
外泊分の家賃を値引きしてくれ! そんなワガママを叶えてくれる賃貸物件を発見
「外泊すると家賃が下がる賃貸住宅」について調査
賃貸物件や暮らしに関する、気になるニュースをざっくり解説。要点を噛み砕き、知って得する情報をお届けする。
今回、チョイスしたのは「外泊すると家賃が下がる賃貸住宅」。多拠点生活者だけでなく定住を望む人からも、新しい住宅の選択肢として人気を集める理由に迫る。
【ニュース】外泊すると家賃が下がる賃貸住宅が話題!

昨今では多様化する生活に対応するため、さまざまな賃貸住宅が登場している。中でも注目を集めているのが、入居者が帰らない日は家賃が下がる「Re-rent Residence(以下、リレントレジデンス)」だ。
入居者は外泊中の部屋をホテルとして提供。同物件の運営スタッフによって部屋の清掃や貸し出しが実施され、宿泊者がいない場合でも、外泊日数に応じて家賃が減額される。
2021年5月に「リレントレジデンス渋谷」がオープン。6部屋の募集に対して5倍以上となる32件の問合せがあるなど好評で、2022年3月には3部屋が追加された。さらに、同月に第2弾となる「リレントレジデンス押上」も開業。順調に物件数を増やしている。
部屋の貸し出し申請も簡単な「リレント」の仕組み

リレントレジデンスでは入居者の外泊を前提としているため、部屋を貸し出す際に面倒な手続きは必要ない。
同社が採用する「リレント機能」では、入居者がアプリで外泊する日を事前に申請。カレンダーで日時を指定するだけでOKだ。外泊前に自分の荷物を鍵付きの収納に保管するだけで良いので、貸し出しへの手間はほとんどかからない。
また、荷物の盗難などのトラブルに備えて、月額500円で最大10万円までの補償も用意されている。
気になる家賃の割引金額は物件によって異なる。リレントレジデンス渋谷では外泊日数1日あたり5000円、リレントレジデンス押上では1日あたり3000円値引きされる。申請できる日数上限は15日となっているため、リレントレジデンス渋谷では最大7万5000円、押上では最大4万5000円も安くなる(2022年7月1日時点)。
ホテルとして利用されるため、必要な家具・家電も物件に備え付け。部屋によってはハーマンミラーのワークチェアなど高級インテリアが用意され、快適に暮らすことができる。多拠点生活者や出張が多い単身者などには、特にありがたいシステムだろう。
【深掘り】外泊すると家賃が下がる賃貸住宅は増える? その現状を調べた

外泊時の部屋をホテルとして貸し出せる「リレント物件」を求める声は今後増えていくだろうし、リレント機能のシステム自体はさまざまな賃貸物件で導入可能だ。しかし、賃貸市場で今後、リレント物件は増えていくだろうか?
リレントレジデンスを運営する株式会社Unitoの近藤佑太朗さんに質問すると「賃貸市場においてはニッチな需要ですが、少なからず増えていくと思います」と教えてくれた。
定住にとらわれない自由な暮らしを好む人は、全体の1〜10%はいると思います。日本人口に当てはめると120万人〜1200万人はいるので、彼らのニーズに応える物件が今後増えていくでしょう。当然、私たちも物件を増やしていく予定です。
さらに、賃貸物件が借り手市場となっていることもリレント物件が増える要因だ。借り手がつかないワンルームや1Kなどの付加価値となるし、空室期間もホテルとして貸し出せる。実際、リレントレジデンスでは宿泊料によって通常の賃貸物件より1.3倍ほど利益が高い。貸主側にもメリットがあると言える。
また、家具・家電が揃っているので、仕事や家庭の事情で「3ヵ月だけ住みたい!」といったニーズを取り込めるかもしれない。短期間の賃貸契約をできる物件は少ないため、住まいを臨機応変に変えたい需要にマッチするだろう。
こういった理由から、賃貸物件が供給過多になっている地域では有効な空室対策。賃貸物件のオーナー側も賃貸物件のリレント化を望む可能性がある。ただ、リレント物件が経営的に成り立つのは「若者に人気のある都市部に限られる」と近藤さんは言う。
リレントレジデンスの入居者は外泊頻度が高い人が大半であるため、交通の便が良い立地であることは大前提。入居を希望される層も35歳以下の単身者がメインで、「憧れの街に試しに住んでみたい」というニーズもあります。ホテルとしても宿泊客に来ていただくためには、都市部でも人気の街でないと難しいでしょう。
将来的には地方にもリレント物件ができる可能性はあるが、現状では都会の一部エリアに物件が集中すると予想される。リレントレジデンスもまずは渋谷を中心に物件を増やしていく予定だという。
値引きだけでなく内装や立地も人気の理由

