【弁護士が解説】家賃が払えない場合どうしたらいい?住居確保給付金など制度も紹介

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家賃が払えない!そんな時どうする?

コロナ禍の影響に限らず、仕事を失ったり、収入が激減したりした結果、「家賃が払えない」と困ることは誰にでもありえる。金銭面の悩みは打ち明けづらい場合もあり、一人で抱えてしまう人も多いのではないだろうか。
日本には、家賃が払えない状況におかれた方に向け、さまざまなサポート制度がある。

この記事では、家賃が払えない場合の対処法について下記を解説する。

  • 家賃を滞納した場合のリスク
  • 家賃が払えなくなってしまった場合の対処法
  • 利用できる公的制度(給付・無利子貸付)(すぐに解説を読みたい方は次のページへ)

お話を聞いたのは、あかり法律事務所の弁護士・小久保哲郎先生。さまざまな事情から、家賃の支払いに不安がある方はぜひ参考にしてほしい。

弁護士・小久保哲郎先生
弁護士・小久保哲郎先生

1995年大阪弁護士会登録。 野宿からの居宅保護を求めた佐藤訴訟など、野宿生活者や生活保護利用者の法律相談や裁判に取り組んできた。
あかり法律事務所

小久保先生:
住まい」は生活の基盤。一度失ってしまうと、たちまち生活再建が難しくなってしまいます。ただ、意外と知られていないのですが、法律では住む人(賃借人)の権利が比較的手厚く保障されているのです。
大切な「住まい」を失うことのないよう、正しい法律の知識を身につけるとともに、公的な支援の活用方法を知っていただきたいと思います。

※この記事でご紹介している情報は、2022年(令和4年)4月時点の情報です。本記事の公開直前に期間延長された支援制度もあったため、制度の利用を検討する際は、適用期間について最新情報を支援窓口や公式サイトで確認してください

家賃が払えないとどうなる?滞納した場合のリスク

月々の生活費のうち、大きな割合を占める家賃。「仕事ができなくなってしまった」「予定外の出費で手持ちのお金がなくなった」など、家賃が払えなくなる可能性は誰にでもある。

「家賃が払えない状態(=家賃滞納)」をそのままにした場合のリスクとしては、「強制退去」、場合によって「信用情報に傷がつく」の2つがある。

※家賃が長期的に払えない状態をを防ぐための公的支援は、次のページで紹介します

小久保先生:
「1~2ヶ月でも家賃を滞納したら、すぐに家を出ていかなければならない」と誤解している方もおられますが、そんなことはありません。賃貸借契約は、その当事者間の信頼関係が破壊されるような債務不履行があって初めて解除することができます(民法541条但し書き)。
仮に有効に契約解除がなされたとしても、貸主が借主を強制退去させるためには、明渡訴訟を提起して判決を得たうえで強制執行手続を行う必要があり、さらに何か月もかかります。

家賃が払えず長期滞納すると、強制退去の可能性がある

賃貸物件を借りる際に締結する賃貸借契約書には、「家賃の滞納」が、契約違反とみなされる行為のひとつとして記載されている。細かい条件はそれぞれの契約によって異なるものの、家賃滞納が長期間に及ぶと、退去(=物件から出ていくこと)を求められる可能性が出てくる。一般的に強制退去の目安は、3~6ヶ月以上の家賃滞納なので注意しなければならない。

ただし、法務省民事局は、コロナ禍の影響で生じた賃料不払いについて、不払いの期間が3ヶ月程度であれば契約解除が認められないケースも多いとしている。

※参考:法務省「新型コロナウイルス感染症の影響を受けた賃貸借契約の当事者の皆様へ~賃貸借契約についての基本的なルール~」

家賃滞納により強制退去を求められる場合、具体的に以下のような流れで各種手続きが進んでいく。

  1. 支払い督促が行われる
  2. 連帯保証人などに連絡が入る
  3. 賃貸契約が解除される
  4. 明渡し訴訟(裁判)が行われる
  5. 強制退去になる

強制退去の流れ①:支払い催促が行われる

家賃を1~2ヶ月間滞納した場合、大家さんや管理会社より「家賃の支払い督促」が行われることになる。連絡手段は訪問、電話、メール、手紙などで、担当者から「家賃を支払ってください」という請求が複数回行われる。

滞納が続くと、大家さんから内容証明郵便で督促状が届くことがある。この督促状には、家賃滞納の確認、支払いを催促する記述のほか、支払いがなければ契約解除となる支払期日も記載されていることが多い。

※編集部注:内容証明郵便とは、「いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたか」ということを、差出人が作成した謄本によって郵便局が証明する制度。裁判などで「〇月〇日に家賃の督促を行った」という有効な証拠になる。

強制退去の流れ②:連帯保証人などに連絡が入る

どのタイミングで行われるかは場合によるが、入居者が督促に応じない場合、契約書に記載した連帯保証人や保証会社などに連絡がいく。保証会社が滞納家賃を代わりに支払った場合は、保証会社から督促が入ることになる。

強制退去の流れ③:賃貸契約が解除される

入居者自身や連帯保証人が、滞納家賃を支払わないことが3~4ヶ月続くと、賃貸借契約を解除する通知がされることが多い。契約解除となれば、入居者が引き続き住み続けると不法占拠状態となるので、本来はすみやかに物件を退去しなければならない。

強制退去の流れ④:明渡し訴訟(裁判)が行われる

賃貸契約が解除された後も入居者が退去しない場合には、「不動産明渡請求訴訟」を起こされる可能性がある。これは、建物の明渡しと滞納分家賃の支払いを求める裁判である。③の契約解除通知が内容証明付きの郵便で送付されるのは、この裁判で大家さん側が使用するためだ。

強制退去の流れ⑤:強制退去になる

裁判で大家さん側の主張が認められても立ち退かないでいると、大家さんは判決に基づく強制執行を申し立てることができる。裁判所の執行官が物件の現状の調査に来たうえで明渡しの催告が行われ、そこから約1ヶ月後に明渡しの「断行日」が設定される。この「断行日」まで明け渡さない場合には、入居者の所有物が強制的に建物外へ運び出されてしまう。

家賃が払えない場合、信用情報に傷がつくことはある?

