軽量鉄骨造の防音性はどう?防音性のチェック方法を紹介。プロの防音対策も

賃貸物件に多い軽量鉄骨造のアパート。同じエリアや間取り、築年数の鉄筋コンクリート(RC)造や鉄筋鉄骨コンクリート(SRC)造の建物に比べると、家賃が安くなる傾向がある。一方で、軽量鉄骨造の物件は「防音性が低い」という声も。
軽量鉄骨造の物件の特徴やメリット・デメリットと内見時の防音性チェック方法を紹介する。また、有効な防音対策を株式会社ピアリビングの防音コーディネーター かぶちゃん(梶原 栄二さん)教えてもらった。
木造よりも耐震性が高く、比較的賃料が安い傾向にある「軽量鉄骨造」
軽量鉄骨造(S造)とは

マンションやアパートなど集合住宅の構造には主に、「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)」「鉄筋コンクリート造(RC)」「鉄骨造(S)」「木造」の4種に分けられる。
そのうち、軽量鉄骨造は柱や梁などに鉄骨を使う鉄骨造に分類される。鉄骨造には「軽量鉄骨造」の他に「重量鉄骨造」があり、2つの違いは使用する鋼材の厚さだ。
軽量鉄骨造は厚さ6mm未満の鋼材を使い、主に戸建て住宅やアパートなどに採用されることが多い。一方、重量鉄骨造は厚さ6mm以上の鋼材を使い、マンションやビルなどの高層建築に用いられることが多い。
軽量鉄骨造の物件のメリット
軽量鉄骨造では、部材を工場で製造して現場で組み立てる「プレハブ工法」を採用するのが一般的だ。規格化された部材を使うため、建物の品質が安定しており、コストも抑えられる。工期も短期間で済み、建設費を安く抑えられることから、築年数や広さが同程度の物件と比較しても、家賃が安い傾向にある。
また、軽量鉄骨造の物件の耐震性は木造よりも高い。鉄骨は折れにくく、しなることで揺れを吸収するため、倒壊リスクが比較的低いのだ。ただし、重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造などと比べると耐震性は劣る。
軽量鉄骨造の物件のデメリット
木造と比べると通気性や断熱性が低いため、外気の影響を受けやすい。鉄骨部分が外気温を屋内に伝えて断熱性能を低下させる「ヒートブリッジ」が起きる可能性があり、夏は暑く、冬は寒くなりがちだ。断熱カーテンを設置するなど、断熱性を高める対策を取ると良いだろう。
また、木造と比べると通気性が低いため湿気がこもりやすく、結露が発生する原因にもなる。立地や環境によっては、結露やカビ対策が必要だ。
軽量鉄骨造の物件の防音性
軽量鉄骨造は木造と比べるとやや遮音性が高い。しかし、素材が異なるだけで木造とつくりが似ているため、そこまで大きな差はない。コンクリート造の物件に比べると防音性は劣る。
また、重量鉄骨造と比べたときも、軽量鉄骨造は壁の中が空洞になっていることが多く、壁が薄く、防音性が高いとは言えない。
構造だけでなく、壁や床の厚さ、建築素材によっても防音性は変わる。内見時の壁の防音性の確認方法は、後ほど紹介する。
音の聞こえ方は、外部の環境や個人の感度によっても変わる。軽量鉄骨造の物件の防音性が気になる場合は、不動産会社の担当者に音の聞こえやすさ、伝わりやすさ、建築素材などについて質問してみることをオススメする。
内見時に防音性をチェックする6つの方法
軽量鉄骨造の物件で快適に暮らすためには、物件探しの際に部屋の周囲の騒音と建物の防音性についてチェックしておくといい。6つの方法を紹介する。
1.静かな室内で周囲の音を確認する
防音性を確かめるために「壁に耳をあてる」という人は多いが、遮音性が高い部屋でもさまざまな音が聞こえるので、あまりおすすめではないそう。
不動産会社の担当者に席を外してもらい、静かな部屋の中の環境音に耳を澄ませてみるとよい。会話中には気がつかなかった音が聞こえるかもしれない。
2.室内の壁やドアをノックする
内見に同行する不動産会社の担当者に許可を取り、隣の部屋と面する壁を軽くノックしてみよう。「コンコン」と軽い音が響くのであれば、壁の内側には石膏ボードしか貼られていない、防音性の低い壁である可能性が高い。
一方「ゴンゴン」と低い音が響いたり振動が抑えられていると感じたりする場合は、壁材が厚いもしくはコンクリートの可能性が高いので、防音性が高いと考えられる。
同じ面の壁でもノックする場所によって「コンコン」「ゴンゴン」と異なる音がする場合、「GL工法」といってコンクリートの壁に団子状のボンドを付けて石膏ボードを貼り付ける施工でできた壁なので、遮音性が低い。

また、同じような構造で二重壁工法というものがある。見極めが難しいが、二重壁工法の壁は、GL工法のようにコンクリートとつながっていないため、音が伝わりづらく遮音性は高くなる。

