大人気ミニマリスト兼整理収納アドバイザーに聞く部屋作り。〝持たない暮らし〟の始め方

最終更新日:

気負いなく〝持たない暮らし〟を始めたいアナタに

一口に〝持たない暮らし〟と言っても、ミニマリスト、シンプリスト、ダンシャリスト(ダンシャリアン)など、定義や実践スタイルにはさまざまな違いがあるらしい。

その辺りの難しい話はさておき、〝物に振り回されない〟〝心地よく住まう〟ということに意識を向ける人は、年々増えてきている。

その一方、〝持たない暮らし〟に関心はあるけれど、いつ、どのように始めたらいいのか分からなくて実行に移せないでいる人も多いのでは?

今回は、インスタグラムや生活情報メディアで注目の整理収納アドバイザー・三吉まゆみさんに、シンプルですっきりした部屋をキープするノウハウを伺いながら、自分のペースで気負いなく〝持たない暮らし〟を始めるヒントを探ってみた。

整理収納アドバイザーかつミニマリストの三吉まゆみさんとご主人
シンプルライフに夫婦で大満足。ナチュラルブラウンで統一されたインテリアが、リビングダイニングを明るく温もりあふれる空間にしている

プロフィール

名前:三吉まゆみさん
職業:医療事務、整理収納アドバイザー
instagram:@miyo_344
居住形態:2人

ルームデータ

所在地:東京都
間取り:1LDK(43㎡)
家賃:8.8万円
築年数:2年
建物:木造

引越しを機に、物であふれる部屋作りを卒業し、“持たない暮らし”へ

DIYが大好きな三吉さん。過去に住んでいた部屋では、カフェ風キッチンを手作りしたり雑貨ショップのようなインテリアをコーディネートしたりと、部屋作りを満喫してきた。

「2011年に結婚するまで実家暮らしだったのですが、自室というものがなかったんです。だから、夫と二人で暮らし始めて、自分の思いどおりになる場所ができたうれしさで、インテリア熱に火がついちゃった。さらにはハンドメイド雑貨の販売まで始めて……。だから、リビングや物置はDIYの端材や道具でいっぱいでした」(三吉さん)

ベニア板に漆喰を塗って作った壁、スノコをおしゃれにリメイクした棚など、賃貸暮らしにも活用できるDIYアイデアが好評で、インテリア雑誌に何度も取材されている三吉さん。しかし、現在の部屋への引越しを機に、ほとんどの物を手離した。

「いい機会だから物を減らそうと決めました。でも、どこから手をつければいいのか……。そんな時に〝ミニマリスト〟という言葉を知ったんです。自分が持っている物をあらためて見直すと、生活に必要な物や、気に入って買った物は意外と少ないことに気付きました」(三吉さん)

整理収納アドバイザー兼ミニマリスト・三吉まゆみさんが手がけた作品が紹介されているインテリア専門
かつて三吉さんが手がけた作品が紹介されているインテリア専門誌

持たない暮らしを始めるために、新居に持ってきた物は収納用のカゴ

「以前の部屋は築年数が古くて、いろいろ気になる部分が多かったんです。それもDIY熱に拍車をかけた要因でした。だから、次に引越す時は新築にしようと。この物件は夫の実家から徒歩圏なので建築中から目をつけてました」(三吉さん)

できあがった部屋を内見して即決。駅が近くて買い物もしやすい立地条件をはじめ、部屋の広さ、浴室の設備など、三吉さん夫妻の希望を全て満たす物件だった。

「白とやわらかい色の木目を基調とした内装を見て、手離すべき物が明確になりました。この雰囲気にマッチしない物は持ち込むのをやめようって。反対に、取っておこうと決めたのが収納用のカゴ。シンプルなデザインの籐カゴは、住まいが変わっても、いろんな場面で使い回しできることが分かりました」(三吉さん)

