【イギリス流】無駄をなくしてライフスタイル&インテリアをおしゃれにコーディネートするコツ
ヒント満載! おしゃれな暮らしにする方法をホーム&ライフスタイルプロデューサーのヘザー ブラッキンさんに聞いてみよう!
海外のインテリア雑誌に載っているような洗練された部屋を作りたいけど、自分にはハードル高そう……と、諦めモードの人も多いはず。
でも、『ふつうの住まいでかなえる外国スタイルの部屋づくり』(文藝春秋刊)の著者で、ホーム&ライフスタイルプロデューサーのヘザー ブラッキンさん曰く「ちょっとの工夫と心がけでおしゃれなインテリアは作れる」とのこと。
その極意をぜひ教えてもらいたい! ということで、今回はヘザーさんのご自宅を拝見してきた。

PROFILE
東京生まれ。父はイギリス人、母は作家の森瑤子。イギリスの大学でインテリアデザインを学び、卒業後はベルギーのインテリアデザイン事務所に就職。2000年に帰国後、ホーム&ライフスタイルプロデューサーとして幅広く活動。アメリカの大手住宅デザインサイト「Houzz」の日本版「Houzz Japan」にてインテリアや暮らしの記事も連載している。
WEB:https://www.heather-homelifestyle.com
このページの目次
ライフスタイルの基盤はイギリス流〝無駄のない暮らし〟
イギリス人の父、日本人の母のもとに生まれたヘザーさん。一つの物を長く使い続けるイギリス人の精神を父上から教わり、今もなお、むやみに物を増やさず〝無駄のない暮らし〟を実践している。
ヘザーさんのライフスタイルやインテリアコーディネート術のバックボーンとなっている、イギリス流〝無駄のない暮らし〟とは?

イギリス流〝無駄のない暮らし〟の基本は余計な物を持たないこと
──ヘザーさんは普段どのように物を管理していますか?
服にしても生活用品にしても、家のキャパに合わせて物を持つようにしています。
イギリスは日本のように四季がはっきりしていなくて、なんとなくモヤモヤ~ッと次の季節が来る感じ。冬は寒くても家の中は暖かいのでTシャツ一枚で過ごせますし、夏でも急にひんやりとすることもあるので一枚羽織ったりします。だから衣替えもしないのでクローゼットに入る分だけの服しか持たないんです。
日本はお店も物も多すぎますね。洗剤一つでも、いろんな種類の物が売ってるじゃないですか。イギリスも、ロンドンとか大きな街に行けば、それなりにお店はありますが日本ほど何もかもが便利じゃない。
そういった便利さをイギリス人は求めないのかもしれません。手元にある物でやりくりするのに慣れてるから、物も増えません。ちょっと手間かかっても、その手間は充実した暮らしのため、と考えの一手間なのではないでしょうか。
──どうしても新しい物が欲しくなったら?
手元の何かを教会やバザーに提供します。チャリティーのシステムが成熟しているから、日本よりも物を手離しやすい社会かも知れません。でも、イギリス人はもったない精神が強いというか、一つの物を大事に使うので、すぐに手離すことはしないかも。
物は〝一生使うつもり〟で買う
──物を買う時にも日本とイギリスで違いはありますか?
イギリス人は、上質な物を少しだけ持って、それを一生使います。買う時は〝一生使うつもり〟で買うんです。質の良い物は本当に長持ちしますから。値段が高ければOKではなく、大事なのは質です。
日本の若い人は安い物を買うんだけれど、お金がないわけじゃないのでたくさん買っちゃうんです。「あ、コレかわいい! コレもかわいい!」って。
イギリスの若い人は「かわいい」にはあまり左右されず、衝動買いすることはないです。無駄遣いをしないで、できるだけ良い物のために貯金します。今も昔も「チープな物を10個買うんだったら、良い物を1個買って長く使う」という考えなのです。
──なぜイギリス人は一つの物を長く使い続けるのでしょうか?
使い込まれた年月が醸し出す〝味〟や、その物が持つ〝意味〟とか〝ストーリー〟を大事にするからです。例えば、お母さんから代々受け継いだ家具だったり、初めてのお給料で買った椅子だったり。
そして、他人と同じことをするのが嫌いなので、大量生産された既製品より、手作りの一点物を好む傾向があります。持ち物でも〝自分らしさ〟を追求するのが、イギリス人なんです。
イギリスではすぐに新しいものを買い換えずに、DIYを楽しむことが多い
──イギリス人のお父様は大のDIY好きだとか?
父は物が壊れてもすぐに業者を呼んだりしないで、まずは自分で修理していました。水道でも大工仕事でも、何もかもです。新しく買い換えるのは、自分ではどうにもならない時だけ。
これってイギリスでは普通のことで、週末に住宅街を歩くと、どの家でも、門とか壁をペンキで塗っていたり、ガーデニングしてたり。DIYが暮らしの一部になっているんです。77歳になった今でも、父はDIYを楽しんでいます。屋根に上ったりするのは、そろそろやめて欲しいなぁと思ってるんですけどね(苦笑)。
──ヘザーさんのお宅もDIYした物が多いですね!
テーブルにワックスを塗ったり、収納棚などは自分で作っちゃいます。自分で作れば、ぴったりサイズにできるし、形や色も思いどおりになるので。
既製品が絶対ダメ、というわけではありません。私もIKEAとか100円ショップのアイテムを活用しています。

〝自分の色でまとめる〟とインテリアはおしゃれになる
ヘザーさんはインテリアをアドバイスする時、まず、その人の〝色〟を見つけることから始めるという。部屋の印象を決めるのは〝色〟によるところが大きいからだ。
色にこだわってコーディネートすると、部屋はグッとおしゃれになり、さらには無駄使いや衝動買いも減るのだとか。

