重量鉄骨造とは|軽量鉄骨造との違いや注意点、物件選びのポイントを建築・不動産のプロが解説

「重量鉄骨造の物件」と聞くと、堅牢で安心できるイメージを持つ人は多いだろう。実際、柱や梁に厚みのある鋼材を用いるため、高層マンションやビルなどにも採用される構造だ。また、同じ鉄骨造である「軽量鉄骨造」とは性能も住み心地も大きく異なる。
この記事では、重量鉄骨造の特徴や軽量鉄骨造との違いを整理し、メリット・デメリット、内見時に確認すべきポイントを不動産のプロの視点から解説する。
この記事でわかること
重量鉄骨造の物件のメリットやデメリット、注意点
軽量鉄骨造の物件との違い
建築・不動産のプロが伝える「重量鉄骨造の物件選びのポイント」
このページの目次
重量鉄骨造とは?
賃貸物件の建築構造は「木造」「鉄骨造(S造)」「鉄筋コンクリート造(RC造)」「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)」の4種類が一般的だ。
そのうち重量鉄骨造は鉄骨造の一種で、柱や梁に厚さ6mm以上の鋼材を使用するのが特徴。柱と梁などの接合部をボルトや溶接でしっかりと固定するため、高い強度が確保されており、マンションやビルなどの高層建築物にも多く採用されている。
重量鉄骨造は厚い鋼材を使うため、軽量鉄骨造に比べて柱や梁が太く、安心感が違うと思います。太い鉄骨は強い力が加わっても変形しづらく、構造のなかでは“堅牢なタイプ”といえます。
重量鉄骨造と軽量鉄骨造の違い
軽量鉄骨造は、厚さ6mm未満の鋼材を用いた構造で、主に戸建て住宅や2階建てアパートに採用される。ハウスメーカーが「鉄骨造」と説明する場合、実際には軽量鉄骨造のプレハブ工法を指すケースがある。
プレハブ工法とは、工場で床や壁などをあらかじめ製造し、現場では搬入して組み立てる工法で、品質が安定しているのが特徴。
一方、重量鉄骨造は厚みのある鋼材を使う。太い柱や梁をボルトで固定したり溶接したりして一体化しているため、強度や耐久性が高い。特に耐震性の面で優れ、マンションや高層ビル、工場や体育館にも採用されている。
重量鉄骨造と軽量鉄骨造の物件の見分け方
重量鉄骨か軽量鉄骨かは、外観や内装だけではほとんど区別がつかない。判断するには、物件広告に記載された構造を確認する必要がある。「鉄骨造」としか書かれていない場合は、軽量鉄骨か重量鉄骨かを不動産会社に確認しておくのが確実だ。
軽量鉄骨造の物件のメリット
重量鉄骨造は「鉄骨造」のなかでも厚い鋼材を使用しているため、安心感のある建築構造として選ばれることが多い。代表的なメリットは次のとおりだ。
1.木造や軽量鉄骨造に比べて音が響きづらい
重量鉄骨造は柱や梁が太いため、必然的に壁も厚くなり、防音・遮音性が高まりやすい。また、厚みのある鋼材で建物全体が重くなる分、木造や軽量鉄骨造に比べると音が響きにくい。
ただし、主要部分をコンクリートで固めた鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)と比べると、遮音性はやや劣る。
2.木造や軽量鉄骨造に比べて耐震性が高い
太い鉄骨をボルトや溶接で接合しているため、地震や台風に強い構造となる。また、鉄には強い力が加わっても折れたり割れたりせず、力を吸収する粘り強さがあるため、倒壊リスクが比較的低い。
重量鉄骨造の物件のデメリットや注意点
一方で、重量鉄骨造にも注意すべきポイントがある。
1.RC・SRC造に比べると防音・遮音性は低い
厚い鉄骨を用いるとはいえ、壁そのものはコンクリートほど密度が高くないため、RCやSRC造のマンションと比べると生活音が伝わりやすい。
2.木造に比べて、断熱性や調湿性が低い
木に比べ金属は熱を伝えやすいため、外気温の影響を受けやすい。そのため、夏は暑く冬は寒いと感じる場合がある。また、鉄には湿気を吸収・放出する機能がないため、木造に比べるとカビや結露が発生しやすい場合がある。
3.RC・SRC造に比べると耐震性はやや劣る
重量鉄骨造は、厚みのある柱や梁をボルトや溶接で固定しているため強度が高く、鉄の粘り強さで地震のエネルギーを吸収する。ただし、鉄骨に加えて引っ張る力に強い「鉄筋」と圧縮に強い「コンクリート」を組み合わせたSRC造のほうが、より耐震性が高い。
重量鉄骨造の物件がおすすめなのはこんな人
重量鉄骨造は、木造や軽量鉄骨造に比べて強度や防音・遮音性に優れている。RC・SRC造と比較するとウィークポイントもあるが、暮らし方や重視するポイントによっては、最適な選択肢となるだろう。
重量鉄骨造は、RC造やSRC造の物件よりは家賃が抑えられる一方で、木造や軽量鉄骨造よりも高い防音・遮音性が期待できる。そのため、一人暮らしはもちろん、カップルやファミリーなど複数人で暮らす人にとっても住まい選びの有力な選択肢となる。
また、木造や軽量鉄骨造より地震に強い家に住みたい人にもおすすめだ。重量鉄骨は折れにくく、鉄の粘り強さで揺れを吸収する特性があり、地震や台風が起きても倒壊リスクを抑えられる。また、外壁に耐火性のある「ALC(軽量気泡コンクリート)」を使っている物件も多い。木造や軽量鉄骨よりも頑丈で強度のある住まいを選びたい人に適している。
