
証拠が残らない嫌がらせを隣人から受けている場合の正しい対処は? 【CHINTAI法律相談所】
賃貸物件に関する疑問に弁護士がアドバイス
賃貸にまつわるトラブルや疑問について解説する【CHINTAI法律相談所】。
入居前から入居中、退去時まで、さまざまなタイミングで発生しやすい賃貸トラブル。その疑問や対応について、不動産トラブルに強い瀬戸仲男弁護士に聞いた。
賃貸トラブルは、いつ巻き込まれてしまうかわからない。現在トラブルにあっている人だけでなく、これから賃貸物件を借りる予定の人もぜひ参考にしてほしい。
このページの目次
Q.証拠が残らない嫌がらせを隣人から受けている! どうやって対処すべき?
マンションの隣人から嫌がらせを受けている。でも証拠がなく、問い詰めても「知らない」の一点張り。絶対に隣人の仕業だと思うんだけど、これって罪に問える? 正しい対処法を教えて。
A.確たる証拠を押さえるのが大切
結論から言うと、隣人から嫌がらせを受けていても、証拠がなければ罪に問うことはできない。警察に通報しても「民事不介入(=個人間のトラブルに介入すべきではないとする原則のこと)」。器物破損や住居侵入など刑事事件を伴えば対応してくれるが、「のぞかれている気がする」「部屋の中の物が動いている気がする」など、嫌がらせがあったことが明確でない場合は対応してくれないことが多い。
話し合って解決できるのであればベストだが、「言いがかり」だと言われたら追及するのは難しい。重要なのは、相手が嫌がらせをした客観的な証拠を集めること。証拠があれば相手も言い逃れはできず、「実は自分の勘違いだった」というケースも防止することができる。
管理会社に防犯カメラ設置を依頼するのもひとつの手
では、どうやって証拠を押さえるべきか? 最善なのは興信所や探偵などに調査を依頼することだが、大抵の場合は多くの費用がかかる。お金をあまりかけないで対策するなら、防犯カメラの設置が選択肢となるだろう。
防犯カメラは民事裁判でも認められる証拠能力を有しており、嫌がらせの立証にも有効だ。ただ、カメラを設置する場合は、マンションの管理会社の許可を取ることが必須。許可が取れてもプライバシー保護の観点から、設置場所や撮影範囲を考慮しなければならない。
自室内の設置であれば問題ないが、玄関前などの室外に設置する場合は不特定多数の人が映らないように考慮しなければならない。さらに「防犯カメラを設置している」と周知するなど、防犯目的の撮影だと明示する必要があり、自治体によっては設置に関する条例も設けられている。室外に設置するなら相応の手間が必要なので、管理会社に設置してもらうのがベストとなる。
そのため、まずは管理会社に解決に向けて相談。それでも嫌がらせがなくならないなら「防犯カメラの設置してくれないか」とお願いするのが手順として良いだろう。可能なら他の住民に事情を説明し、集団で交渉できれば管理会社の理解も得られやすくなるはずだ。
結果、防犯カメラを設置してもらえず嫌がらせも解消されなかったなら、探偵や弁護士などトラブル解決の専門家に依頼しよう。相手を刺激して大きなトラブルに発展するのを避けるためにも、自分で無理に解決しようとしないことが大切だ。
ここがポイント!
隣人トラブルは証拠を押さえることが大切です。防犯カメラの設置は有効ですが、室外に設置したい場合は、プライバシー保護の観点からさまざま知識が必要。そのため、管理会社に「設置してくれないか」と交渉するのが無難でしょう。結果、設置されなかったなら専門家への依頼を検討してください。
覚えておきたい賃貸用語「証拠能力」
証拠として用いることのできる資格があること。民事訴訟では基本的にはどんな物にも「証拠能力がある」とみなされるため、防犯カメラの映像にも証拠能力が認められている。なお、刑事訴訟では防犯カメラの映像が証拠と認められるかは内容次第となる。
取材・文=綱島剛(DOCUMENT)
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