「せっかくなら面白いほうへ行きたい」ぐんぴぃが数々の失敗を人生の転機に変えてきた引越し

ニュース番組の街頭インタビューで注目を集め、開設したYouTube「バキ童チャンネル」はSNSを中心に話題となり、現在は登録者数200万人に迫る人気チャンネルに。そうして知名度を着実に上げてきた、お笑いコンビ「春とヒコーキ」ぐんぴぃさん。近年では『大病院占拠』(日本テレビ)といった人気ドラマシリーズや映画にも出演し、活動の幅を広げている。
前編では学生時代〜会社員時代のお引越し遍歴について話を聞き、一人暮らし初心者ならではの悩みや解決策、引越し先の街を楽しむコツなどを語ってもらった。後編となる今回は、芸人同士のシェアハウスでの暮らしから一人暮らしに戻るまでのお引越し遍歴と、その中で切り拓いてきたキャリアの話を深掘りする。
過酷なシェアハウス生活、それでも「覚悟ができた」
――前編では上京後の一人暮らしについて伺いましたが、その後、シェアハウスに引越されたそうですね。

ぐんぴぃ 先輩芸人のガクヅケ木田さんがシェアハウスを始めて、そこに誘っていただきました。僕としては「面白い人に囲まれたら面白くなれるだろう」という発想もあったし、木田さんや、サスペンダーズ古川さんといった尊敬する先輩も住むということで、僕も住むことにしたんです。
ただ、木田さんという人は、言っていることがコロコロ変わりがちというか……僕が引越す前に、段ボールを7個くらい持っていくと言ったら「いいよいいよ!」と言ってくれていたのに、最終的には「本当は段ボール1個も厳しい」となり。もともと「ぐんぴぃの個室はないよ」と言われていまして、最終的に押入れの1階部分に住むことになりました。

――実際、どのように暮らしていたのでしょうか。
ぐんぴぃ 家賃や電気代を払わない人はいるし、ごみは全員捨てないし、毎日ケンカばかりしていました。それでも、シェアハウス暮らしをしていた頃はコロナ禍だったので、孤独を感じることがなくて良かったと思います。一人暮らしをしていたら芸人を辞めていたかもしれない。
芸人のシェアハウスに入居するということは、個人の時間というか、プライベートがほとんどないだろうとは思っていたんです。それに『ABEMA NEWS』で受けた街頭インタビューが話題になって「バキ童!」と街で声をかけられることが増えた頃でもあったので、こうなったら自分の生活ごと面白くしてやろうと。改めて、お笑いをやっていく覚悟ができた時期でもあったと思います。

――転機といえるタイミングですね。
ぐんぴぃ 最初は、ずっと隠し続けてきたコンプレックスが広く知れ渡り、恥ずかしくて1カ月くらい外に出られなくなりました。
でも、話題になったことをきっかけにセクシー女優の唯井まひろさんからYouTube撮影に呼んでいただいて、その動画が大ヒットしたり、自分のYouTubeチャンネルを開設してからはセクシー男優・しみけんさんとコラボして話題になったりと、チャンネル登録者数もどんどん増えて、次第に楽しくなっていきました。
YouTubeやラジオではそんなコンプレックスをもっとネタにしつつ、シェアハウスでの荒れた生活もネタにして、なんでもネタにしてやるぞという考え方に変わっていきましたね。
――シェアハウスでの生活は過酷だったとはいえ、転機も訪れ、良い点もあったと。
ぐんぴぃ まあ、良い生活だったとは言えませんが……。でも「せっかくなら面白いほうに行こう」という気持ちは昔からありました。青山学院大学に入ったのも、自分みたいな人間が表参道にキャンパスがあるようなおしゃれな大学に入ったら面白いだろうと思ったのもありますし。
誰も観ないだろうと思っていたYouTubeも登録者数は200万人近くにもなって、面白い人たちがゲストや仲間として集まってきてくれて、本当に大きくなりました。

――現在は一人暮らしをされているわけですが、再びシェアハウスをしようとは思いませんか?
ぐんぴぃ シェアハウスを出た人って「一人になると寂しい」とか言っているのを聞くんですけど、僕はそういう気持ちがまったくなかったんですよね。だから一人が向いているんだろうなと。読書するのが好きなのに、シェアハウスにいると誰かがちょっかいかけてくるし。だから「自分の時間が欲しい」とずっと思っていましたし、もうシェアハウスには住まないと思います。
ひさしぶりの一人暮らし再開、そして『大病院占拠』出演へ
――シェアハウスを出たあとは、どんなお部屋に引越しましたか?

