【解説】『スター・ウォーズ』シリーズはなぜ愛され続けるのか?『フォースの覚醒』と『最後のジェダイ』を紐解きつつその理由を探る!

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映画『スター・ウォーズ』シリーズが人気の理由、“おすすめの観る順番”を解説!

2019年12月20日、ついに『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』が公開される。

映画『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』
(C)2019 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

本作は言わずと知れたSF映画の金字塔『スター・ウォーズ』シリーズの“エピソード9”にあたり、今まで3部作ずつに分けられていた合計9作の物語を締めくくる完結編と銘打たれている(ただし2022年よりさらに新たな3部作がスタートするとの報もある)。

本記事では、『スター・ウォーズ』シリーズがなぜここまで人々に愛され続けるのか、その理由を記していく。詳しくは後述するが、1977年に公開された第1作『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』がSFになじみのなかった人も楽しめる娯楽活劇であり、公開された当時にその作風が求められていたということ、そしてシリーズを追うごとに“深み”を増していき、ファンたちがさらに盛り上がりやすい環境が整っていたということなどが挙げられるだろう。

さらに、『スター・ウォーズ』シリーズを観たことがないという人に向けて、“オススメの観る順番”を記すと共に、12月13日に金曜ロードSHOW! で地上波放送される『スター・ウォーズ フォースの覚醒』と、12月20日に同枠で放送される『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』の内容と魅力も紹介し、『スカイウォーカーの夜明け』を現代に観るべき理由も解説していく。

映画『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』
(C)2019 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

第1作『エピソード4/新たなる希望』の成功は単純明快な娯楽性にあった

「遠い昔、遥か彼方の銀河系」を舞台に繰り広げられる『スター・ウォーズ』シリーズは、ルーク・スカイウォーカーを主人公とするシリーズの“旧3部作”、アナキン・スカイウォーカーを主人公とするシリーズの“新3部作”、そしてレイを主人公とする“続3部作”の、合計9部作で構成されている(スピンオフやアニメ、ゲーム、小説などもあるが、ここでは割愛)。

このシリーズの革新的な理由は枚挙にいとまがないが、とにかく第1作目である『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のことに触れておこう。

そのデザインの斬新さ、壮大な宇宙空間を表現した特撮など、映像面で『エピソード4/新たなる希望』が世界中の人々を魅了したのはもちろんだが、「エンターテインメントとして誰でも楽しめる内容になっていた」ということが何よりも重要だろう。

『エピソード4/新たなる希望』が公開された1977年より以前、アメリカは混乱期を迎えていた。ウォーターゲート事件により政治家への不信が募り、ベトナム戦争が終結しても帰還兵や社会全体は後遺症に苦しんでいた。

映画産業においても『時計じかけのオレンジ』や『タクシードライバー』といった反体制的な主人公が活躍するアメリカン・ニューシネマというジャンルが流行しており、それは当時の世相のネガティブな側面を色濃く反映したためという見方が多い。

しかし、『エピソード4/新たなる希望』は「青年が冒険に旅立ち仲間を得て英雄になる」という、神話をモチーフとしながらも、キャラクターみんなが魅力的で、心から彼らを応援でき、“ライトセーバー”での剣劇や宇宙空間の戦いにハラハラドキドキするという、単純明快かつ勧善懲悪の娯楽作であった。

当時のアメリカ社会や映画業界がダウナーな空気に満ちていたからこそ、その正反対のストレートな娯楽活劇が求められており、そして熱狂を生むことになったと言えるだろう。

「間口は広く、奥は深く」のシリーズとなった

その『エピソード4/新たなる希望』がストレートな娯楽活劇であった一方、続く『エピソード5/帝国の逆襲』は一転してダークな作風となり、すでに“自己紹介”が終わっているキャラクターたちを深掘りしていく、そして今までのファンの認識を根底から覆すような、驚愕の展開が待ち受けている内容となった。

さらに、宗教的・政治的な対立や、親子や師弟の確執など、現実にある問題も反映したかのような要素もシリーズを追うたびに描かれるようになり、世界観や価値観に広がりを見せていくことになる。

この『スター・ウォーズ』シリーズをエンターテインメントの面においてシンプルに総括するのであれば、「間口は広く、奥は深く」になる。

第1作目は単純明快な娯楽性で世界中の人の心を掴み、後のシリーズでは膨大かつ考え抜かれた設定を提示することでファン同士の議論がさらに活発化し、さらにハマってしまう人が世界中に溢れていくという、周到とも言える展開を見せているのだから。

ちなみに、『スター・ウォーズ』はファンによる二次創作(ファンフィルム)も多数作られており、シリーズの生みの親のジョージ・ルーカスがそれらに比較的寛容、もしくは褒め称えていたことも、さらなる広がりを後押ししていたようだ。

例えば『エピソード4/新たなる希望』をファンが(勝手に)編集した“ADYWAN”版はプロ顔負けのクオリティであり、公式で開催されているファンフィルムの祭典“スター・ウォーズ・ファン・フィルムアワード”も開催されていたりもする。ファンが盛り上がりやすい環境を公式側がしっかり作り上げていたのである。

