耐震等級と耐震基準の違いとは?耐震性について知って物件の選びの参考にしよう!
物件の耐震等級って?

賃貸物件を探す際に、耐震性能を気にする人は、あまり多くないかもしれない。地震大国の日では、いつ地震が起きてもおかしくはない。自分の住んでいる物件や、これから引越す物件の耐震性能について知っておくことは、非常に重要だといえる。
耐震性能を示す指標には、「耐震等級」と「耐震基準」の2つがある。今回は、「耐震等級」と「耐震基準」の違いなどを含め、耐震性について詳しく解説していく。
耐震等級とは、地震に対する建物の強さを表したもの

2000年に、住宅の品質確保の促進等に関する法律「品確法」が施行された。耐震等級とは、その「品確法」にもとづいてできた「住宅性能表示制度」という制度の等級のひとつ。耐震等級は3段階のランクに分かれており、その数字が大きいほど、建物の耐震性能が高くなる。
品確法では、「損傷防止」と「倒壊等防止」という基準が設けられている。
「損傷防止」は、震度5程度の地震に対して、大規模な修復が必要ない程度の耐震性だといわれている。一方、「倒壊等防止」は、震度6強〜7程度の地震に対して、損傷を受けても人命は損なわれない程度の耐震性だ。
この2つの観点から、耐震等級の段階ごとの基準を見ていこう。
【耐震等級1】
建築基準法で定められている耐震基準と同じ内容で、建物に備わっているべき最低限の耐震性能といわれている。
震度5ではほとんど損傷はなく、6強~7の地震でも即倒壊はしないレベル。しかし、柱や梁、壁などの主要構造部分は大破してしまう可能性があり、建て直しの必要性が高い。
【耐震等級2】
耐震等級1の1.25倍の耐震強度があり、耐震等級2以上で「長期優良住宅」として認定される。
学校や病院など、災害時の避難場所として指定される建物は、必ず耐震等級2以上の基準が必要になる。こちらは震度6強~7の地震でも、一定の補修程度で住み続けられるレベルだ。
【耐震等級3】
耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の耐震強度。
災害時の救護活動や災害復興の拠点となる警察署や消防署などは、耐震等級3で建設されることが多い。
震度6強~7の地震でも、軽い補修程度で住み続けられるレベルでありながら、地震保険が半額になるなどのメリットも多い。
CHINTAIネットでは耐震構造の賃貸物件も紹介しているので、気になる方はチェックしてみよう。
「耐震」以外にも地震から建物を守る構造方法がある!
耐震構造とは、建物自体を強化して地震に耐えられる構造のことを指す。具体的には、鉄筋コンクリートや耐力壁などで、建物の構造を強固にしていく。なお、現在ではほとんどの住宅が耐震構造となっている。
耐震構造以外にも、地震から建物を守る「制振構造」と「免震構造」があるので、それぞれ詳しく見ていこう。
制振構造とは?
制振構造とは、建物の柱や壁などにダンパーと呼ばれる制振装置を組みこむことにより、地震の揺れを吸収してくれる構造。
この制振構造により、建物のひび割れなどを抑えることができる。耐震構造と比べると、地震による揺れを20%〜30%程度ダウンすることが可能だ。
制振構造のメリット
- 2階以上の階の揺れを軽減し、家具の転倒も少ない
- 強風や台風に強い
- 建物の揺れを吸収するので損傷が少ない
制振構造のデメリット
- 設置にコストがかかる
- 設計上制約が生じることがある
- 地震の揺れが直接建物に伝わる
免震構造とは?
免震構造とは、建物の基礎にゴムなどでできた免震装置を設置することで、地震の揺れを足元で吸収してくれる構造。
地震の際にはゆっくり揺れるので、家具や家電などが倒れにくい。建築コストはかかるが、地震の力を40%〜60%カットすることができる。
免震構造のメリット
- 地震の揺れが直接建物に伝わらない
- ゆっくり揺れるので建物の損傷が少ない
- 家具の転倒が少ない
免震構造のデメリット
- 強風や台風では2階以上が揺れる
- 設置にコストがかかる
- 軟弱地盤では設置が困難
耐震等級と耐震基準の違いとは?
耐震等級と耐震基準は似たような言葉だが、それぞれ意味が異なる。その違いや旧耐震基準と新耐震基準について解説していく。
耐震等級と耐震基準の違い
耐震等級と耐震基準の違いは、耐震基準は、人命を守ることが目的なのに対し、耐震等級は、人命を守ることに加えて、建物そのものも守ることが目的という点にある。この2つは、異なる法規によって定められており、連動性がないということが特徴だ。
「耐震基準」には「旧耐震基準」と「新耐震基準」がある!
旧耐震基準とは、1981年6月よりも前の耐震基準のこと。それ以降に建てられた建物は新耐震基準になる。新耐震基準で建てられた建物は、数十年に起こるか起こらないかの大きな地震でも倒壊しないことが前提であり、実際に阪神大震災の際には、倒壊を免れた建物がほとんどだった。
また、木造住宅に関しては、2000年に耐震基準が強化されている。つまり、1999年以前に建てられた木造住宅は、耐震基準を満たしていない可能性もある。
耐震等級について押さえておくべきポイント
震度7の地震が連続発生した熊本地震は記憶に新しいが、その際に新耐震基準で建てられた建物も複数倒壊した。しかし、耐震等級3で建てられた住宅は被害が少なく、耐震等級の重要性が改めて注目されている。
それでは、耐震等級について押さえておくべきポイントを見ていこう。
耐震等級について押さえておくべきポイント①:耐震等級が不明な建物もあるということ
2000年に制定された住宅性能表示制度により、建物の強度を示す耐震等級が定められた。
2000年以前に建てられた建物は、住宅性能表示制度は任意のであったため、耐震等級の評価書を取得する必要は必ずしもなかった。そのため、2000年以前の建物に関しては耐震等級が不明であることが多いのだ。
このような場合の耐震性は、建物の築年数などをもとに調査される。新耐震基準が制定された1981年6月1日以降に建てられた建物は、新耐震基準を満たしているとして、耐震等級1以上の強度は確定ということになる。
耐震等級について押さえておくべきポイント②:あえて等級を低くしている建物もある
鉄筋や鉄骨などのマンションは、木造の住宅と比べて、耐震等級を上げるには少々ハードルが高い。耐震等級を上げようとすると、間取りの自由度が制限されてしまうため、居住スペースに影響が出てしまうのだ。
そのため、あえて耐震等級1で建てている賃貸マンションも多い。耐震等級2以上の賃貸マンションを探す際には、不動産会社に相談してみよう。
耐震等級について押さえておくべきポイント③:新耐震の物件を選ぼう!
新耐震基準を満たす物件を選ぶためには、築年数が大事。1981年6月1日以降に建てられた物件であれば、新耐震基準で建てられていると判断できる。木造アパートの場合は、2000年以降に建てられた物件だとより安心だといえる。
しかし、1981年以前となると築40年以上になる。よほど築年数が古い物件ではない限り、多くの賃貸物件が新耐震基準を満たしているといえる。
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まとめ
地震大国である日本において、賃貸物件であっても耐震性は気になるところ。耐震性について詳しく知り、物件選びの参考にして万が一の場合に備えよう!
文=CHINTAI編集部