【住む街ガイド】小説『バブテトル ハブテトラン』の舞台・福山市は幼い頃の気持ちを思い出させてくれる街だった
小説『バブテトル ハブテトラン』（中島京子・著）の舞台になっている広島県福山市。小説の舞台をたどっていくと、福山市の住みやすさが見えてきた
ハブテトル ハブテトラン
中島京子・著 ６０５円 ポプラ文庫
『バブテトル ハブテトラン』のあらすじ
クラス内のごたごたから不登校気味になった小学５年生の大輔は、両親の苦肉の作で２学期だけ母の故郷・広島県福山市松永の小学校に通うことになった。夏休みから始まった大輔の広島「短期留学」。お好み焼き、瀬戸内の海、しまなみ海道。豪快な広島弁も楽しい著者唯一の児童文学。伝説の名作『あばれはっちゃく』の著者・山中恒氏による解説も必読！
傷ついた少年の心を癒やす瀬戸内の大らかさ
瀬戸内海に面した広島県福山市の松永は、直木賞作家である中島京子の児童小説『ハブテトル ハブテトラン』の舞台だ。ハブテトルとは備後弁で「すねている、むくれている」という意味。
小学５年生の大輔は学級崩壊などから登校拒否に。そして２学期の間だけ、母の故郷である松永に転校することになる。破天荒な大人たちや個性的な友達と過ごすうちに大輔は元気を取り戻していく。
作中では、街の特産である下駄やちくわ、地元のラーメン店や純喫茶にホームセンターなどローカルなワードが細かく描写されているので、本作を読んでから実際に松永を歩けばグッと来る人も多いはず。松永駅前からの通りをしばらく進むと、ほどなく松永港が見えてくる。港は凪いでて、穏やかな表情を見せてくれた。
瀬戸内地方特有のカラッと晴れた空と、温暖な気候はそのまま街のイメージに直結する。ウメちゃん、マテオ、ノブミツ、オザヒロが大輔を受け入れたように、よそ者であっても身内のように接してくれる大らかさがある。松永から離れた鞆の浦や仙酔島も同じ福山市内でありながら、また雰囲気が異なる。その雄大さは、東京から来た少年の冒険心に火を付けたことだろう。
小説に登場するスポットを歩いてみよう！
スポット①：鞆の浦
沼隈半島に位置する名勝「鞆の浦」
作中ではオザヒロの親戚の家がある。その美しさから、数々の映画やドラマの舞台にもなっており、瀬戸内海を望む絶景は時を忘れて見惚れてしまうほどだ。なお、寺社仏閣や史跡も多く、国立公園にも指定されている。
●住所：広島県福山市鞆町鞆
●アクセス：ＪＲ福山駅から鞆鉄バス・鞆の浦行ｏｒ鞆港行約３０分
スポット②：仙酔島
１周６Ｋｍの小さな島、仙酔島
自然の原生林や砂風呂が楽しめるビーチ、展望台にキャンプ場まで、あらゆるレジャーや冒険が堪能できる鞆の浦からほど近くにある島。作中で大輔が楽しんだ遊覧船クルーズも体験可能だ。
●住所：広島県福山市鞆町後地
●アクセス：鞆の浦から連絡船で約５分
スポット②：朱華園 松永店
朱華園松永店。開店から２０年以上経った今も、本店の味を守り続けている
尾道に本店があるラーメン店。大輔が「本店はいつも行列のため、地元の人が行く」とおばあちゃんに教えてもらった。鶏がらと豚骨のスープは背脂たっぷりで、しっかりとした味付け。ストレートの自家製平麺はスープとこれでもかというほど絡む。王道の尾道ラーメンだ。
●住所：広島県福山市柳津町１－７－６０
●アクセス：ＪＲ山陽本線松永駅から徒歩１５分
●ＴＥＬ：０８４－９３３－０６３８
●営業時間：１１：００～１８：３０
●定休日：木曜、第３水曜
広島県福山市の暮らしやすさについて
松永は日本下駄の国内総生産量の５割を占める「下駄の街」として知られる。また、作中にも登場する「しまなみ海道」の基点が近く、サイクリングのメッカとしても有名。生活という観点で見ると、学校数の多さが目立つ。幼稚園から小中高までの合計は、中国地方でトップクラス。小売店や飲食店も多く、ファミリーが住みやすい街といえる。
文＝綱島剛
写真＝湯浅立志、福山観光コンベンション協会、Ｍｏｃｈｉｏ／ＰＩＸＴＡ（ピクスタ）
※「ＣＨＩＮＴＡＩ２０１７年９月号」の記事をＷＥＢ用に再編集し掲載しています
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https://www.chintai.net/magazine/
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