【お部屋探訪】たくさんの音楽が生まれるアーティスト・UCARY & THE VALENTINEさんの部屋
映画も夢も風呂も、すべてが音楽に通じるクリエイティブな部屋
18歳で状況してから8年間、「空いているところに置きたいものを置いた」という、この部屋の住人はミュージシャンであり、デザイナーであり、モデルでもあるUCARY VALENTINEさん。
豪快な部屋探しの話から今後の活動のこと、理想の部屋まで、いろいろ聞いてきた。

UCARY & THE VALENTINEさんにインタビュー!
プロフィール
名前:UCARY & THE VALENTINEさん
職業:ミュージシャン/モデル/デザイナー
年齢:27歳
Twitter:@ucary_valentine
Instagrm:@ucary_valentine
ルームデータ
居住地:東京都
居住人数:1人
間取り:1R
このページの目次
祖母が進学資金に貯めてくれたお金で部屋探し!
UCARYさんの父はパンクやロック、ニューウェーブやテクノまで幅広い音楽に傾倒し、家にはレコードが山のようにあった。それに対し母はDAVID BOWIEやQUEENなど派手で美しい音楽の世界を好んだ。
そんな家庭に育ち、幼い頃から自作の曲を口ずさんでいたというUCARYさん。生まれ育った宝塚から東京に出てきたのは8年前。
「高校の頃にやっていたバンド活動がご縁で事務所が決まって、大学進学するよりも音楽の道に入った方が仕事になるなぁ、東京に行こうかなぁと漠然と考えていた時に、東日本大震災が起こりました」(UCARYさん)
上京への気持ちが一気に萎え、実家でのんびりと平和に過ごしていたある日、見かねた父に、「音楽をやるなら東京で勝負してこい」と発破をかけられた。
「私も母も全然乗り気じゃなくて(笑)。仕方がないから、祖母が大学の進学資金にと貯めてくれたお金、200万円を握りしめて2人で東京へ部屋探しに来ました」(UCARYさん)
品川プリンスホテルに連泊し、2人で部屋を探して回る日々。そうして出会ったこの部屋は、母娘揃って「これだ!」と思うほどピンと来たそうだ。
「日当たりがよくて、真っ白で、運が良さそうな部屋。暗い部屋が多かったなか、この部屋だけがすごく明るくて実家の部屋みたいだった。何より窓がコロニアル様式のようで可愛くて、即決しました」と懐かしそうに話す。
気がつけば、軍資金200万が底をついたベストなタイミング(!?)。この部屋でのUCARYさんの東京暮らしがスタートした。

母娘で一目惚れしたというコロニアル風の窓。今はガンビーに乗っ取られている
空いたところに置きたいものを置いたら、この部屋になった
UCARYさんが一人暮らしを始めたのは18歳。まだ未成年だったこともあり、大家さんが1階に住み、女性限定というこのアパートはベストな条件でもあった。
「各部屋の配置のせいか、こんなに毎日音楽をつくっていて8年間で一度も苦情を言われたことがない。大きな音を出すときは、近所のスタジオを借りるようにはしているけど、恵まれた環境だと思います」(UCARYさん)
全員が女性のせいか、ドアの開閉や生活音まで全体的に静かで暮らしやすいという。

日当たりが良すぎるので昼間はTシャツのカーテンで遮光する
一番大事なワークスペースは、引越した時にIKEAで購入した事務用の大型テーブルだ。広さが確保されていて、作業しやすいところが気に入っている。ワードローブだけは実家から運んだが、それ以外の家具はすべて東京で購入した。
「部屋作り…とか考えたことはないけど、空いたところに置きたいものを置いていたらこうなった。面倒くさがりのくせに思い出は残したいタイプなので、いろんなところに貼ったり飾ったりしちゃう」のだそうだ。

ここがUCARYさんの音楽基地。ここから様々な曲が生まれ世に放たれている
一番のお気に入りスペースは玄関。
「若き日のロックスターたちのグラビアをたくさん飾っていて、今は亡き人も多いからイメージとしてはお墓」(UCARYさん)

お墓をイメージしたUCARYさんの玄関
「飲みに行くのは年1回あるかないか。家で過ごすのが好きで、友達にも家に来てもらうことが多いです。外を散歩するならいいけど、店で溜まってじっとしているのが少し苦手」と意外な一面ものぞかせた。
誰よりもモードでカッコよく華やかにキメた、初ライブの思い出
ふんわりと心地よいUCARYさんの声に包まれているとつい忘れそうになるが…UCARYさんはシンガーソングライターとしての自身の音楽活動に加えて、ファッションブランドやアーティストとのコラボ、ゲストボーカルやコーラスもこなし、モデル活動やオリジナルブランドも立ち上げるというマルチ・プレイヤー。
小学校の頃から、「家に帰ると学校の緊張から解き放たれて、ずーっと自分で作った歌を歌っていたらしい」というほど、曲作りは身近だった。
自分のための曲と提供曲との違いを聞くと、「わかりやすく言うと、自分の曲は自分が主役の、自分をよく見せられるもの。提供曲は、例えばブランドであれば、主役の商品の雰囲気をつくるというか、色をつける感じ。ブランドは必ずコンセプトがあって、それには商品の向こうにいるお客様へ強いメッセージが込められているので、ブランド・コンセプトはかなり強く意識します」とのこと。
幅の広い仕事ができている今は、一番いい状態だという。

