賃貸物件における「東京ルール」とは?仕組みや具体的な内容まで徹底解説!

最終更新日:

「東京ルール」とは?

東京ルール1

「東京ルール」とは、賃貸物件の退去トラブルを避けるため、東京都が2004年に制定したガイドライン(賃貸住宅紛争防止条例)のことだ。
※なお、令和4年5月には条例および施行規則が改正され、説明書面の交付について、電子メールなど電磁的方法による送付も可能となっている

今回は、東京ルールの仕組み、アパートやマンションから退去する際に起こりがちなトラブルの回避方法などを解説していく。後ほど説明するが、東京都以外でもこのルールを用いて説明する不動産会社が増えているため、他県の賃貸物件に暮らす方にもぜひ参考にしてほしい。

東京ルールの基本的な仕組み

東京ルールでは、宅地建物取引業者(=不動産会社)は、賃貸物件に入居しようとする人に対し、契約に先立って下記の内容を説明しなければならないと定められている。

  • 原状回復の基本的な考え方
  • 入居中の修繕の基本的な考え方や、故障した際の連絡先
  • 特約の有無や内容など

「東京ルール」はなぜ作られたの?

東京ルールは、借主が現在住んでいる賃貸アパートやマンションでの入居中から退去時までのトラブルを防止することを目的として、東京都独自で定められた条例である。

制定された経緯として、賃貸物件の退去費用をめぐるトラブルが背景にある。
賃貸物件を退去する際には原状回復費用(修繕や設備交換などの費用)が発生するが、貸主(いわゆる大家さん)と入居者のどちらがどこまで費用を負担するのか、しばしば両者間でのトラブルに発展することがある。

国民生活センターによると、賃貸物件の退去に関する入居者からのトラブル相談件数は全国で13,247件となっている(2023年時点)。中には、過剰な費用請求や、敷金を返金されないといった相談も寄せられている。

こうした退去時のトラブルを防止するため、賃貸借契約に対して深い知識がない入居者側を保護するため、不動産会社側に説明を義務付けられたのが東京ルールだ。

「東京ルール」条例の適用対象

東京ルールの対象となるのは、以下条件を満たす賃貸物件だ。

  • 東京都内にある居住用の賃貸物件
  • 2004年10月1日以降の新規賃貸借契約(更新契約は対象外)
  • 宅地建物取引業者が媒介・代理をおこなう賃貸物件

東京ルールはその名のとおり、東京都内にある賃貸物件に限定して定められている。しかし、退去トラブルに大きな効果があるため、東京都以外でもこのルールを用いて説明する不動産会社も増えている。

また、東京ルールは居住用の賃貸物件にのみ適用される条例で、事業・店舗用の賃貸物件には適用されない。更に居住用物件であっても、2004年以前に結んだ契約を更新する場合には適用されないため注意が必要だ。

東京ルールの具体的な内容

東京ルール2

ここからは、東京ルールの具体的な内容について解説していく。難しいものが多いので、1つずつチェックしてみてほしい。

【東京ルール】退去時の原状回復費用負担について

賃貸物件を退去する場合、次の入居者のために原状回復を行う必要がある。

東京ルールでは、原状回復費用を貸主と入居者のどちらが負担するかは、傷や汚れの原因によって決まってくる。

原状回復費用が貸主(大家さん)負担になる場合

経年劣化や通常の使用による損耗は貸主(大家さん)の負担になる。経年劣化とは、時間に比例して起こる劣化のことだ。

以下のようなものは、経年劣化・通常損耗に該当する。入居者が通常の暮らしを送るなかで自然に発生してしまう傷・汚れなので、費用は基本的に貸主の負担となる。

<原状回復費用が貸主(大家さん)負担になる例>
  • 家具や家電の配置による床のへこみ
  • 太陽光による壁や床の日焼け
  • ポスターなどによる壁紙の変色
  • 画びょうの穴

原状回復費用が入居者負担になる場合

故意や過失による傷・汚れ・故障など、通常の使用だけでは発生しない損耗については、入居者が気を付けていれば通常起こらないものと判断される。このため、修繕費用は入居者が負担することになる。

<原状回復費用が入居者負担になる例>
  • 家具や家電を引きずってできた傷
  • 液体をこぼしてできたシミ
  • 子どもの落書き
  • タバコやペットによる傷・汚れ
  • 掃除の不徹底による汚れ
  • 釘やネジの穴

退去時に支払う費用を抑えるためにも、日々の掃除をきちんと行い、部屋の状態をきれいに保つようにする必要があるといえる。

個別の物件ごとに、独自の「特約」がある場合も

退去費用の負担責任が借主(入居者)にあるか、貸主(大家さん)にあるかは、基本的には上記とおり区別される。ただし東京ルールでは、双方の合意があれば特約を設定することが可能だ。

特約の例として以下のようなものだ。

  • ルームクリーニングの費用は借主の負担とする
  • 壁紙の張替費用は借主の負担とする
  • ペットを飼育した際の消臭費用は借主の負担とする

経年劣化以外の傷や汚れが見られない場合、原則、ルームクリーニングや壁紙の張り替え費用は貸主の負担である。しかし、「特約」として上記のような記載がある場合、原則として入居者が負担しなければならない。

