賃貸物件は何歳まで借りられる?高齢者でも入居しやすい部屋探しのポイントと支援制度

高齢になると「賃貸物件は借りにくいのではないか」と不安を感じる人は多い。しかし、賃貸借契約において法律上の年齢制限はなく、実際には年齢だけで入居の可否が決まるわけではない。
今回は、高齢者の賃貸物件入居を支える近年の法整備や支援制度とあわせて、高齢者のお部屋探しのポイントを解説する。これからの今後の住まい選びをスムーズに進めるための考え方や具体的なポイントを確認していこう。
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賃貸物件に年齢制限はある?
結論から言うと、賃貸借契約を結ぶうえで法律上の年齢制限は設けられていない。何歳であっても、本人の意思に基づいて契約を交わすことは可能だ。しかし、実際に部屋を借りられるかどうかについては、物件を所有する大家さんや管理会社の判断が大きく影響する。
大家さんが入居の可否を決める際、実は年齢そのものを問題にしているケースは少ない。年齢という数字よりも、むしろ「家賃を継続して支払える能力があるか」「室内で事故や孤独死が起こるリスクはないか」といった別の要素が、実質的な判断材料となっている。つまり、これらの懸念を解消できる条件が整っていれば、高齢者であってもスムーズに契約できる可能性は十分にあるのだ。
高齢者の賃貸入居で不安に思われやすいポイント
高齢者の部屋探しが難航しやすい背景には、大家さんが抱くいくつかの懸念がある。
まず挙げられるのが、収入面での不安だ。定年退職後は現役時代に比べて収入が減り、年金のみになるケースが多く、家賃の支払い能力を厳しく見られる傾向にある。
次に、健康面や孤独死のリスクだ。認知能力が低下することで近隣トラブルや火災などの懸念がある。また、万が一の際の発見の遅れは、大家さんにとって物件の資産価値や管理上の大きなリスクとなるため、どうしても慎重な判断になりやすい。
さらに、通常の賃貸借契約では入居者が亡くなった際の契約の解除や、室内に残された荷物(残置物)の処理がスムーズに進まないことも、大家さんが慎重になる要因だ。緊急連絡先や身元保証人が確保できるかどうかも審査の大きな判断材料となる。こうした「万が一の際の支え手」が見つかりにくいという実状が、大家さんにとってリスクとなり、契約の壁となっている。
高齢者の賃貸入居を支える支援制度と法整備の動き
高齢者が部屋を借りにくいとされる原因は、個人の問題というよりも、万が一の事態に備える「入居後のサポート体制」が不十分だった点にある。こうした背景を受け、国や自治体では高齢者が安心して賃貸住宅に入居できるよう、法整備や支援制度を急速に整えつつある。
近年では、単に入居の間口を広げるだけでなく、入居後も「安心して住み続けられるか」という視点を重視した仕組みが増えているのが特徴だ。それぞれ確認していこう。
高齢者は「住宅確保要配慮者」として支援の対象になっている
高齢者は、法律によって住宅の確保に特に配慮を必要とする「住宅確保要配慮者」と位置づけられている。これは、単に年齢や収入、障がいを理由に不利な扱いを受けるのを防ぐだけでなく、誰もが安心して民間賃貸住宅へ円滑に入居できるよう、国が居住支援の枠組みを整備していることを意味する。
参考資料:住宅確保配慮者の範囲|国土交通省(PDF)
国が進める高齢者向けの賃貸支援も、この「住宅確保要配慮者」への支援という考え方が前提となっている。自治体に登録された「要配慮者の入居を拒まない住宅(セーフティネット住宅)」の普及や、居住支援法人による入居サポートなど、高齢者が孤立しないための具体的な施策がこの枠組みの中で設計されているのだ。こうした公的な位置づけがあることを知っておくだけでも、部屋探しの安心感は大きく変わるだろう。
2025年10月施行「改正住宅セーフティネット法」で住宅が借りやすくなる?
これまでも高齢者の住まいを支える仕組みはあったが、2025年10月に施行された「改正住宅セーフティネット法」によって、その流れはさらに加速している。
今回の法改正の大きなポイントは、単に「入居できるかどうか」だけでなく、「入居した後に安心して住み続けられる体制」を国を挙げて整える点にある。大家さんが抱く不安を解消し、同時に借りる側の安心も守る。そんな新しい仕組みの柱となる4つのポイントをチェックしていこう。
1.大家さんが「終身建物賃貸借」制度を利用しやすくなった
「終身建物賃貸借制度」とは、入居者が生きている限り契約が続き、亡くなった時点で終了する、相続のない一代限りの借家契約を結べる制度だ。
もともと高齢者(※1)の入居を前提とした仕組みのため、年齢を理由に断られる心配がないのが大きな特徴である。2025年10月の法改正により、大家さんがこの制度を利用するための手続きが緩和された。今後、この契約形態を選べる賃貸住宅が増えていくことで、高齢者の住まいの選択肢はさらに広がることが期待されている。
※1:入居の条件は、60歳以上であること/単身または同居者が高齢者親族であること(配偶者は60歳未満も可)
参考サイト:住宅:終身建物賃貸借|国土交通省
2.住宅確保要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者の認定制度
高齢者の部屋探しで大きな壁となっていた「保証人」の問題にも、新しい解決策が登場した。国が、住宅確保要配慮者が利用しやすい「認定家賃債務保証業者」を認定する制度が創設されたのだ。
認定を受けた保証業者は、原則として要配慮者の家賃保証を引き受けることになっている。たとえ個人の緊急連絡先や身近な保証人が見つからない場合でも、この仕組みを利用することで、正当な理由なく保証を断られる心配がなくなる。保証の仕組みが明確になることは、貸主(大家さん)側の不安を和らげることにもつながり、スムーズな契約を後押ししてくれるだろう。
