賃貸物件って何歳まで借りられる?高齢者でも入居可能なアパートの探し方
賃貸アパートは何歳まで借りられる?

一般的に、「高齢者は賃貸住宅を借りにくい」と言われている。では高齢者と呼ばれる年代の中でも、何歳までなら賃貸物件を問題なく借りられるのだろうか。
結論を言うと、何歳まで借りられるかはその物件ごとの大家さんの認識による。リタイアした後で定期収入がないことや健康面のリスクが高いことを、大家さんがどれくらい考慮しているかによって高齢者の受け入れ方が変わってくるのだ。スムーズに契約を進めるためには、高齢者の入居に対する大家さんの方針を事前に確認しておく必要がある。
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賃貸物件は何歳まで借りられる?

出典:(公財)日本賃貸住宅管理協会(平成26年度)家賃債務保証会社へのアンケート調査より「年代別の審査状況」
上記の表は、民間会社の家賃債務保証の審査状況である。表によると、家賃保証会社が「入居審査が通りやすい」と回答した結果は、60代は49.1%なのに対し、70代になると22.6%まで低下する。70代以上の場合、入居審査に通りにくくなっている実情がよくわかる結果となった。
このことから、70歳になる前のタイミングで部屋を借りた方がベターだといえるだろう。
高齢者の入居に対する大家さんの意識とは
高齢者の方が入居できるかどうかは、大家さんの認識や考え方に大きく左右される。大家さんの多くは家賃収入を得るため、ビジネスとして部屋を貸しており、起こりうるリスクを想定したうえで貸すか貸さないかの判断をしている。実際に大家さんは、高齢者の入居に対してどのように考えているのだろうか。
約6割の大家さんが「拒否感」を覚えているという調査結果に
公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会が発表した家賃債務保証会社の実態調査報告書のデータをもとに、高齢者に対する大家さんの意識についてみていこう。

出典:(公財)日本賃貸住宅管理協会(平成26年度)家賃債務保証会社の実態調査報告書より「住宅確保要配慮者の入居に対する大家の意識」
上記調査によると、高齢者の入居に対して「拒否感」を持つ大家さんは約6割を占める。しかし、回答の内訳を見てみると「拒否感はあるものの従前より弱くなっている」という回答が大半の44%を占めている。
また、「従前と変わらない」といった回答をした大家さんが、拒否感を抱いているかはこの表からはわからないが、強い拒否感を抱く大家さんは全体の16%と割合としては多くはない。
入居制限を行っている大家さんの割合は1割程度
同調査によると、「高齢者に対して入居制限を行っている」と回答した大家さんの割合は下記のとおり。
・単身の高齢者(60歳以上)は不可:11.9%
・高齢者(60歳以上)のみの世帯は不可:8.9%
・生計中心者が離職者の世帯は不可:8.7%
出典:(公財)日本賃貸住宅管理協会(平成26年度)家賃債務保証会社の実態調査報告書より「入居制限の有無」
上記のとおり、高齢者に対して入居制限を行っている大家さんの割合は1割程度。入居審査の結果、通過しないケースがあるのは事実だが、最初から入居制限を行っている大家さんはそこまで多くはないといえそうだ。
昨今の高齢化社会をふまえ、大家さんとしても「高齢者だから」という理由だけで入居に拒否感を示す人の割合は減っているといえるだろう。
高齢者が賃貸物件を借りられない3つの理由
誤解されている方も多いが、「すべての高齢者が賃貸物件を借りられない」というものではない。若い方に比べ、高齢者の方は断られる理由が多く、拒否されるケースばかりが目立ってしまっている。ここからは、多くの大家さんが抱く懸念材料について解説していく。
高齢者が賃貸物件を借りられない理由①:金銭的なリスクがある
高齢でも現役で働いていれば、毎月決まった収入で家賃を支払うことは可能だ。一方、定年後年金で暮らしている場合には、収入が審査基準に足りていないことも多い。家賃の支払いが滞る可能性を考慮し、大家さんが入居を断るのは仕方がないともいえるだろう。
高齢者が賃貸物件を借りられない理由②:健康面でのリスクがある
「重い病気になった場合に対処できないのでは?」など、高齢者の健康面でのリスクを懸念している大家さんは比較的多い。特に高齢者の一人暮らしは、部屋の中で孤独死してしまったり、そのまま発見が遅れてしまったりという事例も少なくない。
死後発見が遅くなってしまったりすると、事故物件扱いとなる可能性がある。そうなると、次の入居者を探すのが難しくなることが予測できる。
経営上のリスクを回避するために、大家さんも慎重に判断せざるを得ないのだ。
高齢者が賃貸物件を借りられない理由③:連帯保証人を立てられない
賃貸物件を借りる際には、基本的に「連帯保証人」を立てる必要がある。連帯保証人とは、借主が家賃を支払わなかったときなど、何らかの問題を起こした場合、本人に代わって支払い義務を負う人のことだ。
高齢者がアパートを借りる際には、家族などに頼むことができないなど、連帯保証人を立てにくい場合がある。このような場合、大家さんは高齢の入居希望者へ連帯保証人を代行してくれる「家賃保証会社」の利用を求める。
しかし高齢者の場合、家賃保証会社の審査が通りにくい。家賃保証会社の審査は、支払い能力があるかどうか、過去の滞納歴の有無などで合否が決まる。つまり、「どんな人物で、どのような仕事をしてどれくらい収入を得ているか」を細かく見られるのだ。
一概にはいえないが、引退して年金で生活している高齢者は、家賃滞納の可能性があると判断される場合も多い。ただし家賃保証会社は民間企業であり、審査基準には会社ごとに差がある。仮にひとつの会社の審査に落ちてしまった場合でも、別の会社に改めて審査の依頼ができるかどうか、不動産会社へ相談することをおすすめする。
高齢者が賃貸物件をスムーズに借りるための5つのコツ

