賃貸物件の「構造:その他」とは?ブロック造などの特徴を建築・不動産のプロが解説

賃貸物件の情報サイトで物件を探していると、建築構造の欄に「木造」「鉄骨造」「RC造」「SRC造」と並ぶなかで、ときどき「その他」という表示を目にする。これは前述した主要な4構造「以外」の構造であることを示しており、代表的なのは「ブロック造(補強コンクリートブロック造)」や「プレキャストコンクリート造(PC造)」、異なる構造を組み合わせた「混構造」の物件だ。
建築構造「その他」の物件は数こそ少ないものの、特徴を知っておくと、住まいの選択肢として検討できるだろう。この記事では、建築構造「その他」の物件の特徴・ポイントを建築・不動産のプロが解説する。
この記事でわかること
賃貸物件の「構造:その他」とは?
ブロック造の物件の特徴と注意点
プレキャストコンクリート造の物件の特徴と注意点
このページの目次
「構造:その他」は、主要な4構造以外の物件
不動産広告で「構造:その他」と表記されていると、「情報を濁しているのでは?」と不安に感じる人もいるかもしれない。実際には、木造・鉄骨造・RC造・SRC造といった建築構造に分類できない物件をまとめて「その他」としているケースが多い。
賃貸物件の大半は前述の4種の建築構造で建てられており、「その他」に該当する物件はごく一部に限られる。そのため広告等で物件を見かける機会は少ないが、代表例としてはコンクリートブロックを積み上げる「ブロック造(補強コンクリートブロック造・CB造)」や、工場で製造したコンクリート部材を現場で組み立てる「プレキャストコンクリート造(PC造)」、異なる構造を組み合わせた「混構造」がある。
“その他”と書かれると少し不安に思うかもしれませんが、実際には、現在多く採用されている主要な4つの建築構造以外を便宜的にまとめた表現です。そのため数は少ないですが、特徴を知っておけば安心して検討できるのではないでしょうか。
「構造:その他」には、どのような種類があるか
「その他」に分類される建築構造としては以下の3つが代表的だ。ほかにも「アルミ造(AL造)」や「合成樹脂造」なども存在するが、現行の賃貸物件の建築構造としてはほぼない。
1.ブロック造(補強コンクリートブロック造、CB造)

ブロック造(補強コンクリートブロック造、CB造)は、コンクリートブロックを積み上げて壁をつくる建築構造。コンクリートブロックに鉄筋を差し込んで強化した「補強コンクリートブロック」で建てられることが多い。
戦後の住宅不足解消のため、国として普及を進めていた時期があり、北海道や地方にある平屋の公営住宅などで多く見られたが、現在では新築の賃貸住宅で採用されることはほとんどない。
コンクリートブロックは水を吸いやすく、寒冷地では内部の水分の凍結と融解の繰り返しによるひび割れなどの凍害が生じることがある。そのため、築年数が古い物件ではブロックが劣化し、建物の耐久性が低下している可能性がある。
外観にブロックの目地が見えるなど独特の雰囲気を好む人もいるが、現存する物件は築年数が古いケースが多く、賃貸物件の数は少ない。
2.プレキャストコンクリート造(PC造)

プレキャストコンクリート造(PC造)とは、工場で製造した鉄筋コンクリート部材を現場で組み立てる工法。そのため、構造体の品質を一定に保ちやすく、RC造と同様に耐震性や耐火性に優れている。専用の製造工場を持った特定のハウスメーカーや特定の施工会社が手掛けるケースが多く、RC造に近い性能を持つが、物件数は限られている。現場でコンクリートを流し込むRC造に比べると建築のスピードが速いのも特徴。
3.混構造
混構造とは、異なる構造を組み合わせた構造をいう。例えば、1階を鉄骨で組んで駐車場にして2~3階を軽い木造で造ったり、低層部はRC造・上層部はS造にしたりと、さまざまなタイプがある。ただし、設計や施工が複雑になる分、建築コストが高いため家賃も高くなる可能性がある。
CLT(直交集成板)を使った木造物件も

近年では、木材を積層して強度を高めた「CLT(直交集成板)」を使った物件も登場している。
木造は建築時に排出する二酸化炭素の量がほかの構造に比べて圧倒的に少なく、木が炭素を蓄積することから、カーボンニュートラルや脱炭素化社会に貢献できる。脱炭素社会の目標達成に向けて、木造住宅も増えている。
建築構造や工法は社会的なニーズを受けて進化を続けています。今後も、さまざまな新しい材料や工法が開発され、新技術を組み合わせたハイブリッドな建築構造の建物も増えてくると考えられます。
変わった構造だからこそ、類のない建築や個性的な建物に巡り合えるかもしれません。そうした点も賃貸物件で暮らす魅力の一つではないでしょうか。
「構造:その他」はレアケース、特徴を理解して検討を
賃貸物件の大半は木造・鉄骨造・RC造・SRC造で占められており、「その他」に分類される建築構造はごくわずかだ。代表的なのはブロック造やPC造、混構造で、それぞれに特徴や注意点がある。
ブロック造は築古物件が多く、耐久性の面で課題があるため選ぶ際は劣化状況を確認したい。一方でPC造はRC造に近い性能を持ち、施工の安定性や耐震性にも優れている。
また、不動産広告で「その他」と表示されている場合、具体的な建築構造を確認することが大切だ。建築構造の種類だけでなく、わからないことや不安な点は不動産会社に直接問い合わせよう。
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監修、取材協力:藤浦 誠一 (株式会社エイブル)
文:佐々木正孝(キッズファクトリー)