配信で観られるアカデミー賞2022ノミネート作は?『ドライブ・マイ・カー』など名作映画を一挙解説

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第94回(2022)アカデミー賞ノミネート作:Disney+(ディズニープラス)配信の映画

Disney+で現在見放題となっているアカデミー賞ノミネート作は8本。基本的には日本でも劇場公開されたファミリー向けの作品が多いが、完全に大人向けの作品もある。なお、いずれのノミネート作もDisney+以外でもレンタルでの鑑賞が可能だ。

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作⑧:『クルエラ』

ノミネート:衣裳デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞

アニメ映画『101匹わんちゃん』のヴィラン(悪役)のクルエラを主役に迎えた作品だ。実写でそのキャラクターの代名詞的な白黒ファッションを見事に再現したことはもちろん、数々の豪華絢爛な衣裳、主人公がアウトローな生き方をしていた頃の薄汚れた美術のギャップにも注目。女性1人と男性2人という仲良しトリオが、友情を超えた家族になる(重要:恋愛関係ではない)物語としても見応えがある。テンポの良い編集や音楽も心地良く、終盤のあっと驚く展開は愉快痛快でたまらない。

『クルエラ』(2021)の情報

監督:クレイグ・ギレスピー
出演:エマ・ストーン、エマ・トンプソン、ジョエル・フライ、ジョン・マックレア ほか
2時間16分

Disney+で『クルエラ』を観る

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作⑨:『タミー・フェイの瞳』

ノミネート:主演女優賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞

実在した夫婦のテレビ伝道師(テレビで布教活動を行う人のこと)が起こしたスキャンダルを描いた作品だ。神への信仰の重要性を訴える言葉や番組演出は、無宗教の人や、異なる宗教を持つ人には居心地が悪くなるものかもしれない。しかし、見た目や行動がエキセントリックで妄信的にも思えたジェシカ・チャステイン演じる主人公・タミーは、関係者から反発を受けようとも、番組を通じて同性愛やエイズへの差別に反対するなど、信仰とともに「自分の道を信じていた女性」だった。だからこそ心から愛していた夫との衝突や、終盤の悲劇などが切なく感じられる。実際のスキャンダルをブラックコメディ的な要素を交えて描くことも含め、後述する『ハウス・オブ・グッチ』にも似た魅力がある。

『タミー・フェイの瞳』(2021)の情報

監督:マイケル・ショウォルター
出演:ジェシカ・チャステイン、アンドリュー・ガーフィールド、チェリー・ジョーンズ、ヴィンセント・ドノフリオ ほか
2時間7分

Disney+で『タミー・フェイの瞳』を観る

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作⑩:『フリー・ガイ』 

ノミネート:視覚効果賞

ゲームの世界のいわゆる「モブキャラ」を主人公にした映画だ。日本でも人気のアクションアドベンチャーゲーム『グランド・セフト・オート』のような、過激な犯罪が日常茶飯事になった都会が舞台となる。まずは「ゲームを実写化したら、こんなことになるのか!」と驚ける映像の連続に圧倒されるだろう。初めは単なる「駒」でしかなかった主人公が世界の真実に気づいていく様は『トゥルーマン・ショー』(1998)も連想させ、それと並行して語られる「サラリーマン」の行動が絡み合い、それぞれの「自己実現」につながっていくという、感動的な物語に仕上がっている。ちょっと攻めたブラックなギャグや、あっと驚くネタバレ厳禁のサプライズなどのサービス精神も満点、万人におすすめできるエンターテインメントだ。

『フリー・ガイ』(2021)の情報

監督:ショーン・レヴィ
出演:ライアン・レイノルズ、ジョディ・カマー、リル・レル・ハウリー、ジョー・キーリー ほか
1時間57分

Disney+で『フリー・ガイ』を観る

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作⑪:『シャン・チー/テン・リングスの伝説』

ノミネート:視覚効果賞

『アベンジャーズ』(2012)や『ドクター・ストレンジ』(2016)など、数作で同じ世界観を共有するスーパーヒーロー映画シリーズ「マーベル・シネマティック・ユニバース」の第25作目となる本作。物語はほぼ独立しているので、他の作品を観ていなくても問題なく楽しめる。シム・リウの身体能力も最大限に生かしたギミック満載のアクションの数々と、終盤のとんでもないスペクタクルなど、見せ場がこれでもかと詰まっている。アジア映画界の大スターであるトニー・レオンやヨー・ミシェルも重要な役で登場し、瞬きする間も惜しい格闘シーンを見せてくれるのもたまらない。