家賃が払えなかった場合に信用情報に傷がつくかどうかについて、結論から言うと、契約内容や家賃の支払い方法によって変わってくるようだ。

そもそも信用情報とは、住宅ローンなどのローンを組んだり、クレジットカードを契約したりする場合に、銀行やクレジットカード会社などが審査のために照会する個人の取引情報のこと。「この人を信用してお金を貸してもよいか」を判断するために使う、これまでの支払い状況の履歴といったイメージだ。
新たにこれらの契約を結ぶ際、信用情報に過去の支払い遅れや家賃滞納の記録があれば、審査において考慮される可能性がある。

信用情報のデータベースは、クレジットカード会社や家賃保証会社など、複数の企業によって連携されている。このため、家賃を滞納すると、家賃保証会社を利用している場合は、連携している信用情報のデータベースに記録される場合がある。連携先のデータベースによっては、今後新規でクレジットカードを作ることができなかったり、ローンの審査に通りにくくなったり、家を借りにくくなったりする可能性があるのだ。

ただし、信用情報の扱いは利用している家賃保証会社によって異なるようだ。既に家賃を滞納したことがあり、今後のクレジットカードや住宅ローンなどの審査に影響するかどうかが心配な場合は、ご自身の利用している家賃保証会社に確認するのが確実だろう。

一方、連帯保証人を家族などに頼んでいる場合(=いわゆる人的保証の場合)は、家賃の振り込みが遅れた場合でも、それだけで信用情報に記録される可能性は低いといえる。

家賃が払えないときの対処法は?

ここまで、家賃が払えない場合に起きる可能性のあることについて解説した。
前述の通り、家賃が払えなくなった場合もすぐに退去になるわけではないので、自分を追い込まず、できることを確認しよう。対応しておきたいことを紹介していく。

小久保先生:
管理会社や保証会社の中には、部屋に立ち入って物を放り出したり、留守中に鍵を替えるなどして入居者を閉め出したりする手荒な会社もありますが、このような「自力救済※」は違法です。
また、期限を切って強引に立ち退きを求め、「念書」に署名をさせようとする業者もいますが、できない約束はしてはなりません。仮に署名してしまったとしても、意思表示の取消し等を主張する余地もあるので、対応に困ったらぜひ弁護士会などで相談してください。弁護士費用を「法テラス」が立替払いしてくれる民事法律扶助制度もあります。

※参考:法テラス(日本司法支援センター)

※編集部注:自力救済とは、自身の権利が侵害されていると考え、法律にのっとらず実力行使をもって権利を回復しようとすること。法務省の「紛争解決・司法」の資料にも「力や立場の強い者が自力救済による解決を図るなどして弱い立場の者が虐げられ,社会秩序が混乱しかねません。」と記載があり、司法の仕組みを用いた紛争解決を呼び掛けています

家賃が払えないとき:まずは大家さんや管理会社に報告・相談する

1ヶ月など一時的に家賃が払えない場合には、素直に大家さんや管理会社へ相談してみよう。少しの期間であれば待ってもらえる可能性もある。その場合は「〇月〇日までにはきちんと支払う」など返済の意思を伝え、その期日までに家賃分のお金を用意するようにしよう。

家賃が払えないとき:公的制度を利用する

家賃が払えない、生活費がなくて困っているといった状況を救済するさまざまな制度を、国や自治体、公的機関が用意している。家賃が払えないときに利用できる公的制度には「住居確保給付金」「休業支援金・給付金」「緊急小口資金」「総合支援資金」「生活保護」があるほか、新型コロナウイルスの影響を受けた人をサポートするさまざまな制度もある。これらについては次のページで詳しく説明する。

「生活保護」については小久保先生に解説していただいた下記記事もある。こちらもあわせて確認してほしい。

次のページでは、家賃が払えないときに利用できる公的制度を紹介している。

ほか、本質的な解決ではないかもしれないが、選択肢としては下記のようなものもある。

家賃が払えないとき:短期的な理由であれば消費者金融を利用することもできる

家賃を支払うときにちょうどお金がないなど、一時的な金欠の場合は消費者金融を利用するという手もあるが、消費者金融は利息が高い(上限金利は金額に応じて年15%~20%)。「初回利用のみ30日間無利息」をうたっている所もあるが、一度借りてしまえば、次回以降は無利息では利用できなくなるし、期日までに返せなければ利子がどんどん増えていく。一方の公的制度には無利子・保証人不要のものがある。まずはこの後紹介する公的制度の利用を検討してほしい。

家賃が払えないとき:実家など頼れる人の家を間借りする

今後も家賃の支払いが難しいと判断したら、実家など頼れる人の家を間借りするのもひとつの手段だ。家賃の負担金額をこれまでよりも浮かせて、お金の心配を減らすことができる。もちろん、家族や知人との関係性は人によるので、頼るのが難しいと感じる場合はすぐに公的制度を申請しよう。

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