『孤独のグルメ』原作者・久住昌之さんに聞く「孤独」の楽しみ方

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一人暮らしの「孤独」との良い付き合い方

「一人暮らしが寂しくて仕方がない」「これから一人暮らしをすることが不安」と、一人暮らしにマイナスなイメージを抱く人もいるかもしれない。

しかし、せっかくの一人暮らし、どうせなら有意義に楽しく過ごしたいものである。

そこで参考にしたいのが、漫画・ドラマが大ヒット中の『孤独のグルメ』の主人公、井之頭五郎(いのがしらごろう)。自由に、幸福に、空腹を満たす彼の姿は、“孤独”を謳歌しているかのようだ。

ということで今回は、『孤独のグルメ』原作者である久住昌之さんにお話を伺い、井之頭五郎のように、“孤独”を楽しみ、一人暮らしを最高のものにするための秘訣を聞いた。

『孤独のグルメ』原作者・久住昌之

『孤独のグルメ』原作者・久住昌之さん

最近の若い子って、生きることに焦り過ぎなのでは?

──はじめての一人暮らしに不安を感じる方や、「一生独身で一人で暮らすのでは」と不安に思う方など、「孤独」を抱える現代人が増えているように思えます。満足した人生を送るにはどのように過ごすべきなのでしょうか

うーん、そうですね。まあ、何をするにも“リラックス”をすることが一番だと思うんですよ。最近の若い子って、生きることに焦り過ぎなのではないでしょうか。そう考えると、この「一生一人で生きるかもしれない」というのは、その時点でリラックスしていないと思うんですよね。

仮に二人で生きようが、三人で生きようが、寂しい時は寂しいわけだし、楽しい時は楽しいじゃないですか。一人で生きるっていうのは、頼る人がいないと思っちゃいがちです。でも二人でいても、相手の面倒を見なきゃいけないっていうこともあるわけだし、その人のご機嫌を取らなきゃいけないかもしれない(笑)。だけど、一人でいれば、自分がリラックスすることだけを考えて生活できるじゃないですか。リラックスしていれば、失敗も楽しめるものです。

僕は、人生とか一生のことは分からないけど、旅の極意はリラックスだと思っているんですよ。

例えばね、僕は取材の旅をすることが多いんですけど、たまに観光課に呼ばれるような地方の取材とかもあって。ある時、ものすごく力が入ってるところがあったんです。みんなスーツを着て、僕のことを駅に並んで待ってて。でも取材の日はあいにくの雨で、彼らは全員悔しそうに「連れていきたい場所があるんだけど、雨じゃいい写真が撮れない」と言うんですね。

その地域には島があって、晴れている日は近くのホテルから島の絶景が見れるんです。だから中止になるところ「まあ、雨でも行ってみましょうよ」って提案したんですよ。そしたらホテルから島に渡る橋の街灯がバーっと灯いていて、雨のおかげでものすごく綺麗だったんです。晴れてたら、観光パンフレットみたいな平凡な写真しか撮れなかったでしょう。雨だから幻想的な風景が見られた。これも、リラックスして、雨なら雨で楽しもう、と思えた産物だと思うんです。

『孤独のグルメ』原作者・久住昌之

またこれは別の旅で、知らない街を歩いてたときに、道路にキュウリが1本落っこちてたんですよ。おかしいじゃないですか、なんでキュウリが1本ここにって(笑)。でも、リラックスをしてないと、そんなものにも気づかない。どんな古い神社よりも、キュウリが1本落ちてることのほうが、よっぽど心に残ってたりするんですよ。そのことのほうが僕にとって、大げさにいえば人生にとって、面白い思い出なんだよね。死ぬ前にそのこと思い出してニーッとできたら、いいじゃないですか(笑)。

大きい小さいは関係ないんです。いくつ楽しいことを拾えるかっていうのが旅だと思うし。たぶん、一人暮らしもそうだと思う。「ずっと自分は一人で生きていかなきゃいけない」という悲壮な決意を持つと……それは本当に悲壮なんですよ。道のキュウリに絶対気づかないです(笑)。今は一人暮らしだけど、明日は二人かもしれないって思っていた方がいいと思うんです。それは恋人じゃないかもしれないし、男か女かわからないけど、もしかしたら何人かで住むことになるかもしれないじゃないですか。

だから、「明日はどうなるか、そんなの誰もわかんない」っていうリラックスがあったほうが、毎日っていうのは楽しいんじゃないんですかね。結果的に人生はその積み重ね。20代でこれからの人生を考えて悩むなんて、身体に良くないですよ(笑)。不安とかを中心に生きていくっていうのは、小さな楽しみを見過ごしやすいんじゃないかなって。

『孤独のグルメ』原作者インタビュー_久住昌之さんが選んだ店の天井

ウィリアム・モリスのモダンな壁紙が印象的なカフェは、久住さんチョイスだ

自分の好みは、自分の力で探すこと

──『孤独のグルメ』の主人公、井之頭五郎にとっても「リラックス」はキーワードになっているのでしょうか

僕が五郎に一番させたくないのは、何かで調べて食事処を探すことです。五郎はいつも「この店いいかなあ、ここにしようかなあ」って、店の前で迷うんです。で、「いいんじゃないかな」って入る。やっぱり、そういう迷いは誰にでもあるし、だけど何かを調べたり何かに頼ったりしなくても、飛び込んでしまえば何か見つかるというか。