特約が効果を発揮するためには、契約時に貸主と入居者の双方がその内容を認識し、合意している必要がある。

契約時に不動産会社からきちんと説明があった場合、支払いを拒むことは難しい。契約時の説明はしっかり聞き、不明点があればその場で質問して解消しておくようにしよう。

【東京ルール】入居中の設備修繕費について

続いて、入居中に部屋の設備が故障してしまった場合、修理費用の負担は入居者・大家さんのどちらが行うのかについて解説する。基本的な考え方は原状回復費用と同じだ。

設備修繕費が貸主(大家さん)負担になる場合

東京ルールによると、基本的に備え付けの設備が故障した場合は貸主の負担と定められている。

<設備修繕費が貸主(大家さん)負担になる例>
  • 備え付けのエアコンの自然故障
  • 給湯器の自然故障
  • 水まわりの不具合

設備修繕費が入居者負担になる場合

原状回復費用と同様、部屋の設備を故意や過失により故障させてしまった場合、修繕費負担は入居者だ。なお、前の入居者が残したエアコンや照明器具(=残置物)の設備故障は、原則として貸主に修理の義務がないため入居者が負担することになる。

<設備修繕費が入居者負担になる例>
  • 空焚きによる給湯器の故障
  • 残置された照明器具の故障

入居者の使い方などに問題があって発生した故障や不具合の修繕費用は入居者負担、それ以外は原則貸主負担であることを頭に入れておこう。

退去時トラブルを回避するためのポイントも押さえよう

ここまで東京ルールの内容を詳しく解説してきた。ここからは、退去費用にまつわるトラブルを防止するためのポイントを「入居時」「入居中」「退去時」の3つのタイミングごとに紹介する。

【入居時】傷・汚れの有無や設備の状態を確認する

これまで説明したように、東京ルールでは通常の使用では起こりえない傷・汚れなどの修繕費用は入居者の負担となる。ただし、自分が入居する前からあった傷に関しては、もちろん修繕費用を負担する必要はない。

このため、入居時には、床や壁などに傷がないかどうか、設備が問題なく稼働するかどうかをくまなくチェックしておこう。

入居後すぐ、できれば家具などを運び込む前にチェックを行うのが望ましい。もし傷や汚れを見つけたら、写真などに残し、速やかに貸主や管理会社に報告しよう。住み始めてから時間が経ってしまうと、自分が入居する前からあったものだと証明することが難しくなるので注意。

【入居中】設備が故障したらすぐに大家さんへ報告

入居中に備え付けの設備が故障した場合は、発見したらすぐに貸主や管理会社に連絡しよう。故障自体は経年劣化で起こったものであっても、故障したまま放置して悪化させた場合、修理費用が入居者の負担となることがある。トラブル防止のためにも、まずは貸主に連絡しその後の対応を確認しよう。

また、入居者が勝手に修理したり、修理業者を手配してはならない。貸主が修理業者を指定している場合も多く、承諾なしで修理業者を手配してしまうと、やはり費用が自己負担となってしまう場合がある。

【退去時】必ず立ち合いのもと引き渡す

退去時には管理会社による確認作業が行われるが、その際はできる限り入居者本人が立ち会うようにしよう。部屋の傷や汚れがどういった経緯で発生したのか、貸主・借主双方で確認する必要があるからだ。

先述のとおり、特約でルームクリーニング費用などを入居者が負担する旨が規定されていることも多い。契約内容をあらかじめ確認しておき、不明点があれば前もって管理会社に聞いておくとよいだろう。

東京ルールを理解して快適な賃貸生活を送ろう!

賃貸物件の退去時に起こるトラブルを避けるためには、賃貸契約や原状回復にまつわる基本的な知識を身につけておく必要がある。

東京ルールは、貸主(大家さん)に対して立場が弱くなりがちな借主(入居者)が不利益を被らないために制定されたものであり、退去時の原状回復と入居中の設備修繕が主な内容となる。原状回復費用について細かな取り決めがあるものの、基本的には「わざと・うっかり」付けてしまった傷や汚れ、設備の故障が入居者の負担となる と覚えておこう。

また、東京ルールでは特約の設定を認めているため、個別の物件ごとに独自の取り決めがなされる場合もある。契約時にわからないことがあれば確認し、しっかり内容を理解しておくようにしよう。 

参考:東京都住宅政策本部

東京の人気駅から賃貸物件を探す
東京駅 三軒茶屋駅 代々木上原駅 恵比寿駅 中目黒駅 大井町駅 高円寺駅 荻窪駅 武蔵小山駅 吉祥寺駅

東京の人気沿線から賃貸物件を探す
西武新宿線 中央線 丸ノ内線 東西線 副都心線 有楽町線 都営大江戸線 東武東上線 東急池上線 半蔵門線

CHINTAI編集部
CHINTAI編集部

1992年創業、お部屋探しや生活の情報を発信してきた株式会社CHINTAIが運営するWebメディア。引越しに関する情報はもちろん、家事や家計、季節の楽しみなど日々を豊かにする知識を調査・ご紹介。
不動産店舗での業務経験者、宅建試験合格者などお部屋探し分野のプロも活躍する編集部が、新生活に役立つ情報をお届けします。

リンクをコピー
関連記事関連記事