賃貸アパートに防犯カメラを個人で取り付けたい。これって違法? 注意点も!
賃貸物件に防犯カメラを個人で設置してもいいの?
「空き巣や窃盗の被害に遭いたくない」「女性の一人暮らしなので、防犯対策を万全にしたい」などの理由から、賃貸アパートに防犯カメラを設置したいと思っている人もいるだろう。個人で賃貸物件に防犯カメラを設置する際に焦点となるのが、個人情報だ。
日本には「個人情報保護法」という法律があり、勝手にカメラで撮影する行為は法律に抵触する可能性がある。個人情報保護法の第18条1項では、「個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、(中略)速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。」と規定されているからだ。
今回は個人情報保護法の観点から、賃貸アパートに防犯カメラを設置できるのかについて、設置する際の注意点と一緒に解説していく。防犯対策に力を入れている方はぜひ参考にしてほしい。

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結論として、賃貸アパートに個人で防犯カメラ設置するのは難しい

個人情報保護法で論点となるのが、どのような映像が個人情報に該当するのか、そして個人で防犯カメラを設置しても個人情報取扱事業者に該当するのかどうかの2点だ。
まず個人情報とは「特定の個人を識別することができるもの」と規定されている。つまり防犯カメラで撮影した映像が、個人の特定ができるほど鮮明であれば、個人情報に該当するというわけだ。
一方、個人情報取扱事業者とは「検索可能な個人情報を5,000以上保有したことのある事業者」と規定されている。撮影範囲を限定した防犯カメラの映像から5,000以上もの個人を検索できるケースは考えにくく、そもそも、個人宅への防犯カメラ設置は事業性がない。つまり個人宅で防犯カメラを設置しても、多くのケースでは個人情報取扱事業者には該当しないだろう。
個人で防犯カメラを設置しても、法律上ただちに問題となるわけではない。しかし、現実的に賃貸アパートで防犯カメラを設置するのは困難である。ここからはその理由について解説していく。
➀大家さん・アパートの住人に許可を取る必要がある
防犯カメラを設置したい人の多くは、玄関前や自分の車を停めている駐車場所などの映像を撮りたいと思っていることだろう。しかし、玄関前や駐車場所は共有スペースにも該当する。防犯カメラを設置することで、他の住人の姿や生活の様子などが映り込んでしまうのだ。
防犯カメラを設置する際には、防犯などの明確な目的があり、他の居住者のプライバシーを侵害しないことが求められる。撮影範囲や利用目的、映像の管理方法などを明確にしたうえで、大家さんやアパート内の他の住人にも許可を取ることが必要となるだろう。しかし個人で事情を説明しても、プライバシーの侵害を懸念されて許可が下りないというケースも珍しくはない。
②無断で設置すると、プライバシー侵害としてトラブルに発展する可能性がある
「アパートの住人に許可をもらえない」「許可をもらうのが面倒くさい」などの理由から、無断で防犯カメラを設置すると、プライバシーの侵害として大きなトラブルに発展する可能性がある。過去にはプライバシーの侵害が認められ、集合住宅の屋根の支柱などに設置した防犯カメラの撤去が命じられた判例もある。その内容は以下の通りだ。
設置された複数台の防犯カメラのうち、他の住戸の玄関付近が映されている一台について、居住者の外出や帰宅といった日常生活上の行為が把握できてしまうことなどからプライバシーの侵害が認められた。
(出典=東京地裁平成27年11月5日判決)
大家さんやアパートの住人に個人で許可を取りにくいこと、勝手に防犯カメラを設置したことでプライバシーを侵害してしまう可能性があることから、個人で防犯カメラを設置するのは困難だといえる。無理に説得しようとすると、かえって関係を悪化させてしまうことになるだろう。説得するときは、事前に証拠となるものを持参し、冷静に説明するように心がけたい。

防犯カメラ設置が許可された場合の注意点
場合によって、防犯カメラの設置が許可されることがある。大家さんやアパートの住人から防犯カメラの設置が許可された場合、以下の2点に注意をしてほしい。
設置場所・撮影範囲に注意する
まずは設置場所と撮影範囲に注意することだ。他の住戸や駐車場などができるだけ映らないように、撮影場所と範囲に注意しよう。防犯の観点から本当に必要な場所と範囲に絞って、他の住人ができるだけ映り込まないようにカメラを設置しなければいけない。
映像管理に細心の注意を払う
撮影した映像の管理にも、細心の注意を払う必要がある。撮影した映像をインターネットやSNSなどで故意に公開したり、誤って流出させたりすると名誉毀損罪に該当する恐れも出てくるだろう。
不用意に扱うのではなく、きちんと管理して手元に残しておこう。もちろん他人に見せたり、撮影したデータを渡したりすることは控えなければならない。仮に犯罪被害の映像を入手できたら、まずは警察に相談して、その指示に従って行動するようにしよう。
また、相談するときは日時や当時の状況などを詳しく説明する必要がある。怪しい人物が映っていた場合、その映像を頼りに警察は捜査を始めることになるだろう。防犯カメラの映像は証拠の1つとして扱われることになるので、細心の注意を払って管理しよう。
まずはアパートの管理会社に相談しよう

賃貸アパートに個人で防犯カメラの設置を考える人は、玄関前へのゴミの投棄、鍵穴へのイタズラなど、何らかのトラブルが要因となっている場合も多いだろう。管理会社に相談することで、自身で防犯カメラを設置することなく、トラブルが解決に向かう可能性もある。賃貸アパートへ防犯カメラの設置を考える前に、まずは管理会社に相談するのが良いだろう。
文=yui(SAGOJO)
2021年5月加筆=CHINTAI情報局編集部