ぐんぴぃ 三鷹のワンルームに引越しました。相変わらずユニットバス(浴槽・洗面台・トイレがセットになった3点ユニット)で、家賃は6万円くらい。ひさしぶりの一人暮らしだったので、家電も家具も全部自分だけのものだという事実だけで嬉しかったです。
――ひさしぶりの一人暮らし、お部屋選びの際に何かこだわった点はありますか?
ぐんぴぃ 木造アパートで暮らしていたときも、シェアハウスのときも、隣人の方から「うるさい」と叱られるほどご迷惑をおかけすることが多かったので、次に住むなら鉄筋コンクリートと決めていました。
階段は、やめています。エレベーターがないとダメというよりは、僕は階段を「やめている」ので。高層階だと階段を使わざるを得ない状況もあると思うので、あまり高層階ではない、できるだけ階段を使わなくて済む部屋が理想です。
あとはやっぱり、ごみ捨てのハードルが低いことと、宅配ボックスがあること。シェアハウスのときは誰かが代わりに受け取ってくれていましたけど、一人暮らしは受け取れないこともあるので。
――そうしてこだわりの一人暮らしを実現されたわけですが、何かマイナスポイントはありましたか?
ぐんぴぃ シェアハウスでの生活は過酷だったのと同時に、それらの出来事は話のネタになることでもあるので、とにかく毎日ネタで溢れていたんです。YouTubeやラジオとかでその話をすればとにかくウケていたときもあったので、一人暮らしは快適すぎて、ちょっと面白さが減ってしまった感覚はありました。お笑いへの危機感が募って「このままでは腐ってしまう!」と思っていた時期もあります。
――面白すぎる環境にいたぶん、穏やかな暮らしを手に入れた弊害もあったと。シェアハウスを出た後もYouTubeをたくさん配信されていましたが、お仕事はどうなっていきましたか?
ぐんぴぃ シェアハウスで暮らしていた頃に、演劇の舞台に「出てみないか」とお声がけいただきまして。そのときは初めてだったし躊躇したんですけど、やってみたら意外と楽しかったんです。それでシェアハウスを出てしばらく経った頃、別の舞台に呼んでいただく機会がありました。
そのときの役は以前よりも台詞が多く、出番もしっかりあって、作中でもそれなりに存在感のある役でした。その舞台をドラマのプロデューサーがたまたま観に来ていたらしく、僕の演技を見て「ドラマに起用してみるか」となったみたいで。それが『大病院占拠』(日本テレビ)なんですよ。

――そんな経緯があったんですね! 『占拠シリーズ』には3作連続で出演されています。演技のお仕事は以前から興味はあったのですか?
ぐんぴぃ 演技は、昔から「やれたらやりたい」とは思っていました。相方の土岡はずっとお笑いでやっていけるかもしれないけど、僕はそこまでの才能はないのかもしれないと思っていて。
たとえばドランクドラゴンの塚地さんみたいに、芸人でもありながら演技の仕事でもあれほど評価されるような、そんな存在に憧れています。それに『裸の大将』がすごく好きなんですよ。いつか僕も山下清を演じたいです!
――人気ドラマへの出演で、いろんな変化があったのではないでしょうか。
ぐんぴぃ やっぱり『大病院占拠』に出演してから、YouTube「バキ童チャンネル」の登録者数も一気に伸びました。1年で100万人くらい。櫻井翔さんも動画に出演してくれましたし、その頃から「ネットのヤバい奴」から「大丈夫な奴かもしれない」に変わっていった気がします。
――そんな変化を、どのように受け止めていましたか?
ぐんぴぃ 普通、お笑いで売れてからドラマとかの仕事が来るじゃないですか。僕はお笑いでテレビにたくさん出る前にドラマの仕事が来たので、変なルートではあるんですよ。初出演でまさかの日テレ、しかも自分みたいな人間が櫻井翔さんと共演だなんて……。とはいえ、誰も通っていない道だからこそやりがいがあるとも思います。
穏やかな三鷹から、繁華街のど真ん中へ引越した理由
――Xに「内見をサボったせいで、動線が太い変な間取りの家へ」と書かれていましたが、具体的にはどういう状況だったのでしょうか?
引越しが終わりました
— ぐんぴぃ (バキ童・春とヒコーキ) (@Mugen3solider) October 1, 2023
内見をサボったせいで、動線が太い変な間取りの家へ。内見をサボってはいけない pic.twitter.com/so2FRwP3gd
ぐんぴぃ このポストに貼ったのは1つ前に住んでいた部屋の写真なんですけど、正確に言うと、今住んでいる部屋は内見ができなかったんです。なんか不動産屋の人から「内見? できないよ!」と言われて。入居中だったとかなんですかね。繁華街のど真ん中に住みたいと言ったからなのか、「童貞のYouTuberは、普通の物件じゃ審査が下りないよ」なんて言われて…… 今も、内見ができなかった本当の理由はよくわからないんですけど。
「動線が太い」というのは、部屋が狭くて、それに比べて廊下が妙に広いという意味でした。だから荷物や本棚を廊下に置いています。内見ができなかったので写真と間取り図では確認していたものの、思ったよりも変わった間取りでした。やっぱり内見は大事です。
――今も住んでいるということは、それほど不便には感じていないということですか?
ぐんぴぃ 間取りは1LDKなんですけど、寝室にある自分のベッドの周りにしか物を置かなくて、リビングには何も置いていなかったんです。家の中で自分のスペースを確保できたら、ほかには特にこだわりがないんです。結果、部屋をうまく使いきれないんですよね。
――ちなみに「繁華街のど真ん中」に住んでいるとのことですが、なぜその場所を選んだのですか?
ぐんぴぃ 自転車でどこでも行けるようにしたかったからですね。でも、繁華街があまりにも近いのでけっこう大変です。うるさいのはもちろん、マンションに住んでいる人たちもけっこう特殊な職業の方が多いみたいで、周りの部屋でけっこうトラブルが起きてるみたいです。
でも事務所も、テレビ局も、ライブに出る劇場も、全部自転車で行ける距離にある。それがあまりにも便利なので、当分引越す予定はないですね。
――お部屋自体にあまりこだわりがなく、立地が理想的なのであれば、確かにお引越しをする理由はなさそうです。
ぐんぴぃ 部屋に関しては「自分の部屋を溜まり場にしてみたい」という夢がありました。友達と遊んで「終電逃したなら、うちおいでよ」とか気軽に言えるような。それで朝までゲームする、みたいな。でも気づいたんですけど、あんまり友達がいなかったです。だからここにきて、物をめっちゃ増やしてます。