3.窓を閉めた部屋で手を叩いてみる
窓を閉めた室内で、強めに手を叩いてみよう。あまり反響しなかった場合は、壁などの隙間から音が漏れており防音性が低い可能性がある。
4.ドアや窓枠に隙間がないか確認する
音は隙間からも出入りする。ドアや窓枠の建付けを確認して、隙間がないかどうかを確認しよう。
特に築年数の古い物件は、経年劣化によってドアや窓枠の建付けに隙間が生じている可能性がある。またドアは重量があるほど遮音性に優れている。防音性を気にする方は、軽いドアの物件は避けたほうがいいだろう。
5.窓のつくりをチェックする
窓ガラスは壁よりも薄いことが大半なので音を通しやすい。ただし、二重サッシが採用されている物件は防音性が高い。最近では、幹線道路沿いや線路の近くの物件に二重サッシが使われているケースがある。
6.間取りと部屋の位置をチェックする。
隣の居室とのあいだに収納スペースや水回りがあれば、緩衝地帯が発生し生活音は伝わりにくくなる。間取り図を見たり、不動産会社の担当者に話を聞いたりして確認しよう。
集合住宅内における部屋の位置も重要だ。角部屋であれば、隣の住戸と接する面が片方だけになるため騒音リスクを減らすことができる。子どもの足音など振動や騒音を出してしまう心配がある人は1階や下が駐車場になっている部屋を選ぶといい。
防音対策のプロが伝授! 軽量鉄骨造の物件でできるカンタンな防音対策

防音性に不安を感じる軽量鉄骨造の物件でもちょっとした対策で騒音の悩みを低減・解消できる可能性がある。自分でカンタンにできて、賃貸物件でも原状回復が可能な防音のヒントを、株株式会社ピアリビングの防音コーディネーター かぶちゃん(梶原 栄二さん)に教えてもらった。
隣の部屋の対策
隣の部屋に音を響かせないためには、隣室に面した壁にタンスや本棚などの家具を配置することがオススメだ。家具が防音壁の役割を果たしてくれる。
あまり家具を持っていない人は、防音壁の設置を検討してみよう。厚さ5cmほどの「ワンタッチ防音壁」であれば、取り付けがカンタンで退去の際に原状回復が可能だ。防音壁は、隣室に面する壁全面に設置することが理想だが、半分ぐらいの面積でもある程度の効果を感じる方も多いそう。また、追加で設置することも可能なので、まずは半分だけ設置する方もいるという。
参考商品:ワンタッチ防音壁|防音専門ピアリビング
階下に音を響きにくくする方法
階下に音を響かせないためには、スリッパを履いたり、防音性の高いカーペットを敷いたりすることが効果的だ。足音や家電の音を発生させにくくするだけでなく、多少は人の声なども抑えられる。汚れが気になる方は、フローリング調の防音マットもある。 また、防音カーペットの上にクッションフロアマットを重ねる方法も有効だという。
参考商品:防音タイルカーペット 静床ライト|防音専門ピアリビング
防音カーペットの購入はハードルが高いと感じるのであれば、マットと普通のカーペットなど異素材の床材を組み合わせてみるといい。その際は、できるだけ複数の層があり、繊維がたくさん含まれている材質の商品を選ぼう。
ちなみに、EVA樹脂やポリエチレンが素材の「ジョイントマット」は、単独ではあまり大きな防音効果を期待できない。カーペットの下に敷く、足音を抑えるマットなどと組み合わせて使うとよい。
参考商品:足音マット|防音専門ピアリビング
上からの音が気になるときの対策
上の住人の生活音に悩んでいる場合は、残念ながらグッズによる問題解決方法がほとんどない。上の階からの騒音で悩んでいる方は、管理会社や大家さんに相談しよう。
外からの音が気になるときの対策
住宅の外を通過する自動車の音や電車の音、あるいは通行人の話し声が気になる人は、防音カーテンで対策しよう。外部からの音はほとんどの場合、窓から入ってくる。防音カーテンを購入しなくても、生地の分厚いカーテンにしたり、カーテンを二重にしたりするだけでも変わってくる。
手持ちのカーテンの内側に設置するタイプの防音ライナーも便利なアイテムだ。
賃貸物件の防音対策、騒音に悩みにくい物件選びについて詳しく知りたい方はこちら
参考記事: ジョイントマットは効果が薄い?賃貸の防音対策と防音グッズを専門家に聞いた
軽量鉄骨造のお部屋にひと工夫して快適に暮らそう
軽量鉄骨造の物件は、鉄筋コンクリート造などと比べると防音性は劣るものの、家賃が抑えられ、木造物件よりも耐震性に優れるなどのメリットもある。
また、軽量鉄骨造でも使われている壁や床の材料によって防音性は変わってくるため、内見時には今回紹介したような方法で防音性をチェックすることが重要だ。必要に応じて防音対策アイテムも活用しながら自宅の防音性を高めよう。
賃貸物件の防音対策、騒音に悩みにくい物件選びについて詳しく知りたい方はこちら
参考記事: ジョイントマットは効果が薄い?賃貸の防音対策と防音グッズを専門家に聞いた
取材協力=株式会社ピアリビング
文=大川祥子