配信で観られるアカデミー賞2022ノミネート作は?『ドライブ・マイ・カー』など名作映画を一挙解説
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第94回(2022)アカデミー賞ノミネート作:劇場上映中の映画
ここからは、劇場で公開中の作品を紹介。配信で観る映画ももちろん良いが、映画館でこそ映える映像や音響の迫力も堪能してほしい。
劇場上映中のアカデミー賞ノミネート作①:『ドリームプラン』
ノミネート:作品賞、脚本賞、主演男優賞、 助演女優賞、編集賞、歌曲賞
世界最強のテニスプレイヤー姉妹、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズを育てた父親リチャード・ウィリアムズの実話を描いたドラマだ。同じくウィル・スミス出演の『ハンコック』(2008)に通じる、客観的には独善的でモラハラともとれる行動に思えてしまう主人公なのがミソ。それでいて恣意的に観客を誘導しない、善か悪かを単純にジャッジさせない「映画」ならではの描き方は、実際に賛否両論あった人物であるリチャード・ウィリアムズを描く上で誠実なアプローチだ。
『ドリームプラン』 (2022)の情報
監督: レイナルド・マーカス・グリーン
出演:ウィル・スミス、アーンジャニュー・エリス、サナイヤ・シドニー、デミ・シングルトン、トニー・ゴールドウィン、ジョン・バーンサル ほか
2時間24分
劇場上映中のアカデミー賞ノミネート作②:『ウエスト・サイド・ストーリー』
ノミネート:作品賞、監督賞、助演女優賞、 撮影賞、衣裳デザイン賞、美術賞、音響賞
7部門ノミネートも納得、スティーブン・スピルバーグ監督のあらゆる方面での手腕が極限に達したといえる本作。ミュージカル映画史上最高レベルの歌とダンスを堪能できる。撮影監督のヤヌス・カミンスキーによるダイナミックなカメラワークは、1961年製作の映画版にもない魅力だろう。差別や偏見を越えた禁断の愛の物語は悲劇的で、明るくエネルギッシュなミュージカルナンバーとのギャップがあるからこそ、大きく感情を揺さぶられる。コロナ禍でさまざまな分断が起こる今の世界でも、その内容はまったく古びていない。
『ウエスト・サイド・ストーリー』 (2022)の情報
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:アンセル・エルゴート、レイチェル・ゼグラー、アリアナ・デボーズ、マイク・ファイスト、デヴィッド・アルヴァレス、リタ・モレノ ほか
2時間37分
劇場上映中のアカデミー賞ノミネート作③:『コーダ あいのうた』
ノミネート:作品賞、脚色賞、助演男優賞
サンダンス映画祭にて、配給権が史上最高額の約26億円で落札されたことも大きなニュースになった作品だ。家族の中で唯一の聴者である女子高生が、自身の歌の夢と、手話通訳者として家族に必要とされる現実の狭間で葛藤する様が描かれている。下ネタもアリの攻めたギャグを交えつつ、シビアでありながらも優しい物語にほっこりと笑顔になれるだろう。脚色賞にノミネートされているのは、フランス映画『エール!』(2014)のリメイクであるため。ろう者の家族を、実際にろう者である俳優たちが演じているのはオリジナル版にはない試みであり、そのリアルな生活描写にも注目してほしい。
『コーダ あいのうた』(2020)の情報
監督・脚本:シアン・ヘダー
出演:エミリア・ジョーンズ、マーリー・マトリン、トロイ・コッツァー ほか
1時間51分
劇場上映中のアカデミー賞ノミネート作④:『ハウス・オブ・グッチ』
ノミネート:メイクアップ&ヘアスタイリング賞
誰もが知るファッションブランド「グッチ」の一族にまつわる実話を元に作り上げた、良い意味でドロッドロの人間関係をこれでもかと描いた、「御家騒動」が主体の作品だ。正しい道を歩んでいたはずの人たちが、「どうしてこんなことになってしまったんだろう」と嘆きたくなるほどの運命をたどる様は、なんとも切ない。レディー・ガガとアダム・ドライバーの熱演はもちろん、ヘアスタイリングおよび特殊メイクに毎日約6時間もかかったというジャレッド・レトの変貌ぶりにも注目だ。
『ハウス・オブ・グッチ』(2021)の情報
監督・脚本:リドリー・スコット
出演:レディー・ガガ、アダム・ドライバー、アル・パチーノ、ジャレッド・レト ほか
2時間37分
劇場上映中のアカデミー賞ノミネート作⑤:『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
ノミネート:視覚効果賞
前述した『シャン・チー/テン・リングスの伝説』に続く「マーベル・シネマティック・ユニバース」の第26作目にして、『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)に続く3部作の完結編だ。過去のスパイダーマン映画でのヴィラン(悪役)たちが集結するファンサービスや、「親愛なる隣人」という呼び名を持つスパイダーマンの「らしさ」を突き詰めた物語は絶賛の嵐となっており、もちろん迫力のアクションの見せ場もヒーロー映画の最高峰。予備知識がなくても最低限の状況の把握はできるので、「過去作を観ていないしな……」と迷うまでもなく、上映が終わる前に劇場へ駆けつけてほしいと切に願う。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』 (2021)の情報
