配信で観られるアカデミー賞2022ノミネート作は?『ドライブ・マイ・カー』など名作映画を一挙解説

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第94回(2022)アカデミー賞ノミネート作:Netflix配信の映画

今年はとにかくNetflixのオリジナル作品が強く、なんと最多10作品・27ノミネートを達成している。『ROMA/ローマ』(2018)も91回アカデミー賞で最多の10部門にノミネート、外国語映画賞・監督賞・撮影賞の3部門を受賞する快挙を成し遂げたが、今回はNetflix初の作品賞の受賞も期待されている。

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作①:『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

ノミネート:作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、脚色賞、編集賞、撮影賞、美術賞、音響賞、作曲賞

最多11部門12ノミネート(助演男優賞がジェシー・プレモンスとコディ・スミット=マクフィーのWノミネート)を果たした大本命作だ。良い意味で不快感と恐怖が「じわじわ」と蓄積されるサスペンスドラマであり、万人が飲み込みやすいエンターテイメントではないものの、会話の端々から登場人物の心情を想像する「映画」ならではの面白さに満ちている。ベネディクト・カンバーバッチが演じる「有害な男らしさ」そのもののような人間の物語から、世界中にはびこる偏見や差別の意識がなぜ生まれるのか、その理由のひとつを知ることもできるだろう。なお、兄にいびられる弟夫婦役を演じて共にアカデミー賞にノミネートされたキルステン・ダンストとジェシー・プレモンスは現実でも夫婦である。

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021)の情報

監督:ジェーン・カンピオン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キルステン・ダンスト、ジェシー・プレモンス、コディ・スミット=マクフィー ほか
2時間 8分

Netflixで『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を観る

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作②:『ドント・ルック・アップ』

ノミネート:作品賞、脚本賞、編集賞、作曲賞

巨大彗星の衝突を目前にした人々の右往左往ぶりを、社会派のブラックコメディに仕立てた作品だ。あまりにひどい政府の対応や世間の反応に「なんでこんなことになるの……?」と笑えると共に、「今の現実の世界もこうなっているのかもしれない」とゾッとさせられるので、もはや下手なホラーよりも怖い。超豪華キャストも見所で、まともなキャラのレオナルド・ディカプリオとジェニファー・ローレンスのコンビがキッツい状況にどんどんゲッソリしていくので、本気でかわいそうになってくる。キレ味抜群の終わり方は一周まわって爽快だ。エンドロールの最後にもおまけがあるのでお見逃しなく。

ドント・ルック・アップ』(2021)の情報

監督:アダム・マッケイ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ ほか
2時間 18分

Netflixで『ドント・ルック・アップ』を観る

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作③:『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』

ノミネート:主演男優賞、編集賞

30歳を目前にした青年の「焦り」を主軸にしたミュージカルドラマだ。メロディアスな音楽とシンクロする、想像と現実も入り混じったような、独特の感覚を得られる編集がなされている。アンドリュー・ガーフィールドが焦燥感を持ちながらも純粋に夢を見る、だからこそ恋人や親友と衝突してしまう、切なくも共感できる主人公に見事にハマっていた。後述するディズニーアニメ映画『ミラベルと魔法だらけの家』や、2021年に映画版も公開された『イン・ザ・ハイツ』などの音楽を手がけたリン=マヌエル・ミランダの長編映画初監督作でもある。

『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』(2021)の情報

監督:リン=マヌエル・ミランダ
出演:アンドリュー・ガーフィールド、アレクサンドラ・シップ、ヴァネッサ・ハジェンズ ほか
1時間55分

Netflixで『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』を観る

※『パワー・オブ・ザ・ドッグ』と『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』については、以下の記事でも紹介している

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作④:『ロスト・ドーター』

ノミネート:主演女優賞、助演女優賞、脚色賞

海辺の町へやって来た中年女性の不可解な行動をきっかけに、過去が明らかになっていくというドラマだ。町で出会う人々との何気ない会話と、並行して提示される記憶から「秘密」が示されていくのだが、「母親」である彼女が抱えた問題はとても一筋縄で解決できるものでも、良し悪しを単純に語れるものでもないので、良い意味で気持ちがぐっちゃぐちゃにされるような衝撃があった。オリヴィア・コールマンは『女王陛下のお気に入り』(2018)でアカデミー主演女優賞を受賞しており、今回は『ファーザー』(2021)に続くノミネートとなる。