参考サイト:認定家賃債務保証業者制度|国土交通省
3.居住サポート住宅・居住支援法人による見守りと相談支援
「居住サポート住宅」は、入居後の安否確認や生活相談といったサポートがセットになった、新しい賃貸住宅の枠組みだ。
居住サポート住宅の認定を受けている住宅では「居住支援法人」などが大家さんと連携し、ICT機器を活用した見守りや定期的な訪問、日々の悩み相談などを行ってくれる。さらに、入居者の生活や心身の状況が不安定になった際には、その特性に応じて適切な福祉サービスや関連機関へつないでもらえる仕組みも整っている。一人暮らしの高齢者であっても、入居後の不安を最小限に抑えながら、自立した生活を送りやすい環境が整えられている。
4.国や自治体による住宅セーフティネットを活用した居住支援
こうした国の制度をもとに、各自治体でも地域の実情に応じたサポートができるような仕組みが拡充されている。
自分で部屋を探したい場合は、「セーフティネット住宅情報提供システム」という専用の検索サイトを活用するのがおすすめだ。希望するエリアで、高齢者の入居を拒まない住宅をスムーズに見つけることができる。
参考サイト:セーフティネット住宅情報提供システム
あわせて、国の住宅セーフティネット制度をもとに、自治体ごとに居住支援の取り組みが行われている。地域によっては、相談窓口の設置や入居調整を支援してくれるなど、一歩踏み込んだサポート体制が整っている。
部屋探しを不動産会社だけに任せるのではなく、自治体の住宅担当窓口も一つの有力な相談先として、ぜひ活用してほしい。
高齢者が賃貸物件を借りるために意識したいポイント
効率的な部屋探しの第一歩として、まず「シニア(高齢者)相談可」「シニア(高齢者)可」と書かれた物件を探そう。保証人不要で家賃軽減措置もある「UR賃貸住宅の高齢者向け賃貸住宅」など、シニア向けの選択肢から優先的に探すのも近道だ。
より手厚いケアを希望するなら、バリアフリーや見守りのほか、食事や介護サービスが受けられる「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」も有力な選択肢となる。
参考サイト:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム|国土交通省
不動産会社に相談する際は、収入状況や緊急連絡先の有無、保証人や保証会社の利用をあらかじめ整理して伝えると、貸主との調整がスムーズに進みやすくなる。また、居住支援法人に指定されている不動産会社を利用したり、「セーフティネット住宅」や「終身建物賃貸借」といった制度の活用をこちらから提案してみるのも有効だ。
自力での探すのが難しい場合に備え、自治体の窓口も一つの相談先として、使える仕組みを事前に把握しておきたい。
高齢者が安心して暮らせる賃貸物件の条件
安心して長く住み続けるためには、まず無理なく払い続けられる家賃設定が重要だ。一般的には、手取り収入の3分の1以下を目安にするのが適切といえる。
設備面では、1階の部屋やエレベーター付きの物件など、日常の移動負担が少ない住まいを選びたい。あわせて、室内の段差が少ないか、将来的に手すりの設置が可能かといったバリアフリーの視点も欠かせない。お部屋探しの条件として不動産会社に相談してみよう。
特に「セーフティネット専用住宅」であれば、あらかじめバリアフリー化が進んでいるケースも多い。検索サイトで条件を絞って探してみるのが有効だ。
また、病院やスーパーや駅などが近くにあるといった立地の利便性も重要である。さらに、トラブル時に連絡が取りやすい管理体制の有無、見守りサービスが利用できるかどうかも、日々の安心を支える大きな判断材料になる。
Q&A
Q1.高齢者が賃貸物件を借りる場合、入居審査ではどんな点を見られる?
A1.入居審査では、主に「家賃を安定して支払えるか」と保証の有無といった収入面と、「緊急時の連絡体制が整っているか」というサポート面の2点が確認される。具体的には、年金などの安定した収入の有無に加え、万が一の際に対応してくれる親族や保証会社、支援法人などがいるかどうかがポイントだ。
入居後の暮らしが具体的にイメージできるほど、大家さんの安心感につながり審査もスムーズに進みやすくなる。事前に必要書類や連絡先を整理しておくなど、しっかり準備をして臨むことが大切だ。
Q2.連帯保証人がいない場合、賃貸契約は難しい?
A2.連帯保証人がいなくても、賃貸契約を諦める必要はない。現在は、保証人に代わって家賃を保証する「家賃債務保証会社」を利用するのが一般的だ。
特に近年は、高齢者などの住宅確保要配慮者が利用しやすい「認定家賃債務保証業者」の制度も整備され、保証人がいない人でも契約できる仕組みが整いつつある。利用できる保証会社や制度は物件によって異なるため、まずは不動産会社に現状を伝え、自分に合った方法を相談してみよう。
まとめ
賃貸物件に法律上の年齢制限はなく、高齢であっても部屋を借りること自体は十分に可能だ。実際の入居審査において重視されるのは、年齢という数字そのものではない。「家賃を継続して払える能力があるか」「万が一の事態に備えがあるか」といった大家さんが抱く現実的な不安をどうカバーできるかという点にある。
自力での部屋探しに行き詰まったとしても、近年急速に整いつつある支援制度や、自治体の住宅担当窓口など公的な相談先を選択肢に加えることで、賃貸物件に入居できる可能性は大きく広がる。まずは活用できる制度や仕組みを知ることから、自分らしく安心して暮らせる住まい探しを始めてみてほしい。








