蜂の巣駆除って自分でできる?業者の選び方から蜂の魅力までスズメバチ芸人丸沢さんに聞いてみた
怖いだけじゃない! 奥深い魅力をもつ蜂を知ろう!
もしも蜂がいたら、まず大事なのは冷静になることと、むやみに近づかないこと。それが蜂から身を守るために大切なこと。蜂からしてみたら、自分の何百倍も大きい人間に向かってくるなんて、本当に命がけだ。だから相手を知ることってとても大事。
前回に引き続き、大学時代に昆虫の研究室に入ってスズメバチで卒論を書いた経歴をもち、スズメバチとルームシェアする、スズメバチ芸人の丸沢 丸さんに蜂の巣の駆除や蜂との付き合い方について伺った。
今回の記事には蜂の写真は登場しないので、もしもの時に備えて苦手な人も是非チェックしてほしい。

教えてくれたのは?
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蜂の巣の駆除は業者or自分?
蜂の巣駆除には専門知識が不可欠!プロに頼むのがベスト
——もしも蜂の巣をみつけた場合、どう対処したらいいんでしょうか?
自治体によっては防護服を貸してくれるところもあるんです。ただ防護服だけポーンと渡されても……。やっぱり知識がないと難しいのかなと思いますので、専門の駆除業者さんに頼むのがベストです。
例えば、キイロスズメバチは小さな巣からスタートし、働き蜂の数が増えると引越しをする習性があります。その見つけた巣が元々のものなのか、引越してきたばかりの巣なのか。時期や大きさを見て判断するしかありません。いずれにしても、外に餌や巣の材料を調達に行って戻ってくる働きバチ(戻りバチ)は必ずいます。巣がなくなったことで興奮して近くの人間に攻撃するかも!? 巣を取り除けば終わるわけじゃないんです。
——確かに。戻ってみて家が無かったらだいぶパニックになるのは人間も同様ですね
そうそう(笑)。みんなで一旦そこに集まって、どうする?と相談しているように見えます。中にはそこに新たに巣を作り始める個体もいます。
巣を壊すこと自体は比較的簡単ですが、その後の知識が必要なので、やはり素人判断は難しいと思います。 できれば業者さんにお願いするのが一番でしょう。
——業者さんに頼むと、蜂の巣の駆除はいくらくらいかかるんでしょうか?
業者さんによって違うんです。なぜなら定価がないから。良心的なところだと1〜2万円くらいから。巣ができている場所、高さによって料金は変わると思います。悪質なところは簡単な駆除依頼でも3倍、4倍の値段を取ることも。市区町村が提携している業者や実績のあるところを選んだほうが安心だと思います。
市区町村のホームページに提携業者の案内があったり、自治体が駆除業者の手配をしてくれる場合があるので、お住まいの地域の役所に問い合わせてみると良いでしょう。
先にも触れた通り、スズメバチの対処は下手をすると他の人が刺されてしまうかもしれないから、駆除した先を考慮しておかないと危ないんです。 業者さんもただ巣がある場所に行って駆除するのではなく、家の立地や巣がどこにできているのかで対応が全然変わってくるので、そのお宅でどう駆除するのかを事前にしっかりシミュレーションしていますね。

蜂が巣を作りやすい場所って?
——そもそも蜂ってどこに巣を作るんでしょうか?
条件さえ合えば、どこにでもいるのが蜂です。特にキイロスズメバチとコガタスズメバチは、都市環境への適応力が高いので都心部でもよく見かけます。特にキイロスズメバチは、土の中や木のウロ、身近なところでは植え込みや屋根裏や軒下、雨戸の戸袋など、どんなところでも巣を作ります。
オオスズメバチやヒメスズメバチは土の中や木のウロといった閉鎖空間に巣を作るので、山などにいることが多いです。巣を作る場所が限定されるので、都会ではあまり見かけません。地方や都市部関係なく、スズメバチがよくいるのが神社仏閣です。寺社仏閣は涼しいし、土があり木々が豊かなので巣を作りやすく、手水舎など水場があるので、蜂たちにとっても快適な場所です。

余談ですが、スズメバチは魚介系の匂いが好きです。お祭りなどでのイカ焼きやエビ焼きの屋台の上を匂いに釣られて飛んでいたり、海辺でイカや魚の一夜干し・干物などを作っているところに飛んできては、肉団子を作る姿を見ることができます。
——スズメバチの居場所が、いかに人間の生活圏に近いかが理解できました。そのうえ、飲み物やフルーツなどの蜂の好物も多いんですね
そうそう。キャンプ場やBBQ場などにもスズメバチがよくいます。焼いているものや時間帯にもよりますが、涼しくなってきたり、人が動きやすい時間帯はスズメバチたちも活動しやすいんです。
危険な生物として恐れられているサメやクマとかは、住宅地で普通の生活をしていればそこまで出合いません。だからスズメバチは、いちばん身近な危険生物ともいえるのだと思います。