また、『エピソード4/新たなる希望』以前のSF映画はどちらかと言えばマニアックな位置付けだった。『2001年宇宙の旅』や『猿の惑星』などの名作は世に出ていたものの、ここまで幅広い世代に支持を得たSF映画は過去には存在しなかったのだ。小難しかったり、ハードルが高くもあったSFというジャンルを、誰でもわかりやすい、それでいて奥も深い、世界中の共通認識のコンテンツまで押し上げたというのも、『スター・ウォーズ』シリーズの偉大さの1つだ。

その『エピソード4/新たなる希望』が黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』や、コミックの『フラッシュ・ゴードン』など、先人の作品に大きな影響を受けていることは有名な話。そして、その『スター・ウォーズ』シリーズもまた後継の様々な創作物に影響を与え続けている。

何より、映画やエンターテインメントという枠を超え、公開されるたびに社会的な現象を巻き起こしている『スター・ウォーズ』シリーズは、もはや人間の“創作物の歴史”そのものを象徴していると言っても過言ではないだろう。

映画『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』
(C)2019 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

改めて『スター・ウォーズ』シリーズを観るのに、“オススメの観る順番”はこれだ!

シリーズを追うたびに奥深さ、壮大さを増していく『スター・ウォーズ』は、スピンオフ作品を除いても9本もあり、さらに初めに作られたのが『エピソード4/新たなる希望』という“作られた順番とタイトルの数字が一致しない”というややこしいことになっている。

そのため、「どの順番から観ればいいのかわからない」と思う方もいるだろう。結論から書けば、以下の順番で観るのがオススメだ。

(1)エピソード4/新たなる希望 (製作年:1977年)
(2)エピソード5/帝国の逆襲 (製作年:1980年)
(3)エピソード6/ジェダイの帰還 (製作年:1983年)
(4)エピソード1/ファントム・メナス (製作年:1999年)
(5)エピソード2/クローンの攻撃 (製作年:2002年)
(6)エピソード3/シスの復讐 (製作年:2005年)
(7)フォースの覚醒(エピソード7) (製作年:2015年)
(8)最後のジェダイ(エピソード8) (製作年:2017年)
(9)スカイウォーカーの夜明け(エピソード9) (製作年:2019年)

このオススメの順番は製作年順そのままだ。この順番で観てこそリアルタイムでシリーズを追ってきたファンと同様の感動が得られるだろう。

また、“新3部作”である『エピソード1~3』は製作年を見ればわかる通り、過去の物語(前日譚)でありながら“後から作られた”シリーズであり、“旧3部作”である『エピソード4~6』で散りばめられた謎や歴史を解き明かすという、ある意味では“答え合わせ”のような内容になっている。

つまりは、過去の物語であり、謎の答え合わせのような内容である『エピソード1~3』を先に観てしまうと、とっつき辛く、楽しみにくいかもしれないのだ。乱暴に言えば、『エピソード1~3』は後回しにしてしまってもいいだろう(また、単純に『エピソード1/ファントム・メナス』は『スター・ウォーズ』シリーズの中でも最も評価が低く、ここから観るとガッカリしてしまう可能性もある)。

なお、詳しい理由は後述するが、“続3部作”の始まりとなる『フォースの覚醒』(エピソード7)はシリーズを初めて観る方でも十分に楽しめる内容となっている。地上波放送などで『フォースの覚醒』を先に観たのであれば、遡って『エピソード4/新たなる希望』からまたシリーズを追ってみてもいいだろう。

映画『スター・ウォーズ エピソード1』3D版
TM & (C)2012 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

42年という時を経た、特別な完結編である

エンターテインメントして1つの理想形であり頂点とも言える『スター・ウォーズ』シリーズであるが、第1作『エピソード4/新たなる希望』の公開からなんと42年という時を経て、完結編となる第9作『スカイウォーカーの夜明け』が公開されるというのも特筆すべきだろう。

同様にシリーズ化され壮大な物語を描いた映画シリーズには『ロード・オブ・ザ・リング』や『ハリー・ポッター』、『アベンジャーズ』をはじめとするマーベル・シネマティック・ユニバースもあったが、ここまでの長いスパンを経て、連続性のある物語が完結するということ……それは、映画史において二度と起こり得ないかもしれない、やはり特別であり伝説的なことなのだ。

2019年の現代にその『スカイウォーカーの夜明け』が世に送り出される意義はそれだけではない。『スター・ウォーズ』シリーズは一貫して”家族の愛と喪失”を描いており、さらに近年では“多様性”を意識したキャスティングや作劇もなされているという、やはり現実に根ざした普遍的なテーマも盛り込まれているのだ。次項からは『フォースの覚醒』と『最後のジェダイ』の魅力を紹介しつつ、そのことも記していこう。

次項からは『フォースの覚醒』と『最後のジェダイ』の魅力を紹介しつつ、そのことも記していこう。

次のページでは、エピソード7『フォースの覚醒』の魅力を徹底解説する。

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