ロスト・ドーター』(2021)の情報

監督:マギー・ギレンホール
出演:オリヴィア・コールマン、ジェシー・バックリー、ダコタ・ジョンソン ほか
2時間2分

Netflixで『ロスト・ドーター』を観る

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作⑤:『The Hand of God』

ノミネート:国際長編映画賞

『グランドフィナーレ』(2015)などのパオロ・ソレンティーノ監督の自伝的な作品で、若者が映画監督を志すまでのドラマを淡々と綴った内容だ。序盤は家族が集まりバカンスを楽しむ様子が穏やかに描かれるのだが、やがて彼らは予想外の悲劇に襲われることになる。夜のシーンは重いトーンになるなどヘビーな表現もあり、明るいイメージを持つイタリア・ナポリの「美しいだけじゃない」情景も丹念に描かれていた。

The Hand of God』(2021)の情報

監督:パオロ・ソレンティーノ
出演:フィリッポ・スコッティ、トニ・セルヴィッロ、テレーザ・サポナンジェロ ほか
2時間10分

Netflixで『The Hand of God』を観る

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作⑥:『ミッチェル家とマシンの反乱』

ノミネート:長編アニメ映画賞

まるで『クレヨンしんちゃん』の映画シリーズのように、それぞれが若干(かなり)クレイジーなまでに個性的な家族が、世界の危機を救う冒険に旅立つ内容だ。ハイスピードで繰り出されるアクションに圧倒され、ハイテンションなギャグにゲラゲラ笑い、予想の斜め上の展開に驚愕できながらも、見事な伏線回収をもって大感動の家族愛も描かれるという、万人に文句なしにおすすめできる娯楽作に仕上がっている。ちなみに、字幕版では人工知能の声を、前述した『ロスト・ドーター』のオリヴィア・コールマンが務めていたりもする。

『ミッチェル家とマシンの反乱』(2021)の情報

監督:マイケル・リアンダ
出演:ダニー・マクブライド、アビ・ジェイコブソン、マーヤ・ルドルフ ほか
1時間54分

Netflixで『ミッチェル家とマシンの反乱』を観る

※『ミッチェル家とマシンの反乱』 は以下の記事でも紹介している

配信で観られるアカデミー賞ノミネート作⑦:『ことりのロビン』

ノミネート:短編アニメ映画賞

『ひつじのショーン』や『ウォレスとグルミット』のアードマン・アニメーションズによる、実際の人形や小物をちょっとだけ動かして撮影して、またちょっとだけ動かして撮影して……という気が遠くなる工程を経て作られる「ストップモーションアニメ」作品だ。ネズミに育てられた小鳥が、どのように自分の才能を活かし、どのような生き方を選び取るのか?というテーマは、子どもが楽しめるファミリー向けの作品でありながら、大人こそハッとするところがあるだろう。ネコが恐ろしい存在として描かれていることも見所。ミュージカル仕立てであり、子役の菱山楽々や声優の山路和弘による吹き替え版のクオリティも高いのでおすすめだ。

『ことりのロビン』(2021)の情報

監督:ダン・オジャリ、マイキー・プリーズ
出演:ブロンテ・カーマイケル、リチャード・E・グラント、ジリアン・アンダーソン ほか
32分

Netflixで『ことりのロビン』を観る

そのほかのNetflixで観られるアカデミー賞ノミネート作

このほか、Netflix配信作品では、下記の3つが短編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされている。

Netflixでは過去に、ノーベル平和賞の候補にもなった防衛隊の活動に密着する『ホワイト・ヘルメット:シリアの民間防衛隊』(2016)、インドの田舎の村で生理ナプキンを製造して女性たちの経済的自立を促そうと立ち上がる人々の姿を追った『ピリオド-羽ばたく女性たち-』(2018)が、短編ドキュメンタリー映画賞を受賞している。Netflixが、この分野でも強力な作品を世に送り続けていることにも注目してほしい。

次のページでは、Disney+(ディズニープラス)で観られる第94回(2022)アカデミー賞ノミネート作を紹介する。

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