賃貸物件の退去費用の相場とは?費用を抑えるためにできることも解説
賃貸物件を退去する際、費用の相場はどのくらい?

引越しをする際には何かとお金がかかるもの。引越し代や新居の契約にかかる初期費用などに目が行きがちだが、現在住んでいる賃貸物件を退去する際にかかる費用についても、どのぐらいかかるのか気になるところだ。
今回は、賃貸物件の退去時にどんな費用がかかるのか説明していく。内訳の相場についても知っておくと、いざというときも慌てずに済むだろう。また、少しでも出費を抑えるために今からできる対処法についても解説する。引越しを予定している人や、まだまだ先の人にもぜひ参考にしていただきたい。
賃貸物件から退去する際にはどんな費用がかかる?

賃貸物件を退去するときには、基本的に原状回復費用が発生する。また、場合によってはこれに加えハウスクリーニング費用も発生することがある。
原状回復費用
原状回復とは、部屋の状態を借りる前の状態に戻し、次の入居者に貸し出せるようにすることを指す。
原状回復に必要な費用のうち、経年劣化や通常使用の範囲での劣化に関しては貸主の負担となる。ただ、故意や過失、管理の義務を怠った末に生じたキズや汚れに関しては、借主負担になり、この部分は退去時に支払う必要がある。
では、具体的にはどこまでが「経年劣化や通常使用の範囲」とみなされるのだろうか。国土交通省が発行している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」から、貸主負担となる例・借主負担となる例をいくつか紹介しよう。
貸主(大家さん)負担となる例
1.畳の裏返しや表替え(破損はなく次の入居者のために行うため)
2.家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡(家具の設置は通常使用の範囲)
3.テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(通常使用によっても黒ずむため)
4.クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)
5.鍵の取り替え(破損、鍵紛失のない場合)
6.設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの)
借主(入居者)負担となる例
1.カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ
2.台所の油汚れ(掃除が行き届いていない場合)
3.備え付けのクーラーから水漏れし、入居者が放置したため壁が腐食
4.タバコ等のヤニ・臭い
5.飼育ペットによる柱等のキズ・臭い
6.日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
あくまでも借主が退去時に負担する費用は、善管注意義務違反(管理を怠ること)や故意・過失と認定された部分のみ。掃除をさぼったためにできたシミや、重いものを落として傷ついてしまった床などは、借主負担となると認識しておこう。
ハウスクリーニング費用
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、退去時のハウスクリーニング費用については貸主が負担することになっている。ただし、汚れの程度にかかわらず退去時のクリーニング代が請求されることが特約として契約内容に含まれている物件もあるので注意しよう。
その場合は、故意・過失の有無にかかわらず、定められたクリーニング代を退去時に必ず支払わなければならない。
賃貸物件の退去費用の相場

賃貸物件を退去する際にかかる費用は、原状回復費やハウスクリーニング代がどのくらいの見積もりとなるのかによって異なってくる。原状回復費についてはすでに支払い済みの敷金から差し引かれることになるが、敷金を上回った場合には追加で支払うことになる。
ここからは、ハウスクリーニング費用と修繕箇所別の相場(目安)を紹介していく。
ハウスクリーニング費用
ハウスクリーニングを業者に依頼する場合の費用は、部屋の広さによって異なる。ワンルーム/1K(24平米)の場合は30,000円以下が相場のようだ。
また、箇所別の相場は以下のようになっている。
- レンジフード:約20,000円~
- フローリング(6畳):約9,000円~
- カーペット(6畳):約9,000円~
- エアコン(壁掛けタイプ):約14,500円~
壁紙の張り替え費用
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、壁紙の減価償却年数は6年となっている。このため、6年以上住んだ部屋の壁紙の価値は1円になり、原状回復にかかる費用もほとんどなくなる。
壁紙を張り替える面積や壁紙のグレードによって異なるが、おおよその相場は以下のとおりだ。6畳と10畳のケースを比べると約20,000円のアップとなる。
- 6畳:約50,000円
- 8畳:約60,000円
- 10畳:約70,000円
床材の張り替え費用
合板フローリングを張り替える場合の相場も、面積によって違ってくる。
- 4.5畳:約100,000円~
- 6畳:約120,000円~
- 8畳:約150,000円~
こちらも部屋の面積に応じて値段が高くなっていく。4.5畳の場合でも100,000円以上かかるため、壁紙と比べて費用がかさんでしまう点に注意したい。
壁の下地ボードの取り替え費用
壁に大きな穴を開けてしまった場合には、壁の下地として設置されている石膏ボードを交換する必要も出てくる。石膏ボードの交換費用は約1,500円~3,000円(1平米あたり)が相場だ。
賃貸物件の退去費用を抑えるためにできること

引越し代や粗大ごみの処分費など、ただでさえお金がかかる引越し。できれば退去時に支払う費用は最小限に抑えたいものだ。
退去時の原状回復にかかる費用は、努力次第で安く抑えられる可能性がある。その方法は至って簡単、部屋をきれいに使うことだ。
ここでは、入居当時から部屋をきれいに保つ方法、うっかり汚してしまった場合にどの程度掃除をしておくべきかを考える。
賃貸物件の退去費用を抑えるコツ①:普段から汚れを放置せずこまめな掃除・結露に注意
原状回復費用を抑えるためには、入居直後から、退去時を見据えて対策をしておきたい。引越しをする際にあわてて掃除をするより、日々きちんと掃除を続けることで、汚れやカビがひどくならないうちに発見できる。
特にガンコな汚れとなりやすい窓サッシや結露、キッチンの油汚れなどを放置しないように気を付けたい。掃除をこまめにしておかないと、思わぬ広範囲の修繕費用が必要になる可能性もある。
また、キャスター付きのイスを使う場合はカーペットを敷いておく、油汚れがつきやすい壁面にはカバーをしておくなど、キズや汚れをあらかじめ防ぐ対策も効果的だろう。
賃貸物件の退去費用を抑えるコツ②:退去直前は水回りを中心に掃除を徹底する
原状回復費用を抑えるためには、退去前に丁寧に掃除を行い、きれいな状態で部屋を明け渡すようにしよう。
特にキッチン・浴室・洗面所・トイレなどの水回りは念入りに掃除をしよう。
また、引越し当日、家電・家具を搬出したあとに汚れが溜まっている部分は念入りに掃除を。床がカーペットの場合も、シミはできる限り抜き、少しでも入居時の状態に近づけるように努力してほしい。
部屋をきれいに使うことが、賃貸物件の退去費用節約につながる

今回は賃貸物件の退去費用の内訳と相場、退去費用を少しでもコストカットする方法について説明した。
退去時に払う費用は、次の入居者が気持ちよく生活するために必要な資金となる。入居直後からこまめに掃除やケアをし部屋を大切に使っていれば、退去費用を節約できる確率は高くなるだろう。水回りを中心に、普段から汚れを溜めないように意識してほしい。
文=墨染みすず
2021年7月加筆=CHINTAI情報局編集部