特定優良賃貸住宅とは? もう借りられない? 最新状況を調査してみた

公開日:2018年9月28日

特定優良賃貸住宅とは

ファミリーに人気の特優賃。デメリットはあるの?
特定優良賃貸住宅の現状は?

特定優良賃貸住宅とは、いわゆるバブル期(約30年前)に「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」等に基づきはじまった制度。入居者目線では「良質とされる物件を通常よりも少ない金額で借りられる制度」として知られ、略して「特優賃(とくゆうちん)」とも呼ばれている。東京都では「都民住宅」とも呼ばれる。

行政関連の団体や民間の土地所有者が、賃貸物件の建設費の一部や、家賃を減額するための資金について補助を受けることで、結果的に入居者の家賃が減額される仕組みだ。

この記事では、特定優良賃貸住宅について、2022年時点での制度の現状をふまえ解説していく。

※本記事は2022年5月~6月に複数の自治体・住宅供給公社へ調査を行い、内容を更新しました

もう借りられない?特定優良賃貸住宅の現状

結論から言うと、2022年現在では特定優良賃貸住宅の制度は終了しつつある。

特優賃の供給に関する法律が制定されたのは平成5年(1993年)。特優賃の入居募集をおこなっている自治体は現在もあるようだが、募集数が少なかったり、家賃補助が利用できなかったりという場合がある。もともと狭き門ではあったが、「入居者がメリットを得られる制度としては終了しつつある」といえるだろう。

参考として2022年5月~6月に「東京都住宅供給公社」「愛知県建築局」「大阪府住宅供給公社」に問合せたが、どの都府県でも、現在特優賃の新規登録は行われていないとのこと。また、今後の入居募集予定がゼロの自治体もあった。

特優賃以外の公営住宅としては「県営(都営・市営・区営など)住宅」「地域優良賃貸住宅」「高齢者優良賃貸住宅」「UR住宅」「公社住宅」のような制度もあるので、特優賃を探している方はあわせて探してみるのもいいかもしれない。

参考:
TOKYOすまいと
大阪府公的賃貸住宅紹介ページ

そもそも特定優良賃貸住宅のメリットは?

特優賃のメリットは、基準を満たした「良質なファミリー向けの住宅」を、「少ない負担で借りることができる」ことといわれている。ただし、施行から30年が経ち、これらのメリットにも変化が起きているのが現状だ。

「良質」の定義について

特優賃の制度設計がおこなわれた約30年前と比べると、日本の住宅状況にも変化があった。当時「良質」とされた条件が、2022年現在ではすでに当たり前の設備になっている場合もあるようだ(例えば「各戸が、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備及び浴室を備えたものであること」など)。
むしろ賃貸住宅としては「古め」の建物と考えてもいいだろう。

特優賃の条件は自治体により異なるが、東京都の場合では

  • 各戸の床面積50㎡以上125㎡以下であり、かつ、2以上の居住室を有するもの専有面積が広く、部屋数もある(50~125㎡で、2部屋以上あるなど)
  • 間取りは2LDK~3LDKが中心
  • 居住室及び炊事室の実容積の9%以上が収納スペース
  • 耐火もしくは準耐火構造
  • 各戸が、台所、水洗便所、収納設備、洗面設備及び浴室を備えたものであること天井高2.3m以上

などが定められている。

これらは2022年現在の視点で見ると、ファミリー向けの賃貸物件の条件としてはごく一般的だといえる。「良質」の意味あいも、住宅状況と共に法律施行当時とは変化していっているようだ。

特優賃における家賃補助の仕組み

また、特優賃の大きなメリットである「家賃補助」についても、利用できる物件はかなり限られることがわかった。

特優賃の最大のメリットは、最長で20年間にわたり、家賃の一部について補助を受けられること。補助割合は毎年下がり、年数が経つにつれて入居者負担額が増加していく。

入居者負担額が契約家賃に達した物件(=家賃補助額が0円になった)から入居者が退去すると、次の入居者は家賃補助を利用することはできない。
そのため、新規の特優賃が登録されなくなっている現在、家賃補助を利用できる特優賃はかなり限られていると考えてよいだろう。

ただし家賃補助がなくとも、物件の賃料そのものが相場より安い可能性はある。お住まいの自治体で空室が出ているかを調べてみるのもよさそうだ。

特優賃のメリットは初期費用にも

なお、特優賃へ入居する際は仲介手数料・礼金が不要となる。通常の敷金・礼金・仲介手数料を要する賃貸借契約に比べると数十万円もの出費を節約できるため、引越した後の生活にゆとりが生まれるだろう。

このメリットは多くの公営住宅にも共通する条件であるため、幅広く探してみることをおすすめする。

特定優良賃貸住宅のデメリットは?

特優賃には家賃補助をはじめとするさまざまなメリットがある。その一方で、手続き上のデメリットと考えられる点もいくつかある。

特優賃のデメリット①:入居条件が厳しい

特優賃に入居するにはさまざまな条件を満たす必要がある。自治体によって異なるが、主に以下の3つの条件が設定されている。

  • 日本国籍の方または外国人登録をしている
  • 入居する人数は2人以上で夫婦または親子を主体としている
  • 収入基準を満たしている

特に注意してほしいのは世帯年収の上限で、自治体や住宅、居住人数にもよるが約1,000万前後が目安とされている。

所得を証明するために、入居中は毎年給与明細や源泉徴収票などの提出が必須だ。これは、もし年収が増えて、入居資格を上回ってしまった場合はもらえる補助が減るため。場合によっては補助金が停止されることもあるので、パートタイム勤務で労働時間を削減するなど、世帯の所得額を調整するケースもあるようだ。

特優賃のデメリット②:原則として2人以上のファミリー世帯しか入居できない

特優賃制度は原則としてファミリー世帯向けのもの。このため、一部の物件を除いて、2人以上の夫婦または親子を中心とした家族世帯でなければ入居できない。

また、友達同士でのルームシェアや結婚を前提としない同棲カップルも特優賃へは入居できない。一部の特優賃物件は、婚約しているカップルであれば入居を受け付けているが、契約日より1ヵ月以内に入籍する、入籍予定であることを証明する書類を提出するなどの条件がある。新婚カップルの新居として特優賃を選ぶなら、入籍日などを調整する必要があるかもしれない。

特定優良賃貸住宅の探し方

特優賃の物件探しなら、インターネットの利用がおすすめだ。各地方自治体のウェブサイトや、賃貸物件情報サイトから最新情報を検索できる。自治体の窓口でも相談できるので、不安な方は一度市役所などに問合せてみてはいかがだろうか。

特優賃の現状やデメリットも考慮のうえ、賢く活用しよう

特優賃は比較的少ない費用負担で物件を借りられる制度。しかし、特優賃のうち家賃補助が利用できる物件数は非常に少ない。入居条件をクリアしたとしても必ず入居できるという保証はなく、家賃補助が受けられる特優賃への入居はかなりの狭き門だといえる。

費用をなるべく抑えて引越しがしたいという場合、敷金・礼金などの初期費用を抑えた物件、礼金・更新料・保証人が不要な物件を探すなど、引越し・契約費用を安く抑えることができる方法もあわせて検討するとよいだろう。

2022年7月加筆=CHINTAI情報局編集部

CHINTAI編集部
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1992年創業、お部屋探しや生活の情報を発信してきた株式会社CHINTAIが運営するWebメディア。引越しに関する情報はもちろん、家事や家計、季節の楽しみなど日々を豊かにする知識を調査・ご紹介。
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