益虫や伝統食として、意外と親しまれている蜂
——ここまで、蜂の怖い面と対策を中心にお伺いしてきましたが、蜂に親しみを持てそうな知識も教えていただけないでしょうか?
静岡のお茶畑ではクロスズメバチは害虫を食べてくれるので、あえて駆除しません。林業でも木材に悪い病気を移してしまうカミキリムシなどを食べてくれると重宝がられています。みんなから見えていないところで、蜂たちも役に立っています。
また、残念ながらここ数年はコロナの影響で中止になっていますが、岐阜県の南西部にある恵那市串原という地域では毎年11月3日に「くしはらヘボまつり」が行われています。ヘボとはクロスズメバチの方言です。全国の愛好家たちが自分の育てたクロスズメバチの巣を持ち寄って重さを競い合います。
お客さんはその巣を購入することができるのですが、蜂の子を食べる文化があるこの地域ならではのお祭りです。
——岐阜や長野などの山間部では、貴重なタンパク源として伝統的に蜂の子が食べられていますもんね
はい、昔からスズメバチは食用として愛されてきました。
知り合いなどに蜂の巣の駆除の依頼を受けることがありますが、大きな場合は7kg以上になることもあります。
巣の中には、幼虫からサナギ、羽化しかけなど、様々な成長段階のスズメバチがいます。巣の駆除後には、そのお家の方と一緒にタンパク質たっぷりの蜂料理をいただくことがあります。
幼虫やサナギの場合、いちばん簡単な調理法は茹でる、炒めるです。シンプル・イズ・ベスト。かつ美味しい。
例えば幼虫はしっかりと茹でてポン酢をかければ、白子ポン酢のような味が楽しめますし、炒めるとナッツのような味になります。
幼虫をより美味しくいただくためにやっていただきたいのが肝抜きです。肝は苦くて少し魚臭さのようなものを感じます。サンマの肝を食べたときをイメージしていただけるとわかりやすいかも。
幼虫の頭を取って、お尻側から押すとぷりっと出てきます。内臓が1/3くらいを占めているのでボリュームダウンにはなりますが、肝抜きをしておくと味が格段にアップし、ぷるりと甘い幼虫がいただけます。
成虫は硬いので揚げないと食べられませんが、揚げて塩と青のりをかけても美味しいですよ。羽や足はエビと同じで、歯に挟まったりするから取ったほうが食べやすいです。スズメバチ独特の香りがありますが、エサは蜜がメインなので、そこまで臭みは感じないと思います。
——丸沢さんはスズメバチは何種類くらい食べたんですか?
オオスズメバチ、キイロスズメバチ、コガタスズメバチとクロスズメバチです。
クロスズメバチは、成虫でもミツバチより小さいくらいなんです。黒いし、一瞬ハエかな?と思うくらい。
それくらいの大きさなら、幼虫と一緒に佃煮などにしても硬さは気にならないはずです。 スズメバチは昆虫界でも上位に入る美味しさだと思います。ただし、生食は何があるかわからないので、絶対にやめましょう!
※甲殻類アレルギーのある方は、昆虫食は控えてください
最強!?いえいえ、スズメバチだって楽じゃない
——我々にとって身近な存在であり、ある意味最強のスズメバチですが、敵なんているんですか?
蜂はものすごく種類がいて、世界では30万種ともいわれています。そのうち日本国内には5,000種以上いるのではとされています。最近も国内で新しい蜂が発見されたとネットニュースになっていました。新種で見つかったのが、何十匹もまとまって星型の繭を作る「ホシガタハラボソコマユバチ」です。コマユバチは、蛾や蝶などの幼虫にタマゴを生み、卵からかえった幼虫は宿主の体内を食べて育ち、十分育ったところで宿主の体から脱出し、宿主の外側で繭を作ったりする寄生蜂です。
実は、蜂の世界は針(産卵管)で何かに卵を産み付ける、寄生する種が圧倒的に多いんです。蝶の幼虫に卵を生みつけて寄生するものもいれば、植物の葉や茎に卵を生みつけて植物に寄生するものもいます。なんと、スズメバチに寄生をする「エゾカギバラバチ」という蜂もいるんです。エサに紛れてスズメバチの幼虫の体内に侵入して、幼虫を中から食べて、食べ残しをふたにして自分は部屋のなかでサナギになります。
一説によると、1つの昆虫種に対して寄生する蜂が1種はいるんじゃないか?というくらい、蜂は寄生に特化しています。 そんな蜂界のごく一部に針(産卵管)を寄生に使うのではなく、刺すことに特化した毒針として使うグループがいるんです。みんなが知っているスズメバチやミツバチ、アシナガバチなどの「刺す蜂」は蜂界の中の本当にごく一部、マイノリティな存在なんです。
スズメバチ芸人・丸沢さんが語る蜂の魅力
——最後に、丸沢さんにとってのスズメバチの魅力を教えていただけますか?
スズメバチは怖いという印象を抱いている方も多いと思いますが、それは局所的な部分です。僕にとって、かっこよさもありますが、9割くらいは“面白い”が占めています。本が1冊書けるくらいトピックがあるんです!
例えば彼女たちがスゴイと思うのは成虫と幼虫の「栄養交換」。成虫が持ってきた肉を幼虫に食べさせると、幼虫は(お礼に?)甘い液体を吐き出します。その液体が成虫の栄養剤になっているというから面白い。さらに、自分の巣の仲間が亡骸になったら食糧としてと捉える。餌が取れなくなったら自分の巣の幼虫を非常食とする。など、効率重視のシステマチックなところが魅力です。
蜂の巣の育房がなぜ六角形なのかはまだ解明されていないので気になるところですし、巣の補強にサナギの繭や幼虫のフンを使うのも面白い。かゆいところに手が届くような感覚(笑)。
スズメバチ講座でお子さんたちにスズメバチを見てもらうと「面白い!」「かわいい!」という言葉が出てくるので、スズメバチの魅力には毎回感動しています。
スズメバチの生態や魅力を知ってもらうことで、刺される人が少しでも減ってくれたら嬉しいです。


取材・文=市村幸妙
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