クリエイターが集う秘密基地系シェアハウス「渋家」に住む方法は?現住人に取材してみた
若きクリエイターが集う秘密基地系シェアハウス
DJ、ダンサー、写真家、美術家。さまざまなクリエイターが暮らすシェアハウス・渋家(しぶはうす)。
どうすればそんな刺激的な住まいに出合えるのだろうか。数年前、ここ渋家に引越してきたケントさんに、この部屋を見つけたきっかけと入居までの経緯を聞いてみた。

渋家のリビング。異なる業界に生きる者同士、いつまでも話は尽きない
プロフィール
名前:KENT(ケント)さん
性別:男性
年齢:20歳
職業:クリエイティブディレクター
ルームデータ
所在地:東京都渋谷区
家賃:40,000円
間取り:4LDK
築年数:約8年

渋家の間取り図。地上3階まであり、地下1階には防音室まである
ルールがないのがルール!?刺激あふれるシェアハウス
「渋家(しぶはうす)」のコンセプトをわかりやすく言うと「クリエイターやアーティストが集う場所」。アーティストの齋藤恵汰氏が“現代アートの作品”として2008年に創設した。ここで行われる人々の活動全てが“アート作品”というわけだが、渋家で暮らす人々は、自分たちが作品の一部だという意識はない。

地下1階にある防音室では、月に2回ほど渋家の住人がDJを回しパーティーを行っている。ここで新しい出会い、アイディアが生まれる
現在渋家のメンバーは住んでいるのが15名、週3〜4日来ているメンバーが20名で計35名、そのうち女性は10名いる。20代前半が中心で、定員はなく、みんなクリエイティブ系やアート系だが職種はバラバラ。
入居者募集情報を知ったきっかけはSNSだった
ここで暮らすケントさんは好きなアーティストの情報をSNSでこまめにチェックしているうちに、渋家に行けば彼に会えると知った。それが高校3年生の時。
「こまめにチェックを続けていたら、ある日渋家が入居者募集していることを見つけました。彼と一緒に仕事をしてみたいなと思っていたので、うれしかったですね」(ケントさん)
その後卒業と同時に渋家に住むようになり、イベントの企画運営に必要なスキルをここで身に付け、イベントのプランナー・ディレクターとして活躍している。
住むだけではなく、互いの人生を刺激しあえる空間
ここで暮らす住人は個性豊か。趣味でカメラを楽しんでいたナオキさんは、ここで刺激を受けて、写真家として生きていく決意をした。一方IT企業で働いているミネさんは、単に寝泊まりできる場所として知人に渋家を紹介してもらったのだが、気がつけばメディアアートを作っている。
「みんな、ここはシェアハウスではなく楽しい場所で“しかも住むこともできる”という感覚です」(ナオキさん)

玄関を開けてすぐにあるPCルームには、夜遅い時間まで作業をしたり、楽しそうに話をしたり、意見を言い合う住人がいた。眠らない渋家ではクリエイティブが止まらない
渋家に集う理由は人それぞれだが、ここから得られる刺激や情報に魅力を感じている点は他のコンセプトシェアハウスと同じだ。
「個人的な夢としては、各自がそれぞれさまざまな分野を極め、外部から『渋家に頼めば何でもできそうじゃね?』という、一種の“村”のようになりたいですね」とケントさんは語ってくれた。
寝床の確保は早い者勝ち!独特なルールも「渋家」の魅力
一方で渋家は一般的なシェアハウスとは異なる点もある。
「個人の個室はありません。雑魚寝できる寝室はありますが早く寝た者勝ち。あぶれるとリビングや、地下にあるイベントスペースで寝ることもよくあります」(ケントさん)

3階の寝室。自分の布団はなく早い者勝ち。布団で寝られなくても2階のハンモックや地下にも寝る場所があるので問題ないそうだ
つまりプライベート空間とパブリックスペースが曖昧なのだ。また掃除や料理などの家事分担も特に決まっていない。それが住民間でトラブルを引き起こすこともあるが、どう解決しているのだろう。

共用の食料などを食べた分、自分で金額を決めて入れる貯金箱。その日によって自分で金額を調整して入れている。信頼関係が成り立ち、助け合いながら生活しているのがわかる
「渋家にはルールがありません。作ると『あれはダメ』『これもダメ』と禁止事項が増えて、それがクリエイティブな発想や活動の妨げになるからです。トラブルは基本的にお互いに言いたいことを言い合って、他のメンバーと共にみんなで解決するようにしています」(ケントさん)
住民同士のコミュニケーションで、日々の問題も解決する。それが渋家スタイルのようだ。
「月に1回、みんなで会議を行います。会議ではイベント等どんなことをやったら渋家が楽しくなるのかといったことから、代表の選出まで行います。代表とは周囲への声がけなど、気持ちいいコミュニティーになるよう率先して動くメンバーのこと。結構疲れる仕事なので任期は1年くらいです」(ケントさん)
最後に、もしも一人暮らしだったら?とケントさんに聞いてみた。
「一人暮らしをしていてもここに毎日遊びに来ると思います。それくらい渋家は刺激的な場所です」(ケントさん)
文=籠島康弘
写真=古本麻由美
※「CHINTAI2018年7月号」の記事をWEB用に再編集し掲載しています