ミニマリストとは?部屋づくりやライフスタイルの考え方を解説
ものを持たない生き方「ミニマリスト」とは?

いつでもどこでも、(お金さえあれば)欲しいものが手に入ってしまう時代。そんな時代で身の回りのものを最小限に抑え、「物を持たない」ことで豊かさを手に入れようとする人たちがいる。それがミニマリストだ。
今回はそんなミニマリストの特徴や、ミニマリストになるにはどうするか、続けるためのコツなどを紹介していこう。
そもそもミニマリストとはどんな人?
ミニマリストとは、「所有するものや家に置くものをできるだけ少なくして、必要最小限のものだけで生活する人」のこと。英語の「minimal(最小限)」から派生した言葉で、衣食住に関わるものを「最小限」にすることで、持たない暮らしを目指している。
もともとはアメリカの富裕層から生まれたライフスタイルで、モノを少なくするだけでなく、無駄な時間や人間関係、情報などを自分にとって大切なものだけに絞り、より質の高い豊かな暮らしを手に入れようとする考え方でもある。
近年は極端な考え方や行動ばかりが取り上げられ、マイナスに受け止められてしまう傾向もある「ミニマリスト」という存在。
今回はミニマルに暮らす本来の目的である「豊かな暮らしを手に入れる」という考え方やメリット・デメリットなどを詳しくみていこう。
ミニマリストとシンプリストの違い
「ミニマリスト」と似た言葉に「シンプリスト」がある。ミニマリストと何が違うの?」という疑問をもつ人もいるだろう。
「シンプリスト」は、自分の基準に沿ったもの選びをして、整理整頓されたシンプルな暮らしを実践する人のこと。ミニマリストのように「ものを減らすこと」や「必要最小限にすること」を重視するのではなく、自分の気に入ったものや厳選したものを持ち、統一感のあるライフスタイルを目指している。
「必要最小限のもので暮らし、必要ないものは持たない」というミニマリストに対し、「お気に入りだけに囲まれて、それらを大切にしながら暮らす」というシンプリスト。
いずれにしても、自分に合う方法を見つけて、窮屈になりすぎない豊かで楽しい暮らしを目指すのがベストだ。

ミニマリストの暮らしのメリット・デメリットとは?
部屋も心もすっきりと暮らすミニマリストを人たちを見ると、「自分でもやってみたい」と思う人は多いだろう。よいことばかりに思えるミニマリストの生活だが、もちろんデメリットもある。
ここではその両サイドから「ミニマリスト」というライフスタイルを考えてみよう。
ミニマリストのメリットとは
ミニマリストとして生活すると、以下のようなメリットがある。
- お金の無駄遣いがなくなる
- 部屋の掃除に費やす時間が減る
- 探しものをする時間が減る
- 部屋での作業に集中しやすい
- 本当に大切なものが見えてくる
ここからは、それぞれの項目について詳しく説明していく。
メリット1:お金の無駄遣いがなくなる
ミニマリストとして必要なものだけで生活するようになると、新たなものを購入する際に「自分にとって本当に必要か?」と自問し、吟味するようになる。
衝動に任せて不要なものを買ったり、「セールだから」と無駄なものにお金を使うことがなくなれば、余計な出費を抑えられるようになる。
メリット2:部屋の掃除に費やす時間が減る
ミニマリストは部屋の中に無駄なものがないため、手間なく簡単に掃除ができる。手間がないので掃除を気軽にするようになり、いつも清潔で清々しい部屋で過ごせるだろう。
ものが少なく、掃除が行き届いた部屋が標準になると、今度は余計なものがあると落ち着かなくなる。結果、片付けの好循環が生まれて、きれいな部屋がキープできるようになるのだ。
メリット3:探しものをする時間が減る
家の中に余計なもの・不要なものがないことで、「ものの住所」を決めて整理・収納することが容易になる。
「ハサミはどこ?」「あの書類、どこに入れたっけ?」と、使うものを探す手間がなくなり、時短だけでなくストレス軽減にもなるはずだ。
メリット4:部屋での作業に集中しやすい
プリンストン大学神経科学研究所の発表(2011年)によると、脳は秩序を好む傾向があり、乱雑で無秩序な状態が目に入り続けると脳に負担がかかり、集中力や情報処理能力が低下するという。つまりものが少なくて、整理整頓された部屋では仕事や作業にも集中しやすくなる。
