火災保険だけでは足りないの?注目が高まりつつある、賃貸物件の地震保険とは
火災保険だけでは不十分?賃貸物件における地震保険について知っておこう

賃貸物件の契約時に同時に加入する火災保険と異なり、地震保険は契約時の加入が求められることが少ないため、未加入の人も多いのではないだろうか。
しかし、加入が求められないからと言って不要な訳ではない。地震保険は、地震大国に住む私たちだからこそ加入しておくべき保険だとも言えるのだ。この記事では、賃貸住宅の地震保険について基本情報や注目度の高さをご紹介しよう。
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地震保険は、火災保険に足りない部分を補う
地震保険とは、地震・噴火・津波によって火災・損壊・埋没・流出のいずれかの損害を受けた際に、規定の保険金が支払われる保険である。単体で加入できる火災保険と異なり、地震保険は損保会社が取り扱う火災保険に付帯しなければ加入ができないことが大きな特徴だ。
地震保険の補償対象には、「建物」「家財」の2種類があるが、賃貸物件では「家財」のみが対象となる。家財とは、主にテーブルやベッド、ソファなどの家具類をはじめ、パソコン、テレビ、冷蔵庫、食器類などを指す。
地震保険は、主に地震によってこれらの家財が損壊を受けた時に保険金が支払われる仕組みだが、それだけではなく、地震による火災や津波、また火山の噴火による火山灰などで家財が損壊を受けた時にも補償の対象となる。
さらに、地震保険では二次的災害でも補償を受けられる場合がある。例えば、テーブルでアイロンを使用している最中に地震が発生し、停電したとしよう。テーブルからアイロンが落下したまま住民が避難し、その後電気が復旧した際にアイロンの熱によって絨毯が燃えてしまった場合、火災保険では対象外となるが、地震保険では保険金が支払われる。
つまり、地震による家財の損壊は、たとえ火災が原因だとしても火災保険では補うことができないのだ。反対に、地震・噴火・津波以外の災害は地震保険で補償することができないため、火災保険と地震保険はお互いの足りない部分をうまく補い合っていると言えるだろう。
なお、地震保険の補償の対象となる家財には、貴金属や宝石、美術品、自家用車などは含まれないため、注意しておこう。

家の破損具合によって支払われる保険金は異なる
地震保険では、地震や噴火、津波などによって家財が損害を受けると保険金が支払われるが、その金額は家財の損害状況により異なる。2018年現在、損害状況は「全損」「半損」「一部損」の3つに分けられており、「半損」は2017年1月の改定によって、さらに「大半損」「小半損」の2つに区分されている。
災害によって家財時価の80%以上が損害を受けた場合は「全損」に該当し、保険金の100%が補償される。また、損害が家財時価の60%以上・80%未満の場合には「大半損」として保険金の60%、家財時価の30%以上・60%未満の損害は「小半損」として保険金の30%が支払われる。そして、最も少ない「一部損」は、家財時価の10%以上・30%未満の損害に該当し、補償額は保険金の5%である。
ただし、2016年12月31日までに契約した人には改定前の区分が反映されるため、注意が必要だ。改定前の区分では、「大半損」「小半損」の代わりに家財時価の損害が30%以上・80%未満の場合に適用される「半損」に該当するため、保険金の50%が補償額となる。
このように、地震保険は大きな災害に備えた保険であるが、なかには補償の対象とならないケースもあるため、覚えておくと良いだろう。
例えば、中規模の地震により台所の食器が割れてしまった場合、保険金が支払われるかどうかのポイントとなるのは、割れた枚数だ。食器は家財に含まれるため地震保険の補償対象ではあるが、少なくとも家財総額の10%以上の食器が損害を受けなければ「一部損」に該当せず、補償を受けることはできない。
また、地震によって大きな津波が発生し、自家用車が流されてしまった場合はどうだろう。実は、この場合も補償の対象とはならない。自家用車はテーブルやソファと異なり家財には含まれないため、損害の原因が地震・噴火・津波のいずれであっても補償の対象にはならないのだ。

東日本大震災以降、地震保険の必要性がより注目されている
2010年以前は付帯率が50%未満だった地震保険だが、2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、その付帯率は増加傾向にある。特に、地震が発生した2011年度から2012年度の1年間では、それまで53.7%だった付帯率が56.5%に増えるなど、大きく数字を伸ばしている。2013年度以降も付帯率が年々上昇していることからも、東日本大震災をきっかけに地震保険の必要性が大きく注目されていると言えるだろう。
付帯率は、都道府県別に見ても特徴がある。例えば、東日本大震災で被災した東北地方は全国的にも付帯率が高い傾向にあり、2018年時点で公開されている損害保険料算出機構のデータによると、宮城県が86.3%、福島県が73.1%、岩手県が69.1%だ。
また、南海トラフ地震による大きな被害が危惧されている地域でも、高知県が85.2%、徳島県が73.3%、宮崎県が80.3%と、地震保険の付帯率が高い傾向にある。とは言え、全ての都道府県において地震保険の付帯率は50%を上回っているため、全国的に見ても地震に対する備えを意識している人が多いことがお分かりいただけるだろう。
※出典:損害保険料率算出機構/「グラフで見る!地震保険統計速報」
起こり得る自然災害に備えるなら、地震保険への加入を検討しよう!
いつ、どこで被害に遭うか分からないのが自然災害の恐ろしさだ。特に、地震大国である日本では、数十年以内に発生すると懸念されている南海トラフをはじめ、さまざまな災害リスクが考えられる。
災害によって家財を失った場合、新たに全てをそろえるためには多額の資金が必要なはずだ。火災保険のように賃貸契約とともに加入を求められる保険ではないとは言え、将来起こり得るかもしれない大きな災害に備えて、地震保険の加入を検討してみてはいかがだろうか。
文=みつまめ(株式会社YOSCA)