退去費用や原状回復の仕組みは?退去時にバックレて払わないとどうなるの?
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退去費用を払わない、理解していないとトラブルに巻き込まれることも
![悩む女性](https://www.chintai.net/news/wp-content/uploads/2018/10/pixta_48351559_S.jpg)
引越しの際に起きがちなトラブルとして、「退去費用」に関するものが挙げられる。例えば、「思いもよらない金額を請求された」「部屋の修繕費用をどの程度負担するかで揉めた」などといったケースである。
退去費用についてきちんと理解していなければ、訴訟などの問題に発展する可能性もある。退去費用の請求を無視して、いわゆる「バックレた」状態になり、少額訴訟を起こされるケースは多い。オーナーの主張が認められた場合、最終的に差押えによる弁済を強いられることもあるのだ。
こういったトラブルを避けるためにも、今回は「退去費用」の仕組みや「原状回復」の内容について詳しく紹介していく。
退去費用の仕組みとは?
![退去費用についてきちんと理解してトラブルを回避しよう](https://www.chintai.net/news/wp-content/uploads/2018/10/ccb787c0bc928e35f2ad3239d5a88c3b_s.jpg)
退去費用とは、賃貸物件から退去する際にかかる費用のことである。賃貸物件を退去する際、入居者には済む前の状態に戻す義務=原状回復義務があり、修繕費用が必要になるのだ。
ただ、通常の場合、修繕にかかる費用は入居時に払った敷金から差し引かれることになり、敷金から修繕費を引いた分が余れば入居者に返金されることになる。つまり、敷金で修繕費用を全額まかなうことができれば退去費用は発生しない。
退去費用の相場
退去費用は物件の汚れ具合や破損の度合いにより異なるため、はっきりとした相場を示すことは難しい。インターネット上で行われたアンケート調査によると、物件の広さごとに見た退去費用の相場は以下のようになっている。
間取り | 退去費用の相場 |
---|---|
ワンルーム、1K、1DK、1LDK | 50,000円 |
2L、2D、2LDK | 80,000円 |
3DK、3LDK以上 | 90,000円 |
また、居住していた年数が長くなるにつれて、退去費用の相場が高くなることにも注意が必要だ。一般的には、居住年数が5年を超えると退去費用が20%前後上がるといわれている。
原状回復費用は入居者が全額負担するわけではない
入居者が借りていた物件を原状回復させる範囲は、国土交通省が公表した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にその基準が示されている。原状回復は入居した時点の物件の状態に戻すことではないという点に注意してほしい。
賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること
つまり、あくまで入居者の故意や過失によって生じた損耗に対して適用されるものであり、普通に暮らしているうちに生じた経年劣化などに対しては当てはまらない。経年劣化などを修繕するための費用負担義務は大家さんの側にあるというわけだ。
修繕費が入居者負担になる例
![カーペットのシミ](https://www.chintai.net/news/wp-content/uploads/2018/10/pixta_15669559_S.jpg)
一方、退去費用が入居者負担になるのは「入居者の故意・過失による損耗」があった場合ということになる。故意によって壁などが破損した場合でなくても、以下のようなケースでは入居者に原状回復が求められる。
・飲み物などをこぼしたことによって、カビやシミができてしまった
・エアコンの水漏れを放置したことによって壁が腐食してしまった
・引越し作業などによってひっかきキズをつけてしまった
・キャスター付きの椅子などによって床にキズがついた
いずれも日常的に起こりやすいケースのため、気を付けておこう。
![生活しているうえで無意識につけいている傷も注意](https://www.chintai.net/news/wp-content/uploads/2018/10/81fd6959332c29438d429f0a9753d9ea_s.jpg)
修繕費がオーナー負担になる例
入居者が故意・過失によって物件に損耗を与えてしまったケース以外でも、退去費用が高くなってしまうことがある。
入居者の故意・過失により修繕の必要が生じた部分と異なり、通常の生活をするうえで避けられない修繕についてはその費用をオーナーが負担することになる。具体的には、以下のような修繕費はオーナーが負担することが一般的だ。
