【猫との暮らし】猫専用住宅「necoto」での暮らしぶりを取材してみた

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猫にとっても、飼い主にとっても住みやすい部屋の条件とは?その答えを、猫と飼い主が一緒に暮らせる物件「necoto」で見つけた。

猫を飼っていることで、申し訳ない気持ちがあった

世の中にペット可の物件はいくつもあるが、実は小型犬はOKだけど、猫は不可なんていう場合も。猫と暮している人の中には、なかなか理想とする物件に出合えなかったり、またペット可ではあるものの、周りの人が飼っておらず、肩身の狭い思いをしている人も多いのでは。

今回訪ねたM.D.さんも、かつてはご近所の目を気していた1人だった。M.D.さんが子猫のにゃー太を飼い始めたのは、今から1年と少し前のこと。

「知人のフェイスブックで捨て猫の里親を募集していて、少し興味があると伝えたら、とんとん拍子に話が進んで引き取ることになりました。もともと7年半ほどウサギを飼っていたのですが、少し前に亡くなってしまって……。実家で猫を飼っていて馴染みがあったこともあり、自宅に猫がウロウロしているのもいいなぁと思って、飼うことにしました」

生まれて間もないにゃー太はやんちゃな性格で、よくバタバタと動き回っていたそう。しかし、当時住んでいた部屋は築20年ほどで物音が響きやすい上、そもそもペットは認められていなかった。

「ウサギは鳴かないし、基本的にゲージ飼いで静かなため、特に問題はなかったのですが、猫はよく鳴きますし、動き回るので音が響きますからね。こっそり飼うのは難しいと感じました。隣近所の方に迷惑をかけているかもしれないと思うと、申し訳ない気持ちがありましたね」

猫専用共生型賃貸住宅「necoto」との出会い

にゃー太を引き取ってから2ヵ月後、どうしようかと悩んでいた時に知り合いの紹介でたまたま見つけたのが、猫専用共生型賃貸住宅「necoto」だった。

当時はまだ建設途中だったが、図面を見て、使いやすそうな間取りであったことや、駅から歩いて6分という立地も気に入り、「ここしかない!」とすぐさま引越しを決意。他の物件は一切見なかったという。

「猫専用という点にとても魅力を感じました。居住者がみんな猫を飼っているなら、物音や鳴き声を気にしなくていいですし、やましい気持ちになることもないですから」

階段下の空間は、猫の隠れ家用に造られたもの。壁外は猫のつめがひっかかりにくい素材

猫との暮らしやすさが、とことん考えられた部屋

「necoto」は単なる猫OKの物件ではなかった。
一般的な物件よりも天井が高く、棚として使えるキャットウォークが備え付けられている。
1階にあるM.Dさんの部屋はスキップフロアになっているため、リビングと寝室の境目にちょっとした階段があり、にゃー太はいつも部屋中を縦横無尽に行ったり来たりしているそう。

「前の部屋ではあまり動き回らないように扉を閉めていたんですが、この部屋はそもそも扉や壁で仕切られていない。猫が登れる場所がたくさんあるし、縦にも横にも猫が自由に動き回れるように設計されているんです」

棚にもなるキャットウォークで様々な運動ができる

猫を飼っている人にとっては壁に傷を付けられることが悩みの一つだが、この部屋の壁紙は一般的な賃貸物件よりも硬く丈夫な素材が用いられている。壁は猫の爪から守られているが、その代わりとしてにゃー太の遊び道具となっているのがソファだ。

「生地の部分が伸びるのが楽しいみたいですね。すっかりボロボロになってしまいましたが、これはもう仕方ないです」とM.D.さんは苦笑い。

また、瞬発力が高く、俊敏に動き回る猫にとって意外とやっかいなのがフローリングだが、この部屋は床も猫にやさしい仕様になっている。

「以前の部屋では床がツルツルと滑って、にゃー太が逃げる時に、よく車がドリフトをするような状態になってしまうことがありました。この部屋に住んでからは滑らなくなりましたね」

そのほか、脱走防止策として二重ドアや、ロックがかかって簡単には開かないようになっている網戸。また、臆病な猫のために、何かあった時の隠れ家として階段の1段目にスペースが設けられているなど、猫の性格に配慮した設備も用意されている。部屋の隅々まで、猫が暮らしやすい環境をと考え抜かれた設計になっているのだ。M.D.さんはこの部屋で、のびのびとにゃー太を遊ばせている。

猫も飼い主も自由な良い関係性を

「仕事から帰るのが遅くなることが多いですし、普段は足元に寄って来たらちょっと構うくらいで、基本的には勝手にさせています。でも、家に帰ってきた時に玄関に迎えに来たり、お風呂に入っているとついてきて、フタの上でゴロゴロしたりするのは、やっぱり可愛いなと思います。足元をウロウロしているだけでも気配があって、癒やされますね」

猫は自由に。飼い主も自由に。猫が快適に暮らせるということは、飼い主にとっても心配事がなくなり、安心して過ごせるということ。「necoto」は、友人とルームシェアをするような感覚で、猫と一緒に暮らせる物件と言えそうだ。

自由な行動に手を焼くこともあるが、にゃー太はかけがえのないルームメイト

「猫可」ではなく、「猫と暮らせる」物件を

「necoto」でのびのびと遊ぶにゃー太

「necoto」をプロデュースする、クラシヲの杉浦雅弘さんに、設立のきっかけや今後の展望を伺った。

「ペット可であっても、単に飼ってOKというだけで、特別にペット用設備を備えている物件はあまりありません。あったとしても、犬用が多く、猫向けに造られていることがほとんどないんです。その状況を変えたくて、この企画を立ち上げました」

犬と猫では生態が異なるため、住まいに求められる機能は本来異なる。また、ペット可の物件であっても、周りが犬を飼っている人ばかりで馴染めず、猫を飼っている人がすぐに引越してしまったというケースも多いそう。

「大家さんにも犬用と猫用の部屋の違いを理解してもらう必要があると感じています。『猫を飼える』ではなく、『猫と共生できる』部屋をもっと増やしていきたい。
いずれは全国47都道府県全てに『necoto』ブランドを浸透させていきたいですね」と杉浦さん。
これからは、猫を飼っている人たちの部屋探しが、もっと楽しくなりそうだ。

文=村上佳代
写真=阿部昌也

※※「CHINTAI2017年3月2日号」の記事をWEB用に再編集し掲載しています。
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