学生時代は汚部屋生活、会社員時代は転勤続き――ぐんぴぃが上京後に直面した一人暮らしの悩みと解決策

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学生時代は汚部屋生活、会社員時代は転勤続き――ぐんぴぃが上京後に直面した一人暮らしの悩みと解決策

ニュース番組の街頭インタビューで注目を集め、開設したYouTube「バキ童チャンネル」はSNSを中心に話題となり、現在は登録者数200万人に迫る人気チャンネルに。そうして知名度を着実に上げてきた、お笑いコンビ「春とヒコーキ」ぐんぴぃさん。近年では『大病院占拠』(日本テレビ)といった人気ドラマシリーズや映画にも出演し、活動の幅を広げている。

地元の福岡県北九州市から上京し、青山学院大学に入学。卒業後は芸人の道を歩み始める前に、一度就職を経験している。紆余曲折を経て、上京以後の引越し回数は10回にのぼる。「一人暮らしを始めた当初は、生活に必要なことがわからなかった」と話す、ぐんぴぃさん。ごみをため込んで汚部屋化してしまったこともあるというが、引越しを重ねて生活はどのように変化していったのか。詳しく話を聞いた。

上京直後、生活のことが何もわからず汚部屋に

――ぐんぴぃさんの地元は福岡県北九州市とのことですが、なぜ上京しようと思ったのでしょうか。

ぐんぴぃ 北九州という街は、今でこそ住みやすい街になったと聞いているんですけど、僕が暮らしていた当時はお世辞にも治安が良いとは言えなかったんですよね。怖い人に脅されたり、「手りゅう弾を拾わないでください」という貼り紙があったりして。子どもながらに「将来は地元を出たいな」と思っていました。

あと、人気のローカル番組はあるものの、関東や関西のテレビ番組はほとんど放送されない。放送されたとしても大抵は深夜なので、親が寝静まってからテレビの音を小さくしてこっそり『ガキ使(ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!)』(日本テレビ)を観ていました。観たい番組を自由に観られる環境に憧れていましたね。

――福岡から出ることを考えると、関西という選択肢もあったと思いますが。

ぐんぴぃ ダウンタウンの松本人志さんが書いた『遺書』を高校時代に読んで芸人になろうと思い、自分もお笑いの天才だと勘違いして、かつては「松本人志を倒すのは俺」とまで思っていました。そういった背景からすると、関西ではないのかと言われるのもわかります。

ただ、伊集院光さんや爆笑問題の太田さんにもずっと憧れているのと、江戸落語が好きなので、寄席が複数ある東京を選びました。東京の大学で落研(落語研究会)に入って、伊集院光さんのようにいろんなことを面白く話せるようになりたいとも思っていました。

両手を広げて東京に上京した理由を話すぐんぴぃさん

――上京して最初に住んだのは、どの街のどんなお部屋でしたか?

ぐんぴぃ 福岡から出て最初に暮らしたのは、実は東京じゃなかったんです。というのも僕が入学した青山学院大学は、当時最初の2年間はキャンパスが神奈川県にあって。それで、相模原市の淵野辺という駅の近くで暮らし始めました。留年をしたので、3年住みましたね。

部屋はワンルームで、家賃は確か5万円くらい。でもオートロックだったんですよ。実家を出たばかりだから何もわからなかったですけど、「バス・トイレ別」にはこだわりませんでした。ユニットバス(浴槽・洗面台・トイレがセットになった3点ユニット)だって、どっちも服を脱ぐ場所だから合理的じゃないですか。一緒になっているだけで家賃が安くなるなんて最高ですよ!

あと、キッチンはIHクッキングヒーターで、今もそうです。父が電力会社で働いていて、いかに電気がすごいものかと力説されて育ってきたんですよ。実家もオール電化で、キッチンもIHでしたし、おのずと僕もIH派になりました。

――「何もわからなかった」とのことですが、何か困ったことはありましたか?

