賃貸の管理費とは?相場や用途、管理費の違いによる毎月の自己負担額などを解説!

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管理費

管理費の疑問を解消!使い道や相場、負担額などを徹底解説!

賃貸物件を探す際、管理費に関する疑問を持つ人は少なくない。相場がどれくらいなのか、具体的に何に使われているのか、さらには高い場合に毎月の負担がどの程度増えるのかなど、気になる点は様々。

本記事では、管理費が高い物件と安い物件の違いや、同じ物件内で管理費が異なる理由などを解説。また、ケース別での自己負担額もシミュレーションしているので、賃貸物件選びの参考にしてみてほしい。

竹内英二さんのプロフィール写真

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である、株式会社グロープロフィット代表。大手ディベロッパーでの不動産の開発やコンサルティングの経験も併せ持つ、不動産の専門家。専門性を活かしたライティングを行い、トレンドを捉えた最新の情報を提供している。

保有資格:宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理⼠、不動産鑑定士など

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賃貸物件の管理費とは?

賃貸物件の管理費とは?
「管理費」は主に物件の維持管理にかかる費用のことを指す

賃貸物件における「管理費」とは、物件の維持管理にかかる費用のことで、一般的には共用部分の水道光熱費清掃・メンテナンスなどの維持管理のために支払う金額のことである。マンションやアパートの場合はエントランスや廊下、エレベーターなどの共用部分が存在するため、これらの共用部分を維持していくために必要となるのが管理費だ。

ただ、請求される費用が具体的に何に利用されているのかわからないと、不安に感じる方も多いだろう。

まずは、管理費の定義と共益費との違いについてそれぞれ詳しく解説する。管理費の基本について理解し、賃貸物件を契約する際の参考にしていただきたい。

管理費の定義

管理費とは、一般的に集合住宅において、共用部分の維持・管理のために家賃とは別に毎月支払う費用のことを指す。

なお、戸建て賃貸のように共用部のない一棟貸しの物件であっても、必要な管理の状況に応じて管理費が設定されていることがあるので注意が必要だ。

共益費と管理費との違い

管理費と似た言葉に「共益費」がある。不動産情報サイトでは「管理費」と書かれている場合と、「共益費」と書かれている場合があるが、結論からいえばこれら2つの言葉は基本的に同じことを指している。

国土交通省が示す不動産鑑定評価基準(※)では、管理費は貸主が実費で支払う費用共益費は借主から徴収する費用として使い分けており、厳密には借主から徴収する費用は共益費と呼ぶべきといえる。

ただ、物件広告を含め管理費と共益費は日常的に同義で使われており、どちらを使用しても基本的に間違いではない。

具体的なケースを挙げると、分譲マンションでは、区分所有者が管理組合に対して毎月支払う共用部の維持管理費用を「管理費」と呼ぶ。一方、賃貸マンションでは「管理費」と「共益費」という言葉が混在して使われることが多い。どちらの表記であっても実質的な違いはほとんどないが、物件によってはそれぞれの名称で異なる費用が発生する場合もあるため、契約時には具体的な費用の内訳を確認しておくと良いだろう。

※出典「不動産鑑定評価基準

賃貸物件の管理費の用途

賃貸物件の管理費の用途
電気代や清掃費、メンテナンス費用などが含まれる管理費

このように管理費は、物件に住む入居者が気持ちよく過ごせるよう、共用部を維持管理するために使われる。

主な具体例は以下のとおり。

  • 共用部の電気代や電球の購入費
  • 共用部の清掃費や掃除用具の購入費
  • 共用部のメンテナンスや維持管理に必要な費用

それぞれの具体的な内容を見ていこう。

共用部の電気代や電球の購入費

管理費の用途の一例に、エントランスや共用廊下、エレベーターなど共用部の稼働などに使われる電気代の支払い電球交換のための費用があげられる。

そのため共用設備が多く、電気代がかさ張る物件であれば、その分管理費が高くなる可能性がある。

例えば、エレベーターやエントランスの自動扉がある物件は、ない物件よりも管理費は高くなりやすい。

共用部の清掃費や掃除用具の購入費

管理費は、主に廊下やエレベーター、エントランス、ゴミ置き場などの清掃費用として充てられ、清掃に必要な道具の購入費や、管理人や清掃業者に支払う人件費も含まれる。さらに、洗剤やモップ、雑巾といった消耗品の購入にも利用されることが多い。