ゴチャゴチャに見えるのに、なぜかカッコよくて落ち着く不思議な部屋
「極度に緊張するライブは、実は少し苦手」とはにかむUCARYさんの、生まれて初めてのライブの思い出話をしてもらった。
音楽好きの両親の影響もあり、ライブの衣装は「メイクもバッチリ、モードの服で、絶対にカッコよくなきゃダメだ」と思いつめた。しかしパンク雑誌に掲載されているアーティストの服はどこを探しても売っていない。やっと見つけた一番似ている服は、阪急百貨店のメゾン・マルタン・マルジェラにあった。シャツ1枚、10万円という世界である。
「絶対返すから!と親を説得して、ヒョウ柄の服を買ってもらいました。でもフタを開けてみたら、そんな服で舞台に立ってるバンドなんて他にいなくて、めちゃ浮いてた(笑)」(UCARYさん)
しかしそのお陰で業界の人の目に留まり、今のUCARYさんがある。やっぱり「カッコいい」は正しいのだ。

革のジャケットに自分でビョウを打って舞台衣装も自作する
夢は音楽も仕事も衣食住も一箇所にまとまった「イオンモールをワンルームにした部屋」
仕事と生活の場が同じだと、切り替えが難しいのではないかと質問すると、「家にいる間は、仕事ばっかりしてます。映画を観るのも曲をつくるためだし、面白い夢を見たら曲ができるし、お風呂でいい曲が思いつくことも多い。生活の中心が音楽だから切り替える必要がないんです」とまっすぐな答えが返ってきた。
この部屋では、曲づくりと衣食住の間を自然にふわりと自在に行き来しているらしい。
この次に引っ越すなら、「広くて大きなワンルームが希望」。できればイオンモールのワンフロアくらいあったら理想、なのだそう。
「ゲームセンターもフードコートもあって、打ち合わせも、曲作りもレコーディングもできて絶対便利だと思う。誰か知らない人が隅っこに住んでても別にいいかな」(UCARYさん)
イオンモールは無理にしても、もう少し広いところを見つけたいのが本音だ。引っ越す時には、この部屋を解放して「みんなに好きなモノを持ち帰ってもらってから荷造りする」とナイスなアイデアも教えてくれた。

玄関にディスプレイされたサングラス・コレクション
「安心したいから挑戦する」海外を目指すUCARY的パラドクス
幼い頃からあまり寝ない子どもだったというUCARYさん。
「どう寝たらいいかがわからないというか…いつ自分が寝るんだろう、寝る瞬間を見たいと思うと寝られなくなって(笑)。寝なくても、その時間は遊んだり他のことができるから得した気分だった」(UCARYさん)
積もり積もって3年前に体調を崩した。そこからは12時には寝て、朝は7時に起床。洗濯→散歩→仕事というリズムを守り、今はすこぶる好調だ。「夜寝るのは本当に大事。自分は人間だったと気づきました」と笑う。
「未成年で東京に来てから、そのままふわーっと今にいたってしまったという感じ。自分に合う事務所があれば入りたいし、海外にも行ってみたい」(UCARYさん)
今後を見据えた時、体調を万全に整えることが大事だとわかったのだそうだ。
「同じことをやっていても、“すごい!”って反応してくれる国もあれば、自然に当たり前のこととして受け入れてくれる国もあると思う。漠然ともっと自分に合う国があるんじゃないかな、と考えているんです」(UCARYさん)
「それはどの国だと思いますか?」と聞くと、間髪入れずに「ドイツのベルリン」と返ってきた。
「遊びに行った時の居心地の良さが半端なくて、初めて行った気がしなかったんです。私、見た目のパンチ力があるし偉そうにしてるから、日本だと遠慮されたりするんだけど…ベルリンは偉そうな人しかいないの(笑)。
例えばアートも、NYは誰でも分かるカッコよさ。でもベルリンは地元の人にしか受けないような、意味の分かんないグラフィティが凄くよかったりする」(UCARYさん)
ベルリンのUCARYさん…ダメだ…カッコよすぎる。やっぱりベルリンでやるのは音楽?
「ライバルが少ないところへ行けば、仕事もあるだろうし、楽だろうけど面白くない。ベルリンのテクノ界で一番になれたら、それは世界で一番っていうことでしょ。やっぱり一番になって、“よかった、私が一番だ”って安心したいから、挑戦するしかない。安心のために挑戦する…なんだかパラドクスだけど」(UCARYさん)
きっと数年後、ベルリンの街をタバコを燻らしながら歩いてるUCARYさんがいるんだろう。帰国したら、イオンモールのワンルーム、絶対に取材させてください!

UCARYさん、ありがとうございました!
文=元井朋子
写真=編集部