整理収納アドバイザー兼ミニマリスト・三吉まゆみさん宅の収納スペース
ニトリや無印良品の籐カゴは色合いも新居にベストマッチだった

こうして持ち物を取捨選択した三吉さんだが、特に手離してよかったと実感している物は下記4点とのこと。三吉さんのコメントとともに紹介しよう。

手離した物① 三角コーナー

「水アカやぬめりで日頃のお掃除が大変になるだけ。調理中は横に小さなビニール袋を用意しておき、その中に野菜クズなどを捨てるようにしました。終わったらビニールの口をしばってゴミ箱へ。生ゴミはストックしないほうが◎」(三吉さん)

手離した物② 食器用の水切りカゴ

「場所を取るし、食器は出しっ放しになるし、水アカもたまるからお掃除が大変。食器は洗ったらすぐに拭いてしまう習慣をつけました。今は大きなふきん1枚を広げて、そこに食器を直接置いて乾かしています」(三吉さん)

手離した物③ マット類

「マット類は乾きが遅いし、洗濯している間のスペアも必要になって収納スペースも取られるので全てやめました。キッチンマットやトイレマットはスリッパがあれば十分。浴室内で体も足も拭いてから上がれば、バスマットも要りません」(三吉さん)

手離した物④ バスタオル

「お風呂上がりはフェイスタオルだけで全身拭いています。無印良品のフェイスタオルはサイズが長めなのでちょうどいいんです。フェイスタオルならバスタオルよりかさばらないので気兼ねなく毎日洗えるし、乾きも早いので清潔に使えます」(三吉さん)

整理収納アドバイザー兼ミニマリスト・三吉まゆみさん宅のランドリー収納
三吉家のランドリー収納に入っているタオルは、たったこれだけ!

そんな中、新たに購入した物もあるという。〝ベッド〟と〝衣類収納シェルフ〟だ。物を減らしていこうと決めていた三吉さんに何が起こったというのか。

新たに購入した物① ベッド

「前の部屋では布団を使っていたんですが、今の寝室にはエアコンをつけていないので床が冷たいんです。カラダのことを考えてベッドを導入しました。布団の上げ下げがなくなった分、朝の時短につながりましたよ」(三吉さん)

整理収納アドバイザー兼ミニマリスト・三吉まゆみさん宅の無印良品の脚付マットレス
無印良品の脚付マットレス。無駄のない洗練されたフォルムもお気に入りとのこと

新たに購入した物② 衣類収納シェルフ

「シェルフを買ったのは、生活動線を考えてのことでした。寝室には造り付けのクローゼットがあるんですが、ベランダから遠いんです。洗濯物を取り込んですぐ吊るせる位置にシェルフを置けば、家事もラクだし、部屋の印象が重たくなる洋服ダンスを置かなくて済むので」(三吉さん)

整理収納アドバイザー兼ミニマリスト・三吉まゆみさん宅のクローゼット
季節外の衣服はクローゼットにしまい、毎日の着替えはコレだけで済ませている

何が何でも物を減らすのではなく、必要であれば新たなものも取り入れる。ストイックなイメージが強いミニマリストだが、心地良い暮らしの形は人それぞれ。

三吉さんのように柔軟な感覚こそ、無理なくシンプルライフを継続するには大切なのかもしれない。

色数をおさえると空間はシンプルになる

インスタグラムでインテリア術や整理収納アイデアを紹介している三吉さん。整理収納アドバイザー1級の資格を取得したのは2017年で、自宅やカフェでセミナーを開催したり、2019年からは整理収納の出張サポートも行っている。

「元々は片付けが苦手で、それを克服したいと思って整理収納の勉強を始めたんです。今は週4日で医療事務をしていますが、将来は資格を活かしてインテリア方面の仕事を増やしていけたらと思っています」(三吉さん)

新居では大好きだったDIYを封印し、シンプル&ナチュラルなインテリアでまとめている。活用しているのは無印良品のアイテム。

「床の色や建具のやわらかい色の木目にマッチするので、インテリアは無印のアイテムでそろえています。家具や収納グッズを白やライトブラウンでシンプルにまとめて、色をプラスするのは植物や雑貨で」(三吉さん)