重量鉄骨造のマンションには、頑丈な柱や梁を設けて壁の数を減らし空間を広くとった物件も多いため設計の自由度も高く、住宅に高級感を求める人にもおすすめです。
建築・不動産のプロが教える!重量鉄骨造物件選びのポイント
重量鉄骨造の物件は構造的に安心感のあるつくりだが、快適に暮らすためには物件ごとの仕様や環境を不動産会社に確認することが大切だ。チェックしておきたいポイントを整理すると、次のとおり。
1.断熱性や結露対策の有無を確認する
鉄骨は木材よりも熱を伝えやすく、外気温の影響を受けやすい。断熱材や気密処理などの対策が十分に取られているかどうかを確認しよう。
2.防音・遮音性能は完璧ではないことを理解する
木造や軽量鉄骨よりは防音・遮音性が高いが、RCやSRCといった密度の高いコンクリート造の物件と比べると生活音は伝わりやすい。
3.築年数とメンテナンス状況を確認する
築年数が経過している重量鉄骨造の物件では、外壁や階段など共用部分の劣化が進んでいる場合がある。修繕履歴やリフォームの有無を確認すると、長く安心して住めるかの判断材料になる。
4.界壁や界床の仕様を確認する
界壁(住戸と住戸を仕切る壁)や界床(上下階の住戸を仕切る床)の厚みや材質は、防音・遮音性に影響する。広告や間取り図では分からないことが多いため、内見時に同行する不動産会社の担当者に許可を取って壁を軽くノックしてみたり、防音・遮音性が高い仕様かを確認すると安心だ。
5.集合住宅の場合、界壁の向こうに何があるか
「界壁の向こうに何があるか」も重要。例えば、浴室やキッチンなどの水回り同士が隣り合う配置だったり、隣の居室との間に収納スペースや廊下などがあったりすれば、音や振動の影響を受けにくい。逆に、自分の部屋のリビングと隣室のベッドルームが隣り合っていると騒音トラブルが起きる可能性もある。配置を確認しておくと安心だ。
6.防音・遮音性を左右する建具が使われているか
窓の性能や内外装の仕上げ材によっても防音性は変わる。二重サッシや複層ガラスが使われていたり、壁・床・天井に吸音性能の建材を採用している物件なら防音・遮音性に期待できる。
7.内見時に実際の生活音をチェックする
週末や夕方など入居者の生活音が出やすい時間帯に内見することで、防音性の程度を体感できる。可能であれば複数の時間帯で確認したい。
8.部屋の位置や立地など
共同住宅の場合、角部屋や最上階、1階など隣や上下と接する部屋が少ないほど音や振動の影響を抑えられる。また、幹線道路や駅、学校などの近くは外部からの音に悩まされる可能性がある。不動産会社に、「過去に騒音トラブルがなかったか」も確認するといいだろう。
重量鉄骨造は構造的に頑丈ですが、暮らしやすさは断熱や防音など“仕上げ”のディテール(細部の納まり)で差が出ることもあります。内見では壁の厚さや窓の断熱性能、結露の有無などをしっかり見ておくと良いでしょう。
RC・SRC造の物件に比べて「防音性が不安」という方へ
重量鉄骨造は木造や軽量鉄骨造に比べると防音・遮音性が高い一方、RC・SRC造のマンションと比べると、生活音が伝わりやすいケースもある。そのため、防音性に不安を感じる人は、自分でできる工夫を取り入れると安心だ。
まず、自分や家族が発する音への対策としては、床に防音マットやラグを敷く、椅子や家具の脚にフェルトを貼るといった方法がある。足音や物音をやわらげるだけでも、上下階への影響は大きく変わる。
さらに詳しい防音対策についてはこちら
構造だけで判断せず、内見で確認しよう
重量鉄骨造は、木造や軽量鉄骨造に比べて防音性や耐震性に優れ、安心感のある住まいを提供してくれる。ただし、物件の立地や状況、界壁や異床の仕様などによって性能に差が出ることがある。「建築・不動産のプロが教える!重量鉄骨造の物件選びのポイント」を参考に、内見で間取り図や写真ではわからない点をしっかり確認してほしい。
「重量鉄骨は頑丈だから安心!」と構造だけで判断せず、物件の設備や周辺環境などもチェックすることが、快適な住まい探しにつながるはずだ。
賃貸住宅の魅力は、住み替えができることです。進学や就職、結婚、単身赴任など、人生の節目ごとにライフスタイルに合う住まい選びができます。引越しを通して、新しい街の良さに気づいたり、いろいろな間取りを楽しんだり、快適に暮らすための工夫をしたり、きっと良い経験が得られるでしょう。
なかには、将来的に持ち家やマンションの購入を考える方もいるかもしれません。大切なご家族の安全や、建物や土地の資産価値を考えるとき、賃貸住宅での経験や気づき、建築構造の知識がきっとお役に立ちます。
この記事が、みなさまの人生をより良くする一助となれば幸いです。
賃貸物件のほかの建築構造について知りたい方はこちら
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軽量鉄骨造(S造)
鉄筋コンクリート造(RC造)
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監修、取材協力:藤浦 誠一(株式会社エイブル)
文:佐々木正孝(キッズファクトリー)