ぐんぴぃ 好きな時間に起きて、好きな時間にご飯を食べて…… と好きに暮らせることがとにかく嬉しくて、生活において大切なことが本当にわかっていなかったんですよね。だから洗濯物とか、干さなくて。

――洗濯物を干さない……? 乾燥機があったんですか?

ぐんぴぃ いえ、洗ったら濡れますけど、放っておいてもそのうち乾くじゃないですか。だから、干さなくてもいいだろうと思ったんです。多少濡れていても、着て歩いているうちに乾きますし。

ただ最近、当時の同級生らしき方からDMをいただいて「あの頃は言えませんでしたが、生乾きのニオイが気になりました」とのことで……「落研に生乾き臭のヤバい奴がいる」と話題になっていたらしく、申し訳なかったなと思います。当時の自分としてはすごい発明だと思っていたんですけどね、洗濯物を干さずに乾かすってことが、時短テクニックとして。

――合理的なような、そうでないような。それ以外にも生活に必要な知識不足で困ったことはありますか?

ぐんぴぃ 日当たりが良い部屋の方角とか、収納がどれくらい必要かもわからない。収納スペースが足りなくて部屋が物であふれましたし、あっという間にごみがたまってしまいました。ごみを捨てに行く曜日が覚えられないから、何カ月も溜め込んでしまう。次に住んだ部屋も汚部屋になりました。結果、退去時の掃除にはかなり苦労しました。

――課題が多いですね。次はどのタイミングで、どこにお引越しされたのですか?

ぐんぴぃ 通学するキャンパスが表参道になったタイミングで、同じ落研のメンバーが何人も住んでいる世田谷区の三軒茶屋に引越しました。引越したアパートの名前が、僕が好きなマンガのタイトルを冠していて。内見はしましたけど、最終的な決め手は名前でしたね。

この部屋はロフトがありまして、生活の合理化を考えた結果、ロフトの上でしか生活しなくなりました。ごみが出たら、ロフトの下に投げ捨てる。当然ロフト以外のスペースがごみ箱状態になりました。そうしてまたひとつ、汚部屋をつくってしまいました。

ロフトがある部屋には、一度は住んでみたい憧れがあったんです。秘密基地感があってワクワクするじゃないですか。ただ、ロフトの下を「地獄」にしてしまうという点で僕には向いていなかったと思います。ロフトで暮らすのは楽しかったんですけど。

――その後、ごみの問題は解決したのでしょうか。

ぐんぴぃ 曜日や時間を問わず捨てられるごみ置き場があるマンションに住んだら、ごみを溜め込まないようになりました。外出するときに通る場所にあったのも良かったです。自分に合う設備があれば、解決する問題もあるのだなと思いました。

――ほかに何か、解決していったことはありますか?

ぐんぴぃ 僕は体が大きいので服も大きいんですけど、普通サイズのハンガーに干すと強い風が吹いたときに服が次々飛ばされるんですよ。干し方が変なのかもしれないですけど、服のサイズに合わせてアームを伸縮できるハンガーを導入したら解決しました。あれは素晴らしい発明です!

ハンガーってすごいんですよ。いろんなサイズの洗濯物に対応しているし、靴とか、洗った帽子を干す専用のものとかまでありますから。あなたに必要なハンガーが絶対に存在します。

さまざまなハンガー類を駆使して干している洗濯物(ご本人提供写真)

転勤続きのブックオフ時代、店舗の品揃えで土地柄を学ぶ

――大学を卒業されて、またお引越しはされたのですか?