監督:ジョン・ワッツ
出演:トム・ホランド、ゼンデイヤ、 ベネディクト・カンバーバッチ ほか
2時間28分
劇場上映中のアカデミー賞ノミネート作⑥:『シラノ』
ノミネート:衣裳デザイン賞
戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」を、『プライドと偏見』(2005)や『つぐない』(2007)のジョー・ライト監督が現代に蘇らせたミュージカルだ。『ゲーム・オブ・スローンズ』シリーズでも知られる俳優ピーター・ディンクレイジの演技力と声の良さも堪能できる。物語は、外見に自信が持てない男が、恋敵のはずの青年と想い人が添い遂げられるように、恋文を代わりに書くという切ないもの。「手紙の代筆」というテーマと、「戦時下の話」という共通点から、絶大な人気を誇るアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が好きな方にもおすすめだ。
『シラノ』(2021)の情報
監督:ジョー・ライト
出演:ピーター・ディンクレイジ、ヘイリー・ベネット、ケルヴィン・ハリソン・Jr.、ベン・メンデルソーン ほか
2時間3分
第94回(2022)アカデミー賞ノミネート作:これから劇場上映予定の映画
今後もアカデミー賞ノミネート作が、続々と劇場で公開される。筆者はいずれも未見ではあるが、概要もそれぞれ記していこう。
劇場上映予定のアカデミー賞ノミネート作①:『ベルファスト』(3月25日公開予定)
ノミネート:作品賞、監督賞、脚本賞、助演男優賞、助演女優賞、歌曲賞、音響賞
現在『ナイル殺人事件』も公開中のケネス・ブラナー監督が、自身の幼少期を投影した自伝的作品。少年の成長物語をモノクロの映像で綴る。
劇場上映予定のアカデミー賞ノミネート作②:『ナイトメア・アリー』(3月25日公開予定)
ノミネート:作品賞、撮影賞、衣裳デザイン賞、美術賞
『パシフィック・リム』(2013)や『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)のギレルモ・デル・トロ監督最新作。名作ノワール小説を原作とした、人間とも獣ともつかない生き物を出し物にする、ショービジネスでの成功と闇を描くサスペンススリラー。
劇場上映予定のアカデミー賞ノミネート作③:『リコリス・ピザ』(7月公開予定)
ノミネート:作品賞、監督賞、脚本賞
『マグノリア』(1999)や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007)のポール・トーマス・アンダーソン監督最新作。若手俳優でもある高校生と、10歳年上の女性のラブストーリー。俳優フィリップ・シーモア・ホフマンの息子のクーパー・ホフマンが、映画初出演にして初主演を務めている。
劇場上映予定のアカデミー賞ノミネート作④:『The Worst Person in the World(原題)』(7月1日公開予定)
ノミネート:国際長編映画賞、脚本賞
『母の残像』(2015)や『テルマ』(2017)などのヨアキム・トリアー監督最新作。30歳という節目を迎え、人生の方向性が定まらないことに悩む女性が主役の恋愛ドラマ。
劇場上映予定のアカデミー賞ノミネート作⑤:『スペンサー ダイアナの決意』 (今秋公開予定)
ノミネート:主演女優賞
クリステン・スチュワートがダイアナ元皇太子妃を演じた伝記ドラマ。1991年のクリスマス休暇にて、夫婦関係が冷え切り、世間では不倫や離婚の噂が飛び交い、精神状態が限界に達したダイアナが、とある決断をする。
劇場上映予定のアカデミー賞ノミネート作⑥:『Parallel Mothers(英題)』 (11月公開予定)
ノミネート:主演女優賞、作曲賞
『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999)などのペドロ・アルモドバル監督最新作。同作でタッグを組んだペネロペ・クルスを主演に迎えた、同じ日に出産を迎えた2人の母親の物語を描いた人間ドラマ。
劇場上映予定のアカデミー賞ノミネート作⑦:『FLEE フリー』(6月公開予定)
ノミネート:長編アニメ映画賞、長編ドキュメンタリー映画賞、国際長編映画賞
20年の時を経て祖国アフガニスタンからの脱出を語る、ゲイの青年の姿を追ったドキュメンタリーにしてアニメ映画。監督のヨナス・ポヘール・ラスムセンは、自身も迫害から逃れるためにロシアを離れたユダヤ系移民である。
劇場上映予定のアカデミー賞ノミネート作⑧:『燃え上がる記者たち』 (公開時期未定)
ノミネート:長編ドキュメンタリー映画賞
インド北部にて、主要メディアが扱わない事件も取り上げたWEBメディアで、スマートフォンを駆使して取材に奮闘する女性記者たちの姿を追う。
アカデミー賞ノミネート作を自宅でも楽しもう!
改めて、第94回アカデミー賞は3月27日(日本時間は28日)に授賞式が開催となる。コロナ禍を経ての映画業界を取り巻く変化や、配信サービスでのオリジナル作品の台頭を含め、新しい時代のアカデミー賞としての注目度も高いはずだ。『ドライブ・マイ・カー』はもちろん、ここで挙げたそれぞれの作品に注目してほしい。