
退去費用が払えないほど高額!不当な請求か確かめる方法ってある?【CHINTAI法律相談所】
賃貸物件に関する疑問に弁護士がアドバイス
賃貸にまつわるトラブルや疑問について解説する【CHINTAI法律相談所】。
入居前から入居中、退去時まで、さまざまなタイミングで発生しやすい賃貸トラブル。その疑問や対応について、不動産トラブルに強い瀬戸仲男弁護士に聞いた。
賃貸トラブルは、いつ巻き込まれてしまうかわからない。現在トラブルにあっている人だけでなく、これから賃貸物件を借りる予定の人もぜひ参考にしてほしい。
このページの目次
Q.退去費用が高額で払えない! 不当な金額か確かめることってできる?
そこまで部屋が汚れてないのに、退去費用が高すぎる! 見積書では、壁一面の貼り替えなど、修繕箇所が必要以上に多いように感じる。妥当な金額か確かめたいんだけど、どうしたら良い?
A.まずは国土交通省のガイドラインで修繕費の負担が適正かチェック
気になるのは、見積書に計上されている修繕箇所。退去時に修繕が行われる箇所は賃貸物件の状態や大家さんの判断によって異なるが、その費用は入居者だけが負うものではない。民法621条によって「通常消耗・経年劣化の修繕費用は大家さん、それ以外の修繕費用は入居者が負う」と定められている。
そこまで汚れていない部屋で、多くの修繕費を入居者が負担するのは疑問の余地が残る。特に、壁一面の貼り替えを入居者が負担するのは、喫煙による黄ばみなど入居者の故意・過失により汚れてしまったり損傷してしまった場合のみ。経年劣化した設備の修繕費用を請求されたのであれば、見積額が不当な可能性は十分に考えられる。
原状回復の負担範囲については、国土交通省による「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で詳細に記載されている。
例えば、飲み物をこぼしたことによるカーペットのシミは「飲み物をこぼすこと自体は日常生活の範囲内だが、手入れ不足などで生じたシミの場合は入居者が責任を負うのが妥当」など、事例ごとの解説も載っている。こちらを参考に、求められている修繕費の負担が妥当か確認してみると良いだろう。
修繕費の金額が不当なら、迷わず再見積もりを依頼しよう!
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」と照らし合わせた結果、金額が不当だと感じたり、納得がいかなったりした場合、大家さんや管理会社に交渉しよう。良心的な管理会社であれば、見積の内訳や金額設定の理由について、きちんと説明をしてくれるはずだ。また、明確に不当な請求だと判明した場合は、見積金額を見直してくれる可能性も高いだろう。
しかし、場合によっては「ケース・バイ・ケースなので」と再見積もりを断られるかもしれない。そういった場合に備えて、事前に内装業者に連絡して修繕費の相場を確認しておくとベター。また、鍵の返還前で物件にまだ入れるなら、自分で内装業者に再見積もりを依頼するのも手だ。見積もりに掛かる費用などは自分で負担することになるが、適正な修繕費を把握したいなら最も有効だ。
退去費用が高額すぎた場合は泣き寝入りせず、きちんとリサーチすることが大切だ。そして不当であると判明したら、迷わず大家さんや管理会社に再見積もりを依頼。それでも交渉に応じないようなら、消費者ホットラインや公益財団日本賃貸住宅管理協会、建築や設備に詳しい弁護士などに相談しよう。
なお、賃貸借契約書に「退去費用は〇〇万円」と特約が記されていた場合、話が異なる。基本的には任意規定としている民法よりも契約書の内容が優先されるため、定められた金額を支払わなければならない。ただし、退去費用が入居者に著しく不利な場合は「公序良俗に反する」として無効とされる。特約で記されている退去費用が、相場と比べ高額すぎる場合は、消費者ホットラインなどに相談すると良いだろう。
ここがポイント!
退去費用が高額すぎたなら、念のため金額が適切か確認しましょう。原状回復費用を負担する箇所が多すぎたり、修繕費の相場を大きく上回っていたりするなど不当な金額だったら、大家さんや管理会社に再見積もりを交渉してください。泣き寝入りは絶対ダメです!
覚えておきたい用語「原状回復」
原状回復の義務は民法621条で定められている。
民法621条
民法 – e-Gov法令検索
賃借人(入居者)は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人(入居者)の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
経年によるクロスの変色や家具の設置跡など、通常消耗・経年劣化による修繕にかかる費用は大家さんが負担する。それ以外の損傷、例えばタバコによる汚れなどは、入居者が修繕費を負担しなければならない。もちろん、地震など自然災害で生じた傷や凹みなどは、入居者の責任でないので、原状回復の義務を負わない。
取材・文=綱島剛(DOCUMENT)
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