ぐんぴぃ 就職をするタイミングで、また淵野辺近く(長津田)に引越しました。というのも、ブックオフに入社したんですが、本社が神奈川県の古淵というところにあって、研修の頃は近くに住む必要があったんですよね。

長津田時代、就職したてのフレッシュな姿(ご本人提供写真)

ぐんぴぃ 全国転勤がある会社なので、そのあと勤務先が発表されたわけなんですけど、ドキドキしていたら「山口! お前は東京!!」と言われて。全国転勤なのに、東京。上司からは「人の多いところで揉まれて強くなるべき」だとか、そんなことを言われた記憶があります。そうして豊島区の大塚に引越しました。

――大塚での暮らしはどんなものだったのでしょうか。

大塚のお部屋に引越したばかりの頃(ご本人提供写真)

ぐんぴぃ ブックオフには社宅制度があって、店舗の近くで、割安な家賃で社宅が借りられるんです。会社をいろいろ説得した結果、大塚では家賃10万円くらいのけっこう良い部屋に住むことができたんですよ。エントランスに大きな岩のオブジェがある、オートロックのきれいなマンションでした。

さまざまな地域のブックオフで働いて気づいたんですけど、店舗の棚に土地柄が色濃く出るんですよ。基本的には近くに住んでいる人から本を買い取るので。ファミリー層が多い街なら家事や育児に関する本が多くなりますし、大学が近いとマンガや参考書が多くなる。大塚は歓楽街の側面があるので、成人向けの本が多かったです。

――ほかに、引越した先の街を知るためにやっていることはありますか?

ぐんぴぃ 住み始めた街のおいしい飲食店は必ず巡りますね。食べログ有料会員ですから。有料会員になるとランキング順に表示できるようになるので、上から順に行きます。月額330円(※)でそんな楽しみを得られるなんて、お得だと思います。

※:2025年10月現在の情報

――大塚の店舗のあともまた、転勤はあったのでしょうか。

ぐんぴぃ 大塚から横浜に転勤になって、また神奈川県に戻ってきました。退職前に働いた最後の店舗ですね。前の店長が住んでいた部屋にそのまま住むことになりました。

その部屋が、めちゃくちゃ狭くて。しかもターミナル駅の横浜駅が本当に近かったから、窓を開けると電車の音がかなり大きかったです。二重窓とか防音設備があれば良かったんですけどね。自分で選んだ部屋ではないので苦労しました。

暮らしにくかったお部屋について語るぐんぴぃさん

騒音トラブルで退去、一人暮らしを一旦終了

――横浜の店舗を最後にブックオフを退職されたとのことですが、退職理由を教えてください。

ぐんぴぃ そもそも芸人を目指していたのになぜ就職したのかという話なんですが、落研で絶望したからなんですね。後に相方となる土岡という自分より面白い人間がいたり、他の大学の落研で圧倒的に面白かったのに就職した人(どくさいスイッチ企画)がいたり、自分の面白さの順位みたいなものを思い知らされて。でも、諦めきれない気持ちもありました。

ブックオフに就職した頃に土岡から「コンビを組まないか」と誘われたのですが、この時点ではまだ躊躇する気持ちもあり「100万円貯めたら辞めて芸人になる」と話していたんです。でも全然貯められなくて。だから土岡に毎月2万円渡して貯めてもらっていました。それでようやく貯金できたんですけど、3年働いても結局22万円しか貯まりませんでした。

その頃に土岡から「もう待てない」と言われたのと、複数の店舗で働いてブックオフでの目標は達成できたと思ったので芸人になることを決めました。そうして「春とヒコーキ」を2017年に結成しました。

――土岡さんの熱意もあり、いよいよ芸人への道を歩むことになったんですね。とはいえ、100万円貯めると決めて3年で22万円はちょっと少ないような……。

ぐんぴぃ 最初のうちは自炊をしていたんですけど、コンロがひとつしかない物件に引越したことで料理に時間がかかって、だんだんめんどくさくなって、外食ばかりになってしまったんです。しかも寿司ばっかり食べに行くっていう。だからお金が貯まらなかったんですよね。キッチンの使い勝手は大事だなと思います。

――ブックオフを退職されてからは、どのように暮らしていたのでしょうか。

ブックオフ退職からタイタンの学校(養成所)に通うことをきめるまでの経緯を話すぐんぴぃさん

ぐんぴぃ 養成所に通うかオーディションに合格するか、どちらかの道で事務所に入ることができるのですが、まずはフリーの芸人として活動を始めました。エントリーライブ(自分でお金を払って出演するライブ)に出たり、いろんな事務所のオーディションを受けたりしていましたね。