なので、やっぱり何も知らないで食べて、何回か食べてるうちに「なんかここいいな」って思えるくらいがちょうど良いのかな。そこは、やっぱりリラックスですよ。目を釣り上げて「それほどうまくないじゃないか!」って、辛いです(笑)。

──井之頭五郎の場合、自然に食べ歩きが趣味になったと

あのー、僕は五郎に食べ歩きをさせたことは一度もないし、食べ歩きが趣味な人とは、正反対の主人公です。仕事をして、知らない街で猛烈に腹が減る。そこでやむにやまれず店を探すんです。切実さから面白さが生まれ、おいしいにつながる。

定年退職をしてから趣味を探そうとして、全然うまくいかない人もいるんだけど、そりゃそうですよね。切実じゃないから。今までやろうとしてないんだから。趣味なんてものは暇になってからガツガツ探すもんじゃなくて、忙しく働いてるころ、ふと「やってみっかな」ってなったものが、続けてれば、年取ってからの自分を救うんです、ってなんの話でしたっけ(笑)。

『孤独のグルメ』原作者インタビュー_久住昌之さん

インタビュー中は「ふらっとQUSUMI」ご出演時と同じ明るい語り口で、かつ真摯にお答えいただいた

で、好きなことをやらなきゃ続かないですね。でも「好きなことってなんだろう?」ってなると、もうリラックスがないですよね。リラックスしてれば、いろんな楽しみも見えてきます。それをなんとなく続けていると、見えてくる世界ってものがあって、自分だけの楽しみっていうのが積み重なっていって。そうすると、年をとることって全然怖くなくなるんじゃないですかね。

自分は何が好きなんだろう、自分はどういう店が好みなんだろうとか、自分の力で探すのが良いと思います。それは、人には教えてもらえないこと……、個性ってのはまずそこなのかな。自分は何が好きか、どういう食べ物が一番好きかっていうのが個性なんです。それは自分で歩いて食べて、見つけるしかないんですよ。インターネットには絶対出ていない。

難しいように思えるかもしれないけど、それを見つけることは大変なことじゃなくて、楽しいこと。失敗したり、成功したり、何年か積み重ねていくと、自分は何が好きかっていうことがわかっていく。五郎はその途中なんでしょう。

孤独のグルメ場面カット

──なるほど…。そう考えると、自分が昔から好きだったものとかを思い出すのも良いかもしれませんね。無理に新しく趣味を作ろうとせずに

うん、そうだね。自分の好みがわかっていくと、本当に楽になりますから。人の言ったことに左右されなくなるし。これを言ったら老人の戯言みたいに思われるかもしれないけど、自分探しの旅なんてのは、肩に力が入り過ぎだよ(笑)。それと、趣味は出会いのようなもので、明日見つかるかもしれない。

『孤独のグルメ』原作者久住昌之さんインタビュー_Season8が放送中

シリーズ8作目となった『孤独のグルメ』

──参考にさせていただきます。最後に「孤独のグルメ Season 8」の見どころを教えてください

そうですね…………ぜんぜん変わらないところですかね(笑)。

──変わらないところを求めているファンも多いと思います

はい、安心してください、ぜんぜん変わりません。僕を含めスタッフ全員。皆さんは何にも変わらないと思って見ていて大丈夫です。「見ててお腹がすいて困るよ」と笑っていただけたら、僕らは報われています。

──本日はありがとうございました!

TVドラマ「孤独のグルメ Season 8」はテレビ東京にて放送中!

『孤独のグルメ』原作者久住昌之さんインタビュー_Season8が放送中

10月25日(金)放送 『孤独のグルメ Season8』第4話

「埼玉県新座市の肉汁うどんと西東京市ひばりが丘のカステラパンケーキ」

仕事を終えた井之頭五郎(松重豊)は新座市の住宅街に取り残され途方に暮れていた。なんとか古民家風の店構えのうどん屋を発見し、中に入ると力強くうどんを踏むお母さん(池谷のぶえ)と目が合い気まずい雰囲気に…。

うどんを堪能した五郎は、次の商談相手・石井(安東弘樹)が待つひばりが丘団地へ。商談を終えて帰ろうとした時、ドアの向こうから甘い匂いが漂ってきて一気に小腹が減った五郎は、匂いのもとを探すべく店内に突き進んでいく…。

テレビ東京系
ドラマ 24「孤独のグルメ Season 8」
放送日時:毎週金曜 深夜0時12分~0時52分
※テレビ大阪のみ翌週月曜深夜0時12分~

番組HPはこちら!

PROFILE

久住昌之
マンガ家・ミュージシャン

1958年7月15日 東京・三鷹生まれ。法政大学社会学部卒。美學校・絵文字工房で、赤瀬川原平に師事。1981年、泉晴紀と組んで「泉昌之」名でマンガ家としてデビュー。谷口ジローと組んで描いたマンガ『孤独のグルメ』は、2012年にTVドラマ化され、現在season8が放送中。劇中全ての音楽の制作演奏、脚本監修、最後にレポーターとして出演。『孤独のグルメ』単行本は、フランス・イタリア・スペイン・ドイツ・ブラジル・デンマーク・韓国・中国・台湾・ポーランドで翻訳出版されている。

取材協力

ALTBAU with MARY BURGER (吉祥寺店)
東京都武蔵野市吉祥寺南町1-1-10 MAビルディング4F
https://mary-burger.com/

TEAM CAFE TOKYO
https://teamcafetokyo.jp/

©テレビ東京

取材・文・写真=編集部

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