トイレの水漏れなど、賃貸の故障を大家さんが直してくれない場合は?対処法や注意点を解説

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賃貸の水漏れを、管理会社や大家さんが直してくれない場合は?

【管理会社が修理手配に対応してくれない場合の対策】賃貸物件で設備が壊れた時、頼りにするのは修理業者
設備が壊れた時、頼りにするのは修理業者

トイレなどの水漏れ修理を管理会社や大家さんに依頼した際、何らかの理由ですぐに直してもらえないというケースがある。設備が故障したままでは生活に不便が生じるだけでなく、精神的なストレスも大きくなってしまう。また、修理してくれる気配がないとき、いったいどのような対応を取ればいいのだろうか?

今回は、水漏れが起こった際に管理会社や大家さんが対応してくれない場合の対処法について解説する。

賃貸で水漏れが発生した場合、まずやるべき3つのこと

「トイレの温水洗浄便座から水が漏れている」「キッチンのシンク下から水が漏れている」など、賃貸物件で水漏れが見つかった場合、最初にやるべきことは次の3つだ。

賃貸で水漏れが発生したとき①:応急処置を行う

水漏れが見つかった場合は、まず、漏れた水が床に広がらないように、タオルなど水を吸収するもので応急処置を行おう。

水漏れを放置しているとフローリングなどが水分を吸ってシミになったり、変形したりしてしまうおそれがあるため注意が必要だ。

賃貸で水漏れが発生したとき②:契約書を確認する

水漏れが発生してしまったら、賃貸物件の契約書を確認しよう。アパートやマンションを契約した際に、水漏れといった設備の故障に関する取り決めがされているはずだ。契約書、または契約したときに渡された書類の中に、連絡先など詳細が書かれているだろう。

もし故障が発生した際の対応法が詳しく書かれている場合、その指示に沿って行動しよう。

賃貸で水漏れが発生したとき③:管理会社に連絡する

【管理会社が修理手配に対応してくれない場合の対策】まずはトラブルが起こったことを連絡しよう
トラブルが起こったことを連絡しよう

賃貸で水漏れなどの設備故障が起きた際、基本的に入居者には賃貸物件の管理会社へ連絡する義務がある。契約書や重要事項説明書の中に緊急時の連絡先が記載されているため、そこへ連絡を入れよう。また、大家さんが直接管理をしている場合には、管理会社ではなく大家さんへ連絡を入れる必要がある。

連絡する際は、「いつから水漏れが発生したのか」「どこから水漏れしたのか」「水漏れの原因は何か」「現状どのような状態なのか」などの説明が求められる。事前に内容を整理しておき、スムーズに回答できるよう準備しておくことが重要だ。

賃貸で水漏れが発生した場合、修理代は誰が負担する?

賃貸物件で水漏れが発生した場合、設備の修理代は基本的に大家さんが支払う。民法606条では、大家さんの修繕義務について以下のように定められている。

【民法606条】

1.賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責に帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。

2.賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

賃貸人、つまり大家さんには賃貸物件を修理する義務があり、水漏れなど設備不良があるのにもかかわらずそれを放置しているなら、民法606条に違反していることになる。ただし、これには例外もあるので注意しよう。

例外①:入居者の故意・過失により水漏れした場合

入居者の故意または過失で水漏れが発生した場合は、入居者が修理費用を負担することとなる。経年劣化で故障したときや、一般的な使い方で故障した際は大家さんに修理義務があるが、「わざと壊した」「本来の用途とは違った使い方をした」などの場合、入居者側の責任で修理をしなければいけない。

例外②:入居者が設置したものに不具合が生じて水漏れした場合

入居者自身が設置したものに不具合が生じ、水漏れした場合も大家さんの責任範囲外である。大家さんが修理義務を負うのは、大家さん自身が設置した設備に限られる。たとえば、入居後に自分で取り付けた温水洗浄便座が壊れた場合、入居者が自分で修理する必要があるだろう。

例外③:特約がある場合

アパートやマンションを契約する際、契約書内に「修繕義務免除特約」が記載されているケースがある。修繕義務免除特約とは、故障などによって修繕が必要な状況になったとしても大家さんに修繕義務が発生しないという特別ルールのことを指す。主に、以下のような小修繕や消耗品の交換がこの特約の対象となる。

  • 電球や蛍光灯、ヒューズの交換
  • 畳の取替えや裏返し
  • 障子紙やふすまの張替え
  • 給水栓や排水栓の取替え

修繕義務免除特約に水漏れに関する記載がある場合、内容によっては大家さんに修繕義務は発生しない可能性がある。

例外④:残置物が水漏れした場合

残置物が水漏れした場合は注意が必要だ。残置物とは、以前の入居者が残していったもののこと。よくある残置物の例としては、温水洗浄便座やエアコン、冷蔵庫などが挙げられる。

残置物の所有権が大家さんへ移っている場合は、大家さんが修繕義務を負う。しかし、前述した修繕義務免除特約として記載されている場合、大家さんに修繕義務は発生しないと考えた方が無難だ。

例外⑤:修繕に費用がかかりすぎる場合

修繕に費用がかかりすぎる場合も、大家さんの修繕義務が免除されることがある。たとえば、物件の築年数が古く、修繕に大規模な工事が必要となる場合だ。

過去の判例(裁判の事例)では、修繕にかかる費用と比べて賃料が安く、採算が取れない場合、大家さんの修繕義務はなくなると判断されている。古い賃貸物件に住んでいて、家賃も安い場合などには、修繕してもらえない事例があることを覚えておこう。