共用部のメンテナンスや維持管理に必要な費用

上記であげた費用以外にも、共用部で発生するためにかかる費用は管理費でまかなわれる。たとえば、エレベーターや消防設備の法定点検、建物の簡易な補修などだ。

また、管理人がいる賃貸物件では、管理人の人件費も管理費から捻出されるため、有人管理の賃貸物件では管理費が割高な傾向がある。

なお、管理が行き届いている場合のメリットとしては、「物件がきれい」、「エレベーターなどの共用設備が誤作動するリスクが少ない」、「共用部に故障や損傷が発生した時の対応が早い」といった点が挙げられる。

共用部は多くの人が使うため、汚れやすく、壊れやすい傾向がある。普段から十分に管理が行き届いている物件は、共用部の汚損や破損のリスクが最小限に留まっていることから、居住の快適性が保たれやすいといえる。

一方で、管理が行き届いていない場合のトラブル例として、以下のようなものがあるので注意が必要だ。

  • 集合ポストの近くにチラシが散乱している
  • 共用廊下の電気が消えたままで夜間に歩きにくい
  • エレベーター内に落ちたゴミがいつまでも残っている
  • 植栽が剪定されておらず玄関アプローチが歩きにくくなっている

管理費が高い物件と安い物件の違い

管理費が高い物件と安い物件の違い
管理費が高い物件と安い物件の違いとは?

管理費が高い物件と安い物件の違いのひとつに、共用部の充実度が挙げられる。前述の通り、エレベーターやエントランスに自動扉があったり、管理人が常駐していたりする物件では、管理費も高くなるだろう。

一方、エントランスやエレベーターがなく、共用部が外廊下と外階段だけで構成されている低層のアパートでは、共用部がほとんどないため、その分管理費も割安の傾向がある。ただし、管理費が0円だからといって必ずしも費用が発生していないとは限らず、家主が負担している場合や、一括で徴収されているケースもあるので注意が必要だ。

なお、同じ物件でも部屋ごとに管理費が異なる場合もあり、ファミリータイプと単身タイプの部屋が混在している物件であれば、部屋の広さに応じて管理費が設定されていることもある。

管理費の高い物件のメリットとしては、一般的に以下のような点が挙げられる。

  • 共用設備が充実している傾向がある
  • 有人管理の場合、トラブル発生時に管理人に相談しやすいことが多い
  • 共用部が適切に清掃され、きれいに保たれやすい
  • 共用部の電球交換や設備の破損・故障への対応が比較的スムーズに行われるケースが多い

管理費は共用設備が充実しているほど、金額が高くなる傾向にある。
例えば、オートロックや宅配ボックス、防犯カメラ、24時間利用可能ゴミ置き場などの共用設備が充実している物件は、充実していない物件に比べると管理費は高い。

オートロックなどの共用設備は住人が快適に暮らすための欠かせない設備となっており、住みやすい物件であることが多いといえる。一方で、管理費が安い物件は、共用部の設備が充実していない傾向があり、快適性や安全性が低い可能性がある。

エレベーターがなければ階段で昇降することが必要であるし、24時間利用可能ゴミ置き場がなければゴミを捨てにくくなる。宅配ボックスがなければ荷物を受け取りにくくなるし、オートロックがなければセキュリティが劣ってしまう。

このように管理費が安い物件を選ぶ際は、自分が求めている設備の有無を確認することが注意点といえるだろう。

賃貸物件の管理費の相場

賃貸物件の管理費の相場
管理費は以前よりも高くなっている傾向がある

管理費は、賃貸物件の面積や建物の築年数によっても異なるが、総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」(※)によると、1ヵ月あたりの共益費・管理費の平均(0円を含む)は、「4,968円」となっている。

ただし、近年は宅配ボックスや24時間利用可能ゴミ置き場などに見られるように賃貸物件の共用設備が充実化しており、管理費は以前よりも高くなっている傾向がある。

※出典「政府統計の総合窓口「令和5年住宅・土地統計調査」(61-2)

同じマンションの物件でも管理費が異なる理由

同じマンションの物件でも管理費が異なる理由
同じ物件でも管理費が異なる理由とは?