高齢者がスムーズに部屋を借りるためには、金銭的なリスクと健康面でのリスクの両方を解消することが重要だ。
高齢者が賃貸物件を借りるコツ①:金銭面・体調面に問題がないことを伝える
前述の公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会が発表したデータによると、大家さんが高齢者に部屋を貸すのをためらう理由については、「家賃の支払いに対する不安」が57.3%、「居室内での死亡事故等に関する不安」が18.8%となっている。そのため、契約するときには家賃を支払える人物であること、さらに体調面に問題ないこと、家賃を払い続けることができることをしっかり伝えることが大切だといえる。
出典:(公財)日本賃貸住宅管理協会(平成26年度)家賃債務保証会社の実態調査報告書より「入居制限する理由」
現役で仕事をしている場合、安定収入がある旨を伝えれば入居審査に通過する確率は高まる。すでに退職しているならば、預金通帳のコピーを提示し、金銭面的に問題ないことを証明するのも入居審査に通りやすいポイントだ。
一般的に家賃2年分の貯金があると審査に通りやすいといわれている。たとえば家賃6万円の物件であれば、144万円以上の貯金があれば安心といえるだろう。
家賃の低い物件であれば家賃2年分の貯金額へのハードルは下がるため、入居審査を通りやすくなるポイントとして家賃の安い物件を探すのも良いだろう。
高齢者が賃貸物件を借りるコツ②:家族に協力を依頼する
家族が連帯保証人になれば、入居審査に通る確率は上がるといわれている。なぜなら、高齢者が賃貸物件への入居を断られる理由として、住居物件内での孤独死や家賃滞納が挙げられているからである。家族の協力があるとわかれば、大家さんも安心しやすい。
また、家族が近所に住んでいればより孤独死のような事件が起こりにくくなるため、できるだけ家族との距離が近いところを選ぶのも重要だ。
高齢者が賃貸物件を借りるコツ③:シニア向けの物件を選ぶ
物件探しの際、あらかじめシニア向け物件に絞って検討するのもおすすめである。高齢者の入居を受け入れている物件は、「シニア相談可」などの条件で検索すると探すことが可能だ。
高齢者の入居は見方を変えると、若い世代よりも家族構成などの変化が少なく、引越しをする機会が少ない。そのため、一度住み始めれば安定して長期間住み続けてくれるといったメリットもある。積極的にシニアの入居者を募集しているところもあるため、「シニア相談可」の物件など、気になる物件があれば担当者の方に連絡を入れてみよう。不動産のポータルサイトでは、シニア用物件の特集が組まれていることもあるためそこから検索するのもひとつの手である。
最近のシニア向け物件は、近隣の病院との連携が取れるサービスなどもあり、高齢者が生活しやすい環境が整っている物件が多い。ただし、通常の物件と比べ、家賃が高くなりやすい点には注意が必要だ。
高齢者が賃貸物件を借りるコツ④:保証人不要の物件を選ぶ
保証人不要の物件もあるので一度探してみることを検討してほしい。収入や貯蓄が一定の基準を満たしていれば、保証人を立てずに入居できる。ただし物件が古いなど、何らかの問題を抱える物件もあるため住む前に、自分の目で確認することをおすすめする。
