賃貸物件の仲介手数料で家賃1ヵ月分を請求された!これって違法?【CHINTAI法律相談所】

賃貸物件の仲介手数料で家賃1ヵ月分を請求された!これって違法?【CHINTAI法律相談所】

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賃貸物件に関する疑問に弁護士がアドバイス

賃貸にまつわるトラブルや疑問について解説する【CHINTAI法律相談所】。

入居前から入居中、退去時まで、さまざまなタイミングで発生しやすい賃貸トラブル。その疑問や対応について、不動産トラブルに強い瀬戸仲男弁護士に聞いた。

賃貸トラブルは、いつ巻き込まれてしまうかわからない。現在トラブルにあっている人だけでなく、これから賃貸物件を借りる予定の人もぜひ参考にしてほしい。

瀬戸仲男さん
瀬戸仲男 弁護士

「アルティ法律事務所」所長。東京弁護士会、および東京簡易裁判所・民事調停委員に所属。顧問弁護士業務や遺産相続など取扱分野は多岐に渡り、特に不動産問題に精通している。弁護士になる前に不動産会社に勤務しており、不動産業界・実務にも詳しい。テレビやラジオなど多数のメディアに出演し、不動産関係の講演も行っている。
アルティ法律事務所 公式HP

Q.賃貸の仲介手数料は半月分が上限と聞いたが、家賃1ヵ月分を請求された。これって違法?

良い賃貸物件があったので借りようと思ったら、仲介手数料を家賃1ヵ月分請求された。手数料の上限は家賃の半月分だと聞いていたのだけど、これって違法じゃないの?

A.賃貸物件の仲介手数料は家賃0.55ヵ月分が原則

賃貸借契約時に支払う仲介手数料。これは大家さんでなく、不動産仲介業者への報酬だ。「仲介手数料は半月分まで」というのは、ある意味正しい。しかし、入居者に家賃1ヵ月分を求めても違法ではない。その理由について説明しよう。

仲介手数料の合計は、宅建業法(宅地建物取引業法)46条に基づく国土交通省の通達により「家賃1.1ヵ月分(家賃1ヵ月+消費税10%)以内」と定められている

ここで重要なのは仲介手数料の「合計」という点だ。
基本的に仲介手数料は、仲介の依頼者である大家さん(貸主)と入居者(借主)の両方から受け取る。そのため、仲介会社が双方に請求する場合、一方に請求できる額は最大で賃料0.55ヵ月分になる。これが「仲介手数料は半月分まで」と言われる根拠だ。

逆に大家さんと入居者へ請求する仲介手数料の合計が1.1ヵ月分を超える場合は、違法となる。

契約前に明記されているなら家賃1.1ヵ月分の仲介手数料でも違法でない

では、なぜ入居者に家賃1ヵ月分+消費税の仲介手数料を請求しても違法ではないのか?それは同じく宅建業法46条に規定されている「国土交通大臣の定め」である通達において、「当該依頼者の承諾を得ている場合を除き」と例外を認めているからだ。

つまり、仲介手数料の負担割合は両者の合意によって変更可能。大家さんと入居者の合計が1.1ヵ月分以内であれば良いため、例えば「大家さんが0割、入居者が10割」でも合意があれば問題はないのだ。

賃貸借契約時に仲介手数料が1.1ヵ月分だと明記されていれば契約した時点で合意とみなされ、違法とならない。1.1ヵ月分の手数料を契約条件と掲げることも、そもそも賃貸借契約が成立する前なので問題がないのだ。

対する入居者側は家賃1.1ヵ月の仲介手数料に納得がいかないなら「仲介手数料は家賃0.55ヵ月以内が原則だ」と交渉できる。ただし断られたら当然、契約を結べず、部屋を借りることはできない。初めから仲介手数料0.55ヵ月で対応してくれる不動産仲介会社や賃貸物件を探すのも良いだろう。

なお、契約前には知らされておらず、賃貸借契約後に仲介手数料が1.1ヵ月分と発覚した場合は違法となる可能性が高い。2019年8月に東京地裁で行われた裁判では「仲介手数料が家賃1.1ヵ月分と伝えたのが契約後なので、支払いの合意が不成立」と被告である大手不動産仲介会社が敗訴している。

万が一、「仲介手数料は家賃0.55ヵ月以内が原則だ」後から家賃1.1ヵ月分の手数料が発覚したら仲介会社に返金を求めよう。もし応じてなかったなら消費者相談センターや弁護士への相談を検討すべきだ。

ここがポイント!

賃貸物件の仲介手数料は、大家さんと入居者に合計で家賃1.1ヵ月分まで。請求額は両者それぞれに家賃0.55ヵ月分が原則ですが、両者の合意(承諾)によって支払いの割合を変えられます。そのため、大家さんから手数料を取らず、入居者に1.1ヵ月分の支払いを請求する仲介会社は少なくありません。それに納得できないようであれば、手数料は家賃0.55ヵ月と謳う仲介会社を中心にお部屋探しを進めると良いでしょう。

覚えておきたい法律用語「仲介手数料」

賃貸物件の仲介手数料は宅地建物取引業法46条にて規定されている。

宅地建物取引業法46条
1 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。

宅地建物取引業法 – e-Gov法令検索

1項で記載される「国土交通大臣の定めるところ」とは、1970年に定められた「建設省告示第1552号 第四」を指している。内容は下記に通り。

建設省告示第1552号 第四(最終改正 令和元年八月三十日国土交通省告示第四百九十三号)
宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃の一月分の1.1倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の0.55倍に相当する金額以内とする。

宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額

仲介手数料は大家さんと入居者の承諾を得られれば最大で家賃1.1月分が認められる。入居者側が家賃1.1ヵ月の仲介手数料を求められることが多いが、大家さん側が全額を負担してくれることも。例えば、早く入居者を見つけたい場合などは、仲介手数料がかからないケースもある。

また、賃貸人自身が入居者を募集している物件の場合、自己所有の物件なので仲介業者が介在せず、仲介手数料も発生しない。

取材・文=綱島剛(DOCUMENT)

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