インテリアにこだわらない流浪のフリーランサーに学ぶ5つの「一人暮らし力」
食べる・休む・遊ぶを大事にする「人間らしく暮らす力」
musicaさんが以前会社員だった頃、「朝3時に帰宅して、また8時に出社する」ような忙殺生活が長く続いた。
「不規則な生活とバランスの悪い食事で、入院するほど体調を崩したことも。まるで仕事のために生きているような生活でした。それを人間らしい生活に戻すためにフリーランスになり、自分の生活をある程度コントロールできるようにしました」とmusicaさん。
もともと大好きだった料理の時間を週末に確保し、お弁当も含めて毎日手作りのものを食べる。仕事を調整して、夏休みは2週間お休みを取って遊ぶ。
きちんと食べて、きちんと眠り、そしてきちんと遊ぶことを心がけ、人間らしく暮らす基本的な生活に戻した。
「その生活を守るため、心地よい住処を持つことが大事」なのだそう。
海外出張時に購入したお気に入りのポスターを部屋に飾り、週末はホームシアターで大好きな映画を楽しむ。自分のために紅茶やコーヒーをゆっくりと淹れて、陽のあたる明るいキッチンで気分よく料理をこなす。そんな風に過ごす居心地のよい住処が、忙しいmusicaさんの生活を公私共に支えている。

一番のお気に入りはやっぱりキッチン。戸棚には唯一のDIYでシートを貼った

お皿類はすぐ取り出せるように重ねずに収納
忙しくても手をかけなくても、部屋と心を「すさまなせない力」
人間、忙しいと部屋は散らかり、自然と心はすさむ。これは万人に共通した事象だ。美しく整ったmusicaさんの部屋でも荒れる時はある。ただ、人と違うのは「すさまない部屋」を第一のテーマにしている点。
「私にとってはスタイリッシュさやインテリアへのこだわりは二の次、三の次、というか無いに等しい。大事なのは使いやすさと機能性。時間がなくても、手をかけなくても、それなりの部屋が維持できる環境にすることです」という。
例えばすべてのアイテムをきっちり収納におさめる生活は、しまえなかった時に部屋が荒れてストレスになる。だから出しておく。毎日使うものは、しまい込まない。
コーヒーやお茶も毎日飲むものだから、棚にまとめて出しておく。お米を炊く鍋や調味料、化粧品も、毎日使うものは手の届く位置にあえて置いておく。
どうせ出しておくなら、色を揃えた方がスッキリ見える。だから雑貨の色はグレーやブルーで統一している。それがすさまない部屋のコツ。このシンプルさなら真似ができそうだ。

使う頻度の高いお茶コーナーはリビングの中心に。温度調整ができる山善のポットは注ぎやすくてお気に入り

毎日炊くごはん用のストウブ鍋もここが定位置。調味料やまな板もすぐ手の届く場所に
インテリアにこだわりは無いと話すものの、この部屋のスペースの配分は気に入っている。
「備え付け家具のシェルフでベッド周辺のプライベートスペースとキッチン&リビングのスペースを、なんとなく区切っています。ワンルームには珍しく廊下と階段のスペースもあるので、気分も変わり生活圏が分けられて快適です」(musicaさん)
ワンルームを広く大きく使うこともできるが、フリーランスで自宅仕事が多く、人が訪れることもあるmusicaさんにとっては、あえて仕切って分けるのがベスト。海外で衝動買いしたテイストの違うポスターをそれぞれのスペースに飾ると、より空間に変化がつき効果的だという。

部屋奥のベッドスペースもグレー&ブルーでまとめられ落ち着いた雰囲気

ギャラリーのようにポスターを階段に飾りたいと現在思案中
機能重視な一人暮らし部屋の、「すぐやる掃除力」
musicaさんが心がける快適な生活のコツの一つに、「使い終わった後のすぐやる掃除」がある。
「汚れを溜め込むと、掃除の時間を確保するのが一番大変。使い終わった時にすぐ掃除をするのが、最も簡単で手間がかかりません」と断言する。これは「すさまない生活」に直結する習慣でもある。
「ほとんどの掃除に使用する」という万能なウタマロスプレーや洗剤はすぐ手の届く位置に。掃除用スポンジやクイックルワイパーも、キッチンや洗面所、部屋の隅に必ず出しておく。これが「すぐやる掃除」の基本だ。

クイックルワイパーは洗面所が定位置。タオルやドライヤーなど日常的に使うものはワゴンに集約
トイレ掃除の方法も秀逸なので紹介する。無印良品のスポンジフレームにビニールを被せ、流せるトイレスポンジを挟み込む。掃除が終わったらビニールをくるりと裏返して、スポンジと一緒に捨てれば、手を一切汚さずにスマートにトイレ掃除が終わるという仕組み。

完璧なトイレ掃除術も「エコじゃないところが気になる」のだそう
「濡れたトイレブラシをトイレに置いておくこと自体が嫌で、この方法に行き着きました。掃除は簡潔で手間がかからない自分に合うやり方を見つけて、とにかく終わった後にすぐやることが大事」(musicaさん)
最後に…
「人間らしく生きることが人生の目的」と語ってくれたmusicaさん。人間らしさを見失うほど忙しい生活を送ってきたからこその言葉だろう。
「その人間らしい人生を支えてくれるのが、心地よい部屋の存在だと思う。モノを持たない生活をしていた頃は部屋というものに関心がなかったけれど、今はこの部屋に暮らす幸せを噛み締めています」と愛着を隠さない。
musicaさんのような暮らしをしたい人へのアドバイスを聞くと、「どんな素敵なインテリアにするかよりも、どう暮らすかが大切。私の部屋は、このソファもポットもバリスタマシンもいただきもので、シェルフも備え付けの家具という自分で選んでいないものに囲まれていますが、自分に居心地のいいように整えられています。デザインや形など、目に見えるものにとらわれ過ぎない方がいいかも」ときっぱり。

少なく見えるが「自分史上最大にモノがある状態」
せっかく手に入れた自分のお城を、居心地よく整え、維持するのは誰でもない自分の力。一人暮らしで身につける様々な「力」を糧に、今後の人生を快適かつ人間らしく楽しみたい!
文=元井 朋子
写真=北原千恵美