「せっかくなら面白いほうに」引越しが人生に与えてきた影響
――これまでたくさんお引越しをされてきましたが、ぐんぴぃさんの理想の暮らしとはどんなものでしょうか?
ぐんぴぃ 初めて自分の意思でちゃんと選んだ部屋が、三鷹の部屋だったんですよね。今でも、一番好きだった部屋はどこかと聞かれたら、三鷹の部屋です。静かで、自然が多くて、住み心地が良かったです。
――それでも今、繁華街のど真ん中に住んでいるのは、なぜでしょうか。
ぐんぴぃ 圧倒的に便利というのもありますけど、昔の記憶が消えないんですよね。受験で初めて東京に来たとき、知り合いから「東京のどこに住みたいの?」と聞かれたので、わからないなりに「山手線の内側に住んでみたい」と言ったんです。
すると相手から「山手線の内側なんて、お前に住めるわけないだろ」と笑われて。それを今も根に持っているんだと思います。だから東京の繁華街のど真ん中に住んで、見返してやりたかった。こういう記憶って、消えないですよね。なんなんですかね?
――そういう悔しさが原動力になることはありますよね。でも今までのすべてのお引越しが、ぐんぴぃさんの転機にもなっている気がします。
ぐんぴぃ 街頭インタビューを受けたのが野方に住んでいた頃で、YouTubeを始めたのがシェアハウスの頃、ドラマに出始めたのが三鷹なので、こうして振り返ってみると引越しごとに転機が訪れているのかも。
一人暮らしで選んだ部屋も、シェアハウスの押入れで暮らしたことも、やっぱり「せっかくなら面白いほうに行こう」という自分の方針がなかったら選んでなかったと思うんですよ。退屈しなかったし、実際面白いことが舞い込んできたし、住んだ部屋それぞれに転機があったし、引越しって人生にけっこう影響を与えているものですね。

編集部より
「せっかくなら面白いほうへ行きたい」という気持ちから、常に目の前のチャンスに飛び込んできたぐんぴぃさん。お引越しを転機にするつもりがなかったとはいえ、実際には転機が訪れていた。
過酷なシェアハウスでの暮らしはYouTubeやラジオのエピソードトークに活かされ、未経験だった演技の仕事にも挑戦し、今も仕事先へのアクセスを重視したお部屋に住み、また次のチャンスを掴もうとしているように見える。
前編では、そんなぐんぴぃさんの学生時代〜会社員時代のお引越し遍歴と、一人暮らし初心者ならではの悩みや解決策、引越し先の街を楽しむコツなどを伺っている。これから一人暮らしを始める方、同じように悩みを抱える方にぜひ参考にしてもらいたい。
前編はこちら
取材、文=鈴木梢
写真=北原千恵美
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