的に大家さんの判断で敷金が充当されたとしても、滞納金や修繕費が不足している場合は、退去時に追加で請求されることになる。滞納している家賃は放置せず、必ず話し合って合意した期日までに支払おう。
家賃滞納が「次の入居審査」に与える影響
引越し(退去)自体はできても、最大のハードルとなるのが「次の部屋の入居審査」だ。家賃を滞納したという事実は、現在利用している保証会社の種類や家賃の支払い方法によって、次の審査に大きな影響を与える。
自分の状況が以下のどのパターンに当てはまるか確認しておこう。
①信用情報機関に事故情報が掲載されるケース
以下に当てはまる場合、いわゆる「ブラックリストに載った」状態となり、次の部屋を借りる際の入居審査に落ちたり、日常生活に支障が出たりする可能性がある。
- 「信販系」の家賃保証会社を利用している
- 家賃をクレジットカードで支払っていて、支払いが遅れた
信販会社やクレジットカード会社を母体とする保証会社(信販系の保証会社)は、「信用情報機関」と提携している。そのため、家賃を滞納して保証会社に立て替え払い(代位弁済)をされたり、カードでの引き落としができなかったりすると、信用情報に「事故情報」として記録されてしまう可能性がある。
信販系の保証会社が加盟している信用情報機関の記録は、5~10年程度残り、その間は信販系の保証会社の審査に通らなくなるケースもある。また、クレジットカードの新規発行や更新、スマートフォンの端末分割払い、各種ローン審査などにも通らなくなる可能性もある。
②信用情報に影響しないケース
以下の場合は、信用情報機関に滞納の履歴が記録・共有されることはない。
- 大家さんや管理会社に、直接家賃を振り込んでいる
- 信用情報機関に加盟していない保証会社を利用している
ただし、情報が共有されないからといって安心してはいけない。滞納を起こした管理会社や大家さん、保証会社の「社内データ」には、滞納をした顧客として記録が残る。そのため、過去にトラブルを起こした大家さんや管理会社が関わる物件、および当時と同じ保証会社の審査を受ける物件を再び借りることは非常に難しいと考えておこう。
家賃滞納中に次の引越し先(賃貸物件)を探す方法
信用情報に傷がついてしまったり、経済的に困窮していたりする状況で次の部屋(賃貸物件)を借りるには、探し方に工夫が必要だ。以下のポイントを意識して部屋探しを進めよう。
1.「独立系」の保証会社を利用できる物件を探す
家賃保証会社には、前述した「信販系」のほかに、他社と滞納履歴を共有せず、自社独自の基準のみで審査を行う「独立系」の保証会社が存在する。
独立系の保証会社であれば、過去にクレジットカードや他社で家賃滞納を起こしていても、現在の収入が安定していれば審査に通る可能性が高い。不動産会社の担当者に事情を正直に話し、「独立系の保証会社が利用できる物件を中心に探したい」と相談してみよう。
2.「連帯保証人のみ」で契約できる物件を探す
保証会社を利用せず「連帯保証人を立てるだけで契約できる物件」を探すのも有効な手段だ。この場合、大家さんや管理会社による審査のみ行われるため、信用情報は参照されない。親族などに連帯保証人を頼める場合は、不動産会社に条件を伝え「保証会社不要」の物件を探してもらおう。
3.確実に支払える安い家賃の物件を選ぶ
何より重要なのは、引越し先で「家賃滞納を繰り返さないこと」だ。
滞納中や滞納歴がある状態での審査は、通常よりも厳しく見られる。少しでも審査を通りやすくし、引越し後の家計を立て直すためにも、思い切って家賃水準を下げよう。
家賃の目安は「手取り収入の3分の1以下」が一般的だが、できれば「手取りの25%以下」など、確実に支払える余裕を持った物件を選ぶことが大切だ。
お金がなくて引越しできない時は「公的支援」を活用しよう
審査をクリアできそうな物件が見つかっても、「そもそも引越しの初期費用を払うお金がない」「今後の収入の目処が立たない」と行き詰まってしまう場合は、迷わず国や自治体の公的支援を頼ろう。お住まいの地域の市役所や社会福祉協議会(生活困窮者自立支援の窓口など)で相談できる。
住居確保給付金
住居確保給付金は、離職などで住居を失うおそれがある人に対し、自治体が原則3ヵ月(最大9ヵ月)家賃相当額を大家さんに直接支払ってくれる制度。また、収入に見合った家賃の安い部屋へ引越して家計を立て直す場合、敷金や礼金、引越し費用などを補助してもらえる「転居費用の補助」が受けられるケースもある。
参考サイト:厚生労働省生活支援特設ウェブサイト | 住居確保給付金:制度概要
参考資料:住居確保給付金|厚生労働省
生活福祉資金貸付制度(緊急小口資金など)
生活福祉資金貸付制度には、緊急小口資金などがある。一時的に生活が困難になった際、無利子または低金利でお金を借りられる国の制度だ。
参考サイト:生活福祉資金貸付制度 |厚生労働省
自立相談支援機関の問い合わせ先は、以下を参考にしてほしい。
参考サイト:自立相談支援機関 相談窓口一覧 | 困窮者支援情報共有サイト〜みんなつながるネットワーク〜
放置は厳禁!3ヵ月以上の滞納は強制退去のリスクも
家賃の滞納が3ヵ月以上に及ぶと、強制退去に向けた法的手続きを起こされる可能性が高まる。
滞納で一番やってはいけないのが「連絡を無視すること」です。まずは1日でも早く家賃の支払い先に連絡し、状況を相談してください。
家賃の支払いが困難な場合の具体的な対処法については以下の記事で詳しく解説している。ぜひ参考にしてほしい。
まとめ
家賃を滞納していても、退去して新しい部屋へ引越すことは可能だ。ただし、未払い家賃の支払い義務は残り、「敷金での相殺」を入居者側から要求することはできない。誠意を持って分割払いなどの相談をしよう。
また、利用している保証会社や支払い方法によっては信用情報に傷がつき、次のお部屋探しが難航するケースもある。引越し先を探す際は、不動産会社に事情を相談し「独立系の保証会社」や「連帯保証人のみ」で借りられる物件を絞り込んで探すのが近道だ。
家計を圧迫しない無理のない家賃の物件を見つけ、新たなスタートを切ろう。