また手に届く場所にゲームやDVDなどがあれば、誘惑が多く、仕事や作業が捗らなくなるだろう。ミニマルな部屋は仕事や作業に適しているといえる。
メリット5:本当に大切なものが見えてくる
無駄を省いて必要なものだけを残す生活は、日常的に「自分には何が必要か」「これは不要ではないのか?」という疑問を自分に投げかけることになる。そのため、自分に大切なものはなにか、自分の興味や関心はどこにあるかが明らかになりやすい。
自分にとって優先順位が高いものだけが残り、大切なことにお金や時間を費やすことができるようになる。
ミニマリストのデメリットとは
ミニマリストのシンプルですっきりした生活にもデメリットがある。
- 必要なものまで捨ててしまい、生活が不便になる
- 極端な考え方になり、家族や友人との関係が悪くなる
- 物欲がなくなり、働くことへの意欲がなくなる
本来、ミニマリストは「生活に必要なものは残す」「ものが少なくても豊かな生活を目指す」という考え方なので、これらのデメリットは本来の価値観からはズレてしまっている。
しかし、ものを捨てること自体が快感になってしまったり、人に考え方を押し付けてしまったり、ミニマリストは一つ間違えると自分も周囲も息苦しいライフスタイルになってしまうので注意が必要だ。「気持ちがいい」「楽しい」と感じる範囲で実践しよう。
ミニマリストになるには?
「明日からミニマリストになろう!」と思い立って、やみくもにもの捨てたとしても、すぐにミニマリストになれるという訳ではない。まずは自分がどんなライフスタイルを送りたいのかを考え、そのために何が必要で何が不要かを見極めることからスタートさせたい。
ここではミニマリストになるまでのプロセスを、現役ミニマリストたちのアドバイスと共に、4つのステップで紹介していく。
STEP 1:どんな暮らしが理想なのか、考えてみる
例えば、
- とにかく、ものが少なくてすっきりした部屋に住みたい
- 趣味のコレクションは残して、あとは必要最低限でいい
- ものを減らして掃除や整理整頓の時間を短縮して、趣味に充てたい
など、人それぞれ目的や理想は異なるだろう。
ごちゃごちゃの生活を手放して、「どんな自分になるのか」「どんな生活にしたいのか」をはっきりイメージしてから、ミニマリストへの一歩を踏み出そう。
STEP2:必要なものを残す
ミニマリストというと「捨てる」イメージが強いかもしれないが、大事なのは「何を残すか」を判断することだ。買い替えがきかないもの、思い出が詰まっているもの、自分にとって大切だと思うものは残してOK。
こんな先人ミニマリストのアドバイスも参考にしよう。
「残そうか、手放そうかと迷った時点で、それは今の自分には必要ないのかなと判断します」(miwaさん)
STEP3:不要なものを捨てる・譲る
必要なものを見極めたら、次は処分する段階に移る。すべて捨てようと考えなくても、「知人にもらってもらう」「フリマアプリに出す」という手段もある。
「手放すというよりも、譲るという気持ちで整理したので、ためらいはなかったです。もっと大事にしてくれる人、もっと必要としている人の手に渡った方がいいなと」(miwaさん)
不要=すぐ処分と考えなくてもいいと話すミニマリストもいる。
「迷ったら、一度見えない場所に隠して、“なくても暮らせる”と実感を得てから処分するという方法もあります」(mamiさん)
「使っているものを処分するのは難しいですよね。そんな時におすすめなのが“小さくする”こと。それだけでも部屋はずいぶんスッキリします」(ピーコさん)
また、「不要なものを捨てることで部屋が快適になる」体験を通して習慣化できるという意見もある。
「お気に入りのスペースをすっきりシンプルにすることで、“捨てる”ことによる満足感が高まります。“捨てると快適になる”という経験が積み重なり、“捨てる”という行為に慣れるんです」(ナナコさん)
「要・不要の判断をする→捨てる」というSTEP2→STEP3の行動を繰り返して、少しずつミニマリストに近づいていこう。
STEP4:生活と部屋を整え、キープする
自分にとって大事なもの、必要なものだけに絞った部屋は、居心地がよくすっきりとしたはず。ものが少なくなった部屋を自分好みに整えて、その状態をキープすることを心がけよう。
ものを探したり、掃除に時間がかからなくなった分、好きなことや趣味に時間が使えるようになるはずだ。
ミニマリストを続けていくコツとは?