上記は基本的には築年数の古い物件の大規模工事に対して、採算が取れないときに適用される内容だ。建物自体を修理するような大規模工事でなければ、大抵は修理してもらえるだろう。

雨漏りや水漏れなどの生活に支障をきたしてしまうような設備故障の応急処置はもちろんしてもらえるが、大規模工事は行ってもらえないこともあるため注意が必要だ。

賃貸の水漏れを管理会社・大家さんが直してくれない場合の対処法

連絡するべき管理会社がわかったらすぐに連絡を入れ、管理会社が手配した修理業者が来るのを待とう。問題は、管理会社から業者への連絡がスムーズにいかない場合だ。

何らかの理由で、管理会社による修理業者の手配が遅れることがある。そうなると、先の予定を立てられず、何より故障が直らないために不便な生活を続けなくてはならない。イライラして、ストレスも溜まってしまうだろう。

故障の内容が水道管の破裂や水漏れのように緊急を要するときには、管理会社が修理業者を手配するのを悠長に待っていられない。そんな場合の対処法を紹介しよう。

管理会社に再度催促して期日を決める

管理会社に連絡がつかないときは、たまたまオフィスに人がいない場合も考えられる。連続で電話をかけても意味がないため、ある程度間隔をあけて電話をかけよう。また、留守電を入れておけば、折り返しを貰える可能性も高い。

連絡が取れたら、設備が使えないことで生活に支障が出る、もしくは修理の緊急性をしっかりと説明したうえで「この日までに修理手配をお願いします」「明日中には修理予定日を知らせてください」と期限を決めて話をしよう。

ただし、管理会社に連絡する際は、営業日や営業時間を確認しておこう。特に年末年始休暇の時期などには電話がつながらないこともある。休日や深夜・早朝など管理会社の営業時間外の場合に対応が遅くなるのはやむを得ないだろう。

24時間対応のサポートセンターか管理サービス会社に連絡する

入居時に24時間対応のサポートセンターや管理サービス会社の利用を申し込んだ場合は、こちらに連絡しても良い。緊急を要する故障や破損にも対応してくれるサービスだ。

サポートの内容は運営会社により異なるが、水回りのトラブルが発生した場合や玄関の鍵を紛失した場合、ガラスが割れてしまった場合などさまざまなサポートに対応しているのが一般的。

大手の不動産管理会社の場合、24時間対応のサポートセンターが無料で使えるケースがある。しかし、一般的には24時間のサポートセンターや管理サービスは、利用料金がかかることが多い。いざというときには大変助かるサービスのため、契約の前に一度確認しておくと安心だ。

電話をかけるシニア女性
いざという時は24時間対応のコールセンターが便利だ

緊急の場合には自分で直接業者に連絡。必ず領収書をもらおう

管理会社に連絡がつかず、24時間コールセンターにも契約していなかった場合は、管理会社との連絡がつくまで待つしかない。しかし、水道管の破裂など、放置しておけば生活できなくなるような緊急事態が発生した場合には自分で業者を呼ぼう。

2020年に施行された改正民法では、入居者による修繕について以下のように定めている。

■民法第607条の2(賃借人による修繕)

賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。

一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。

二 急迫の事情があるとき。

つまり、大家さんに修繕を依頼したにもかかわらず、必要な修理をしてくれなかった場合、入居者が自分で修理しても構わないということだ。

自分で業者へ依頼するのはあくまで緊急事態の場合のみであることを頭に入れておこう。大家さんに無断で修理手配をすることは原則禁止されているため注意が必要だ。

なお、入居者が修理を行った際の費用は、民法608条に基づき大家さんに請求できる。

■民法第606条(賃借人による費用の償還請求)

賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。

領収書がないと修繕費の返還時にトラブルになってしまったり、修繕費を請求できなくなってしまう可能性もあるため、修理業者から受け取った領収書は必ず保管しておこう。

賃貸の水漏れを直してくれない場合、家賃を支払わなくても良い?

経年劣化によって部屋に雨漏りが生じたときは、大家さんに修繕義務が発生する。しかし、修繕義務があるのにもかかわらず、一向に修理をしてくれなかった場合、入居者は家賃の減額を申し入れることが出来る。

2020年4月の民法改正で、賃貸物件の一部が使えなくなった場合の賃料減額について大きな変更があった。

■民法第611条(賃借物の一部滅失による賃料の減額等)

賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

改正前は「賃料の減額が請求できる」という文言だったのが、改正後は当然に「賃料は減額される」と、よりシビアになったのだ。この法改正は、入居者側が有利になるものだ。

大家さんには賃貸物件を生活に不自由なく使える状態で提供する義務があり、その対価として、借主は大家さんへ家賃を支払う。雨漏りで生活に不便が生じているケースでは、大家さんはこの義務を果たしていないと判断され、家賃の減額は妥当と考えられる。

ただし、家賃全額の支払い拒否は難しいとされている。雨漏りで住みにくかったとしても、住んでいた分の対価は支払わなければいけないためだ。設備の故障等で使用できなくなった度合いに応じて、どの程度減額するか大家さんや管理会社と交渉を行う必要がある。

次のページでは、賃貸物件の水漏れに関する注意点や修理費負担について紹介!

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CHINTAI編集部
CHINTAI編集部

1992年創業、お部屋探しや生活の情報を発信してきた株式会社CHINTAIが運営するWebメディア。引越しに関する情報はもちろん、家事や家計、季節の楽しみなど日々を豊かにする知識を調査・ご紹介。
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