住んでいる賃貸物件で立ち退きを要求された! これって拒否できる?【CHINTAI法律相談所】

住んでいる賃貸物件で立ち退きを要求された! これって拒否できる?【CHINTAI法律相談所】

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賃貸物件に関する疑問に弁護士がアドバイス

賃貸にまつわるトラブルや疑問について解説する【CHINTAI法律相談所】。

入居前から入居中、退去時まで、さまざまなタイミングで発生しやすい賃貸トラブル。その疑問や対応について、不動産トラブルに強い瀬戸仲男弁護士に聞いた。

賃貸トラブルは、いつ巻き込まれてしまうかわからない。現在トラブルにあっている人だけでなく、これから賃貸物件を借りる予定の人もぜひ参考にしてほしい。

瀬戸仲男さん
瀬戸仲男 弁護士

「アルティ法律事務所」所長。東京弁護士会、および東京簡易裁判所・民事調停委員に所属。顧問弁護士業務や遺産相続など取扱分野は多岐に渡り、特に不動産問題に精通している。弁護士になる前に不動産会社に勤務しており、不動産業界・実務にも詳しい。テレビやラジオなど多数のメディアに出演し、不動産関係の講演も行っている。
アルティ法律事務所 公式HP

Q.賃貸物件の立ち退きは拒否できる?

住んでいる賃貸物件で、大家さんから立ち退き要求を受けた。お金もないし、引越しは面倒くさい! 立ち退きの拒否は可能?

A.大家さん側に「正当な理由」がなければ、立ち退き要求は拒否できる

大家さんから立ち退き要求があった場合、大家さんに「正当な理由」がないなら、入居者は拒否することができる

入居者の権利は借地借家法によって保護されている。「大家さんが立ち退きを要求するのは正当である」と認められる理由がない場合は、入居者は退去を求められても無理に応じなくてOKだ。

正当な事由が認められない場合、居住を続けられることが原則であるため、入居者が立ち退きを断る理由を問われることはない。「引越しが面倒」「部屋が気に入っている」といった理由でも問題ないだろう。

では、大家さんのどのような理由なら「正当だ」と認められるのか? 例えば、次のようなケースは正当な理由(正当事由)と判断される傾向にある。

  • 大家さんが自身の居住用・事業用に物件を使用する必要がある場合
  • 生活に困窮しているため物件を売却せざるを得ない場合
  • 住むのが危険なほど建物の老朽化が進んでいる場合
  • 公的な再開発によって建物を手放さなればならない場合

実は、「正当な理由」の定義は厳密に定められていない。そのため、「大家さんと入居者が物件を必要とする事情」や「物件の利用状況」などから総合的に判断されるのだ。

立ち退きに納得できなければ、交渉によって解決するのが基本

正当な理由の有無は、立ち退き要求が認められるかどうかの重要な判断基準となる。しかし、それは調停・裁判で判断されること。まずは、入居者と大家さんの交渉によって解決を図るのが原則だ

立ち退き要求をされても引越ししたくないなら、その旨を大家さんに相談。立ち退きを求められた理由や、退去に伴い支払われる立ち退き料などの条件を聞いて、納得できたなら引越しをすれば良い。条件面が納得できないなら、素直に大家さんと交渉してみよう。

立ち退き料が少なく、入居者の次の住居の確保に支障が出る場合には増額などを考慮してくれるケースもある。立ち退き料は一概に金額が決まっていない。そのため、立ち退きで被る経済的損失をベースに金額を割り出し、妥当な金額を探るとスムーズだろう。

また、大家さんからの立ち退き要求から立ち退き日までの期間が6ヵ月未満であった場合は借地借家法違反なので、期日を延長してもらうことができるだろう。

なお、どうしても退去したくないなら素直に拒否するのも手。大家さんに正当な理由があっても立ち退き自体は拒否できる。立ち退きはあくまでも大家さんと入居者の個人間の問題なので、話し合いで解決を図るのが基本だからだ。

立ち退きを拒否して大家さんが要求を取り下げれば、これまで通り賃貸物件に住み続けられる。もちろん、話がまとまらなければ、どちらが正しいかを判断するために、調停・裁判へと発展する可能性がある。調停・裁判はあくまでトラブル解消の手段。それ自体が悪事というわけないが、手間や費用がかかるので、互いが納得できるように妥協点を探ることが大前提だ。

ここがポイント!

大家さん都合での立ち退き要求は裁判で正当な理由が認められなければ拒否できます。ただし、建物の老朽化などで危険な場合もありますので、立ち退きを求められたら理由をきちんと把握しましょう。また、立ち退きの条件面で納得できない場合は、遠慮なく大家さんに交渉すること。互いに前向きな姿勢で解決を図ることが大切です。

覚えておきたい用語「賃貸借契約の解約」

賃貸借契約を解約するには大家さんと入居者両者の合意が必要。つまり、立ち退きを要求しても入居者側が同意しなければ、立ち退く必要はない。借地借家法第28条では正当な理由がなければ、立ち退き要求が認められない旨が定められている。

借地借家法第28条
物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

借地借家法

立ち退き要求が認められるかどうかは、大家さん側に「正当な事由」があるかどうかが重要となる。理由の正当性は「自己使用の必要性」を基本とし、その他さまざまな事情を考慮。総合的な基準で判断される

注意したいのは、立ち退き料の支払いについて。立ち退き料の支払いは大家さんの正当な理由を補強する条件として認められている。しかし、立ち退き料の支払い自体は正当な事由に当たらない。つまり、「お金を払うから」と言われても、それだけで立ち退く必要はないのだ。

取材・文=綱島剛(DOCUMENT)

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