MeetsRegional編集長、MARUZEN&ジュンク堂の書店員オススメ!関西が舞台の本8選

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関西にきっと住みたくなる! 街情報誌編集部&書店員が推薦する物語とは?

街の情報を知り尽くした街情報誌の編集部と、その街の書店員に、読んだらその街に住みたくなる本を紹介してもらうこの企画。

今回は関西の街を最も知る雑誌・Meets Regional編集長の竹村さんと、大阪府梅田にあるMARUZEN&ジュンク堂の書店員に、読んだら関西がもっと好きになる、関西に住みたくなるオススメの本を教えてもらった。

編集部が推薦する街が好きになるこの1冊

教えてくれたのは?

Meets Regional 編集長 竹村匡己さん
関西で暮らす人の雑誌として大人の遊びを提案。毎月組まれる特集は街情報のみならず、幅広いジャンルを網羅している。
web:https://www.lmagazine.jp/meets/

Meets Regional編集長 竹村さん推薦本①:街道をゆく十津川街道(著・司馬遼太郎)

街道をゆく 12 十津川街道 (朝日文庫)

秘境と呼ばれた十津川郷の秘やかなる歴史を歩く

日本を代表する作家・司馬遼太郎の紀行集『街道をゆく』シリーズの十津川街道篇。大和盆地と熊野の間に位置する当地が築いてきた歴史と風土を語る。

全国各地(台湾も!)を歩き渡っている本シリーズだが、奈良・十津川の回は、関西の近郊にも関わらず群を抜いて遥か遠くを旅している感を味わえる。現在でもかなり細く険しい山道をたどらないと行けない十津川だが、40年前の執筆当時は道の舗装もされておらず、「幾度も車の天井に頭をぶつけた」という描写が生々しい。

日本にはまだまだ知らない場所が山ほどあり、ああ日本は広いなと感じずにはいられない一冊。十津川の歴史にも当然触れられており、日本の歴史の深さ・険しさも思い知らされる。(竹村さん)

Meets Regional編集長 竹村さん推薦本②:エヴリシング・フロウズ(著・津村記久子)

エヴリシング・フロウズ (文春文庫)

「中学3年生」というさわやかな青春の日々

絵の好きな中学3年生、ヒロシ。母親に反発し、学校と塾を往復する毎日にうんざりしながらも受験は迫りくる。そして、ある時ついに事件が……。大阪を舞台に、中学3年生の少年少女の揺れる心を、繊細な筆致で描いた青春群像小説。

物語の舞台である大正区は、お笑い・タコ焼き・「でんがなまんがな」といった大阪のイメージとはほど遠い、独特の雰囲気をもつ地域だ。川と海に囲まれているため橋を渡らなければたどり着けず、地元民以外はあまり用事のない場所かもしれない。

著者は大正区を自転車でロケハンしたため、リアルな街感が伝わる青春群像劇に仕上がっている。大人になりきれない中学3年生。あの頃、僕らの世界は半径5キロ以内だったはず。(竹村さん)

Meets Regional編集長 竹村さん推薦本③:城崎へかえる(著・湊かなえ)

城崎へかえる

城崎へかえる

城崎温泉でしか買えない!?人気作家が描く温泉物語

NPO法人「本と温泉」のプロジェクトによる一冊。志賀直哉の「城の崎にて」をはじめ、多くの文人が足跡を残してきた名湯・城崎温泉。

若旦那衆が「ただお客を待っているだけじゃジリ貧になる!」と、地域再興のためプロジェクトを立ち上げた。目指すは「地産地読」。関西ゆかりの人気作家に、城崎温泉でしか買えない作品を書き下ろしてもらうというものだ。

プロジェクトの作家は第1弾に江口宏志、第2弾に万城目学と続き、第3弾は、イヤミスの女王・湊かなえ。小説家の母を持つ主人公が、喪失感を癒やすために母との思い出の地である城崎温泉へ“帰る”物語だ。装丁も城崎名物のカニをモチーフにした特殊加工で、お土産にも喜ばれるだろう。(竹村さん)

Meets Regional編集長 竹村さん推薦本④:ノルウェイの森(著・村上春樹)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

静かに、そして激しく。喪失と再生の物語

37歳の主人公・ワタナベトオルは、出張先のドイツから帰国する飛行機の中で、ビートルズの「ノルウェイの森」を耳にする。それをきっかけに学生時代の記憶がよみがえり、直子との日々を思い返していく。

言わずと知れた、80年代の大ベストセラー。村上春樹の人気を決定づけた1冊だが、実はバブルを語るうえで欠かせない存在ではないかと個人的には思う。

当時、その特徴的な口ぶりと行動をマネする男子学生が続出した(?)という、主人公・ワタナベ君。そのワタナベ君が愛して止まない直子が療養のために入所したのが、京都の療養所である。神戸出身の著者がなぜ京都を選んだのかは謎だが、北部の「京都市内ながらおそろしく山深いところ」にあるという設定だ。(竹村さん)

関西の書店員が推薦する街が好きになるこの1冊

教えてくれたのは?

MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店 中村優子さん
阪急梅田駅より徒歩3分の場所にある大型書店。国内最大の売場面積と蔵書数を誇る。洋書にも力を入れていて、小説や雑誌、専門書も豊富。

MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店 中村優子さん推薦本①:恋都の狐さん(著・北夏樹)

恋都の狐さん (講談社文庫)

初恋の相手は「狐さん」!? 奈良が舞台の純愛ストーリー

豆を手にすれば恋愛が成就すると噂のある、東大寺二月堂での節分の豆まき。奈良の女子大に通う「私」は、“20年間彼氏なし”生活からの脱却を願って、その豆まきに参加する。そこで、狐のお面を被った着流し姿の奇妙な青年、「狐さん」との運命的な出会いをすることに。

ミステリアスな狐さんと、まじめで純情な理系女子の主人公。東大寺や猿沢池など、奈良の名所を舞台に2人の恋愛模様が繰り広げられる。狐のお面を被り続けているなんて、それだけで女性からは引かれそうな気がするが、ピュアな主人公はそれを受け入れて恋に落ちる。

正統派恋愛小説として、我々を裏切らない展開がたっぷり用意されている。奈良の魅力がいっぱいに詰まった、純愛の世界をぜひ。(中村さん)

MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店 中村優子さん推薦本②:通天閣(著・西加奈子)

通天閣 (ちくま文庫)

「しょーもない」世の中に、暖かい灯をともす絶望と再生の物語

舞台は大阪・新世界。夢を失いつつ町工場で働く中年男と、恋人に見捨てられそうになりながらスナックで働く若い女。八方ふさがりに見える2人は周りの喧噪をよそに、さらに追い込まれていく。ところが、通天閣で起こった大騒動が2人の運命を変えることに……!?

今ではすっかり観光地化してしまっている新世界だが、少し路地に入れば普段通りの生活を営む人たちがひしめいている。

コテコテな関西弁のセリフは、どれも大阪人なら「わかる!」とぐいぐい引き込まれるが、それ以外の日本人は驚かされること間違いなし。新世界という街を実際に肌で感じてほしいので、まずは小説を読んで、それから意を決して足を踏み入れてみてほしい。(中村さん)

MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店 中村優子さん推薦本③:偉大なる、しゅららぼん(著・万城目学)

偉大なる、しゅららぼん (集英社文庫)

琵琶湖を舞台に繰り広げられる、抱腹絶倒の青春活劇!

日本一の大きさを誇る、滋賀県の琵琶湖。主人公の高校生・日出涼介はその琵琶湖から特別な力を授かった「湖の民」の一族だ。日出家のライバルで、同様に特殊な「力」をもつ棗家の長男・棗広海と、日出家長男の淡十郎、涼介が同じクラスになった時、力で力を洗う戦いの幕が切って落とされた!

とにかく奇抜なストーリーだが、何が良いって登場人物のキワモノぶり。“城”に住んでいる淡十郎は馬で高校へ通うし、堀を小舟でこぐ源爺や、強すぎる女性・清子などなど、とにかく目が離せないキャラが目白押しだ。

映画にもなったが、実写より小説のほうが滋賀県石走街の魅力を満喫できると思う。少し厚みがあるが、じっくりと万城目学ワールドに没頭してほしい。(中村さん)

MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店 中村優子さん推薦本④:幻坂(著・有栖川有栖)

幻坂 (角川文庫)

恐ろしいだけではない、人情に胸打たれる怪談短編集

大阪にある7つの「坂」を舞台に、歴史的因縁や文化的背景を織り交ぜながら、大阪の人々を叙情的に描き出した怪談短編集。

舞台となった大阪の上町台には、「天神坂」や「逢坂」など七つの坂からなる「天王寺七坂」というエリアがある。昔からの仏教寺院が多く集まり、緑も豊かで、大阪の古きものが残っている場所だ。京都や奈良にばかり歴史を感じている方が多いと思うが、大阪も歴史の古い街である。

仁徳天皇の時代から日本の中心として厳然と存在しているのだ。本書で語られる7つの坂。古き時代を感じさせるその幻想的な姿は、ビルや商業施設が乱立している現在の大阪の良さを再認識させてくれるはずである。(中村さん)

街を知るには、その街が舞台になった本を読むべし!

今回は本のプロたちに、関西が舞台になっている本を紹介してもらった。住む街を探す際、物語の主人公になったつもりで部屋を探すのはどうだろう。きっと自分に合った、ステキな街が見つかるはずだ。

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※「CHINTAI2017年9月号」の記事をWEB用に再編集し掲載しています
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CHINTAI編集部
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