【子育てと賃貸】都会と田舎のイイとこ取り、鎌倉でのびのび子育てをしている夫婦を取材してみた
世界中を飛び回って得た夫婦の特別な価値観を思い切って形にしてみたら、それは「鎌倉」への住み替えだった
自然の中で子育てしたい! でも街の賑わいも大切
約1年前、鎌倉の戸建てへと引越してきた木下さんご一家。築年数は少々経過しているが、内外装ともリフォーム済み、2階建てで庭もある、子育てにぴったりの住まいだ。しかし、鎌倉は夫婦にとって、もともと縁のない土地。ここに至るまでの経緯が面白い。
就職とともに生まれ育った大阪を離れ、東京のウェブ制作会社で働き始めたご主人。数年後、同郷の奥様と結婚したが、ご主人にはかねてから「世界のいろいろな街を見てまわりたい」という思いがあった。夢を実現するなら今しかない!と思い立ち、世界一周へと旅立つ。もちろん奥様も一緒に。
バックパックを背負い多くの国を訪ねた。世界10ヵ国以上を見てまわり、日本へと帰ってきた時には街や住まいの嗜好が以前よりも明確になっていたという。
「夫婦で世界中を旅しながら、将来はこんな街に住みたいね、と話し合いました。山や海などの自然が近くにあり、それでいて賑わいのある街が私たちにとっての理想だとわかったんです。子どもを自然の中で育てられて、買い物やお出かけなどができる街にもすぐに出れるところ。日本では、鎌倉がまさにそんな街でした」
子育ての街として選らんだ鎌倉は、自然と街とのバランスが良かった
帰国後、埼玉の2LDKのマンションを借りたが、長女の幼稚園の入園を機に現在の住まいへ。ゆくゆくは子ども部屋をつくりたかったこと、子どもが騒いでも大丈夫なよう戸建てを選んだ。その後、長男も生まれて家族は4人に。
広い1階はリビング兼子どもたちの遊び部屋に。ソファでくつろいでいても、台所で料理していても子どもたちに目が届く家族だんらんの場だ。おもちゃのキッチンや絵本を入れる本棚はご主人のDIYによるもの。手作りの品が住まいに温かさをプラスしている。

木下さんがDIYで作った、ままごとキッチン。シンクやコンロまで再現されている。
二人で選んだ鎌倉は、自然と街とのバランスがとても良かった
この住まいを気に入った一番の理由は海までの近さ。家の門を出て一直線、ひなびた商店街を5分ほど歩くと海岸に出る。砂浜は長女にとって『広大な砂場』。日々の散歩で海に出掛けられる、なんとも羨ましい環境だ。
また住まいのすぐ近くに名所旧跡がたくさんあるのも鎌倉に魅力を感じた理由の一つ。ヨーロッパを訪ねた時、多くの歴史ある建造物に魅せられた。何気ない風景の中にも歴史が宿るこの街と、旅の記憶に相通じるものを感じたのだ。
慣れない土地での暮らしに最初は不安もあったという2人だが、住んでみて一層、地域の良さがわかった。
「街を歩いていても、人との距離を近く感じます。移住者を受け入れてくれる雰囲気は、鎌倉ならでは」と奥様。住み始めてまだ1年だが、商店街で顔なじみの店や、幼稚園の慣らし登園で出会ったママたちなど、地域の知人友人も少しずつ増えてきた。
「子どもにはたくさんの物や人、自然に触れながら、自分で好きなものを見つけていってほしい」
夫婦で見つけた理想の地は、2人のそんな考えにもぴったりの場所だったようだ。

木下さんが手作りしたダンボールハウス
文=田端邦彦(アクトスリー)
写真=奥村暢欣
※「CHINTAI2017年3月2日号」の記事をWEB用に再編集し掲載しています。
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