【お部屋探訪】総合エンターテイメント施設・水野しず編
友だちの部屋に遊びに行くような感覚で、有名人の部屋に上がりこんでみたい……。そんな妄想から始まった当連載。第9回目の訪問先は、自身で「総合エンターテイメント施設」を名乗っている水野しずさんの部屋だ。
水野しず
1988年12月19日生まれ。岐阜県出身。武蔵野美術大学中退。アイドルオーディション「ミスiD」2015グランプリ受賞。雑誌『TRASH-UP!!』でマンガ連載をしており、アイドルでありマンガ家でもある。最近では、アイドルユニット「LADY BABY」の作詞をするなど、活動は多岐にわたり、自身のことを「移動式の遊園地のような楽しい人になりたい」とのことから、「総合エンターテイメント施設」と名乗っている。父親は酒造メーカー「三千盛」(みちさかり)の代表取締役社長を務める水野鉄治。
「変化をしていかないと、生きていることにならない」
水野さんは現在、杉並区の賃貸アパートに住んでいる。以前は、通学していた武蔵野美術大学のある小平市に住んでいたようだが、3年ほど前に越してきたらしい。
「新宿まですぐ行けるところで探していました。不動産の方に、なるべく日当たりの悪い部屋をお願いしたら、『日当たり悪くて大丈夫なの? だったらいくらでもありますよ』と。そのなかでもこの部屋を選んだ理由は、駅から近いという好立地に比べて、家賃が安いところ。本当にこだわりがないので、30分ほどで決まりましたね」
まさか日当たりの悪い部屋を好む人がいるとは……。
「日の光が嫌いなんです。シャッターと遮光カーテンで塞いでいるぐらいですから」
ちなみに現在は、部屋の片づけの途中だという。
「自分の生活空間は、社会的規範に則った正しくてまっとうな生活の“逆”をしているはずだったのに、それらが無意識に入り込んで水みたいに浸透してきていて、気がついたら部屋の中がベタベタでした。もう少し感性がぼーっとしている状態だったら、そういう生活に飲み込まれて、もっといろんなことを鈍らせていたと思う。もうベタベタで乾かすこともできないから、排除をしていかなければならず、モノを捨てはじめました」
「片づけ」一つとっても、水野さんの哲学が表れている。変化をしていかないと、生きていることにならないそうだ。
インテリアのこだわりは?
だいぶ捨てたとはいえ、物が多くある水野さんの部屋。こだわりについて聞いてみた。
「お気に入りのインテリアは、最近買った白色の本棚。たぶんこれ上下置き方間違えていますけど」
読書家の水野さんは、意外にも(?)、新書やビジネス書が好きらしい。
「ネットで買って届いたのが、ピーター・ティールの『ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか』。経済について書いた本です。私、勉強とか好きなほうではないんですけれども、経済の本はこうすればこうなるっていうことが書いてあるから、読んでいて楽しいです」
「天井に使われているのはイミテーションの木だったのですが、本物でもないくせに、表面だけ模しているのがすごくムカついて。こんなのは私の視界に入れる価値がないので、布で覆いました」
奥のほうは見えているが?
「本来だめなんですけれども、矛盾しているところが人間らしくていいかな……ごめんなさい、言い分けです」
「Twitterのツイート画面を印刷したのって結構いいなと思って貼った。結論を言っているのではなくて、答えのみえない言葉のほうが、自分の精神をゆさぶるので。さっき貼ったばかりで、たぶん3日後ぐらいに剥がすと思うけど」
ちなみにテレビは、最近までリモコンをなくしていて見られなかったそうだ。
部屋での過ごし方は?
暗い部屋で、コーヒーを飲みながら読書をするのが好きだという水野さん。
「喫茶店で4年ほどバイトしていたこともあって、コーヒーにはこだわりをもっています。好きな店の豆を取り寄せて部屋で挽いて淹れたりするほど。自宅に友だちが来てくれるとうれしいですね。コーヒーを淹れるよって」
ちなみに普段は自主的に外出することは少ないようだが、喫茶店に行くためだったら、何の目的もなくても出かけるという。喫茶店では本を読んだり、音楽を聴いたりと、自宅と変わらない過ごし方をするそうだ。
「ミスiD」2015のグランプリに選ばれて、生活は変化したのだろうか?
「仕事の幅が増えましたね。1個だと飽きちゃうから、いろいろやりたいと思っていて。それに今の仕事は予想がつかなくて、新しい体験が多いから楽しいです。予想がつかないことに、生きる意義を感じる。あと、たとえば音楽をやっている人は仕事で海外や日本のいろんなところに行ったりするじゃないですか。日常の中に違う環境があるのが、うらやましいと思っていて。グランプリを受賞したおかげで、割とそういう感じになったからうれしいです」
「缶詰はファンの方からいただきました。ファンの人は私のことをよく見ているから、多分痩せたのに気付いたんだと思う。それで持ってきてくれる。優しいよね。『もっと食べなよ』じゃなくて、黙って缶詰をくれる。ごんぎつねかと思いました」
ちなみに水野さんの好きな食べ物は、海の幸など高級品だそうだ。自炊はしないのだろうか?
「仕事のバリエーションが増えて、さらに料理をするとなると頭がおかしくなるから、最近はしていません。でも美大に行かなかったら調理学校に行こうと思っていたぐらい料理は好き。ただ自分しか触れないものにそんなに労力を割ける気が起きないから、一人で食べる分には外で済ませる」
次はどんな部屋に住みたい?
次はどんな部屋に住みたいのだろうか?
「お城だよね。地下に舞踏会できるスペースとかがあって、玄関から入口まで距離があるところがいい。現実的なことをいうと、2部屋と広めのキッチンがある部屋がいいですね。そしたら1部屋で思いっきり物づくりをして、もう1部屋で生活する。料理も好きなようにできるし」
気さくにいろいろと話してくれた水野さん。最後に、読者に一言お願いします。
「部屋も人も変化していくことが大切だから、みなさんもCHINTAIで部屋探しをして、生活に変化をつけてみると、生きている感覚がわき上がってきていいかもしれないね」
まさかきれいにオチをつけてくれるとは……!
(名久井梨香+ノオト)