当時は、やりたいことをやっているという感覚だったので、つらい気持ちはありませんでした。とはいえ結局はフリーで活動していくにもお金がかかるのと、生活費も必要なので、コールセンターでアルバイトをしていました。ちなみに、話題になった『ABEMA NEWS』の街頭インタビューを受けたのはアルバイトの帰り道でのことでした。

エントリーライブに出て、オーディションを受けて、賞レースにも出て……所属させてもらえそうな事務所もあったんですが「どうやって売れさせたらいいかわからない」と匙を投げられてしまい、最終的に爆笑問題が所属するタイタンの学校(養成所)に通うことを決めました。

――ブックオフ時代は社宅だったということは、この時期にお引越しもされたと思います。

ぐんぴぃ 会社を辞めてから、中野区の野方に引越しました。同じ事務所の、まんじゅう大帝国の田中が落研時代の後輩でもあるんですけど、彼が野方に住んでいて「近くに引越して来なよ」と誘ってくれたので住むことにしました。

ぐんぴぃ 築60年くらいの木造で、壁が薄い和室。一緒に内見に行ってくれた田中くんからは「ここはやめたほうがいい」と言われましたけど、結局そこに2年くらい住みました。和室は実家ぶりで懐かしかったですし、フローリングと違ってそのまま寝転がりやすいし、居心地は良かったです。

――和室には和室の良さがありますよね。

ぐんぴぃ でも当時は夜勤をしていたので、帰ってきてから早朝に部屋で音を立ててしまい、下に住む大家さんや隣に住んでいる人から苦情を受けてしまいまして。僕自身が我慢するのはまだ良くても、周りに迷惑をかけてしまうのは申し訳ないな……と思っていた頃に、芸人の先輩からシェアハウスに誘われました。

シェアハウスで一緒に暮らすことになったメンバーは、オーディションを受け続けていた時期に出会った人たちばかりだったので、振り返ってみればあの頃の活動も無駄ではなかったかなと思います。

――上京からシェアハウス入居までの引越し遍歴を振り返っていただきながら、一人暮らしのポイントなどを伺ってきましたが、いかがでしたか?

ぐんぴぃ バス・トイレは一緒でいいとか、洗濯物を着ながら乾かすとか、とにかく合理的であることが僕にとっては重要なんだと思います。騒音トラブルについては、自分が叱られて嫌だというよりは、周りに迷惑をおかけするからという理由でしかないですし。だから部屋自体についてはそこまでこだわりがないのかもしれません。

とはいえ、内見は絶対にしたほうがいいです! 写真とかが充実していても、自分の目で現地の部屋をできるだけ見たほうがいい。オンライン会議で相手の人柄があまりわからないように、写真だけじゃ部屋の隅々まではわかりませんから。

こぶしを胸の前に出し、内見の重要性を語るぐんぴぃさん

編集部より

「地元を出たい」という気持ちと東京への文化的な憧れから上京し、汚部屋をつくったり、慣れない家事に手こずったりしつつも、暮らしやすさを模索し続けてきたぐんぴぃさん。転勤という会社の都合で引越しを重ねつつも、住み始めた街を楽しむ工夫をしながら過ごしてきたようだ。

下のフロアが地獄と化したロフト付き物件、電車の音に悩んだ駅近物件、騒音で苦情がきた壁の薄い木造物件――ぐんぴぃさんらしいエピソードの中に、一人暮らしを始める方の参考になるヒントが詰まっていた。

後編では、3LDKに5人で住んでいたという芸人シェアハウスでの暮らしや、その後に再開した一人暮らし、そして現在住んでいるお部屋についてなど、引き続き引越し遍歴を伺いながら、芸人や俳優としてステップアップしていくエピソードを深掘りしていく。「バキ童」として注目を集め、あの人気ドラマシリーズで櫻井翔さんと出演したエピソードも……。

後編はこちら

取材、文=鈴木梢
写真=北原千恵美

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