管理費の金額は、同じ賃貸物件内の部屋であっても異なる場合がある。管理費は下記の理由によって違いが出る場合があるので、事前にチェックしてほしい。

  • 専有部の広さに差がある
  • 入居のタイミングによって管理費が変動する

それぞれの詳しい内容を確認してみよう。

専有部の広さに差がある

同じマンションでも、専有面積の広さによって管理費の金額に差をつけている場合がある。
たとえば、30平方メートルの部屋の管理費が4,000円、60平方メートルの部屋の管理費は8,000円といった具合だ。

入居のタイミングによって管理費が変動する

入居するタイミングによっても、管理費は変わってくる。
例えば新築当初は管理費を家賃に含めて徴収していたが、5年後に管理費を家賃と分けて徴収する方針に切り替えた場合などが挙げられる。

この場合、新築当初からの入居者の管理費はゼロ円だが家賃は高く、5年目以降の入居者の管理費は徴収されているが家賃は低いといったことが起こり得る。

管理費が高いと自己負担額は高くなる?シミュレーションしてみた

2年間居住した場合の自己負担額をシミュレーション
3つのケースで自己負担額をシミュレーション

では、実際に下記3つのケースに沿ってシミュレーションしてみよう。

  • 家賃6万円・管理費5,000円の場合(礼金・敷金2ヵ月)
  • 家賃6万円・管理費5,000円の場合(礼金・敷金1ヵ月)
  • 家賃5万円・管理費1万5,000円の場合(礼金・敷金1ヵ月)

賃貸住宅市場景況感調査によると、賃貸物件の平均居住期間が4年であることから、シミュレーションする際は、4年間(48ヵ月)のトータルコストの1ヵ月平均費用を導き出す。

また、一般的に多い2年に1回更新で、更新料は家賃の1ヵ月分を想定しシミュレーションしていく。初期費用である仲介手数料は、家賃の1ヵ月分だ。
計算式としては、以下のとおりになる。

(家賃+管理費)×48ヵ月(4年分)+初期費用(仲介手数料・敷金・礼金・更新料)÷48ヵ月

※参照元「「第27回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」
※本記事内の金額は特に記載のない場合も含めすべて税込み価格表記
※今回紹介する費用項目の他に、保険料や保証会社利用料といった賃貸で発生する費用も別途あるのでご注意を。詳しくはこちらをチェック

家賃6万円・管理費5,000円の場合(礼金・敷金2ヵ月)

まずは、家賃6万円・管理費5,000円で礼金・敷金2ヵ月の場合のトータルコストを見ていこう。

項目金額
仲介手数料6万6,000円
敷金12万円
礼金12万円
更新料6万円
家賃+管理費4年分312万円
合計348万6,000円

トータルコスト348万6,000円を48ヵ月で割ると、1ヵ月あたりの負担は「7万2,625円」となる。

家賃自体は6万円と高額ではないが、敷金と礼金が2ヵ月分であることから、平均した毎月の負担額は7万円を超える計算となる。

なお今回は更新料がかかる想定でシミュレーションしているが、かからない物件もある。更新料については、以下の記事を参考にしていただきたい。

家賃6万円・管理費5,000円の場合(礼金・敷金1ヵ月)