高齢者が賃貸物件を借りるコツ⑤:高齢者向けのサービス・制度を利用する制度
入居審査の入居が厳しい場合、「終身建物賃貸制度」「高齢者向け賃貸住宅」といったサービスや制度の利用を検討しよう。終身建物賃貸制度とは、高齢者の方がバリアフリーの設備がある賃貸住宅に長く住み続けられる制度である。「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づき、高齢の単身・夫婦世帯等が終身まで安心して賃貸住宅に住むことができるのだ。
高齢者が安心して暮らせる賃貸物件の条件
断られる場合があるとはいえ、賃貸借契約を結べる可能性は十分にある。また、以下の4つの条件を満たしている賃貸物件なら、契約後も安心して暮らしていけるだろう。
無理なく支払い続けられる家賃
高齢者の一人暮らしに限ったことではないが、支払い続けられる家賃であることは大切な判断基準である。一般的に、家賃の目安は手取りの3分の1が目安といわれており、審査の際にも支払い能力の有無は厳しくチェックされる。
家賃だけではなく、食費や通信費、趣味に充てる費用を考え、毎日の生活が苦しくならないように予算を組んでほしい。
近くに家族(親戚)が住んでいる
いざ何かあったときに、近くに頼れる家族や親族がいれば安心である。定期的な通院や日々の買い物をはじめ、電球の交換や模様替えなど日常的なサポートも援助してもらえる。
また、今後看護が必要になった場合、ホームヘルパーのほかに家族の助けが必要になる場合もある。家が近ければ急病のときにも必要なサポートを受けやすいため、家族や親族との距離も考慮して賃貸物件を探してほしい。
階段や段差が少ない
内見の際には、生活しやすい環境かどうか確認しておこう。高い段差はないか、エレベーターは完備されているか、車イスでも通れる幅が確保されているかなどチェックする箇所はたくさんある。
今は健康体でも、突然事故に巻き込まれてしまうかもしれない。実際に入居し、数年経ったときでも生活しやすいかイメージして物件をチェックしよう。
医療機関が近い
高齢になると免疫力が低下し、病気のリスクが高まる。一度病気にかかると、長期入院が必要な場合もあるので注意が必要だ。万が一ケガをしたときもすぐに治療を受けられるよう、診療所やクリニックの距離も確認しておこう。
高齢者でも借りられる賃貸物件は増えている!

強い拒否感を抱く大家さんは多くはないものの、「シニア相談可」など、高齢者の入居を積極的に募集している物件はそこまで多くない。しかし、これから高齢者の住宅確保についての問題はより深刻化すると予想されており、国も動き出している状況だ。また、高齢者の入居を新たなビジネスチャンスとして捉える大家さんも増えてきており、入居の条件を緩くしているケースも少なくはない。
老後に一人暮らしを考えている方は、貯金をする、連帯保証人を探しておくなど、将来に向けて少しずつ準備を進めていこう。そして現在新しい部屋を探しているという方は、今回ご紹介したポイントを押さえ、自分にとって暮らしやすい住まいを見つけてほしい。
2022年3月加筆=CHINTAI情報局編集部
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