──ヘザーさんのお宅は、まるで外国のようなムードですね!
海外のインテリアがおしゃれなのは、色が統一されているからです。インテリアの色を統一すると洗練された印象になります。自分はどんな色が好きか、どんな色が似合うのか。自分の色を見つけることがインテリア上手になる第一歩です。
私は、石、砂、樹木など、自然界にある物の色が好きなので、インテリアもグレーやブラウンでまとめています。グレーと言っても、ピンク系やブルー系など、さまざまなトーンがあるから、色の選択肢は意外と多いんです。
──どうしても手離したくない物や生活必需品が統一感を乱してしまう時は?
ちょっとした工夫で解決できますよ。例えば、本の背表紙がカラフルすぎるなら後ろ向きに置いてみたり、調味料のパッケージがキッチンの雰囲気に合わないならガラス瓶に詰め替えてみたり。
──ミニマルな暮らしを目指す人にとっても、色を統一する方法はおすすめだとか?
私自身はミニマリストではないので、積極的に物を減らそうとはしていません。でも、色にこだわったインテリアコーディネートを心がけているため、お店でカラフルな雑貨などにときめいても「私の家にはマッチしない」とブレーキがかかります。自分の色を決めておくと衝動買いをしなくなりますよ。

今すぐトライしたくなる! ヘザーさんのインテリアコーディネート術
日本で生まれ育ったヘザーさんは、イギリスの大学に進んだ後、ベルギーで働き、ご主人の転勤でドイツへ。2000年に帰国してからは東京郊外の集合住宅で暮らしている。
長きに渡るヨーロッパ生活と持ち前の感性が相まって、その住まいは日本にいることを忘れてしまう雰囲気でいっぱい!
リビングダイニング、キッチン、収納、雑貨を拝見しながら、コーディネートのポイントを教えていただいた。

リビングは〝ヒュッゲ〟をテーマに心地よく
──温かみを感じる、居心地の良いリビングですね!
デンマーク語の〝ヒュッゲ〟という言葉が好きで、ほっこりと落ち着く空間を心がけています。
ソファはIKEAのEKTORPシリーズ。ヨーロッパで使っていたソファと似たデザインを色々探したたとき、最もしっくりきたのがIKEAのソファでした。クッションやアームに重厚感があって気に入っています。
──ウッディーな家具や小物も印象的です。
ライティングデスクはドイツで買ったものです。これだけは手離したくなくて持ってきました。
コーヒーテーブルはバリ島の物。無垢材なのでずっしり重たいです。ソファの重厚感とのバランスを考えたら、このくらい存在感のあるテーブルじゃないとね。引き出しが付いているのも◎。
テーブルに置いた小物入れもアンティーク。真ん中に取っ手が付いているので大工さんの道具入れだったのかなぁ。そんな風にストーリーを感じさせるものが好きなんです。


キッチンは〝DIY〟で使い勝手を高める
──こじんまりした空間ながら、おしゃれなDIYがそこかしこに……。
この住まいは建売だったので、キッチンの大きさは買った時のまま。与えられた空間をどうしたら使い勝手良くできるか、それを考えながら、DIYできる限りの工夫をしています。
ガスコンロのまわりにはタイルを貼りました。ツルッとしたタイプのほうがお手入れしやすいかも知れないけど、家全体のナチュラルな雰囲気に合わせたくて、質感のあるレンガタイルに。さらに白くペイントしています。
元々はブルーだった戸棚も、カッティングシートを貼って淡いグレーにコーディネートしています。カッティングシートはキレイに剥がせるタイプもあるので、このテクニックは賃貸暮らしでも有効です。


物にこだわれば〝見せる収納〟ができる
──収納で気をつけていることは?
収納は「使う物を、使う場所に」が基本的なポイント。我が家は〝見せる収納〟が多いのですが、物の色合いや質感にこだわれば、見せても雑然としません。また、定期的に物を見直して、余計な物が増えていないかをチェックしています。
持っている物に合わせて、そして取り出しやすさを考えて、収納家具もDIYしています。ダイニングに置いているオープンチェストも手作りしました。手作りなのでペンキにムラがあったりしますが、それも〝味〟です。
キッチンの作り付けの収納は扉を外して、中の壁をダークグレーに自分で塗りました。棚板は無垢材をホームセンターでカットしてもらい、自分で白く塗って取り付けています。



〝雑貨〟はフォーカルポイントを決めて飾る
──雑貨選びに悩むインテリア初心者は多いです。何かアドバイスをいただけますか?
私は雑貨選びでも、その物が持つ〝意味〟を大切にしています。瞬間的な「かわいい!」「素敵!」に誘惑されないで、本当に好きな物だけを持つようにしないと、意味のない物が増えていくばかりです。
飾る時は〝フォーカルポイント〟を決めて、目線が集まるように。物をたくさん置き過ぎず、一つのシーンを作るイメージで。グリーン(植物、花)を入れると上手にまとまります。
背景も大事です。賃貸で壁に穴が開けられなくても大丈夫、棚の上にフレームを立てかけるだけでOK。本は立てかけたり、数冊積み重ねてみたり、高低差を出すのに便利ですよ。


シンプルライフへの近道は〝物〟と〝色〟
「我が家は決してシンプルではありませんが、物に振り回されない暮らしを心がけています」と、ヘザーさん。〝好きな物(意味のある物)〟と〝自分の色〟の二つにこだわれば、自然と余計な物は家に入ってこなくなり、インテリアは洗練され、快適な空間になるとのこと。
自分らしく過ごせる、シンプルで快適な部屋作りを目指すなら、ぜひ、ヘザーさんのインテリアコーディネート術を取り入れてみよう。
取材・文=野中かおり