ただ賃貸物件として重要なのは、やはり賃貸ユーザーに受け入れられるかどうか。近藤さんによるとリレントレジデンスの入居者の満足度は非常に高いという。
短期契約を望む方は少ないそうで、定期的に空室は出るものの、HPや自社プラットフォーム「Unito」で入居募集すると、すぐに申し込みが殺到する。
入居者層は渋谷と押上で異なる。渋谷はIT企業や広告代理店などで働く25〜35歳の経営幹部や経営者。押上は会社勤めのサラリーマンが多く、コンサルティング会社などの大手企業に勤める人もいるそうだ。
入居者が外泊される日数は平均すると8日程度。週末になると家族のもとに帰る単身赴任者や、実家にいる両親のお世話をしに戻る方など、二拠点で暮らす手段として入居されている方が多いです。
意外だったのは、外泊時に値引きされる経済性よりも物件のスペックや利便性が好まれていること。アクセスが良い好立地に、空間設計のプロが手がけたオシャレな部屋に住めること自体が好評のようだ。
ホテルとしてのノウハウを賃貸物件に活かすことで、リレント物件は一般的な賃貸ユーザーからも大いに歓迎されそうだ。
【ポイント】外泊すると家賃が下がる賃貸住宅のメリット

魅力いっぱいのリレント物件。リレントレジデンスの場合、通常の賃貸物件と比べた場合のメリットは3つあるという。
1つ目は当然、外泊時に家賃が減額されること。経済性もさることながら、自分で毎月の家賃を変更できるので、ライフスタイルの自由度が高くなる。
2つ目は、申し込んだその日から入居できること。リレントレジデンスでは最短30分で賃貸契約を結ぶことが可能。WEBで申し込みをしたら、ウェブ会議システム(Zoom)で重要事項説明を聞き、電子契約を結ぶ。電子ロックなので開錠もスマホなどで行えるため、契約当日でも入居できる。
そして3つ目は、手厚いコンシェルジュサービスだ。外泊時は部屋が掃除されるので、帰宅すると部屋がキレイになっている。ティッシュなど消耗品も補充してくれるため、買い出しの料金や手間が省けるのはうれしいところだろう。
コンシェルジュとはLINEでやり取りができ、面倒な手続きも必要ありません。物件近隣の情報を提供するなど暮らしをサポートも承っており、入居者とコンシェルジュとの距離感が近いのもリレントレジデンスの強みだと思います。
リレントレジデンスは「高コスパで不満なし」

さらにリレント物件のメリットについて詳しく知るべく、リレントレジデンス渋谷に住む本田雄一さん(仮名)に話を聞いた。
もともと本田さんは地方に住んでいたが、事業を始めるために上京。当初はホテル暮らしをしていたが、荷物や環境の問題から部屋を借りることにした。その際SNSでリレントレジデンスを知り、興味を持ったという。
ホテル暮らしと違って荷物を部屋に置いておけるので、きちんと「自分の家」という感覚があります。リレントレジデンスでは仕事に集中しやすい環境が整っているので、助かっています。
数ヵ月程度の滞在なら本田さんのようにホテル暮らしも候補となるが、生活の拠点として落ち着いて暮らしたいならリレント物件に軍配が上がるようだ。
一方でデメリットについて質問すると、事前に外泊の申請をするため、急に予定が変更となった場合はキャンセルできない点を挙げた。ただ、これは部屋を宿泊者に貸し出す以上、仕方がないことだろう。
自分の部屋を他人に貸すことに対しては「私物は鍵付きの収納に保管できますし、運営スタッフがきちんと管理してくれている。そもそも盗まれて困る物は置かないようにしているので、特に気にしたことはありません」と回答。「不満はなく、渋谷という立地でコスパが良い生活ができている」と感じているという。
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【まとめ】外泊すると家賃が下がる賃貸住宅に今後に期待大
外泊すると家賃が安くなるという点が目を引くリレントレジデンス。しかし、話を聞くと賃貸物件とホテルの二つの性質を持つ、ハイブリッドな住宅としての魅力が浮かび上がってきた。
こういったリレント物件は、多拠点生活者や自由な暮らしを好む人はもちろん、オシャレな暮らしがしたい人や、家事の手間を省きたい人などにも喜ばれることだろう。一時期の流行りではなく、住まい方の一つの選択肢として定着することに期待したい。