【税理士監修】インボイス制度はいつから?どんな手続きが必要?注意点をわかりやすく解説
インボイス制度導入でどう変わる?
インボイス制度の導入によって、事業者はどのような影響を受けるのだろうか。以下の3つの影響について見てみよう。
- 免税事業者への影響
- 免税事業者は取り引きが減る可能性がある
- 売上が減少する可能性がある
1.免税事業者への影響
現在、課税売上高が1,000万円以下の事業者は消費税の納税義務がない「免税事業者」とされており、インボイス制度導入後も同様の取り扱いとなる。 しかし、インボイス制度に対応するため「免税事業者」が「課税事業者」を自ら選択し、適格請求書発行事業者になるケースも少なくはない。この場合、年間の課税売上高が1,000万円以下であっても免税事業者にはならず、消費税の納税義務が生じる。これまで免税対象だった方も、売上高にかかわらず消費税を納税する必要が出てくるのだ。
免税事業者の登録手続き
「免税事業者」が「課税事業者」になるには、登録申請書に加え、「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなければならない。ただし、インボイス制度が導入される、2023年10月1日を含む課税期間中に登録を受ける場合には、以下の経過措置の適用を受けることができる。
登録日が「2023年10月1日の属する課税期間」の場合(経過措置の適用を受ける場合)
インボイス制度がはじまる2023年10月1日から登録を受ける場合、困難な事情がない限り、2023年3月31日までに申請をする必要がある。その際、「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要はない。なお、2023年10月1日からは課税事業者となるため、消費税の申告が必要となる。
登録日が「2023年10月1日の属する課税期間」の翌課税期間以降の場合
課税事業者となった課税期間の初日である、2024年1月1日から登録を受ける場合、「消費税課税事業者選択届出書」を提出する。また、課税事業者となる課税期間の初日の前日から起算して、1ヶ月前の日までに「登録申請書」の提出も必要だ。
2.免税事業者は取り引きが減る可能性がある
納税の負担を軽減するために、あえて自ら課税事業者(インボイス登録事業者を含む)を選択せず、売上高に応じて免税事業者に該当したままにするというのも選択肢だ。
一方で、それを理由に登録をしないでいると、今後の取り引きが減少してしまう可能性がある。
買い手はインボイスを発行できる業者事業者を選んだほうが、消費税の納税が少なくて済む
買い手が「仕入税額控除」を受けるためには、インボイス(適格請求書)の保存が要件だ。そのため、取引先からインボイス(適格請求書)を発行してもらわなければならない。
しかし、取引先が免税事業者の場合はインボイス(適格請求書)を発行できないため、「仕入税額控除」が受けられなくなる。つまり、買い手はインボイス(適格請求書)を発行できる「適格請求書発行事業者」を取引相手として選んだほうが消費税の納税が少なく済むのだ。
免税事業者の売り手は仕事が減るかもしれない
免税事業者は、インボイス(適格請求書)が発行できないという理由で、今後の契約が減ってしまう可能性も考えられる。たとえば、A社が仕事を依頼しようとする際、フリーランスであるデザイナーのBさんとCさんを候補に挙げるとする。Bさんは免税事業者のままで、Cさんはインボイス制度をきっかけに適格請求書発行事業者となった。
二人の実力はほとんど変わらないが、Cさんはインボイス(適格請求書)を発行できる。A社は「仕入税額控除」を受けるため、インボイス(適格請求書)に対応できるCさんに仕事を依頼することになった。
免税事業者のBさんにしかできないスキルなどがあれば、「仕入税額控除」を受けられなくても依頼を受けられるかもしれないが、ほとんど変わらないスキルセットである場合には、インボイス(適格請求書)に対応したCさんを選ぶ可能性が高まってしまう。このように、免税事業者と課税事業者の間で仕事を受ける機会に差が出る可能性があるのだ。
3.売上が減少する可能性がある
前ページの「仕入税額控除」のパートで解説をしたが、インボイス登録事業者でない相手に支払う消費税は仕入税額控除を受けられない。そのため、免税事業者に支払う報酬金額について消費税の分だけ値引き交渉をされる可能性があるのだ。
先ほどのB社とCさんの取引の場合、インボイス制度開始前は、Cさんの売上金額は下記のとおり。
30万円+消費税3万円=33万円
※免税事業者のため、B社からの預かり消費税も売上となる(いわゆる益税)
インボイス制度開始後は、B社にとってCさんに支払う消費税3万円は仕入税額控除を受けられないため、これまでの【税別30万円】から【税込30万円】へ値下げをしてほしいと交渉をされるかもしれない。 これを受け入れた場合、Cさんの売上金額は下記のとおり。
消費税込みで30万円
※B社からの預かり消費税分の売上が減った
B社側から見ると、【税別30万円】だった発注金額を【税込30万円】としてしまい、粗利益70万円を保つという考え方だ。
主要な取引相手の規模(相手先が課税事業者かどうか)を、ご自身が登録するかどうかの判断材料にしてもよいかもしれません。
インボイス制度実施前に準備すべきこと
年間売上高が1,000万円以下のフリーランスや個人事業主は、インボイス制度にそなえてどのようなことをしておかなければならないのか。導入前にチェックしておくべき点は以下の2つである。
- 収支の計算や取引を見直す
- インボイス(適格請求書)を用意する
収支の計算や取引を見直す
課税事業者からインボイス(適格請求書)の交付を求められた場合は、原則としてそれに応じなければならない。そのため、今後の取り引きにそなえて課税事業者を選択することを検討しておく必要がある。
課税事業者になった場合は、フリーランス・個人事業主いずれも消費税を納税することになる。導入後の収支やキャッシュフローの見込みについて、改めて計算をしてみよう。
インボイス(適格請求書)を用意する
適格請求書発行事業者になった場合、インボイス(適格請求書)を用意しなければならない。前のページでも解説したが、現在使っている請求書や領収書を確認して、以下の3つの必要項目を追加する必要がある。
- インボイス発行事業者の登録番号
- 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
- 税率ごとに区分した消費税など
追加する必要項目は手書きでもかまわないが、今後のためにフォーマットの見直しが必要だ。また、インボイス制度に対応した会計処理のシステムの導入も検討しよう。
2023年のインボイス制度への対応をはじめよう
円滑な取引を持続させるために課税事業者になったとしても、消費税の納税が増えるためトータルの税負担も増えることとなる。今後の生活のために、インボイス制度への対応を今から考えておくようにしよう。
導入まで約1年半の期間がありますが、早いうちの検討と準備をオススメします!
お困りの際は税理士にご相談ください!
先生、ありがとうございました!
文・構成:CHINTAI編集部