整理収納アドバイザー兼ミニマリスト・三吉まゆみさん宅のリビング
折りたたみテーブルもミニテーブルもAVラックも全て無印良品。三吉さん夫妻は自他ともに認める〝ムジラー〟なのだ
整理収納アドバイザー兼ミニマリスト・三吉まゆみさん宅のテレビ台の上の雑貨
選りすぐりの雑貨が色数をおさえた空間に彩りを添えている

色数をおさえているのはインテリアのみならず。普段の衣服は、白、黒、グレー、ネイビーでコーディネートする徹底ぶり。このカラーリングが一番合わせやすいと行き着いた結果だとか。

「夫はサッカーが好きで、ジャージやユニフォームを30着くらい持っていたんですが、今は収納ケース1個分だけに。元々シンプルですっきりした空間好きな人なので、むしろ率先して片付けてくれました」(三吉さん)

整理収納アドバイザー兼ミニマリスト・三吉まゆみさん宅のモノトーンのクローゼット
季節外の衣類をしまっているクローゼットの中も、ほぼモノトーン

三吉さん流〝部屋が散らからないための収納3カ条〟

シンプルですっきりした暮らしを送る上で重要なのが収納。三吉さん曰く、〝決める〟〝見せる〟〝浮かせる〟を意識すると収納上手になれるとのこと。

〝部屋が散らからないための収納3カ条〟その① 決める

「使う場所に使う物を収納する、つまり〝物のアドレスを決める〟ことが大切ですね。キッチンで例えるなら、シンクの掃除に使うグッズはシンクの下、調味料はコンロの下、作業台の下にタッパーや調理小物、という感じです」(三吉さん)

整理収納アドバイザー兼ミニマリスト・三吉まゆみさん宅のコンロ下の調味料収納。とてもすっきりしている
コンロの下に調味料があれば、調理しながらの出し入れがラクになる

〝部屋が散らからないための収納3カ条〟その② 見せる

「出し入れの手間(アクション)が増えるほど、片付けは面倒になります。取り出しやすくて、しまいやすい〝見せる収納〟は、出し入れの手間を減らすのに有効です。人目にさらされるので、整頓しておこうという気持ちも生まれます」(三吉さん)

整理収納アドバイザー兼ミニマリスト・三吉まゆみさん宅の本棚
三吉家では、インテリアの一部として〝見せる収納〟を取り入れている

〝部屋が散らからないための収納3カ条〟その③ 浮かせる

「私のイチ押し収納アイテムはフックです。吸盤タイプ、S字フック、マグネットタイプ、シールタイプなど、我が家ではいろんなフックを使っています。フック収納の利点は、空中に収納を作れること。よく使う物は引っ掛けておくと使いやすく、浮かせているので掃除もしやすいんです」(三吉さん)

整理収納アドバイザー兼ミニマリスト・三吉まゆみさん宅の洗面台周りの収納
洗面台の脇には、袋に入ったドライヤーやヘアアイロンがフック収納されていた

引越しは物を手離すチャンス。〝持たない暮らし〟を始めてみよう

物に囲まれる生活をしてきた三吉さんが、シンプルライフに踏み出したきっかけは〝引越し〟だった。引越しを機に、本当に必要で買った物なのか? 使いやすさは?今も気に入っている?と、持ち物と徹底的に向き合った。

「自分にとって必要な物と不要な物を見極める力をつけるのが、無理なく〝持たない暮らし〟を続けるコツかな、と思います。いきなり『テレビをなくすぞ!』『炊飯器を捨てよう!』などと考えることはなく、まずは小さなところから……例えば、引き出し1個分から整理を始めてみる。あまり判断に時間がかからない物から始めるといいですよ」(三吉さん)

三吉さん自身、毎日少しずつ整理していくうちに要不要を判断するスピードがアップし、手離すことにも慣れていったという。

今まさに引越しを考えているなら、そして、物を減らしたいと考えているなら、シンプルライフへ一歩踏み出してみては?

文・写真=野中かおり

リンクをコピー
関連記事関連記事