続いて、家賃6万円・管理費5,000円の場合で、礼金・敷金1ヵ月の場合のトータルコストを見ていこう。

項目金額
仲介手数料6万6,000円
敷金6万円
礼金6万円
更新料6万円
家賃+管理費4年分312万円
合計336万6,000円

トータルコスト336万6,000円を48ヵ月で割ると、1ヵ月あたりの負担平均は「7万125円」となる。

1つ目の物件と家賃と管理費は同じだが、敷金と礼金が1ヵ月になり初期費用の負担が軽くなるだけで、毎月の負担が先ほどより2,500円も安い結果となった。

物件を決める際は家賃や管理費に目が行きがちだが、初期費用である敷金や礼金なども考慮することで毎月の負担を減らせるだろう。

家賃5万円・管理費15,000円の場合(礼金・敷金1ヵ月)

最後は、家賃5万円・管理費1万5,000円の場合で、礼金・敷金1ヵ月の場合のトータルコストを見ていこう。

項目金額
仲介手数料5万5,000円
敷金5万円
礼金5万円
更新料5万円
家賃+管理費4年分312万円
合計332万5,000円

トータルコスト332万5,000円を48ヵ月で割ると、1ヵ月あたりの負担平均は「6万9,270円」となる。
毎月の負担は1つ目と2つ目の物件と同じで6万5,000円だが、家賃自体は5万円のため、初期費用や更新料がその分低くなる。そのため、家賃+管理費の負担額は同じでも、トータルコストから見る毎月の負担額は、7万円を下回る結果となった。

そのほか、一定期間の家賃が無料になる「フリーレント物件」であれば、毎月の負担額をさらに抑えられる可能性がある。フリーレント物件については、以下の記事で解説しているのでご確認いただきたい。

賃貸物件の管理費に関するよくある質問

賃貸物件の管理費に関するよくある質問
管理費についての疑問をわかりやすく説明!

賃貸物件の管理費に関するよくある質問は、以下の3つだ。

  • 家賃と管理費はなぜ別になっているの?
  • 管理費がない物件のデメリットは?
  • 不動産サイトで【家賃5万円+管理費5,000円】と記載されているとき、管理費は家賃に含まれる?

下記にてそれぞれわかりやすく回答しているので、ぜひ疑問を解決していただきたい。

家賃と管理費はなぜ別になっているの?

家賃と管理費が別々に設定されているのは、主に費用の内訳をわかりやすくするためだ。

家賃は住居の使用料、管理費は共用部分の維持や管理にかかる費用をカバーするためであり、それぞれの利用目的が異なる。管理費が明確に分けられることで、契約者はどの費用が何に使われているかを理解しやすくなる。

契約時には、家賃と管理費の内訳をしっかり確認し、納得した上で契約を進めることが大切だ。

管理費がない物件のデメリットは?

管理費がない物件のデメリットは以下のとおりだ。

  • 共用設備が充実していない物件が多い傾向がある
  • 築年数の古い物件が多い傾向がある

管理費を徴収していない物件は共用設備が充実していない物件が多く、快適性や安全性が劣る可能性がある点がデメリットといえる。

また管理費のない物件は築年数が古い傾向がある。築年数が古い物件は、共用部だけでなく専有部の仕様も古いため、居住の快適性が劣りやすいといえる。

不動産サイトで【家賃5万円+管理費5,000円】と記載されているとき、管理費は家賃に含まれる?

【家賃5万円+管理費5,000円】と表示されているとき、管理費は家賃に含まれない。

そもそも家賃と管理費の性質が異なるため別表示となっているが、理由の一つとして、家賃のみの検索条件で探すユーザーに対して物件が表示されるようにする意図がある。ただし、検索条件の設定時に「管理費込み」で上限金額を指定することも可能なため、管理費の表記が物件の検索結果に影響を及ぼすかどうかは、検索方法による部分も大きい。

管理費について理解した上で理想の物件を探そう!

管理費について理解した上で理想の物件を探そう
管理費単体の安さではなくトータルでの金額を把握することが大切

管理費は、一般的には共用部分の水道光熱費や清掃・メンテナンスなどの維持管理のために利用される、物件維持管理費だ。引越しのときには、家賃だけでなく管理費も必ずチェックしておこう。

物件を探すときは管理費単体の安さではなく「支払うトータル金額はいくらか」をしっかり確認しておこう。

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