せっかく「持たない暮らし」「ものが少ないすっきりした部屋」を手に入れても、すぐにものが増えてしまってはもったいない。
実はこの「リバウンド」に悩む人も多く、ある意味「ミニマリストになる」ことよりも、「続けていく」ことの方が難しいかもしれない。
ここではミニマリストを続けるための3つコツを、現役ミニマリストたちからアドバイスしてもらおう。
自分なりの買い物ルールを作る
無駄な買い物を避けるなら、「目的のない買い物には行かない」「セールの誘惑に乗らない」など、衝動買いの機会を自分に与えないのも手だ。
「服や化粧品を2つ買ったら、1つものを捨てる」というAさんは、捨てるものは新しく購入したものと同じジャンルでなくてもOKという大らかなルールでミニマリスト生活をキープしている。
「消費」の生活から、「愛着」という考え方にシフトさせることで、少ないものを大事に使うミニマリスト・ライフが送れるようになるだろう。
模様替えなどで気分を紛らわす
部屋がシンプルだと寂しさを感じたり、目先が変わらないので飽きてしまうこともある。そうなると「新しい収納用品を買ってみようか」「雑貨を飾ったら華やかになるかも」などと、ミニマリスト生活と逆行する考えが頭をよぎるかもしれない。
そんな時は、今ある家具を動かして模様変えをしたり、雑貨や観葉植物などの配置を変えてみたり、持ちものを増やさずに気分転換をしよう。
「捨てる・減らすことだけにこだわると、心がギスギスして続きません。どうすれば居心地よくなるかを考える方が長続きしますよ」(ピーコさん)
日記やSNSに記録を残す
「すっきりしたスペースを写真に撮る」「何を捨てたかメモに残す」など、ミニマリスト生活をキープするために実践していることを記録しよう。日記、メモ、カレンダー、SNS。人に見せても、見せなくてもOK。
何を処分したか、それによりどう快適になったか、その積み重ねを記録しておけば後で見返すことができ、「頑張った自分」を実感できるだろう。
可能であれば、ビフォア/アフターで撮影しておくと、モチベーションもさらにアップする。SNSなら同じように頑張っている仲間とつながれることもあり、今から頑張ろうと思っている人の励みになるかもしれない。
ミニマリストの極意とは、「自分に厳しくなり過ぎず、続けること」
ミニマリストとしての生活には、向き・不向きがある。必要最低限のもので暮らすのに不便や寂しさを感じたり、豊かさを実感できないのであれば、条件をゆるめることも考えよう。
また家族や友人と同居しながら「ミニマリスト」としての暮らしを追求するなら、「共同で使う部屋の使い方は相手の意思も尊重する」「人に強要しない」など、自分と他者を切り分けることも必要だ。
ミニマリストとしてのライフスタイルが自分を追い込んだり、親しい人との関係をギスギスさせてしまったりしては本末転倒。
「大切なのは厳しくなり過ぎず、楽しみながら続けること」と心に留め、持たない暮らしを気持ちよく享受しよう。

文=元井朋子