・ハウスクリーニング費用
・経年劣化にともなうクロスの張り替え
・フローリングワックスの色落ち
・日焼けや経年劣化にともなう畳の裏返し、表替え
・家具を長期間置いたことによる床やカーペットへのへこみ
・給湯器など物件備え付け設備の経年劣化による胡椒
給湯器をはじめとする住宅設備については、経年劣化による故障は避けられないものといえるだろう。生活に必要不可欠な器機が故障した場合、オーナー負担による速やかな交換が必須となる。
退去費用を安く抑える方法
退去費用を安く抑えるためには、第一に過失による破損や故障を極力避けるように心がけることが重要だ。特に引越し作業中は床や壁、天井に傷が付いてしまうことが多い。搬送ルートには養生を行うなど、万全の対策が必要である。
経年劣化による修繕はオーナーの負担となるが、一般的な生活では生じない範囲の汚れには清掃費が請求される恐れがある点にも注意したい。室内に長くゴミを放置し、床や壁を変色させたり、臭いを充満させたりしないよう、適度な清掃は必須だ。
「敷金ゼロ」物件では退去費用の負担が多くなる
退去費用は敷金から原状回復のための修繕費用を差し引いたものであると説明したが、当然ながら最初から敷金が安く設定されているケースでは敷金だけで修繕費用をまかなえないという状況になりやすい。
特に「敷金ゼロ」などの物件だと、退去時に修繕費用を全て用意する必要が出てくるため退去費用が高くなってしまう。現在住んでいる物件が敷金のない所であれば、退去時のために費用を貯めておいた方がよいだろう。
契約書に特約が入っている場合は注意
しかし、入居時に交わした賃貸借契約の内容によっては、通常の原状回復の範囲を超えて借主が費用を負担する旨が特約で定められていることがある。
契約時には宅地建物取引士から内容の説明を受け、同意の上で書類にサインをしているはずだ。借主が負担すべき内容や範囲が明確に示されていれば、この特約に従い、ハウスクリーニングや畳交換、ふすまの張り替えなどの費用を入居者が負担しなくてはいけない場合も出てくる。この点については契約時にしっかりと確認をしておくことが大切だ。
![退去費用については契約書を確認](https://www.chintai.net/news/wp-content/uploads/2018/10/479d696980b267fccb2dde4fe26d3e74_s.jpg)
請求額に納得できない時、もしも退去費用を払わなかった場合どうなるのか?
場合によっては大家さんの原状回復に対する理解が十分でなく、事前に結んだ契約書の内容を超えた範囲の修繕費用を請求される可能性もないとは言い切れないだろう。
その際に、もし「金額が高いから」と退去費用を払わなければどうなるのか。実際のところ、大家さんや不動産会社によってその対応は変わってくる。
まずは大家さんや不動産会社から支払いの連絡がくるだろう。物件を借りていた本人に連絡がつかなければ、契約時の保証人に連絡が入る場合もある。
この時点で支払いに応じるか、もしくは交渉して金額の調整などを行い、それに従えば問題はない。しかし、交渉が上手くいかなかったり支払いに応じなかったりした場合は、裁判になる可能性も……。
このようなトラブルに発展しないようにするためにも、退去費用が高いからといって払わないという手段を取ることはおすすめできない。もし退去費用の金額に納得がいかない場合は、踏み倒すのではなく、請求金額が正当なものであるかを確認しよう。その際はいくつかのリフォーム会社に見積もりをとってもらうと良いだろう。
また、国民生活センターや各自治体の消費生活センターなどに相談してアドバイスをもらうという方法もある。こちらは無料で電話相談が可能なので、トラブルの経緯を説明して対処法を教えてもらおう。
国民生活センター|http://www.kokusen.go.jp/
![退去費用の妥当性を判断するには見積を取得しよう](https://www.chintai.net/news/wp-content/uploads/2018/10/9b0767903b1001a3b2f52a87ec424bbb_s.jpg)
退去費用や原状回復の仕組みについて理解してトラブルを避けよう
今回は「退去費用や原状回復の仕組み」について紹介した。原状回復については「入居時の状態に戻すこと」と勘違いしている人も少なくないので、原状回復ガイドラインの内容をしっかり把握しておくことが大切である。
また、大家さん側が勘違いしている可能性もゼロではないため、もし高い費用を請求されても、まずは落ち着いて無茶な行動を取らない方がいいだろう。わからない点は国民生活センターなどに相談し、トラブルがこじれないようにすると解決の糸口が見つけやすくなるはずである。
文=市川剛史(株式会社YOSCA)
2021年6月加筆=CHINTAI情報局編集部