ライブの裏方「ローディー」の、部屋と道具への隠れたこだわりとは?
彼が住む部屋は一見シンプルだが、音へのこだわりにあふれていた。
音楽ライブで重要な役割を果たす一方、その仕事ぶりは表舞台に出ない究極の裏方「ローディー」の生活とは
ミュージシャンからの「いいね!」そのひと言がやり甲斐に
「職業=ローディー」。そう聞いても、多くの人はどんな仕事かわからないだろう。一般的には、楽器や機材を運び、ステージ上でセッティングする仕事だと思われているかもしれない。
「それは仕事の一部。最終的には音響効果による音作りまで行います。それ以外には、楽器のメンテナンスや管理、ミュージシャンに対するサポートも大事な業務です」
そう語るのは、この部屋の主である目黒さん。

好きな音楽はメタル、ハードロック、ポップスなど自分がポップでキャッチーと思えば何でも
職業は、もちろんローディー。複数のバンドからアイドルまで、さまざまなツアーに帯同して仕事をこなす。
「演者にも色々なタイプがいます。例えば、アイドルならば、ローディーが主導で音を調整することもある。バンドなら彼らの演奏の癖をつかんで、望む音への調整が必要。スタジオミュージシャンなら、楽器のセッティング以外は触ってほしくないという人もいます。いずれにしろ、彼らのCDを聴き込んだ上で、どういったセッティングやエフェクトを望んでいるかを聞き出すコミュニケーションが必要な仕事です」
最高のセッティングができても、オーディエンスから褒められることはない。まさに、究極の裏方だが、目黒さんは「音楽は好きでギターも学生時代から弾いていたけど、もともとが裏方志向。人に喜んでもらえるのが好きなんです」と語る。
そんななかでやり甲斐を感じるのは、ミュージシャンからの「いいね!」のひと言だ。
「自分のセッティングに手を加えられず、ノーチェックで進むことがあるのですが、それは、ミュージシャンの望む音が作れて、信頼されている証。うれしい瞬間ですね」とは、まさにプロの仕事をプロが知る、といったところだ。

仕事柄、移動が多いという目黒さん。イヤフォンへのこだわりは並大抵ではない
お部屋へのこだわり
そんな目黒さんの部屋は、ミュージックファーストで機材や楽器であふれているのかと思いきや、意外にもシンプルだ。
「ツアーなどで月の半分以上を留守にすることもありますから」と目黒さん。ただ、「こだわったのは静かな環境。仕事柄、余計な音は欲しくありませんから」という言葉は、いかにもローディーらしい。
もちろん、音楽好きを感じさせるアイテムもある。それが1000枚を超えるCDだ。
「部屋では、仕事抜きで本当に好きな音楽を聴いていたい。でも、音の善し悪しよりも気にするのは音漏れ。お隣さんへの配慮が少なくて済む角部屋を選びました。ちなみに、ハードロックやヘヴィメタはイヤフォンを使って大音量で聴いています」と笑う。
音のきめ細かさにこだわって、解像度の高いイヤフォンを愛用しているそうだ。
音楽以外で目立つのは、筋トレグッズと豊富な調味料。筋トレに関しては「モテて嫁を見つけたい」と茶化して話すが、実際には重い楽器を運ぶローディーだからこそだろう。調味料が多いのは「料理が趣味だから」。
「音作りと料理は似ています。パンチが足りないとか、感覚的に必要・不必要な要素がわかる」
料理中には、ファンク系の音楽がお気に入り。筋トレはメタル系、寝る前にはJAZZ系など、シーンに合わせて聴き分ける。
「音のイメージが自分の中にないと、ローディーは務まらない。多彩なジャンルの音楽を聴くことで、引き出しが増えて、仕事にも役立つんです」と目黒さん。
一見、音楽が全面には出ていないが、その生活には、音を生業とする職人のこだわりがあふれていた。
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文=林田孝司
写真=阿部昌也
※「CHINTAI2017年4月6日号」の記事をWEB用に再編集し掲載しています。
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