
賃貸物件の連帯保証人を引き受けたが、求められた極度額が高すぎる! いくらが妥当?【CHINTAI法律相談所】
賃貸物件に関する疑問に弁護士がアドバイス
賃貸にまつわるトラブルや疑問について解説する【CHINTAI法律相談所】。
入居前から入居中、退去時まで、さまざまなタイミングで発生しやすい賃貸トラブル。その疑問や対応について、不動産トラブルに強い瀬戸仲男弁護士に聞いた。
賃貸トラブルは、いつ巻き込まれてしまうかわからない。現在トラブルにあっている人だけでなく、これから賃貸物件を借りる予定の人もぜひ参考にしてほしい。
Q.連帯保証契約の「極度額」が家賃を踏まえると高い! いくらが妥当?
知人から賃貸物件の連帯保証人を頼まれた。それを引き受けるのは良いんだけど、連帯保証契約書に書かれた極度額が、家賃に対して高すぎる! 信頼できる知人だから滞納することはないと思うけど少し不安だ……。いったい、いくらが妥当なの?
A.極度額は当事者間の取り決めで設定される。妥当な金額は一概には言えない
極度額とは「連帯保証人が支払う限度額」のこと。2020年4月1日から個人が連帯保証人になる場合、極度額を設定しなければいけなくなった(民法465 条の2第2項)。
極度額は契約時に貸主と連帯保証人の当事者間で取り決めることになっている。このため、連帯保証人に合意してもらうことも考慮し、根拠もなく高額な極度額が設定されることは少ない。
ただし法的に金額が定められていないので、いくらが妥当な金額か判断するのは難しい。極度額に関する明確な判例もまだないため、交渉によって互いが納得する額を決めるしかない。
そうなると家賃だけでなく、大家さんの考えによっても妥当な極度額は変わってくる。もしリスクを回避したい慎重派の大家さんなら「最悪のケースを想定した金額」として「家賃の2年分」を挙げてきてもおかしくない。
賃貸借契約の期間は基本的に2年。初期費用で前家賃を払うものの、契約期間に合わせて極度額を設定するのは十分に考えられる。また、家賃の滞納から訴訟して入居者を強制退去させるまでの期間が2年程かかることもある。「想定される最大の滞納金を極度額に設定し、リスクヘッジをしたい」と考える大家さんは、決して少なくないはずだ。
損害額をベースに交渉するのが有効
対して連帯保証人の立場としては、最大額ではなく納得のいく適正額に極度額を設定したいだろう。そういった場合は、国土交通省が公表した「極度額に関する参考資料」を活用すると良い。
これはその名の通り、極度額の参考となる費用を統計調査した資料。「家賃債務保証業者の損害額」「家賃滞納発生(件数や期間、滞納金)」「裁判所の判決における連帯保証人の負担額」の3つを調査している。
この資料の中で、入居者が最も参考にしたいのは「家賃債務保証業者の損害額」だ。家賃保証会社が入居者から回収できなかった金額=滞納した家賃が賃料別にまとめられている。例えば「賃料8万円~12 万円未満」の場合は「中央値は35.6 万円。平均値は 50.0 万円。最高額は 418.6 万円」と明記されている。
損害の平均値では大家さんも不安なので納得しないだろうが、この数値をベースに金額を足していき、互いにとってベストな極度額を設定すると良いだろう。
なお、極度額は連帯保証人契約の更新ごとに両者間の合意が必要となる。入居者が滞りなく家賃を支払っているなら、更新のタイミングで極度額を減らしたいと交渉してみる余地はあるだろう。
ここがポイント!
賃貸物件の連帯保証人の場合、極度額は大家さんとの取り決めで設定されます。金額に基準はないため、互いが納得のいく額を設けることが大切です。国土交通省の資料をはじめ、客観的なデータを元に話し合いを進めると良いでしょう。ただ、大家さんと極度額の設定で合意できなかった場合、連帯保証人として認められない可能性が高いので注意が必要です。
覚えておきたい法律用語「極度額」
極度額は民法465 条の2第2項で定められている。
民法465 条の2第2項
民法 – e-Gov法令検索
個人根保証契約(一定の範囲に属する不特定の債務を保証する個人契約)は極度額を定めなければ、その効力を生じない。
根保証契約とは、将来的に発生するかもしれない不特定の債務を保証すること。賃貸借契約などのように継続的な契約中に発生した損害を保証することを指す。
これまでは金額の上限を定めることは義務とされていなかったので、連帯保証人は際限なく多額の債務を負う恐れがあった。そのため、連帯保証契約時に極度額を設けるように民法が改正され、2020年4月1日から施行された。
取材・文=綱島剛(DOCUMENT)
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