【解説】『スター・ウォーズ』シリーズはなぜ愛され続けるのか?『フォースの覚醒』と『最後のジェダイ』を紐解きつつその理由を探る!

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『スター・ウォーズ フォースの覚醒』はシリーズの魅力や面白さの原点に立ち返っていた

映画『スター・ウォーズ フォースの覚醒』
(C)2015 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved

2015年に公開された『スター・ウォーズ フォースの覚醒』は、1983年に公開され一旦は物語が完結した『エピソード6/ジェダイの帰還』の“続き”を描いた作品だ。同作は“続3部作”の第1作であり、『最後のジェダイ』へ直接的に物語がつながり、続く『スカイウォーカーの夜明け』で完結となる。

その『フォースの覚醒』は皮肉屋でワイルドなハン・ソロ役のハリソン・フォードと、高潔なプリンセスであるレイア姫役のキャリー・フィッシャーが、32年というリアルタイムの歳を重ねて再登場し、画作りやセットや演出に至るまで過去作のオマージュに溢れているという、長年のファンが感涙できる内容となっていた。

そこだけ切り取るとファン向けに特化したハードルの高い作品にも思えるところだが、その実『スター・ウォーズ』シリーズを初めて観る人も大いに楽しめる内容になっている。

大まかなストーリーラインは「女性が冒険に旅立ち仲間を得る」という『エピソード4 新たなる希望』に沿った娯楽性抜群の活劇であり、今までのシリーズのキャラクターや設定を知らなくても(むしろそのほうが)「数々の伝説を初めて聞く」主人公とシンクロした気持ちで楽しむことができるだろう。

このエンターテインメントとして誰でも楽しめる内容、ということは前述した通り『エピソード4 新たなる希望』の革新性の1つであり、その後の『スター・ウォーズ』シリーズが長年に渡り愛され続けている理由でもある。

“続3部作”の始まりとなるこの『フォースの覚醒』で、昔からのファンも、今回から初めて観る一見さんも、同様に(あるいは違う視点で)ワクワクできるという作りになっているのは、ただ懐古主義的なファンサービスや“接待”だけ終わらせない、『スター・ウォーズ』シリーズの魅力や面白さの原点に立ち返った(もちろん商業上の成功も目指した)結果だ。

しかも、この『フォースの覚醒』のアイデアや設定は、『エピソード4 新たなる希望』の制作途中の資料も参考にされている。

例えば女性が主人公となったのは旧作の主人公であったルーク・スカイウォーカーが一時期に少女として描かれていたことの反映でもあったり、可愛いドロイドのBB-8はデザイナーのラルフ・マクウォリーの初期スケッチに近いものになっていたりする。これも、スタッフたちが原点に多大なリスペクトを捧げている証拠だ。

新キャラクターの魅力により“次世代へのバトン”が見事に渡された

映画『スター・ウォーズ フォースの覚醒』
(C)2015 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved

『フォースの覚醒』でさらに特筆すべきは、新キャラクターの魅力だ。

例えば孤独に暮らしている主人公のレイの長年の生活や苦悩は、作り込まれた美術と細やかな演出により表現されきっている。その相棒として活躍するフィンは、なんと元々は“ストームトルーパー”という敵の雑魚キャラだった青年だ。それらの背景が簡潔かつ過不足なく描かれているため、ヒロイックに活躍していく彼女たちのことを心から応援できるようになっているのだ。

それでいて、今までの『スター・ウォーズ』シリーズのどのキャラクターとも一致しない、それぞれがフレッシュな魅力を持っているというのも成功したポイントだろう。

これまでも知名度が低かった俳優たちを一気にスターダムに押し上げてきた『スター・ウォーズ』シリーズだが、今回も見事な体術で戦うデイジー・リドリーや、良い意味でボンクラな印象で親しみやすいジョン・ボイエガをはじめとする俳優たちを、演じているキャラクターを含めて大好きになれるのだ。

また、この『フォースの覚醒』は前述した通り物語上では長いスパンが空いてから展開する“続3部作”の第1作であり、当然のごとく“新しい世代に次のバトンを渡す”ことを余儀なくされている。

そのハードルは間違いなく高かったのだが、『フォースの覚醒』はこれまで記したように、『スター・ウォーズ』シリーズの魅力や面白さの原点に立ち返っただけでなく、その新しい世代のキャラクターを大好きになり、そして心から応援できるという……ファンからの期待値を大きく上回った、エンターテインメントとして真っ当に、理想的につくられた作品なのだ。

『フォースの覚醒』以降のシリーズを快く思わないファンもいる?

『スター・ウォーズ』の熱烈なファンの中には、シリーズの生みの親であるジョージ・ルーカスが関わっていない、ディズニーに権利が売却された後の『フォースの覚醒』から始まる“続3部作”を、快く思わない、または認めないという声もある。

事実、ジョージ・ルーカスも“自分の子供”である同シリーズを「奴隷業者に売ってしまった」と発言していたこともあった。「ファンのための作品にしたい」と考えていたディズニーと、“家族”を描くドラマ面もシリーズで大切だと訴えるジョージ・ルーカス側との意見はなかなか合わなかったところもあるようだ。生みの親がそのような言説をしたのであるから、ファンが不信感を覚えるのも致し方がないだろう。

しかし、ジョージ・ルーカスは後に(まだ『フォースの覚醒』を観ていなかった段階であった発言であったもことも含め)この発言を謝罪し、「J・J・エイブラムス監督と(ルーカスフィルムの)キャスリーン・ケネディ社長を誇りに思う」と釈明している。

何より、前述したように実際の『フォースの覚醒』は決して懐古主義的なファンサービスだけに終わっていない、第1作『エピソード4/新たなる希望』を研究し尽くし、『スター・ウォーズ』シリーズの魅力や面白さの原点に立ち返った内容なのだ。

そのことを鑑みれば、やはり『フォースの覚醒』は長年のファンこそ観てほしいと願える、しっかりと生みの親であるジョージ・ルーカスの“らしさ”も感じられる作品と言えるだろう。

次のページでは、エピソード8『最後のジェダイ』が賛否両論を呼んだ理由を解説する。

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