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)の情報

監督:デスティン・ダニエル・クレットン
出演:シム・リウ、オークワフィナ、トニー・レオン、メンガー・チャン、ヨー・ミシェル ほか
2時間14分

Disney+で『シャン・チー/テン・リングスの伝説』を観る

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作⑫:『ラーヤと龍の王国』

ノミネート:長編アニメ映画賞

バラバラになった世界を再びひとつにするため、龍の石を集める旅へと向かうアドベンチャー作品だ。東南アジアの種々の文化を表現した世界観、個性豊かなキャラクター、女性たちの関係性の尊さ、『ザ・レイド』(2011)も参考にした格闘アクションなど、見所は満載。人々を石に変えてしまう魔物が「疫病」と明言されるなど、現実のコロナ禍も連想させる要素も多く、結末で提示される価値観は今の世でこそ必要だと心から思える、尊く美しいものだった。個人的にはディズニーアニメ映画の中でも屈指の傑作だ。また、劇場で同時上映されていた短編アニメ『あの頃をもう一度』も「老夫婦がダンスや音楽を通し人生の喜びや輝きを表現する」様を描いた素晴らしい作品である。

『ラーヤと龍の王国』(2021)の情報

監督:カルロス・ロペス・エストラーダ、 ドン・ホール
出演:ケリー・マリー・トラン、オークワフィナ、アイザック・ワン、ジェンマ・チャン ほか
1時間47分

Disney+で『ラーヤと龍の王国』を観る

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作⑬:『ミラベルと魔法だらけの家』

ノミネート:長編アニメ映画賞、作曲賞、歌曲賞

家族全員が不思議な力を持っているのに、ひとりだけ「何もない」女の子が、迫る危機に立ち向かう物語だ。ラテン系の陽気な楽曲の数々と、舞台がほぼほぼ家の中だけなのにカラフルでギミック満載な画が続くのでとにかく楽しい。カーリーヘアーで眼鏡っ子のヒロイン、怪力を持つために周りから頼りにされるが故の悩みを持つお姉さん、シャイだけどヒロインと仲良しの5歳の男の子など、多彩で魅力的なキャラクター造形も見事。「疎外感」という普遍的な悩みに向き合う物語にはグッとくる方は多いはずだ。なお、劇場で同時上映されていた短編アニメ『ツリーから離れて』が本作と伝えているテーマの似た優れた作品なので、あわせて観てみてほしい。

『ミラベルと魔法だらけの家』(2021)の情報

監督:バイロン・ハワード、 ジャレド・ブッシュ
出演:ステファニー・ベアトリス、ジェシカ・ダロウ、マルーマ、ダイアン・ゲレロ ほか
1時間49分

Disney+で『ミラベルと魔法だらけの家』を観る

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作⑭:『あの夏のルカ』

ノミネート:長編アニメ映画賞

海の中で暮らしていた「シー・モンスター」の男の子が、地上の世界へと足を踏み入れ、かけがえのない友情を育んでいくジュブナイル冒険物語だ。子どもは自転車レースに挑むまで努力を重ねるスポ根ものとして楽しめるし、大人は「あの頃にこういう友だちがいたなあ」というノスタルジーに浸れるだろう。人々の勝手な思い込みのせいで、身分を隠さなければならなくなる主人公の姿には、普遍的な差別や偏見についての問題提起も込められていた。ちなみにエンリコ・カサローザ監督は宮崎駿およびスタジオジブリ作品の大ファンで、舞台である北イタリアの港町の「ポルトロッソ」は、『紅の豚』(1992)の主人公の名前(および英題)の「PORCO ROSSO」から取られていたりもする。

『あの夏のルカ』(2021)の情報

監督:エンリコ・カサローザ
出演:ジェイコブ・トレンブレイ、ジャック・ディラン・グレイザー、エマ・バーマン ほか
1時間41分

Disney+で『あの夏のルカ』を観る

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作⑮:『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』

ノミネート:長編ドキュメンタリー映画賞

1969年夏に開催され、30万人以上が参加した伝説の音楽フェス。地下室で約50年間も埋もれていたその映像に、参加者のインタビューを交えて構成したドキュメンタリーだ。主に描かれているのは、音楽が人々のカルチャーにいかに影響を与えていたかということ。エネルギッシュなライブ映像と共に、1960年代の歴史的出来事も次々に提示されているので、熱気に満ちた当時にタイムスリップしたかのような感覚も得られる。スティーヴィー・ワンダーを始めとした大スターも登場し、日本人でも聞いたことのあるナンバーも多いので、コロナ禍で縁遠くなってしまった人も多いであろう音楽フェスの熱気を思い出したい方にもおすすめだ。

『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』(2021)の情報

監督:アミール・クエストラブ・トンプソン
出演:ロイ・エアーズ、エセル・ビーティ=バーンズ、バーバラ・ブランド=アコスタ、マイク・ブーン ほか
1時間57分

Disney+で『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』を観る

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